図 3 仕事での生かし方仕事での生かし方 2
社会科の先生
中学校の社会や高校の地理歴史を教え、昔の出来事と今の暮らしのつながりを伝える仕事です。高校の日本史で練習する「なぜ」を問う力や、資料から考える力が、毎日の授業づくりにそのまま生きます。

ひとことで言うと
謎解きゲームの、ヒントの出し方
謎解きゲームは、答えをすぐに教えると面白くありません。どの順番でヒントを出せば自分の力で解けるかを考えて作ります。歴史の授業も同じで、先生は資料と問いの順番を工夫し、生徒が自分で「分かった」にたどり着けるようにします。

01
教える科目: 中学の「社会」と高校の「地理歴史」
中学校の社会は、地理的分野・歴史的分野・公民的分野の 3 つに分かれます。3 年間の授業時数は、地理が 115、歴史が 135、公民が 100 単位時間で、歴史がいちばん多いのです。1・2 年で地理と歴史を並行して学び、3 年で歴史と公民を学ぶのが原則です。
高校では、社会科が「地理歴史」と「公民」に分かれています。日本史を教える先生が持つのは、地理歴史の教員免許です。地理歴史には、歴史総合・日本史探究・世界史探究・地理総合・地理探究の 5 つの科目があります。日本史の先生が、世界史や地理を受け持つこともあります。
学校の外では、塾や予備校の講師として、受験の日本史を教える人もいます。どの場でも、年号や人名を覚えさせるだけでなく、出来事どうしのつながりを説明できるようにするのが、教える人の腕の見せどころです。
中学と高校で、教える科目と免許の名前が違います。
図解日本史を教える 3 つの場所
中学校の社会
- 地理・歴史・公民の 3 分野
- 歴史は 3 年間で 135 単位時間
- 免許の教科は「社会」
高校の地理歴史
- 歴史総合・日本史探究など
- 資料から仮説を立てる授業
- 免許の教科は「地理歴史」
塾・予備校
- 受験の日本史を教える
- 教員免許がなくても働ける
- 入試の出題の傾向を分析する

02
授業で「なぜ」を問う: 石段の下で見つかった 2 人
1783(天明 3)年、群馬と長野の県境にある浅間山が大噴火しました。ふもとの鎌原村は岩なだれにのみこまれ、内閣府の資料によると 466 人が亡くなりました。1979 年の発掘では、観音堂へ続く 15 段の石段の下に、さらに 35 段が埋もれていることが分かりました。
その最下段で、背負う人と背負われる人の姿をした 2 人の遺骨が見つかりました。調べた結果、2 人とも女性で、血のつながりはないと分かりました。発掘にあたった人たちは、お嫁さんがお姑さんを背負って逃げようとしたのではないかと推測しました。
先生は、この話をいきなり説明しません。「2 人はなぜ石段にいたのか」「どんな関係だったと考えられるか」と問いかけ、資料から考えてもらいます。分かったこと(事実)と、考えたこと(推測)を分けて話すのは、歴史の授業の大事な練習です。
問いは、さらに広げられます。空に舞い上がった火山灰は日差しをさえぎり、天明の大飢饉の原因のひとつにもなったと言われています。1 つの村の出来事が、教科書で学ぶ江戸時代の飢饉や社会の動きにつながっていきます。
事実と推測を分けて考えると、資料から歴史を説明する力が育ちます。
図解鎌原村の資料から問いを立てる授業(例)
- 1写真を見て、気づいたことを出し合う
- 2「なぜ 2 人は石段にいたのか」を班で考える
- 3資料の文を、事実と推測に分けて書き出す
- 4噴火と天明の大飢饉のつながりを調べる


03
社会科の歴史: 日本歴史の授業が止まった 10 か月
先生が教える教科そのものにも、歴史があります。1945 年 12 月 31 日、総司令部(GHQ)の指令で、修身・日本歴史・地理の授業が止められました。教科書や先生用の参考書も回収されています(文部科学省『学制百二十年史』)。
日本歴史の授業の再開が認められたのは、1946 年 10 月です。新しい教科書『くにのあゆみ』が使われました。そして 1947 年 4 月、新しい学校制度の始まりとともに、歴史・地理・公民の教育は、新しくできた「社会科」にまとめられました。
教科の形そのものが、時代の中で変わってきたのです。先生が自分の教科の成り立ちを知っていると、教科書がなぜ今の形なのかを、生徒に説明できます。授業で扱う戦後の改革も、自分たちの学校につながる話として伝えられます。
教科の成り立ちを知ると、教科書の形の理由まで説明できます。

04
高校の日本史の先生の 1 日(例)
ここでは、公立高校で 2 年生の日本史探究と 1 年生の歴史総合を受け持つ先生の 1 日の例を紹介します。担任のクラスを持ち、歴史研究部の顧問もしています。
授業の準備では、教科書を読み直すだけでなく、絵図や古い写真、統計などの資料を探してプリントにまとめます。生徒の答えから、どこでつまずいたかを読み取り、次の授業の問いを直すこともあります。
働き方は、学校や時期によって異なります。長い休みには、博物館の講座や研修に出て、新しい研究の成果を授業に取り入れる先生もいます。
資料を探し、問いを練る時間が、授業の面白さを支えています。
図解高校の日本史の先生の 1 日(例)
- 8:15朝の打ち合わせ職員室で今日の予定を確かめる
- 8:40ホームルーム担任のクラスで出欠と連絡
- 9:00日本史探究城下町の絵図から町のしくみを考える
- 11:00歴史総合古い新聞記事から当時の暮らしを読む
- 13:30教材の研究次の単元の資料を集めて問いを練る
- 15:40歴史研究部地元の古い道をたどる調べ学習を見守る
- 17:00提出物の確認生徒の考えに一言ずつ返す

05
向いている人と入り方・その先
高校のうちは、日本史の授業で「なぜ」と思ったことをノートに書きためてください。友だちに 5 分で説明してみると、どこが分かりにくいかが見えてきます。地域の博物館の講座で、本物の資料に触れる経験も役立ちます。
中学の社会や高校の地理歴史の免許は、史学科や、教育学部の社会科の専攻などで取れます(大学によって異なります)。大学で教職課程の科目を取り、教育実習を経て免許を取ったうえで、公立なら教員採用選考試験を受けます。
2024 年度に行われた試験(2025 年度採用)では、中学の社会は 7,253 人が受け、1,416 人が採用されました。倍率は 5.1 倍で、高校の地理歴史は 4.8 倍です。中学全体の 3.6 倍、高校全体の 3.8 倍より高めなので、大学で歴史の専門を深めておくことが強みになります。
答えが 1 つでない問いを、生徒と一緒に考えるのが好きな人に向いています。経験を積むと、教育委員会で授業づくりを支える指導主事や、教科書・資料集の執筆に関わる道もあります。
大学で歴史の専門を深めることが、授業にも採用試験にも生きます。
図解社会科の先生になるまで(例)
- 1高校で学ぶ「なぜ」をノートに書きためる
- 2大学で学ぶ史学や社会科教育と教職課程
- 3教育実習中学・高校で実際に授業をする
- 4採用試験中学は社会、高校は地理歴史
- 5授業をつくる資料と問いで教室を動かす
高校生のうちに試せること
5 分の「なぜ」授業をする
日本史の授業で気になった出来事を 1 つ選び、「なぜ」で始まる問いを 1 つ立てましょう。資料を 1 枚用意して友だちに 5 分で説明し、答えを考えてもらうと、先生が問いの順番を工夫する理由が分かります。
鎌原村の話で、事実と推測を分ける
内閣府の「災害を語りつぐ」で鎌原村の話を読み、分かったこと(事実)と、考えたこと(推測)に色を分けて線を引きましょう。自分が先生なら、どこで話を止めて問いかけるかも考えてみてください。
災害を語りつぐ 7 よみがえった鎌原村(内閣府)自分の学校の歴史を、年表に重ねる
学校の創立記念誌や学校のサイトで、創立の年や校舎が建った年を調べましょう。教科書の年表に書き込むと、その年に日本で何が起きていたかが見え、自分の学校が歴史の中に入ってきます。
「社会科の先生」に関連するコミュニティ
研究室・部活・サークルなど、全国の 35 件から探せます。
よくある質問
日本史しか得意でなくても、地理歴史の先生になれますか?
なれます。地理歴史の教職課程では、日本史・外国史・人文地理学と自然地理学・地誌を学ぶことになっていて、大学で世界史や地理を学び直せます。得意な日本史を軸に、少しずつ広げていけば大丈夫です。
中学と高校の両方の免許を取れますか?
中学の社会と高校の地理歴史の両方を取れる課程を開いている大学もあります。必要な科目が増えるので、1 年生のうちに時間割の計画を立てておくと安心です。
塾や予備校の講師になるのに、教員免許は必要ですか?
必要ありません。ただ、生徒の答えからつまずきを読み取る力や、資料を使って説明する力は、学校の先生と同じように求められます。大学生のうちに講師のアルバイトで、教える経験を積む人もいます。


