図 3 仕事での生かし方仕事での生かし方 4
出版・映像・観光
歴史の本や番組をつくったり、ドラマの時代考証に関わったり、城や寺社をめぐる旅を企画したりする仕事です。高校の日本史で学ぶ時代ごとの暮らしや出来事の流れが、作品や旅の「本当らしさ」と面白さを支えます。

ひとことで言うと
好きな作品の舞台になった町を歩く
好きな作品の舞台になった町を訪ねると、同じ景色でも見え方が変わります。歴史の本や番組、旅の案内は、出来事の舞台に物語を重ねて見せる仕事です。その物語が史実とずれないよう、資料で確かめる力が日本史の力です。

01
どんな仕事?: 本・映像・旅で歴史を届ける
歴史を伝える仕事は、大きく 3 つに分けられます。歴史の本や学習まんが、資料集をつくる編集の仕事。歴史番組やドラマをつくる制作の仕事。そして、城や寺社、古い町並みをめぐる旅を企画する観光の仕事です。
ドラマや映画では、衣装や道具、セットが、題材の時代に合っているかを確かめます。これを時代考証といいます(デジタル大辞泉)。歴史の研究者などが考証を受け持ち、制作のスタッフがその助言を画面に生かします。
観光の分野では、文化庁が、地域の歴史や文化を語る「ストーリー」を「日本遺産」として認定しています。あちこちに散らばる文化財を 1 つの物語にまとめ、地域の魅力として伝える取り組みです。出来事を物語として組み立てる力は、3 つの仕事のどれにも欠かせません。
本・映像・旅のどれでも、出来事を物語に組み立てる力が生きます。
図解歴史を届ける 3 つの仕事
出版・編集
- 歴史の本や学習まんがをつくる
- 年号や人名、引用を確かめる
- 研究者に内容の確認を頼む
番組・映像の制作
- 歴史番組やドラマをつくる
- 時代考証の助言を画面に生かす
- 撮影の場所や資料を探す
旅行・観光
- 城や寺社をめぐる旅を企画
- 地域の物語で道順を組む
- 案内の言葉を資料で確かめる

02
時代考証: ドラマの「暮れ六つ」は何時?
時代劇で「暮れ六つの鐘が鳴ったら、橋のたもとで」という約束の場面が出てきたとします。今の時計に直すと何時でしょうか。答えは、季節によって変わります。
江戸時代には、明け六つから暮れ六つまでを 6 つに分けて昼の一刻とし、夜も同じように 6 つに分けていました(国立天文台)。昼の長さは季節で変わるので、夏は昼の一刻が長く、冬は短くなります。1 日を 24 時間で等しく分ける今の決まりは、1873 年(明治 6 年)から使われています。
江戸の町では、時の鐘が時刻を知らせました。中央区によると、江戸で最初に置かれた日本橋の本石町の鐘は、一刻ごと、約 2 時間おきに鳴らされたといわれます。鐘の音が届く町からは、家持ちの町人 1 軒につき月 4 文の「鐘撞銭」を集めて運営していたようです。
台本のせりふや場面の時刻を、こうした資料で確かめるのも時代考証です。高校の日本史で江戸の町のしくみや暮らしを学んでおくと、「この場面は本当にありえたか」と考える手がかりになります。
せりふ 1 つの時刻にも、確かめる資料があります。


03
旅の企画: 江戸の時の鐘をたどるまち歩き
歴史の旅やまち歩きは、名所をただ並べるだけでは印象に残りません。「江戸の人は、どうやって時刻を知ったのか」のような問いを 1 つ立て、答えにつながる場所を順に歩くと、1 本の物語になります。
東京都中央区の十思公園には、江戸に時刻を知らせた本石町の時の鐘が残っています。鐘に刻まれた文字から、1711 年につくり直された鐘と考えられ、高さは約 1.7 m です。明治の初めに時刻の決まりが変わると使われなくなりましたが、今は除夜の鐘としてつかれています。
江戸の時の鐘は、上野の寛永寺や浅草寺など、町の各地に置かれていました。地図に鐘の場所を書き込んで道順を引くと、江戸の人が聞いていた音の広がりを想像しながら歩けます。「石町は江戸を寝せたり起こしたり」という川柳を添えれば、鐘が暮らしの一部だったことも伝わります。
問いを 1 つ立てると、名所めぐりが 1 本の物語になります。
図解時の鐘をたどるまち歩きを企画する(例)
- 1区の文化財の解説で、鐘の由来を確かめる
- 2地図に、今も残る時の鐘を結ぶ道順を引く
- 3下見をして、歩く時間と休む場所を決める
- 4川柳や当時の決まりを、説明の言葉に入れる

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旅行会社で歴史の旅を企画する人の 1 日(例)
ここでは、旅行会社で、国内の歴史をテーマにした旅を企画する人の 1 日の例を紹介します。行き先を決めてから、パンフレットやウェブサイトで売り出すまでを受け持ちます。
企画の前には、行き先の自治体の文化財のページや、博物館の解説を読み込みます。地元の案内人と打ち合わせ、説明の内容が史実とずれていないかも確かめます。
旅行会社の営業所には、国家試験に合格した旅行業務取扱管理者を置く決まりがあります(旅行業法)。働き方は、会社や季節によって大きく異なります。
史実を確かめる時間と、旅を形にする時間の両方があります。
図解旅行会社で歴史の旅を企画する人の 1 日(例)
- 9:30企画会議来年の春に売り出す旅を話し合う
- 10:30資料を調べる城下町の成り立ちを市の資料で確かめる
- 12:00昼休み
- 13:00行程をつくる移動の時間と見学の順番を組み立てる
- 14:30地元と相談案内人とオンラインで説明の中身を確認
- 16:00宿と交通の手配人数と日程に合わせて予約を調整
- 17:00紹介文を書く旅の物語が伝わる言葉を考える

05
向いている人と入り方・その先
高校のうちは、時代劇やアニメ、小説の中で、時代の描き方が気になったところをメモしてみてください。教科書や資料集で確かめると、時代考証の目が育ちます。地元の城や寺社の由来を調べて、家族を案内するのもよい練習です。
大学の学部は問われません。史学科で日本史を深める人も、観光学部で観光のしくみを学ぶ人も、社会学部でメディアを学ぶ人もいます。出版社や番組の制作会社、旅行会社に入るほか、自治体の観光の部署で地域の歴史を発信する人もいます。
物語が好きで、細かい事実の確かめも苦にならない人に向いています。経験を積むと、歴史の本のシリーズを任される編集者や、番組の企画を立てるプロデューサーになる道があります。地域の観光づくりをまとめる立場で活躍する人もいます。
好きな作品を「確かめながら」楽しむことが、この仕事の練習になります。
図解高校から歴史を届ける仕事へ(例)
- 1高校で学ぶ作品の時代の描き方を確かめる
- 2大学で広げる史学・観光学・メディアの学び
- 3仕事に入る出版社・制作会社・旅行会社など
- 4現場で鍛える取材・考証・旅の下見
- 5企画をまとめるシリーズや番組、地域の旅づくり
高校生のうちに試せること
江戸の時刻の数え方を読む
国立天文台の暦Wiki「定時法と不定時法」では、江戸時代の時刻の数え方を読めます。好きな時代劇や小説に出てくる時刻を、季節も考えて今の時計に直すとどうなるか、考えてみましょう。
暦Wiki 定時法と不定時法(国立天文台)日本遺産のストーリーを読む
日本遺産ポータルサイトでは、各地のストーリーを探して読めます。住んでいる地域や行ってみたい場所のストーリーを 1 つ選び、紹介されている場所をどの順番でめぐると伝わるか考えてみましょう。
日本遺産ポータルサイト(文化庁)地元の歴史を 3 分で案内する
近くの城跡や寺社を 1 つ選び、由来を市や町の文化財のページで調べましょう。家族や友だちを連れて行き、3 分で案内してみると、どの順番で話すと伝わるかが分かります。
「出版・映像・観光」に関連するコミュニティ
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よくある質問
時代考証は、だれがしているのですか?
作品によって、歴史の研究者や、衣装・建物などに詳しい専門家が受け持ちます。制作のスタッフは、その助言をもとにセットや衣装、せりふを整えます。
歴史が好きなら、旅行会社に向いていますか?
歴史の知識は、旅の企画で大きな強みになります。そのうえで、交通や宿の手配、費用の計算など、旅を形にする仕事もたくさんあります。人に楽しんでもらうのが好きな人に向いています。
歴史の本の編集者になるには、史学科に行く必要がありますか?
必要ありません。さまざまな学部を出た人が編集の仕事をしています。歴史の本では、年号や人名、史料の引用を確かめる場面が多いので、日本史の基礎や資料の探し方を身につけておくと役立ちます。
