大学カタログ

図 3 仕事での生かし方仕事での生かし方 1

博物館・文化財

遺跡を掘って記録に残し、出てきた土器や古い道具を調べて、展示で多くの人に伝える仕事です。高校の日本史で身につける「資料を読む」「時代の背景をつかむ」力が、発掘の現場でも展示室でも使われています。

住宅地のそばの発掘現場で、地面に浮かび上がった柱の穴の跡を削り出す若い職員たちと、ロープの外から身を乗り出して見学する高校生たち

ひとことで言うと

机に積み重なったプリントの山

机の上に積み重なったプリントは、下にあるものほど前に配られたものです。地面の下にも、昔の人の暮らしの跡が層になって重なっています。文化財の仕事は、その層を 1 枚ずつめくって記録し、だれでも見られるように残すことです。

01

どんな仕事?: 博物館の学芸員と、遺跡を守る専門職員

歴史の資料を扱う仕事の場は、大きく 2 つあります。1 つは博物館や資料館で、学芸員が資料を集めて調べ、展示や講座で伝えます。もう 1 つは都道府県や市町村の役所で、遺跡を守り、工事の前に発掘調査をする専門の職員が働いています。

自治体などで遺跡の発掘や保護を受け持つ人を、埋蔵文化財専門職員といいます。文化庁の調査では、2025 年 5 月 1 日時点で 5,571 人でした。専門職員がいる市町村は、全体の 66% です。博物館や資料館で、考古の担当として働く人もこの数に入っています。

どちらの仕事でも、出てきた物を、日本史の流れの中に置いて考える力が欠かせません。土器のかけら 1 つでも、どの時代のどんな暮らしの物かが分かれば、町の歴史の 1 ページになります。高校で学ぶ時代の区切りや特徴が、そのための物差しです。

出てきた物を日本史の流れに置くと、町の歴史の 1 ページになります。

図解博物館・文化財の仕事で使う高校の日本史

博物館・文化財
  • 資料を読む出土品や古文書から事実を拾う
  • 時代の背景をつかむその物が使われたころを説明する
  • 因果を説明する展示の順番で「なぜ」を伝える
  • 地域の歴史を調べる地元の遺跡と日本の歴史をつなぐ
  • 時代を見分ける地層と土器から時期を考える
  • 伝える子ども向けの講座や展示をつくる

02

発掘の現場: 土の色の違いから、昔の家を見つける

2024 年度に、全国で届け出などがあった発掘調査は 7,016 件でした(文化庁)。きっかけでいちばん多いのは、個人の住宅を建てる工事で、全体の 27.1% です。大学などの研究のための発掘は 2.2% で、発掘の多くは、私たちの暮らしのすぐそばで行われています。

木の柱やかやぶきの屋根は、長い年月のうちに腐ったり焼けたりして、ふつうは残りません。けれども、柱を立てるために掘った穴は残ります。あとから穴にたまった土は、まわりと色が違うことが多いので、地面を薄く削っていくと穴の形が浮かび上がります。

これは、文化庁が学校向けにまとめた教材でも紹介されている見分け方です。見つけた穴には 1 つずつ番号をつけ、図面と写真に残します。穴の並び方から、建物の大きさや向きを考えていきます。

建物は消えても、柱の穴は土の色の違いとして残ります。

図解工事の前の発掘調査の流れ(例)

  1. 1届け出遺跡のある土地での工事を届ける
  2. 2試し掘り一部を掘り、遺跡の広がりを確かめる
  3. 3発掘土の色の違いから穴や溝を探す
  4. 4記録図面・写真・出土品に番号をつける
  5. 5報告書結果をまとめ、だれでも読めるように
平らに削られた黄土色の地面に、四角い穴の跡が規則正しく並び、目印の白い札が立っている発掘現場
滋賀県甲賀市の東山遺跡で、2017 年に発掘された大きな建物の跡。地面に並ぶ四角い跡が、柱を立てた穴の位置を示しています。写真: Saigen Jiro(CC0・Wikimedia Commons)

03

年代を考える: 地層の上下と、土器の文様

発掘で土器のかけらが出たら、まず、どの層から出たかを記録します。土はふつう、下から上へと積もっていきます。文化庁の教材も、発掘の断面で、下の黄色い土を昔の地面、上の黒っぽい土をその後にたまった土として説明しています。

次に、土器の形や文様を見ます。縄文土器の文様は時代や地域によって移り変わり、時期を分ける目印になります(岡山市埋蔵文化財センター)。道具を転がして文様をつける方法が生まれたのは早期で、飾りがいちばん豊かになったのは中期です。

地層の上下と土器の文様、一緒に出た物を合わせて、「この住まいは縄文時代中期ごろ」と考えます。高校の日本史で、時代ごとの道具や暮らしの特徴をつかんでおくと、出土品と年表を結びつけるときの手がかりになります。

地層の上下と土器の文様を合わせて、出土品の年代を考えます。

クイズ発掘と文化財のクイズ

答えを 1 つ選んでください。

  1. Q12024 年度の発掘調査 7,016 件。きっかけとしていちばん多い工事は?

  2. Q2自治体などで遺跡の発掘や保護を受け持つ専門職員は、全国でおよそ何人?

  3. Q3縄文土器の文様が、いちばん豊かで飾りの多いものになったのはいつ?

0 / 3 問に回答
砂地を掘り下げた断面に、色の違う土の層が帯のように重なり、「3層」「4層」「5層」と書かれた白い札が差してある
京都府京丹後市の縄文時代の遺跡、浜詰遺跡で 2019 年に公開された発掘の断面。層ごとに札をつけ、どの層から何が出たかを記録します。写真: 漱石の猫(CC BY-SA 4.0・Wikimedia Commons)

04

市の文化財担当の専門職員の 1 日(例)

ここでは、市の教育委員会で埋蔵文化財を受け持つ専門職員の 1 日の例を紹介します。部署の名前は、文化財課や生涯学習課など、市によって異なります。

午前は、住宅の建設が予定されている土地で、試し掘りに立ち会います。午後は、出土品を洗って番号を書き込む整理作業や、工事を考えている人からの相談への対応があります。

週末には、発掘の成果を市民に見てもらう現地説明会を開くこともあります。働き方は、自治体や時期によって大きく異なります。

掘る・調べる・伝えるが、1 日の中でつながっています。

図解市の文化財担当の専門職員の 1 日(例)

  1. 8:30打ち合わせ今日の現場と作業の分担を確かめる
  2. 9:30試し掘りに立ち会う住宅の予定地で遺跡の有無を見る
  3. 12:00昼休み
  4. 13:00出土品の整理土器を洗い、出た場所の番号を書く
  5. 15:00窓口の相談工事を考える人に手続きを説明する
  6. 16:00報告書の原稿図面と写真を並べ、結果をまとめる
  7. 17:00講座の準備小学生向けの土器の話を考える

05

向いている人と入り方・その先

高校のうちは、教科書の写真で見た遺跡や出土品を、地元の博物館で実物と見比べてみてください。自治体が開く発掘の現地説明会では、掘ったばかりの遺跡を見学できます。文化庁は、全国の新しい発掘の成果を集めた「発掘された日本列島」展を毎年開いていて、2026 年で 32 回目です。

大学では、史学科の考古学や日本史の専攻、文化財学の学科などで学びます。大学で博物館に関する科目を修めて卒業すると、博物館の学芸員の資格を得られます。自治体の専門職員は、専門の採用試験などで選ばれ、大学院で研究を深めてから応募する人もいます。

地面の下の小さな手がかりから、昔の暮らしを想像するのが好きな人に向いています。経験を積むと、学芸員は展覧会全体を企画する立場に、専門職員は史跡の指定や保存の計画を受け持つ立場になる道があります。

地元の遺跡に足を運ぶことが、この仕事への最初の一歩です。

図解高校から博物館・文化財の仕事へ(例)

  1. 1高校で学ぶ日本史の流れと地元の遺跡を知る
  2. 2大学で学ぶ考古学・日本史・文化財学の専攻
  3. 3資格・試験学芸員の資格・自治体の採用試験
  4. 4現場で鍛える発掘・整理・展示を一通り経験
  5. 5専門を持つ展覧会の企画や史跡の保存計画へ

高校生のうちに試せること

  • 発掘の現地説明会に行く

    住んでいる市町村や県の文化財のページで「現地説明会」の予定を探しましょう。掘ったばかりの遺跡で、担当者から直接話を聞けます。土の色の違いや、柱の穴の並び方に注目してみてください。

  • 縄文土器の文様の移り変わりを見る

    岡山市埋蔵文化財センターの講座の資料では、縄文土器の文様が時期ごとにどう変わったかを、土器の図とともに読めます。草創期から晩期まで、文様の違いを自分の言葉で書き出してみましょう。

    縄文土器の文様(岡山市埋蔵文化財センター講座)
  • コップの中に「地層」をつくる

    透明なコップに、色の違う砂や土を順に入れて層をつくり、層の間に小さなボタンなどをはさみましょう。家族に、どのボタンが先に入れられたかを当ててもらうと、下の層ほど古いという考え方を説明する練習になります。

「博物館・文化財」に関連するコミュニティ

研究室・部活・サークルなど、全国の 74 件から探せます。

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よくある質問

発掘調査には、高校生も参加できますか?

発掘の作業に加わる条件は、自治体や調査ごとに異なります。まずは現地説明会や、博物館・資料館の体験講座に参加して、現場の様子を知るところから始めると安心です。

考古学と日本史学は、どう違うのですか?

どちらも過去を調べる学問です。考古学は、遺跡や出土品など地面の下に残った物から考えます。日本史学は、古文書や記録など文字で書かれた資料を主に読みます。両方の授業を開いている史学科もあります。

理系の科目が苦手でも、考古学に進めますか?

進めます。考古学では、観察したことを文章や図にまとめる力が大切です。年代の測定などで理科の知識を使う場面もあるので、高校の化学や地学に少しずつ触れておくと役立ちます。