図 4 この科目が生きる大学の学問この科目が生きる大学の学問 3
教育学
中学生 43 人の作文が本になり映画にもなった『山びこ学校』、生徒の学習記録が研究の資料になった国語の先生、1872 年に始まった日本の黒板。教育学では、高校の国語で身につける読む・要約する・書く力が、子どもの言葉を受け止め、授業をつくる力になります。

ひとことで言うと
友だちの話を、最後まで聞いてから返事をする
相手の話を途中でさえぎらずに聞くと、本当に言いたかったことが分かります。そのうえで返す一言が、相手の次の話を引き出します。国語の先生も、子どもの作文や発言をていねいに読み、その子に合った言葉や教材を返します。

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文学を味わう → 作文を読む: 中学生の文集が本になり、映画になった
1951 年 3 月、1 冊の文集が出版されました。『山びこ学校』です。山形県山元村(今の上山市)の山元中学校で、1949 年度に 2 年生だった 43 人が書いた作文・詩・日記・版画が収められています。作品の中心は、学級でつくっていた文集『きかんしゃ』に載ったものです。
編んだのは、担任の無着成恭(むちゃく・せいきょう)です。1948 年に師範学校を出て、郷里の山形県で山元中学校の先生になったばかりでした。生徒たちは、家の仕事や村の暮らしを、自分の言葉でありのままに書きました。本は教育の世界だけでなく広く読まれ、1952 年には映画にもなっています。
子どもに自分の生活を書かせ、作品を文集にして読み合う教育を、生活綴方(せいかつつづりかた)と呼びます。1910 年前後から、地方の農山漁村の小学校などで始まりました。書いた文章を声に出して読み合い、内容を話し合い、また書く。このくり返しで、子どもは自分の暮らしや考えを見つめ直していきます。
大学の国語科の指導法の授業では、子どもの作文を読み、どこが良いか、次に何を書けばよいかを伝える言葉を考えることがあります。表現から書き手の気持ちを読み取るのは、高校の文学国語で小説や随筆を味わう力と同じです。
子どもの作文を読む力は、文学を味わう力から育ちます。
図解生活綴方の輪
- 1生活を書く見たこと・したことをありのままに
- 2文集にする学級の作品を 1 冊にまとめる
- 3読み合う声に出して読み、聞き合う
- 4話し合う書かれた内容を自由に話し合う

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古典を読む → 教材をつくる: 大村はまは、古典の中の子どもを生徒と探した
大村はま(1906〜2005 年)は、52 年間にわたって国語を教えた先生です。戦後は新制の中学校で教え、「大村単元学習」と呼ばれる授業のつくり方で知られ、その業績で 1963 年にペスタロッチ賞を受けました。著書には『教えるということ』などがあります。
公立の中学校で教えた最後の年、1979 年度の東京都大田区立石川台中学校の 1 年生との授業は、詳しい記録が残っています。4 月の最初の授業は「学習記録の書き方」でした。生徒は 1 年間の学びを自分の学習記録にまとめ、そのうち 45 冊が、鳴門教育大学附属図書館の大村はま文庫に収められています。
11 月からは、「古典のなかに見つけた子ども」という単元に取り組みました。『更級日記』は、13 歳の作者が、父の任地の上総(今の千葉県)から京へ帰る旅から始まる日記です。生徒は『更級日記』の読む場面を分担し、今の言葉にしてみて、場面ごとに発表しました。『平家物語』や『土佐日記』を受け持った発表もありました。
中学 1 年生が、古典の中に自分と同じ年ごろの子どもを見つける。教材の選び方ひとつで、古典は身近になります。高校の古典探究で古文を読み深めておくと、大学の教材研究で、子どもに合う古典の場面を選べるようになります。
古典を読む力は、子どもに合う教材を選ぶ力になります。
図解「古典のなかに見つけた子ども」の流れ(1979 年度)
- 1あらましを知る単元の進め方を聞き、古典を読む
- 2今の言葉にする受け持つところを読み、言い換える
- 3場面を分担する『更級日記』の読む場面を分ける
- 4発表する11 月末から 12 月に場面ごとに

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要約する・書く → 板書と指導案: 1 時間の授業を、黒板 1 枚にまとめる
日本の学校で黒板が使われ始めたのは、1872 年(明治 5 年)です。東京にできた師範学校で、アメリカ人の教師スコットが、アメリカから取り寄せて使ったのが最初とされます。翌年から全国に小学校ができると、黒板も全国に広まりました。
授業で先生が黒板に書くことを、板書(ばんしょ)といいます。生徒は板書をノートに写すので、黒板 1 枚は、その時間の要約になります。国語の授業の板書は、多くの場合、縦書きで右から左へ書き進めます。今日の問い、本文の大事な言葉、生徒の意見、まとめを、どこに書くかまで前もって考えておきます。
その計画を書き込むのが、学習指導案です。指導案には、授業の目標、学習の流れと時間、先生の問いかけ(発問)、予想される生徒の答え、評価の観点などを書きます。大学の各教科の指導法の授業では、指導案を書いて模擬授業をし、仲間の意見をもとに書き直します。
1 時間の授業で大事なことを数行に絞るのは、高校の国語で文章を要約するのと同じ作業です。問いを 1 文で書き、生徒の言葉を拾って並べる。要約と記述の力が、そのまま授業の設計図になります。
黒板 1 枚に授業をまとめる力は、要約の力そのものです。
図解国語の板書計画(例)
- 1右端に、今日の問いを 1 文で書く
- 2中央に、本文の言葉と生徒の意見を並べる
- 3左端に、分かったことを 2 文でまとめる


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教育学に進むなら: 高校でつけておきたい国語の力
教育学部では、多くの大学で 1・2 年生のうちに教育の歴史や子どもの発達、授業のつくり方を学び、3 年生ごろに教育実習で教壇に立ちます。中学校や高校の国語の先生をめざす人は、国語学・国文学・漢文学なども学びます(科目の名前や時期は大学によって異なります)。
高校のうちにつけておきたい力は 3 つです。1 つ目は、小説や随筆の表現から、書き手の気持ちを読み取る力です。2 つ目は、古文・漢文を読み、今の言葉で説明する力です。3 つ目は、話し合いやスピーチで、相手に合わせて言葉を選ぶ力です。
教育学を学んだ人は、学校の先生のほか、教科書や教材をつくる会社、教育委員会、図書館などで働いています。子どもの言葉を読み取り、伝わる言葉で返す力は、どの職場でも生きます。
教育学の面白さは、子どもの 1 行の作文や 1 つの答えから、その子の考えや暮らしが見えてくることです。教育の歴史や授業づくりなど、大学の教育学の分野は、このサイトの大学の学問「教育学」のページで紹介しています。
表現を読み取る力・古典を説明する力・言葉を選ぶ力が、教育学の土台です。
高校生のうちに試せること
『山びこ学校』を読む
図書館で『山びこ学校』を探して、中学生が自分の暮らしをどんな言葉で書いているかを読みましょう。心に残った 1 文を書き出し、なぜ残ったのかを友だちと話してみてください。
小さな文集をつくる
友だちと 3〜4 人で、「最近見つけたこと」を 400 字ずつ書き、1 冊にまとめましょう。声に出して読み合い、良いと思った表現を 1 つずつ伝え合うと、生活綴方の輪を体験できます。
授業を黒板 1 枚にまとめる
好きな教科の授業を 1 時間分思い出し、ノート 1 ページに「問い・大事な言葉・まとめ」の 3 つの区画で書き直しましょう。人に教えるつもりで書くと、板書計画の練習になります。
「教育学」に関連するコミュニティ
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よくある質問
国語の先生をめざさない人にも、教育学で国語の力は必要ですか?
必要です。どの教科の授業も、説明や問いかけ、板書で組み立てます。子どもの作文やノートを読んで、その子の考えをつかむ場面もあります。
子どもの作文を読むときは、どこを見ればよいのですか?
まず、その子が何を見て、何を感じたかを受け止めます。そのうえで、具体的に書けているところを見つけて伝えます。生活綴方の教室でも、作品をみんなで声に出して読み合い、内容を話し合うことが大切にされてきました。
黒板の字が苦手でも、先生になれますか?
なれます。字の形は練習で整います。何を、どの順番で、黒板のどこに書くかを考えることのほうが大切です。大学の模擬授業で、板書の計画と実際の書き方を何度も練習します。

