図 2 高校 3 年間の流れ()高校 3 年間の流れ 2
高 2: 地域の成り立ちと交流
高 2 からは、選んで学ぶ「世界史探究」が始まります。身の回りの物から世界史への入口を見つけ、古代文明と各地域の特色、地域どうしの交流へと、遺物や歴史書、地図を読みながら進む 1 年です。

ひとことで言うと
路線ごとに覚えて、乗り換えでつなぐ
初めて大きな駅を使うときは、まず 1 本ずつ路線を覚え、次に乗り換え駅でつながりを知ります。世界史探究も、地域ごとの特色を学んでから、地域どうしの交流へと進みます。

01
高 2 の科目: 選んで学ぶ「世界史探究」
世界史探究は、歴史総合の後に選んで学ぶ科目です。標準は 3 単位で、授業は週に 3 回ほどです。人類の誕生と古代文明から現代までの、世界の諸地域の歴史を学びます。解説は、高校で初めてまとまった形で世界の歴史を学ぶ生徒に興味をもってもらうことを、導入のねらいにしています。
内容は 5 つの大項目に分かれます。最初は導入の「世界史へのまなざし」です。続いて、各地域の特色ができる「諸地域の歴史的特質の形成」、地域どうしがつながる「諸地域の交流・再編」を学びます。最後が「諸地域の結合・変容」と「地球世界の課題」です。このページでは、高 2 で 3 つ目までを学ぶ例で紹介します。学年の割りふりは、高校によって異なります。
解説は、ここでいう「諸地域」は固定したまとまりではなく、流動的なものだとしています。地域どうしが交流し、結び付いて、今の地球世界になったという流れで学ぶのが、世界史探究の特徴です。
世界史探究は、地域の特色から交流、結び付きへと、つながりを追う科目です。
図解世界史探究の 5 つの大項目
- 1世界史へのまなざし身の回りや地球環境から世界史に入る
- 2歴史的特質の形成古代文明と、各地域の特色
- 3交流・再編海と陸の交易、アジアとヨーロッパの再編
- 4結合・変容世界市場、帝国主義、世界大戦(高 3)
- 5地球世界の課題平和、格差、科学技術と探究(高 3)

02
世界史へのまなざし: school のもとの意味は「暇」
最初の大項目「世界史へのまなざし」は、世界史への入口です。中項目は 2 つあります。1 つは地球環境から見る人類の歴史で、地球、生命、人類の誕生の歴史が、それぞれ違う時間の尺度をもつことに触れます。
もう 1 つは、日常生活から見る世界の歴史です。解説は、衣食住、家族、教育、余暇などから例を選ぶよう示しています。教育なら、「子供たちが集団で学ぶ場がなぜ設けられてきたのだろうか」という問いが例に挙がっています。
この問いに、言葉から近づいてみます。英語の school の語源とされるラテン語の schola、ギリシア語の scholē(スコレー)は、もとは「暇」を意味したとされます。百科事典は、学校が生まれるには、生産力が高まって余暇ができることと、文字の発明が欠かせなかったと説明しています。
毎日通う学校にも、世界の歴史とつながる来歴があります。当たり前の物に「いつから?」「なぜ?」と問うことが、世界史探究の最初の一歩です。
身の回りの物の「いつから?」が、世界史の問いになります。
図解日常生活から世界史へ(解説の例から)
- 衣食住一地域の食べ物が世界に広まった経緯
- 家族時代や地域による女性の在り方の違い
- 教育集団で学ぶ場が設けられてきた理由
- 余暇スポーツや旅行が生まれた背景
- 地球環境一つの種の人類が全世界に広がった理由

03
遺物を読む: 金印のつまみは、なぜヘビ?
2 つ目の大項目では、古代文明と、東アジアと中央ユーラシア、南アジアと東南アジア、西アジアと地中海周辺の特色を学びます。解説は、特色を読み解く観点として生業、身分・階級、王権、宗教、文化・思想を挙げ、遺物や碑文、歴史書、年表や地図を資料に使うよう求めています。
遺物を 1 つ読んでみます。福岡県の志賀島で 1784 年に見つかった金印には、「漢委奴国王」の 5 文字が刻まれています。中国の歴史書『後漢書』東夷伝にある、57 年に光武帝が倭の奴国の王に印を授けたという記事から、その印だとするのが定説です。印面は約 2.3 cm 四方、重さは約 108.7 g です。
福岡市博物館によると、当時の中国の印は、材質やひもの色で持ち主の地位を、つまみの形で地域や民族を示しました。金でできたヘビのつまみの印からは、奴国王が漢から見て南方の国の王と位置づけられていたことが分かります。皇帝は印を授けることで、自分を頂点とする秩序をつくろうとしたのです。
印は、文書の封をした粘土に押して使いました。文字を木や竹の板に書いていた時代に、誰も開けていないことを示すためです。小さな遺物 1 つから、東アジアの王権の特色が見えてきます。
遺物は、文字・材質・形・使い方の順に見ると、多くのことを語ってくれます。
図解遺物を読む: 金印「漢委奴国王」(例)
- 1文字を読む: 漢の、委(古い日本)の奴国の、国王
- 2材質を見る: 金は、持ち主の地位を示す
- 3つまみを見る: ヘビは、地域や民族を示す
- 4使い方を知る: 文書を封じた粘土に押す


04
交流・再編へ: カタカナの名前は、意味と地図で覚える
3 つ目の大項目「諸地域の交流・再編」では、海と陸にわたる交易の広がりや、アジアの諸地域とヨーロッパの再編を学びます。解説は、取引された物産や交易に使われた船、旅行記や歴史書、科学・技術の文献、地図などを資料の例に挙げています。金印の時代の後、ユーラシアでは海と陸の交易が広がり、地域どうしの結び付きが強まっていきます。
高 2 でつまずきやすいのが、カタカナの地名や人名の多さです。コツは、名前のもとを知ることです。例えば、インド、ヒンドゥー教、パキスタンのシンド州の名前は、どれもインダス川下流の古い呼び名「シンドゥー」から来たとされます。1 つの言葉から、3 つの名前とインダス川の場所をまとめて覚えられます。
人名は、地域と時代を組にします。漢字の名前でも同じで、「光武帝」なら、後漢・1 世紀・志賀島の金印、と結びます。1 つずつ覚えるより、知っていることの網に引っかけるほうが忘れにくくなります。
カタカナの名前は、意味・地域・時代を組にすると覚えやすくなります。


05
高 2 の 1 週間: 地域を縦に、時代を横に
世界史探究は標準 3 単位なので、授業は週に 3 回ほどです。どの学年で何を学ぶかは、高校によって異なります。下の図は、高 2 の 1 週間の例です。
ノートは、地域ごとのページに加えて、世紀ごとに地域を横に並べた表を 1 枚つくっておくと便利です。1 世紀の欄には、後漢と倭の奴国を書き込みます。ほかの地域の出来事も同じ欄に足していけば、新しい地域を学ぶたびに、同じ時代のどこにあたるかがすぐに分かります。
解説は、地域の特色を読み解く観点として、生業、身分・階級、王権、宗教、文化・思想を挙げています。新しい地域を学ぶときは、この 5 つの欄をつくって書き分けると、地域どうしを比べやすくなります。
世紀ごとの横の年表を 1 枚つくると、新しい地域もすぐに位置づけられます。
図解高 2 の 1 週間(例)
- 月世界史探究の授業地域の特色を「生業・王権・宗教」で整理
- 火地図帳出てきた地名に印をつけ、川や山脈も見る
- 水世界史探究の授業歴史書の一節を読み、問いを 1 つ書く
- 木横の年表同じ世紀の東と西を 1 枚に並べる
- 金世界史探究の授業班で問いを比べ、仮説を立てる
- 土・日カタカナの名前意味・地域・時代を組にして 10 個
高校生のうちに試せること
金印のページで、資料の大きさと重さを読む
福岡市博物館のサイトでは、国宝の金印の大きさや重さ、見つかったいきさつを読めます。金印が 57 年の『後漢書』の記録と結び付けられた理由を、ページの説明から書き出しましょう。
福岡市博物館「金印」身の回りの言葉の「もと」を調べる
school、パン、カルタなど、身の回りの外来語を 3 つ選び、辞書で語源を調べましょう。どの地域の言葉から来たかを世界地図に書き込むと、言葉が旅した道筋が見えてきます。
世紀ごとの「横の年表」をつくる
A4 の紙を横に使い、縦に世紀、横に東アジア・南アジア・西アジア・ヨーロッパの欄をつくりましょう。授業で学んだ出来事を書き込んでいくと、同じ時代の別の地域をひと目で比べられます。
「高 2: 地域の成り立ちと交流」に関連するコミュニティ
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よくある質問
世界史探究と日本史探究は、両方選べますか?
高校によって異なります。どちらも歴史総合の後に学ぶ選択科目で、標準は 3 単位です。両方を選べる高校もあれば、どちらか 1 つを選ぶ高校もあります。志望する大学の入試科目も確かめて、先生と相談してください。
カタカナの名前が、どうしても覚えられません。
名前のもとや、地域と時代を組にすると覚えやすくなります。インドやヒンドゥー教の名前がインダス川の古い呼び名から来たと分かれば、地図の場所と一緒に覚えられます。1 回で覚えようとせず、地図帳と横の年表に何度も書き込んでください。
歴史書に書かれていることは、そのまま信じてよいのですか?
そのまま信じるのではなく、誰が、いつ、何のために書いたかを考えながら読み、ほかの資料と照らし合わせます。金印も、江戸時代の学者が『後漢書』の記事を根拠に鑑定し、その考えが今も定説になっています。遺物と文字の記録が結び付くと、歴史の確かさが増します。
