大学カタログ

図 2 高校 3 年間の流れ()高校 3 年間の流れ 4

その先: 大学で生かす

高校で世界史を学んだ先には、外国語で資料を読む西洋史・東洋史のゼミ、海外の遺跡を掘る考古学、今の世界を考える国際関係や地域研究があります。世界史の先生や学芸員、海外と関わる仕事への道もつながっています。

大学のゼミ室で外国の古い文書の写しを囲む学生たち、乾いた山あいの石積みの遺跡で壁を測る学生、海辺の古い大学の建物の前で議論する学生

ひとことで言うと

訳されたレシピから、原語のレシピへ

翻訳されたレシピでも料理は作れますが、原語で読むと、材料や手順の細かな意味まで分かります。大学の世界史は、外国語の資料を自分で読み、まだ誰も書いていない歴史を描く学問です。

01

西洋史・東洋史のゼミ: 外国語で資料を読む

世界史を専門に学ぶなら、文学部などの史学科で、西洋史や東洋史を選ぶ道があります。名前や分け方は、大学によって異なります。どちらも、外国語で書かれた研究や資料を読む力を身につけることが、学びの中心になります。

例えば慶應義塾大学文学部の西洋史学専攻は、2 年次に英語の原典講読が必修です。3 年次の西洋史演習では、ドイツ語・フランス語・スペイン語・イタリア語・ロシア語のいずれかの文献を読みます。3 年次から 2 年間続けて同じゼミで学び、卒業論文を書きます。

同じ大学の東洋史学専攻は、アジアとイスラーム世界を中心に学びます。中東・イスラーム世界と東アジアを専門とする 5 人の専任教員がいて、2 年次に東洋史研究入門や東洋史講読などを学びます。研究文献だけでなく、一次資料を自分で読み解くことを目指しています。

ゼミでは、自分で選んだテーマの資料を集めて報告し、先生や仲間と議論します。高校の世界史探究で練習した、問いを立てて資料で確かめる学び方が、そのまま卒業論文の土台になります。

大学の西洋史・東洋史は、外国語の資料を自分で読むところから始まります。

図解西洋史と東洋史の学び(慶應義塾大学文学部の例)

西洋史学専攻

  • 2 年: 英語の原典講読
  • 3 年: 独・仏・西・伊・露の演習
  • 3〜4 年: ゼミと卒業論文

東洋史学専攻

  • アジアとイスラーム世界が中心
  • 2 年: 研究入門・講読・概説
  • 3〜4 年: 東洋史研究会

02

考古学: 日本の調査団がアンデスで見つけた「交差した手」

遺跡や遺物から歴史を調べる考古学も、世界史とつながる学問です。日本の大学には、海外の遺跡を調査してきた歴史もあります。

1960 年代、東京大学の泉靖一教授が率いるアンデス地帯学術調査団は、ペルーのワヌコ市にあるコトシュ遺跡で、3 回にわたって発掘を行いました。いちばん下の層からは、土器を伴わない紀元前 2500〜1800 年の神殿群が見つかりました。

この発見は当時の定説をくつがえし、アンデス文明では、神殿の建築が土器づくりより先に始まったことを示すデータになりました。神殿の内壁を飾っていた粘土のレリーフ「交差した手」は 1960 年と 1963 年に見つかり、ペルーで広く報道されました。ワヌコ市には今も「セイイチ・イズミ通り」という通りがあります。

考古学は、地層の順番と出てくる物から、文明の始まり方を確かめます。

図解コトシュ遺跡の発掘から分かったこと

入力ペルーのコトシュ遺跡で、1960 年代に 3 回の発掘
  1. 1地層を上から順に掘り下げる
  2. 2いちばん下の層で神殿群を見つける
  3. 3その層からは土器が出てこない
  4. 4神殿の年代を確かめる(紀元前 2500〜1800 年)
結果アンデス文明では、神殿の建築が土器づくりより先に始まっていた
石を積んだ神殿の壁に、腕を交差させた形の赤茶色のレリーフがはめ込まれている
コトシュ遺跡の神殿の壁にある「交差した手」。1960 年に見つかった 1 点目はその後壊され、1963 年に見つかった 2 点目は保存のため首都リマに移されたので、現地で見られるのは複製です。写真: Pitxiquin(CC BY-SA 4.0・Wikimedia Commons)

03

国際関係・地域研究・経済史: 歴史から今の世界を考える

世界史の知識は、史学科の外でも生きます。国際政治を専門に学ぶ学科は、第一次世界大戦の後に生まれました。イギリスのウェールズにあるアベリストウィス大学の国際政治学科は、1919 年に世界で初めてつくられた学科です。戦争で亡くなったり傷ついたりした学生を記念して、寄付をもとに設けられました。

地域研究では、言葉を入口に、ある地域の歴史や宗教、社会をまるごと学びます。経済学部には、お金や産業の移り変わりを調べる経済史の授業があります。法学部の国際法や国際政治の授業でも、国際機構などのしくみが、どんな歴史の中でつくられたかを学びます。

それぞれの学問と世界史のつながりは、このページの図 4 や、「外国語学」「経済学」「法学」のページで紹介しています。今のニュースを、歴史の流れの中に置いて読むことは、どの学問にも共通する力です。

国際政治を学ぶ学科は、第一次世界大戦の後に、世界で初めてつくられました。

図解世界史が生きる大学の学び

高校の世界史
  • 西洋史・東洋史外国語の資料を読み、卒業論文を書く
  • 考古学海外の遺跡を掘り、年代を確かめる
  • 国際関係戦争と平和のしくみを歴史から考える
  • 地域研究言葉を入口に、地域をまるごと学ぶ
  • 経済史お金と産業の移り変わりを調べる
  • 教職・学芸員教室や博物館で世界史を伝える
海沿いの道に面して建つ、とがった塔のある石造りの大きな建物
イギリス・ウェールズの海辺の町アベリストウィスにある、アベリストウィス大学の「オールド・カレッジ」と呼ばれる建物。この大学に、1919 年、世界で初めての国際政治学科が生まれました。写真: Ray Jones(CC BY-SA 2.0・Wikimedia Commons)

04

世界史の先生や学芸員になる・海外で学ぶ

高校で世界史を教えるには、大学の教職課程で学び、高校の地理歴史の教員免許状を取ります。国の規則では、専門の分野として、日本史、外国史、人文地理学・自然地理学、地誌を、それぞれ 1 単位以上修得します。世界史の授業の土台になるのが外国史です。

博物館で世界の文化財を集め、調べ、展示するのが学芸員です。資格は、大学で博物館に関する科目を学んで取ります。先生や学芸員の仕事の様子は、このページの図 3「教える・展示する」で紹介しています。

海外の大学で学ぶ留学も、世界史を学ぶ人には大きな機会です。外国語で資料を読む力は、現地の図書館や文書館でこそ生きます。留学の形や制度は、「外国語学」のページの「3 年: 世界に出る」で紹介しています。

世界史の先生をめざす人は、大学で外国史を深めます。

05

世界史を生かす進路と、高校生のうちにできること

世界史の知識を生かす仕事には、大使館や国際機関で働く外交・国際協力や、海外の出来事を伝える国際報道があります。海外の取引先や旅行者と向き合う、ビジネスや旅行の仕事もそうです。それぞれの仕事は、このページの図 3 で紹介しています。

高校生のうちにできるのは、志望校の西洋史・東洋史のカリキュラムを読み、どんな外国語を学ぶかを確かめることです。英語に加えて、もう 1 つ読んでみたい言葉を考えておくと、大学での授業選びが楽になります。

外国語が得意でなくても、心配しすぎることはありません。大学では、原典講読や演習の授業で、資料の読み方を一から学べます。まずは、世界史で気になった地域を 1 つ選び、その地域の言葉で書かれた短いあいさつや地名の意味を調べるところから始めてみてください。

クイズ大学と世界史のクイズ

このページで紹介した内容から出題します。

  1. Q1世界で初めての国際政治学の学科が生まれたのは?

  2. Q2コトシュ遺跡の発掘が示した、アンデス文明についての新しい事実は?

  3. Q3慶應義塾大学文学部の西洋史学専攻。2 年次に必修の原典講読で読む言語は?

0 / 3 問に回答

高校生のうちに試せること

  • 志望校の西洋史・東洋史のカリキュラムを読む

    大学のサイトでは、専攻ごとに、どの学年で何を学ぶかを公開しています。慶應義塾大学文学部の西洋史学専攻のページを例に、外国語の授業とゼミの位置を確かめ、志望校と比べてみましょう。

    慶應義塾大学 文学部 西洋史学専攻
  • 「交差した手」の歩みを読む

    東京大学総合研究博物館のページでは、コトシュ遺跡の「交差した手」が見つかってから今までの歩みを読めます。発掘の成果が、現地の人々にどう伝えられてきたかにも注目しましょう。

    東京大学総合研究博物館「コトシュ遺跡『交差した手』の歴史」
  • 国際ニュースの「100 年前」を調べる

    新聞やニュースの国際面から気になる国を 1 つ選び、その国の 100 年前に何があったかを、教科書や百科事典で調べましょう。今の出来事と昔の出来事を 1 本の線で結べたら、世界史の見方が身についています。

「その先: 大学で生かす」に関連するコミュニティ

研究室・部活・サークルなど、全国の 83 件から探せます。

研究室をすべて見る(10 件)

よくある質問

史学科に入るには、受験で世界史を選ぶ必要がありますか?

大学や入試の方式によって異なります。日本史や地理などで受験できる場合もあります。入学後は、西洋史や東洋史の概説の授業で、世界の歴史の大きな流れを学び直せます。志望校の募集要項で、受験科目を確かめてください。

英語以外の外国語は、大学に入ってから学んでも間に合いますか?

間に合います。慶應義塾大学文学部の西洋史学専攻は、2 年次と 3 年次の必修の授業で、英語と英語以外のヨーロッパの言語で専門書を読む力を鍛えます。高校のうちは、英語で書かれた短い文章を読む練習を続けてください。

考古学を学ぶと、海外の遺跡を掘れますか?

大学や研究室によって異なります。日本の大学には、東京大学のアンデス調査団のように、海外の遺跡を長く調べてきた歴史があります。どの地域を調べている研究室があるかは、志望校の考古学の研究室のページで確かめてください。