大学カタログ

図 2 高校 3 年間の流れ()高校 3 年間の流れ 1

高 1: 日本と世界の近現代

高 1 では、全員が「歴史総合」を学びます。中学で学んだ日本の歴史を、ヨーロッパやアメリカ、アジアの側からも見直し、絵や旅程の表、統計を手がかりに「なぜ?」を立てる 1 年です。

教室で浮世絵と油絵の複製を見比べる高校 1 年生たち、窓の外に広がる蒸気船が行き交う運河と、荒野を走る蒸気機関車

ひとことで言うと

地図アプリを縮小して、世界を見る

近所の道だけを見ていた地図アプリも、縮小すると、町と町を結ぶ線路や海の航路が見えてきます。歴史総合は、中学で学んだ日本の歴史を、世界の地図の中に置き直して見る科目です。

01

高 1 の科目: 中学の歴史を、世界の側から見直す

高 1 で全員が学ぶ歴史の科目が「歴史総合」です。標準は 2 単位で、近代から現代までの日本と世界を合わせて学びます。高 2 から選べる「世界史探究」は、この歴史総合を学んだ後に進む科目です。

中学の社会の歴史的分野は、日本の歴史の大きな流れが中心でした。学習指導要領の解説は、歴史総合でこれを「世界とその中の日本を広く相互的な視野から捉え」る学習へ広げるとしています。同じ出来事を、相手の国や地域の側からも見るのが、高 1 の世界史の入口です。

歴史総合は 4 つの大項目でできています。最初の「歴史の扉」で、身近な物と歴史のつながりや資料の扱い方を学びます。続いて「近代化」「国際秩序の変化や大衆化」「グローバル化」の 3 つの大きな変化を学びます。

3 つの変化の単元は、どれも資料を読んで自分の問いを立てるところから始まります。解説が挙げる資料には、貿易額や鉄道の距離の移り変わり、参戦国の数、独立国の数など、世界の動きが数字で分かるものが多くあります。

歴史総合は、日本の出来事を世界の動きと結んで見る、全員が学ぶ科目です。

図解歴史総合の 4 つの大項目と資料の例

  1. 1歴史の扉身近な物と歴史のつながり、資料の扱い方
  2. 2近代化貿易額、鉄道の距離、航路の所要日数
  3. 3国際秩序の変化や大衆化参戦国の数、独立国の数、ラジオの台数
  4. 4グローバル化人と資本の移動、情報通信、感染症

02

近代化: 浮世絵が、ゴッホの油絵になった

近代化の単元では、欧米がアジアを変えた面だけでなく、アジアが欧米に与えた影響にも目を向けます。学習指導要領は、日本の美術などのアジアの文物が欧米に与えた影響に気付くよう求めています。解説は、18 世紀の北西ヨーロッパで中国の磁器が求められたことも例に挙げています。

分かりやすい例が、オランダ出身の画家ゴッホです。ゴッホ美術館によると、ゴッホは 1886〜87 年の冬、パリの美術商ビングから日本の木版画を 660 枚買いました。初めは売るつもりでしたが、1887 年には版画をじっくり研究するようになります。

その年の秋、ゴッホは手元の版画を 3 枚、油絵で写しました。そのうち 2 枚が、歌川広重の『名所江戸百景』をもとにした絵です。版画はアトリエの壁にピンで留めていたので、今も残る版画の多くに、そのピンの穴があります。

絵も、歴史の資料です。広重の版画とゴッホの模写を見比べて、問いを立ててみます。「なぜ 19 世紀後半のヨーロッパで、日本の版画が求められたのか」と問うと、貿易や美術の歴史を調べる道が開けます。

絵も、いつ・誰が・何をもとに描いたかを確かめると、歴史の資料として読めます。

図解広重の版画と、ゴッホの模写

歌川広重

  • 『名所江戸百景』の 1 枚
  • 木版画
  • 江戸の大はしに降る夕立

ゴッホ

  • 1887 年の秋、パリで
  • 油絵で写した
  • 手元の版画を写した 3 枚の 1 枚
雨が細い線で描かれた橋の上を、傘をさした人たちが渡る油絵。緑と赤の縁に、漢字のような文字が並んでいる
ゴッホが 1887 年に描いた「雨の中の橋(広重による)」(アムステルダムのゴッホ美術館)。広重の『名所江戸百景』の 1 枚を、油絵で写しています。写真: Vincent van Gogh(Public domain・Wikimedia Commons)

03

年表を横に読む: 『八十日間世界一周』を支えた 1869 年

1869 年は、世界の交通が大きく変わった年です。5 月 10 日、アメリカのユタ州プロモントリーで東西から延びた線路がつながり、最初の大陸横断鉄道が完成しました。11 月 17 日には、地中海と紅海を結ぶスエズ運河の開通式が行われました。日本では明治 2 年にあたります。

このように、同じ年に別の地域で起きたことを並べるのが、年表を横に読む方法です。国ごとに縦に読むと流れが分かり、横に読むと地域どうしのつながりが見えてきます。

2 つの新しい道を使う旅を描いたのが、フランスの作家ヴェルヌの小説『八十日間世界一周』です。小説には、新聞の見積もりとして、ロンドンからスエズ、ボンベイ、カルカッタ、香港、横浜、サンフランシスコ、ニューヨークを回る旅程が出てきます。合計はちょうど 80 日です。

この表を資料として読むと、いちばん長いのは横浜からサンフランシスコまでの船の 22 日です。サンフランシスコからニューヨークまでは、鉄道で 7 日でした。解説も、航路の広がりと所要日数の移り変わりを示す資料を、近代化の資料の例に挙げています。

同じ年の出来事を横に並べると、地域どうしのつながりが見えてきます。

図解旅程の表を読む(『八十日間世界一周』から)

入力ロンドン→スエズ 7 日、スエズ→ボンベイ 13 日、ボンベイ→カルカッタ 3 日 … 横浜→サンフランシスコ 22 日 … 合計 80 日
  1. 1いちばん長い区間を探す(横浜→サンフランシスコの船・22 日)
  2. 2鉄道だけの区間を探す(インド 3 日、アメリカ 7 日)
  3. 31869 年の出来事と結ぶ(スエズ運河・大陸横断鉄道)
  4. 4「なぜ?」「その後は?」の形に直す
結果問い: 交通の変化は、日本と世界の貿易をどう変えたのか
荒野の中の線路の上で、煙突の大きな 2 両の古い型の蒸気機関車が向かい合っている
アメリカ・ユタ州のゴールデン・スパイク国立歴史公園で向かい合う、2 両の蒸気機関車の複製。1869 年 5 月 10 日、東西から延びた線路がここでつながり、本物の機関車が向かい合いました。写真: James St. John(CC BY 2.0・Wikimedia Commons)

04

数字の資料から問いを立てる: 世界大戦・独立・ラジオ・感染症

「国際秩序の変化や大衆化」と「グローバル化」の単元も、資料から問いを立てて始めます。解説が挙げる資料には、二つの世界大戦の参戦国の数や戦死者数、独立国の数、新聞や雑誌の発行部数、ラジオの生産台数があります。

参戦国の数のグラフからは、「20 世紀の戦争は、なぜ『世界大戦』と呼ばれるようになったのか」という問いが立ちます。独立国の数が急に増えた時期を見つければ、「植民地が独立できたのはなぜか」と問えます。

グローバル化の単元では、冷戦、人と資本の移動、情報通信、食料と人口、資源と環境、感染症、多様な人々の共存などの資料を使います。解説は感染症について、20 世紀の被害が大規模になった理由や、国際社会の対応を考える学習を例に挙げています。

数字が大きく変わったところに、問いの種があります。グラフを見たら、まず変化の大きい時期を探してください。

グラフは、変化の大きい時期を探してから「なぜ?」の形にします。

クイズ高 1 の世界史クイズ

このページで紹介した内容から出題します。

  1. Q1ゴッホが 1886〜87 年の冬に、パリの美術商から買った日本の版画は何枚?

  2. Q2『八十日間世界一周』の旅程の見積もりで、いちばん日数が長い区間は?

  3. Q31869 年 5 月 10 日、アメリカのユタ州プロモントリーで完成したのは?

0 / 3 問に回答

05

高 1 の 1 週間: 地図帳と横の年表をそばに

歴史総合は標準 2 単位なので、授業は週に 2 回ほどです。どの学年で学ぶかは、高校によって異なります。下の図は、高 1 の 1 週間の例です。

つまずきやすいのは、カタカナの地名や人名と年号を覚えることだけに追われることです。地名は地図帳で場所に印をつけ、年号は同じ年の日本の出来事と組にします。1869 年なら、明治 2 年、スエズ運河と大陸横断鉄道の年、と覚えます。

高 1 のノートは、高 2・高 3 の世界史探究や、大学入学共通テストの準備の土台にもなります。共通テストの『歴史総合,世界史探究』については、高 3 のページで紹介しています。

地名は地図帳、年号は同じ年の日本の出来事と組にすると覚えやすくなります。

図解高 1 の 1 週間(例)

  1. 月歴史総合の授業絵を読み、気づいたことを 3 つ書く
  2. 火地図帳授業に出た地名に印をつける
  3. 水横の年表同じ年の日本と世界を 1 行ずつ並べる
  4. 木歴史総合の授業統計のグラフから問いを立てる
  5. 金国際ニュース出てきた国を地図帳で探す
  6. 土・日本や美術館気になった絵や小説の時代を調べる

高校生のうちに試せること

  • ゴッホが集めた浮世絵を見る

    ゴッホ美術館のサイトでは、ゴッホが集めた日本の版画を見られます。広重や英泉の版画を探し、ゴッホが写した絵と見比べて、変えたところを 3 つ書き出しましょう。

    ゴッホ美術館「Japanese Prints」(英語)
  • 『八十日間世界一周』の旅程を地図にかく

    白地図に、小説の旅程の都市を順に書き込み、区間ごとの日数を添えましょう。この小説は 1878 年に川島忠之助が訳し、日本で最初にフランス語の原典から訳された文学作品になりました。

    国立国会図書館「近代日本とフランス」翻訳されたフランス文学
  • 生まれた年の「横の年表」をつくる

    自分の生まれた年を選び、日本・アジア・ヨーロッパ・アメリカで起きた出来事を 1 つずつ調べて横に並べましょう。教科書の年表や百科事典を使うと、同じ年の出来事を探せます。

「高 1: 日本と世界の近現代」に関連するコミュニティ

研究室・部活・サークルなど、全国の 32 件から探せます。

研究室をすべて見る(7 件)

よくある質問

中学では世界の歴史をあまり習っていません。大丈夫ですか?

大丈夫です。歴史総合は、中学で学んだ日本の出来事を手がかりに、同じころ世界で何が起きていたかを足していく科目です。開国や明治維新のように知っている出来事から、相手の国の側を調べてみてください。

歴史総合で学ぶのは、日本史ですか、世界史ですか?

どちらでもあります。近代から現代までの日本と世界を、互いに関わり合うものとして学びます。高 2 からは、日本史探究や世界史探究を選んで深められます。選べる科目は、高校によって異なります。

絵や小説も、歴史の資料になるのですか?

なります。解説は、絵や風刺画、統計、地図など、さまざまな資料を使うよう求めています。ただし小説は作り話を含むので、書かれた時代の様子を知る手がかりとして、ほかの資料と照らし合わせて読みます。