図 3 仕事での生かし方仕事での生かし方 2
国際報道
海外で起きた出来事を取材し、その背景にある歴史とあわせて伝える仕事です。高校の世界史で身につける「出来事の背景と因果を説明する」「資料を批判的に読む」力が、記事や中継の 1 文 1 文を支えています。

ひとことで言うと
試合の実況に、選手の物語を添える
スポーツの実況では、点が入った場面だけでなく、その選手が歩んできた道を添えると、見ている人の心が動きます。国際報道も同じで、今日の出来事に、その国の歴史という「これまで」を添えて伝えます。背景が分かると、遠い国のニュースが自分ごとになります。

01
どんな仕事?: 記者・特派員・番組制作
国際報道に関わる仕事は、大きく 3 つに分かれます。新聞社や通信社、放送局の国際部などで、海外のニュースを記事にする記者。世界各地の支局に住み、現地で取材する特派員。そして、海外の出来事を解説する番組や特集をつくる制作の仕事です。
海外のニュースは、日本の読者や視聴者にとって、なじみの薄い地名や人名ばかりになりがちです。そこで記者は、「なぜ今、これが起きたのか」「この国にとって、どんな意味があるのか」を短く添えます。今日の出来事を、歴史の流れの中に置いて説明する力が、国際報道の要です。
高校の世界史で学ぶ地域の成り立ちや、宗教・習慣の違い、出来事の因果は、その説明の材料になります。資料を批判的に読む練習は、真偽の分からない情報を見分ける力にもつながります。
今日の出来事に「これまで」を添えるのが、国際報道の仕事です。
図解国際報道で使う高校の世界史
- 背景と因果出来事の「なぜ」を短く添える
- 地域の成り立ち国名や地名の由来を確かめる
- 宗教と習慣式典や祭りの意味を正しく書く
- 横に並べる同じころの日本と比べて伝える
- 資料を読む発表や記録を突き合わせる
- 多くの角度立場の違う人の話を聞く

02
背景を伝える: 戴冠式の中継に出てくる「1066 年」
2023 年 5 月 6 日、イギリスのロンドンにあるウェストミンスター寺院で、国王チャールズ 3 世の戴冠式が行われました。寺院によると、1066 年以来、ここで行われた国王・女王の戴冠式として 39 回目でした。
記事や中継で「1066 年」という数字が出てくるのは、この年に寺院で最初の戴冠式が行われたからです。1066 年のクリスマスの日に、ウィリアム 1 世がここで冠を受けました。寺院の記録によると、このとき王は、英語とフランス語の両方で王と宣言されました。
なぜフランス語だったのか。ウィリアム 1 世は、フランス北部のノルマンディーから海を渡り、イングランドを征服した王だからです。世界史では「ノルマン・コンクエスト」として学びます。1 つの数字の背景を説明できると、中継が千年の歴史の一場面として見えてきます。
数字 1 つの背景を添えると、中継が歴史の一場面になります。
図解海外の式典の中継に備える(例)
- 1寺院の公式サイトで、式の歴史と回数を確かめる
- 2最初の戴冠式の年と、その時代の背景を調べる
- 3式で使われる物や言葉の由来をまとめる
- 4中継で使う解説を、短い一言にまとめる


03
地名と国名: 呼び方にも歴史がある
記者は、外国の国名や地名をどう書くかにも気を配ります。日本では 2015 年 4 月 22 日に、在外公館についての法律が改められました。「在グルジア日本国大使館」は「在ジョージア日本国大使館」になり、法律の表の国の名前も「ジョージア」に変わりました。
黒海の東にあるこの国は、国連広報センターの加盟国の表に、1992 年の加盟国として「グルジア」の名前で載っています。古い資料や地図では「グルジア」と書かれているので、記事で昔の出来事に触れるときは、呼び方の違いに注意が必要です。
資料を批判的に読む力は、ここでも生きます。放送法の第 4 条は、意見が対立している問題について、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすることを、放送局に求めています。国境や歴史の評価で国どうしの主張が分かれるときは、それぞれの立場の資料に当たり、どの資料が何を言っているかを分けて伝えます。一方の言い分だけを、事実として書かないことが大切です。
呼び方 1 つにも歴史があり、立場の違う資料は分けて伝えます。


04
ロンドン支局の特派員の 1 日(例)
ここでは、ロンドンの支局で、イギリスとヨーロッパのニュースを受け持つ特派員の 1 日の例を紹介します。支局の大きさや受け持つ国の数は、会社によって大きく異なります。
日本との時差は、夏は 8 時間、冬は 9 時間です。ロンドンの午前 9 時は、日本では夕方 5 時か 6 時です。日本の朝のニュースに現地から出るときは、ロンドンの夜に中継をします。
取材の合間には、現地の新聞や議会の記録を読み、図書館で歴史の本を調べます。式典や選挙のような大きな出来事の前には、背景を説明する資料を何週間も前から準備します。
時差をこえて、現地の「今」と背景を日本に届けます。
図解ロンドン支局の特派員の 1 日(例)
- 7:00現地の報道を読む新聞とニュースで今日の動きを確かめる
- 9:00東京と打ち合わせ日本は夕方。送る話題を決める
- 11:00取材議会の前で専門家に話を聞く
- 13:00原稿を送る背景の説明を 1 段落にまとめる
- 15:00資料を調べる来月の式典の歴史を図書館で読む
- 21:00中継に出る日本の朝のニュースに現地から話す

05
向いている人と入り方・その先
高校のうちは、国際ニュースに出てきた国を 1 つ選び、教科書や資料集でその国の流れを確かめてみてください。同じ出来事を、新聞とテレビ、ネットのニュースで読み比べると、伝え方の違いも見えてきます。
大学の学部は問われません。史学で地域の歴史を深める人、国際関係学や地域研究で今の国際政治を学ぶ人、外国語学部で言葉を磨く人がいます。新聞社や通信社、放送局に入り、国内で取材の経験を積んでから、国際部などを経て海外の支局に赴任する道があります。働き方は、会社によって異なります。
知らないことを調べるのが好きで、相手の話を最後まで聞ける人に向いています。経験を積むと、いくつもの国を受け持つ支局長や、国際ニュースの解説を担当する立場として、長く国際報道に携わる道があります。
ニュースの国の歴史を調べることが、記者の練習になります。
図解高校から国際報道の仕事へ(例)
- 1高校で学ぶニュースの国の歴史を調べる
- 2大学で学ぶ史学・国際関係・外国語
- 3記者になる新聞社・通信社・放送局へ
- 4国内で鍛える地域の取材で基本を身につける
- 5海外の支局へ特派員として現地から伝える
高校生のうちに試せること
39 回の戴冠式をたどる
ウェストミンスター寺院のサイト(英語)には、1066 年からの 39 回の戴冠式の物語が 1 つずつ載っています。世界史の教科書に出てくる王や女王を探し、その人の時代に何が起きたかを確かめてみましょう。
Coronation stories(ウェストミンスター寺院・英語)国名の変わった国を探す
国連広報センターの加盟国の表を、地図帳の国名と見比べてみましょう。表と今の呼び方が違う国や、分かれたり 1 つになったりした国が見つかったら、いつ、なぜ変わったのかを調べてみましょう。
国連加盟国加盟年順序(国連広報センター)1 つの出来事を 3 つの立場で書く
文化祭など身近な出来事を 1 つ選び、生徒・先生・地域の人の 3 つの立場から、それぞれ 3 行で書いてみましょう。同じ出来事でも見え方が変わることが分かり、「多くの角度から伝える」練習になります。
「国際報道」に関連するコミュニティ
研究室・部活・サークルなど、全国の 215 件から探せます。
よくある質問
特派員になるには、どのくらい外国語が必要ですか?
取材する国の言葉や英語で、話を聞き、資料を読めることが求められます。ただ、入社の時点ですべてが完璧である必要はありません。高校のうちは英語を大切にし、興味のある地域の言葉に少し触れておくと、選択肢が広がります。
記者は、文系の学部を出ないとなれませんか?
なれます。理系の学部を出て、科学や医療の取材で活躍する記者もいます。国際報道でも、経済や環境、感染症など、理系の知識が生きる話題がたくさんあります。
ニュースの「背景」は、どうやって調べればいいですか?
まずは世界史の教科書と資料集で、その国や地域の流れを確かめてください。次に、政府や国際機関、博物館などの公式のサイトで、年や数字を確かめます。1 つの資料だけでなく、立場の違う資料を並べて読むのがこつです。




