図 3 仕事での生かし方仕事での生かし方 1
外交・国際協力
大使館や国際機関、国際協力の現場で、相手の国の歴史や宗教をふまえて話し合い、協力の道を探る仕事です。高校の世界史で身につける「地域の成り立ちを知る」「資料を読む」力が、話し合いの準備から現地での暮らしまで生きています。

ひとことで言うと
転校生と仲良くなるとき
転校してきた人と仲良くなるとき、前の学校で何を大事にしてきたかを聞くと、話がかみ合いやすくなります。国と国の話し合いも同じで、相手の国が歩んできた歴史を知ることが、信頼の出発点になります。外交や国際協力は、その「聞く準備」を毎日積み重ねる仕事です。

01
どんな仕事?: 大使館・国際機関・国際協力の現場
世界史の知識を生かして外国と向き合う職場は、大きく 3 つあります。1 つ目は外務省で、東京の本省や世界各地の大使館で、日本の立場を伝えます。2 つ目は国際連合などの国際機関で、各国から集まった職員と一緒に働きます。3 つ目は JICA(国際協力機構)や NGO で、開発途上国の人と課題に取り組みます。
どの職場でも、相手は自分と違う歴史や宗教、習慣の中で暮らしています。相手の国がいつ、どのように今の形になったのか。どんな出来事を大切に記憶しているのか。相手の歴史を知っていることが、話を聞いてもらうための土台になります。
高校の世界史で練習する、地域の成り立ちを知る力、宗教や習慣の違いを理解する力、同じ時代を横に並べて比べる力は、この仕事の基本の道具です。下の図は、それぞれの力が使われる場面の例です。
相手の国の歴史を知ることが、話し合いの土台になります。
図解外交・国際協力で使う高校の世界史
- 地域の成り立ち独立の年や公用語の由来を知る
- 宗教と習慣祝日や食事の決まりに配慮する
- 横に並べる同じころの日本と比べて話す
- 背景と因果会議や条約ができた理由を調べる
- 資料を読む統計や記録から変化を読み取る
- 伝える日本の歴史を相手に分かる形で話す

02
資料を読む: 国連の加盟国の表から、世界の動きが見える
国連広報センターは、国連の加盟国を、加盟した年の順に並べた表を公開しています。1945 年に国連ができたときの加盟国(原加盟国)は 51 か国で、今は 193 か国です。表を年ごとにたどると、世界史の大きな出来事が数字になって見えてきます。
1 年でいちばん多くの国が加わったのは 1960 年で、アフリカの 16 か国とキプロスの 17 か国でした。世界史では「アフリカの年」として学ぶ年です。1991〜92 年には、バルト 3 国やカザフスタンなど、旧ソ連の国々が続けて加わりました。
日本は 1956 年 12 月 18 日に、80 番目の加盟国になりました。2026 年は、加盟から 70 年にあたります。教育・科学・文化の国際機関であるユネスコには、それより早い 1951 年 7 月 2 日に加盟しています。外交の仕事では、表や年表を読み、変化の理由を考える力が、各国の立場を理解する手がかりになります。
加盟国の表を年ごとに読むと、世界史の出来事が数字で見えます。


03
国際協力の現場: 地域の歴史と習慣を知ってから入る
JICA 海外協力隊は、1965 年に始まりました。最初の 5 人がラオスへ向かったのは、その年の 12 月です。これまでに、のべ 5 万人を超える人が参加しています。隊員は、学校で理科や算数を教えたり、病院や農村で働いたりします。
現地で信頼されるには、技術だけでなく、その土地の暮らしを知ることが欠かせません。どの宗教の人が多いのか。学校の休みはいつで、何を祝う日なのか。公用語に、昔の交流や支配の歴史がどう残っているのか。行く前に調べておくことはたくさんあります。
高校の世界史で学ぶ地域の成り立ちは、こうした問いの答えを探す出発点です。教科書で読んだ王朝や宗教の名前が、現地の祭りや建物の名前として目の前に現れることもあります。知っている歴史が、現地の人と話すきっかけになります。
その土地の歴史を知ることが、現地の人と話すきっかけになります。
図解協力隊員として理科を教える準備(例)
- 1国の成り立ちと、公用語の由来を調べる
- 2多くの人が信じる宗教と、祝日を確かめる
- 3学校の 1 年の暦と、休みの理由を知る
- 4授業の例に、現地の暮らしの物を選ぶ


04
大使館で働く若手の外務省職員の 1 日(例)
ここでは、アジアのある国の日本大使館で、相手の国の政治や社会の動きを調べる担当になった若手職員の 1 日の例を紹介します。仕事の中身は、国や担当によって大きく異なります。
朝は現地の新聞やニュースを読み、日本との関係に関わる出来事をまとめます。日中は、相手の国の役所の担当者や研究者に会って話を聞きます。夜は、日本の文化を紹介する催しに出ることもあります。
相手の国の祝日や宗教の行事の日には、面会の予定を入れないよう気を配ります。日本と時差がある国では、本省とやりとりする時間にも注意が必要です。
現地で聞いて、まとめて、日本に伝える流れがくり返されます。
図解大使館で働く若手職員の 1 日(例)
- 8:30現地の報道を読む日本に関わる出来事を拾い出す
- 10:00打ち合わせ上司と今日の面会の目的を確かめる
- 11:00相手国の役所へ協力の事業について話を聞く
- 12:30昼休み
- 14:00研究者と面会大学の先生に地域の歴史を教わる
- 16:00報告を書く聞いた話を本省に伝える文にまとめる
- 18:30文化の催し日本映画の上映会で来場者と話す

05
向いている人と入り方・その先
高校のうちは、授業で習った国がニュースに出てきたら、教科書のその国のページを読み返してみてください。英語に加えて、もう 1 つの言葉に触れておくと、大学での選択肢が広がります。
大学では、国際関係学や地域研究、史学(西洋史・東洋史)などが近い学びです。外務省には、国家公務員の総合職試験を経て入る道と、外務省専門職員採用試験を経て入る道があります。国際機関では、空席の募集に応募するほか、日本政府などの費用で若手を国際機関に送る JPO 制度もあります。JICA 海外協力隊や NGO で、現場から国際協力に関わる道もあります。
相手の話をじっくり聞き、違いを面白がれる人に向いています。経験を積むと、外交官は大使館の幹部や大使として、国際機関の職員は事業の責任者として、国と国、人と人をつなぐ立場になります。
ニュースの国の歴史を読み返すことが、最初の一歩です。
図解高校から外交・国際協力の仕事へ(例)
- 1高校で学ぶ世界史と英語、ニュースの背景
- 2大学で学ぶ国際関係・地域研究・史学
- 3試験・応募外務省の試験・JPO・協力隊
- 4現場で鍛える大使館や途上国で経験を積む
- 5橋渡しをする大使や国際機関の責任者へ
高校生のうちに試せること
100 年前の外交の記録を読む
アジア歴史資料センターのサイトでは、国立公文書館や外務省外交史料館などが持つ公文書の画像を、インターネットで見られます。教科書に出てくる条約や会議の名前で検索し、当時の人がどんな言葉で書いていたかを読んでみましょう。
アジア歴史資料センター(国立公文書館)協力隊の募集と「世界日記」を読む
JICA 海外協力隊には、20〜69 歳なら応募でき、派遣は原則 2 年間です。事業の概要のページから、隊員が現地の暮らしを伝える「世界日記」も読めます。興味のある国の日記に出てくる祭りや食べ物の由来を、教科書や資料集で探してみましょう。
JICA ボランティア事業の概要(JICA 海外協力隊)国際機関で働く方法を調べる
文部科学省の案内では、ユネスコで働く方法として、空席の募集への応募、JPO 制度、インターンシップを紹介しています。どの方法に、どんな学歴や経験が求められるかを読み比べてみましょう。
ユネスコ勤務を希望される方へ(文部科学省)
「外交・国際協力」に関連するコミュニティ
研究室・部活・サークルなど、全国の 64 件から探せます。
上智大学学生主体NGO「めぐこ」~アジアの子どもたちの自立を支える会~
上智大学(東京都)
国際協力
国際協力団体SEED
愛知大学(愛知県)
名古屋キャンパス・国際協力

学生国際NGO「BOAT」
長崎大学(長崎県)
国際協力
2004年設立。
学生国際協力団体「Liaison」
福山市立大学(広島県)
ボランティア(国際協力)
学生 NGO EST
早稲田大学(東京都)
ボランティア

独立行政法人国際協力機構
東京都
大学生向け
留学・国際交流
開発途上国への協力を行い、海外協力隊などで人を派遣する独立行政法人。
よくある質問
外交官になるには、英語が完璧でないといけませんか?
最初から完璧である必要はありません。外務省の専門職員は、採用されてから研修で言葉を深めます。高校のうちは英語の授業を大切にしながら、ニュースに出てくる国の歴史を少しずつ調べておくと、大学での学びにつながります。
国際機関で働く日本人は、どうやって採用されるのですか?
空席の募集に応募するのが一般的な方法です。ほかに、若手を国際機関に送る JPO 制度や、国連事務局の若手を採る YPP という試験があります。求められる学歴や経験は、機関や職によって異なります。
世界史が苦手でも、国際協力の仕事はできますか?
できます。国際協力では、医療や農業、教育などの技術を持つ人がたくさん活躍しています。そのうえで、現地に行く前にその国の歴史や宗教を調べておくと、活動がずっと進めやすくなります。世界史は、その調べものの土台になります。
