図 3 仕事での生かし方仕事での生かし方 2
企業の法務
会社の中で契約書を確かめ、新しい商品やサービスが法律に合っているかを調べ、トラブルを防ぐ仕事です。民法や会社法、知的財産法の知識で、会社が新しいことに挑戦するのも後押しします。

ひとことで言うと
大会の前に要項を読み込むマネージャー
部活の大会では、エントリーの締め切りや用具の決まりを見落とすと、試合に出られないことがあります。マネージャーが前もって要項を確かめておけば、選手は安心して全力を出せます。企業の法務は、会社にとってのこのマネージャーのような仕事です。

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どんな仕事?: 会社の「守り」と「攻め」
多くの会社には、法律の問題を受け持つ法務部や、法務の担当者がいます。仕事の中心は、取引先と交わす契約書を確かめることと、社内のほかの部署から届く法律の相談に答えることです。
トラブルを防ぐ「守り」だけではありません。新しいサービスを始めるときに、どんな法律が関わるかを調べ、実現できる形を営業や開発の人と一緒に考えます。法律を理由に止めるのではなく、どうすればできるかを探すのも大事な役目です。
ほかにも、株主総会の準備、特許や商標の管理、個人情報の扱いのルールづくり、社員向けの研修など、仕事の幅は広くあります。会社の規模や業種によって、受け持つ範囲は異なります。
弁護士の資格を持つ人が、会社の社員として働く例も増えています。こうした企業内弁護士の数は、日本弁護士連合会の調べで、この 10 年に大きく伸びました。
法務は、会社が安心して挑戦できるように支える仕事です。
図解法務の 2 つの役目
守る(防ぐ)
- 契約書の危ない点を見つける
- 法律違反を防ぐ社内ルールをつくる
- トラブルが起きたら対応する
攻める(後押し)
- 新しい事業に関わる法律を調べる
- 実現できる形を一緒に考える
- 特許や商標を事業に生かす

02
法学が生きる場面: 契約書を 1 条ずつ読む
民法では、契約は、一方の申し込みに相手が承諾したときに成立し、原則として書面はいりません(民法 522 条)。それでも会社が契約書をつくるのは、約束の中身をはっきりさせ、あとで食い違いが起きないようにするためです。
法務の担当者は、届いた契約書を 1 条ずつ読み、自分の会社に不利な点や、抜けている決まりがないかを確かめます。代金を払う時期、商品に問題があったときの責任、秘密の守り方などが、よく話し合いになる点です。
直してほしい点は、理由をつけて取引先に伝えます。相手にも事情があるので、一方的に押しつけるのではなく、お互いが納得できる言葉を探します。法律の知識と交渉の力の両方が生きる場面です。
大学の民法や会社法の授業で、契約や会社のしくみの考え方を学んでおくと、契約書の 1 文が何を意味するかが読めるようになります。
1 文の意味を正確に読む力が、会社を守ります。
図解契約書を確かめる(例)
- 1営業の担当者から取引の中身を聞く
- 21 条ずつ読み、不利な点や抜けを探す
- 3法律や判例、社内の前例を調べる
- 4直してほしい点を文案にして返す


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広がる仕事: 個人情報・知的財産・株主総会
会社は、お客さんの名前や連絡先、買い物の記録など、たくさんの個人情報を扱います。個人情報保護法のルールに沿って、集めるときの説明や、ほかの会社に渡すときの手続きを決めておくのも法務の仕事です。
メーカーや IT の会社では、特許や商標などの知的財産を扱う仕事も大切です。新しい商品の名前を決める前には、ほかの会社が同じような商標を登録していないかを調べます。特許の出願などを専門にする国家資格の弁理士は、2025 年 3 月末で 11,748 人です。
株式会社では、株主が集まって会社の大事なことを決める株主総会が開かれます。招集の通知や当日の進め方が会社法に合っているかを確かめるのも、法務の担当者です。
インターネットや AI の広がりで、答えの決まっていない新しい課題も次々に出てきています。法律の考え方から筋道を立てて検討し、会社としての方針を示すのも法務の役目です。
新しい技術や事業ほど、法律の考え方で道筋をつける人が必要になります。


04
メーカーの法務部員の 1 日(例)
ここでは、家電などをつくるメーカーで法務を担当する若手社員の 1 日の例を紹介します。法務の担当者が数人の会社もあれば、大きな法務部がある会社もあります。
朝のうちに、営業や開発の部署から届いた相談に目を通します。急ぎの契約書から順に読み、直してほしい点を取引先に伝える文案をつくります。判断の難しい問題は、外部の法律事務所の弁護士に意見を聞きます。
海外の会社との取引では、英語の契約書を読むこともあります。法律の知識に加えて英語の力があると、任される仕事が広がります。
社内のいろいろな人と話し、事業を理解する力が求められます。
図解メーカーの法務部員の 1 日(例)
- 9:00相談を確かめる営業や開発から届いた質問を読む
- 10:00契約書の審査部品を買う契約書を 1 条ずつ読む
- 12:00昼休み
- 13:00開発の会議新商品に関わる法律を説明する
- 15:00弁護士と相談外部の法律事務所に意見を聞く
- 16:30研修の準備社員向けに情報の扱い方をまとめる

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向いている人と入り方・その先
法学部を卒業して会社に入り、法務部に配属される道があります。営業など別の部署を経験してから法務に移る人や、法務の経験を生かして別の会社に移る人もいます。
細かい文章を正確に読むのが苦にならない人、相手の話を聞いて落としどころを探すのが得意な人に向いています。新しい技術やビジネスのしくみに興味がある人にも合っています。
入社してから学ぶことも多く、東京商工会議所のビジネス実務法務検定試験や、知的財産管理技能検定などで力を確かめる人もいます。弁理士や弁護士の資格を取り、専門性を深める道もあります。
経験を積むと、法務部の責任者として会社全体の法律のリスクを見渡す立場や、経営に近い立場で働く道があります。
大学の民法と会社法が、入社後の勉強の土台になります。
図解企業の法務への道(例)
- 1大学で学ぶ民法・会社法・知的財産法など
- 2会社に入る法務部や知的財産部に配属される
- 3実務を覚える契約書の審査や社内の相談
- 4専門を深める検定や弁理士・弁護士の資格
高校生のうちに試せること
J-PlatPat で身近な会社の権利を調べる
特許や商標の情報を無料で検索できる J-PlatPat で、好きな文房具やお菓子の会社の名前を入れてみましょう。どんな発明や商品の名前を、権利として持っているかが分かります。
J-PlatPat(工業所有権情報・研修館)有価証券報告書の「事業等のリスク」を読む
金融庁の EDINET では、上場している会社などが出す有価証券報告書を無料で読めます。好きな会社の報告書で「事業等のリスク」の項目を探し、法律に関わるリスクとして何が書かれているかを読んでみましょう。
EDINET(金融庁)プライバシーポリシーを読み比べる
よく使うお店やアプリの会社のサイトで、「個人情報保護方針(プライバシーポリシー)」を 2 社分読み比べてみましょう。どんな情報を集め、何に使うと書いてあるかを比べると、法務の仕事の一端が見えてきます。
「企業の法務」に関連するコミュニティ
研究室・部活・サークルなど、全国の 5 件から探せます。
よくある質問
企業の法務で働くには、弁護士の資格が必要ですか?
必要ありません。資格がなくても、会社に入って法務部などに配属され、実務の中で専門性を身につけることができます。弁護士の資格を持って会社で働く企業内弁護士もいます。
英語は必要ですか?
国内の取引が中心の会社では、日本語の契約書がほとんどです。海外の会社との取引が多い会社では英語の契約書を読む機会が多く、英語の力があると任される仕事が広がります。
理系の知識は役に立ちますか?
役に立ちます。特許を扱う知的財産の仕事では、発明の中身を理解する力が求められます。理系の知識を生かし、弁理士として特許の仕事をする人もいます。

