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図 4 学ぶために必要な科目・学問学ぶために必要な科目 3

歴史

日本の民法や憲法は、明治の日本がフランスやドイツの法を学んで作ったものです。歴史総合や日本史探究で学ぶ条約改正や憲法の制定、世界史で学ぶ人権の歩みを知ると、今の法律がなぜこの形なのかが見えてきます。

赤れんがの洋館の前の広場で、古い和とじの本と洋書を並べ、長い年表を広げて話し合う大学生たち。遠くには帆船と蒸気船が浮かぶ港が見える

ひとことで言うと

古い家のリフォームの記録を読む

古い家を直すとき、どこが建てたときのままで、どこを後から直したのかが分かると、工事の理由が見えてきます。今の民法も、明治の骨組みの上に何度も手を入れてきた法律です。歴史は、その記録を読むための道具です。

01

条約改正のために、法律を一から作った

1858 年に欧米と結んだ条約には、領事裁判権が含まれていました。日本で罪を犯した外国人を、日本の法律と裁判所で裁けないしくみです。明治政府は、これをなくす条約改正を大きな目標にしました。

国立国会図書館の資料によると、近代的な法律がないことが諸外国から問題視され、法典づくりが急がれました。日本史探究の学習指導要領解説も、国内の体制を欧米の標準に合わせることが諸改革の前提になったという見方を、学習の例に挙げています。

1873 年、明治政府はフランスの法学者ボアソナードを招き、刑法や民法の草案づくりを任せました。1894 年、イギリスとの新しい条約で領事裁判権の撤廃が決まり、民法が施行された翌年の 1899 年に実施されました。関税自主権を完全に取り戻したのは、1911 年です。

ボアソナードは、東京法学校(のちの和仏法律学校、今の法政大学)や明治法律学校(今の明治大学)などでも教えました。今ある大学のいくつかは、こうした明治の法律学校から始まっています。

日本の近代の法律は、条約改正という外交の課題から生まれました。

図解条約改正と法典づくり

  1. 11858 年領事裁判権を認める条約を結ぶ
  2. 21889 年大日本帝国憲法を発布
  3. 31894 年イギリスと新しい条約に調印
  4. 41898 年今の民法を施行
  5. 51899 年領事裁判権がなくなる
  6. 61911 年関税自主権を完全に回復
白い石の台座の上に置かれた、ひげをたくわえた男性の銅の胸像
パリの法学部の建物に置かれたボアソナードの胸像。台座には、感謝する日本人から贈られたことを示すフランス語が刻まれています。写真: Imabetheone(CC BY-SA 4.0・Wikimedia Commons)

02

一度は施行されなかった民法

ボアソナードは 1879 年から民法の草案づくりを始め、10 年あまりかけて完成させました。フランス民法典(ナポレオン法典)の影響を強く受けたこの旧民法は、1890 年に公布されます。ところが施行の前に様々な批判が起こり、予定どおり施行すべきだとする断行派と、延期を求める延期派が対立しました(民法典論争)。

延期派の穂積八束は 1891 年、「民法出デテ忠孝亡ブ」という題の論文を書きました。民法ができると、忠と孝という伝統の道徳が失われる、という主張です。1892 年、議会は施行の延期を決め、旧民法は施行されないまま作り直されることになりました。

新しい民法は、穂積陳重・富井政章・梅謙次郎の 3 人が起草しました。ドイツ民法典の第一草案にならい、はじめに共通のルール「総則」を置くパンデクテン方式で組み立てられています。一方で、中身には旧民法を通じたフランス法の影響も少なくないと指摘されています。

この民法は 1896 年と 1898 年に成立し、1898 年に施行されました。起草者 3 人のうち 2 人は、フランスに留学した経験がありました。大学で学ぶ民法は、何度も改正されながら、今もこの「明治 29 年法律第 89 号」です。

今の民法の骨組みは、明治の論争をへて作られたものです。

図解フランスとドイツから学んだもの

フランス法

  • フランスの法律を翻訳して学ぶ
  • ボアソナードが旧民法・旧刑法を起草
  • 今の民法の中身にも影響

ドイツ法

  • ドイツ民法典の第一草案にならう
  • 「総則」を先に置く組み立て
  • ドイツなどで伊藤博文が憲法を調べる
赤れんがの壁と黒い屋根をもつ左右対称の洋風建築と、手前の門
東京・霞が関の法務省旧本館(赤れんが棟)。ドイツ人の建築家エンデとベックマンの設計で、1895 年に司法省の庁舎として完成しました。外観は国の重要文化財です。写真: 663highland(CC BY 2.5・Wikimedia Commons)

03

2 つの憲法を比べると、条文の理由が見える

伊藤博文は 1882 年 3 月に横浜を出発し、1 年 2 か月かけてドイツやオーストリアなどで憲法を調べました。グナイストやシュタインらから講義も受けています。そして 1889 年 2 月 11 日、大日本帝国憲法が発布されました。

大日本帝国憲法 29 条は、言論や集会の自由を「法律ノ範囲内ニ於テ」認めていました。法律を作れば、自由を制限できるしくみです。1946 年 11 月 3 日に公布された日本国憲法 21 条は、「集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する」と定めています。

日本国憲法の案は 1946 年 6 月に帝国議会に出され、衆議院と貴族院で修正を受けたうえで、10 月 7 日に可決されました。1947 年 5 月 3 日の施行に合わせて、刑法や民法なども、憲法の内容に合うよう改正されています。

家族の法も変わりました。日本国憲法 24 条は、婚姻は両性の合意のみに基づいて成立すると定めます。1947 年には民法の親族と相続の部分が全部改正され、戸主が家族をまとめる「家」の制度はなくなりました。

条文のことば一つにも、その時代の経験が刻まれています。

図解大日本帝国憲法と日本国憲法

大日本帝国憲法

  • 1889 年 2 月 11 日に発布
  • 自由は「法律ノ範囲内」で認める
  • 例: 言論・集会の自由(29 条)

日本国憲法

  • 1946 年 11 月 3 日に公布
  • 人権は侵すことのできない永久の権利
  • 例: 一切の表現の自由(21 条)

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世界史とつながる: 人権が文書になるまで

日本国憲法 97 条は、基本的人権を「人類の多年にわたる自由獲得の努力の成果」と表しています。その「多年にわたる努力」の中身を学べるのが、世界史です。

1215 年、イギリスで国王が貴族たちの要求を認めたマグナ・カルタが成立しました。その後、1689 年の権利章典、1776 年のアメリカ独立宣言、1789 年のフランス人権宣言が続きます。どれも、人の権利を文書にして確かめるものでした。

20 世紀には、人間らしい生活を国に求める権利も生まれました。生存権が憲法に初めて書かれたのは、1919 年のドイツのワイマール憲法とされています。日本国憲法 25 条の「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」も、同じ種類の権利です。

第二次世界大戦のあとの 1948 年には、国際連合の総会で世界人権宣言が採択されました。大学の憲法や国際法の授業では、こうした歴史を踏まえて、人権の意味や限界を考えます。法の歴史そのものを学ぶ法制史の授業もあります(内容は大学によって異なります)。

憲法の一文の背景には、何百年もの人権の歴史があります。

図解人権が文書になるまで

  1. 11215 年マグナ・カルタ(イギリス)
  2. 21689 年権利章典(イギリス)
  3. 31776 年アメリカ独立宣言
  4. 41789 年フランス人権宣言
  5. 51919 年ワイマール憲法(ドイツ)
  6. 61948 年世界人権宣言(国際連合)

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苦手でも大丈夫: 年号より「なぜ」から

歴史が苦手でも、心配はいりません。法学で役立つのは、年号をたくさん覚えていることより、「なぜその時代にその法律が必要だったのか」を説明できる力です。

学び直すなら、全員が学ぶ「歴史総合」の「国民国家と明治維新」から始めるのが近道です。学習指導要領は、ここで大日本帝国憲法の制定などをもとに、立憲体制と国民国家の形成を理解するとしています。次に、戦後改革と日本国憲法の制定の部分を読むと、このページの流れがつながります。

自分で年表を作るときは、「法律」「外交」「社会の出来事」の 3 列に分けて並べてみてください。1894 年の条約の調印と 1898 年の民法の施行のように、法律ができた理由が横に並んで見えてきます。

本物の資料に触れるのもおすすめです。国立国会図書館のウェブサイト「日本国憲法の誕生」や「史料にみる日本の近代」では、憲法ができるまでの資料を、解説つきの画像で見られます。

「なぜ」を問う歴史の学び方は、そのまま法学の学び方です。

クイズ法と歴史のクイズ

答えを選ぶと、正解と解説が表示されます。

  1. Q1明治政府に招かれ、旧刑法や旧民法の草案を作ったフランスの法学者は?

  2. Q21890 年に公布された旧民法は、その後どうなった?

  3. Q3大日本帝国憲法で、言論や集会の自由はどう認められていた?

0 / 3 問に回答

高校生のうちに試せること

  • 「日本国憲法の誕生」で本物の資料を見る

    国立国会図書館のウェブサイトでは、憲法の草案や議会での審議の資料を画像で見られます。大日本帝国憲法と日本国憲法の条文を並べて読み、違いを 3 つ探しましょう。

    国立国会図書館「日本国憲法の誕生」
  • 「史料にみる日本の近代」を読む

    伊藤博文をヨーロッパへ送り出した勅書など、明治から戦後までの政治の資料を、解説つきで読めます。歴史総合の教科書と同じ時代のページを開き、教科書の写真の本物を探しましょう。

    国立国会図書館「史料にみる日本の近代」
  • 校則の歴史を調べる

    自分の学校の校則が、いつ、なぜ今の形になったのかを、先生に聞いたり学校の記念誌で調べたりしましょう。決まりには、作られた理由と時代の背景があります。

「歴史」に関連するコミュニティ

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よくある質問

日本史と世界史、どちらを選ぶとよいですか?

どちらも法学につながります。日本史探究では明治の法典づくりや憲法の制定を、世界史探究では市民革命や人権の考え方の流れを深く学べます。入試の科目は大学によって異なるので、志望校の募集要項で確かめてください。

法学部で、歴史の授業は必修ですか?

大学によって異なります。法制史や比較法は、法の歴史や外国の法を扱う「基礎法学」と呼ばれる分野の科目です。必修かどうかは、志望する大学のカリキュラムで確かめてください。

明治の法律は、今も使われているのですか?

使われています。民法は 1896 年に作られた法律を、何度も改正しながら使い続けています。刑法も 1907 年に作られた法律です。