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図 2 4 年間の流れ()4 年間の流れ 3

3 年: ゼミで深める

1 人の先生のもとで、1 つの作品や作家を深く読むゼミ(演習)が始まる 1 年です。担当の箇所を調べて発表し、質問と討論で読みを鍛えながら、卒業論文のテーマを探します。

ゼミ室の大きな机を囲み、配られた資料を手に発表者の話を聞く学生たちと、壁一面の本棚

ひとことで言うと

将棋の感想戦

将棋では、対局のあとに指した手を並べ直し、どこが良くどこが悪かったかを話し合います。これを感想戦といいます。ゼミの発表も、自分の読みをみんなの前に並べ、質問を受けて確かめ直す場です。

01

ゼミに入る: 作品と先生を選ぶ

ゼミ(演習)は、1 人の先生のもとに少人数の学生が集まり、作品や作家を深く読む授業です。始まる時期は大学によって違います。近畿大学の文芸学部日本文学専攻では、3 年から演習が必修になり、4 年まで続きます。

テーマは先生の専門で決まります。國學院大學の文学部は、2025 年度に開く演習の一覧を公開しています。そこには、『古事記』の神話、万葉びとの恋、『源氏物語』「若紫」巻、延慶本『平家物語』などが並びます。

同じ一覧には、近現代の幻想小説を語り手に注目して分析するゼミや、方言、昔話・伝説を研究するゼミもあります。選ぶときは、どの時代のどんな作品を読みたいかを考え、先生の研究や先輩の卒業論文の題を確かめます。1 年かけて読みたい作品を選ぶつもりで見比べます。

ゼミのテーマは、読む時代と作品で選びます。

図解ゼミのテーマの例

ゼミ(演習)
  • 上代『古事記』の神話を読む
  • 中古『源氏物語』「若紫」巻を読む
  • 中世御伽草子・延慶本『平家物語』
  • 近世和歌と俳諧の季節の言葉
  • 近現代幻想小説の語りと語り手
  • 伝承文学昔話・伝説の研究

02

発表の準備: 本文・語釈・先行研究

ゼミの中心は、担当の学生の発表です。國學院大學の『古事記』のゼミでは、1 人が 2 回発表します。1 回目は写本や注釈書を調べて本文を確かめ、読み方と言葉の意味(語釈)を検討します。

2 回目は、ほかの神話との比較や、同じ言葉の使われ方の調査、先行研究の確認を通して、自分の見解を導き出します。最後に、2 回目の発表をレポートにまとめます。

『源氏物語』「若紫」巻のゼミでは、写本を写真で複製した影印本を読みます。担当者は、くずし字を今の文字に直す翻字をしたうえで、調べたことと考えたことを資料にまとめます。

準備は早めに始まります。『蜻蛉日記』のゼミでは、発表者は 2 週間前に先生に相談し、前の週に資料を配ります。資料を先に配り、全員が読んだうえで話し合う形です。

図解発表の準備(例)

  1. 1担当を決める読む範囲やテーマを割り当てる
  2. 2本文を確かめる写本や注釈書を見比べる
  3. 3語釈を調べる言葉の意味と使われ方を探す
  4. 4先行研究を読むこれまでの読みを整理する
  5. 5資料を配る前の週に配り、全員が予習する
金属の書架に、古い和本や箱に入った本がぎっしり並ぶ書庫
花園大学の禅文化研究所の資料室。貴重な本を収めた書庫です。ゼミの発表の準備では、注釈書や古い本を探しに書庫に入ることもあります。写真: Zenbunka(CC BY-SA 4.0・Wikimedia Commons)

03

ゼミの 1 日: 発表・質疑・討論

ゼミの日は、発表から始まります。発表者が資料をもとに説明したあと、ほかの学生が質問し、全員で討論します。國學院大學の『蜻蛉日記』のゼミの案内には、「毎時間何か発言することになると考えてのぞんでほしい」とあります。

グループで発表するゼミもあります。夏目漱石の『坊っちゃん』をグループで発表するゼミの評価は、発表 40%、質疑応答 15%、ピア評価 5%、レポート 40% です。ピア評価は、学生どうしが互いの発表を評価することです。

日本学術会議の参照基準も、自分で調べて読み、見解をまとめて伝え、討議する演習は、知識を使える力に変えるのに役立つとしています。質問に答えられなかった点が、次に調べる点になります。

図解ゼミの日の流れ(例)

  1. 13:00発表担当者が資料をもとに説明する
  2. 13:30質疑応答本文の読み方や根拠を聞く
  3. 13:50討論別の読み方がないか話し合う
  4. 14:20先生の講評次に調べる点の助言をもらう
  5. 14:30次回の確認次の担当者と範囲を決める
  6. 夜レポートの準備受けた指摘をメモに整理する

04

読みの道具: 語り手・時代・読者

3 年には、作品を読むための理論や批評の方法も学びます。参照基準は、テクストを言葉・文体・内容・思想・効果から、さらに作者や時代、読者との関係から、精密に読み解く訓練を重視しています。

たとえば夏目漱石の『坊っちゃん』は、1906 年(明治 39 年)4 月に雑誌『ホトトギス』に載りました。「親譲りの無鉄砲で小供の時から損ばかりしている。」と、主人公の「おれ」が自分の過去を振り返って語ります。

國學院大學の演習の一覧にも、この作品を例に、1 人称で振り返る語りの働きを分析する授業があります。四国の中学校に赴任した「おれ」は、着いた港町を「野蛮な所だ」と言い切ります。その言葉をそのまま信じてよいのか、明治の読者はどう読んだのか。違う方向から光を当てると、新しい読みが見つかります。

図解『坊っちゃん』を 3 つの方向から読む

語り手から

  • 語るのは主人公の「おれ」
  • 過去を振り返る 1 人称
  • 言い分をうのみにしない

時代から

  • 1906 年『ホトトギス』に発表
  • 明治の中学校が舞台
  • 東京と地方の見え方

読者から

  • 明治の読者の受け止め方
  • 今の読者が笑う場面
  • 読む人で変わる印象

05

卒業論文のテーマを探す

3 年の後半には、卒業論文のテーマ探しが始まります。ゼミの発表で気になった点や、答えきれなかった質問が、テーマの種になります。

テーマの候補が見えたら、先行研究を調べます。国文学研究資料館の論文データベースでは、明治 21 年(1888 年)以降に発表された日本文学の研究論文を探せます。好きな作品の名前で検索すると、これまで何が論じられてきたかが分かります。

先輩の発表を聞くのも近道です。筑波大学の日本語・日本文化学類は、2020 年 1 月の卒業論文の口頭試問に、1〜3 年生も参加するよう呼びかけていました。自分の卒業論文の参考にするためです。先輩の論文の題と発表から、1 年で書ける問いの大きさが分かります。

クイズ3 年の学びクイズ

このページで紹介した内容から出題します。

  1. Q1國學院大學の『古事記』のゼミで、1 回目の発表で行うのは?

  2. Q2夏目漱石の『坊っちゃん』が最初に載ったのは?

  3. Q3ゼミの評価に入ることがある「ピア評価」とは?

0 / 3 問に回答
青空の下、木々に囲まれて建つ、縦じまの壁が特徴の横長の建物
東京・駒場の日本近代文学館。1967 年に開館し、名作の原稿を含む 120 万点の資料を収めています。研究のための資料を探せる閲覧室もあります。写真: Sugitaro(CC0・Wikimedia Commons)

高校生のうちに試せること

  • 好きな作品の先行研究を探す

    国文学研究資料館の論文データベースで、教科書で読んだ作品の名前を検索しましょう。論文の題を 10 本読むと、その作品で何が問われてきたかが見えてきます。

    国文学・アーカイブズ学論文データベース(国文学研究資料館)
  • 読書会で発表してみる

    好きな短編を 1 つ選び、A4 の紙 1 枚に「あらすじ・気になった表現・問い」をまとめましょう。友だちと読書会を開いて発表し、質問を受けると、ゼミの発表の練習になります。

  • 文学館で原稿を見る

    各地の文学館では、作家の原稿や、作品が最初に載った雑誌を展示していることがあります。書き直しの跡が残る原稿を見ると、作品ができあがるまでの迷いが見えてきます。

    日本近代文学館「成りたち」

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よくある質問

ゼミはいつから始まりますか?

大学によって異なります。近畿大学の文芸学部日本文学専攻のように 3 年で始まる大学のほか、2 年から演習を受けられる大学もあります。志望校のカリキュラムで確かめてください。

人前で発表するのが苦手です。

最初から上手な人はいません。資料を前もって配る形なら、話す内容を資料に書いておけます。質問に答えられなくても、次に調べる点が見つかったことになります。

古典と近代文学、どちらのゼミを選ぶか迷います。

3 年で読む作品が、そのまま卒業論文のテーマにつながることがあります。どちらの時代の作品を 1 年かけて読みたいかで選ぶと、決めやすくなります。