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図 4 学ぶために必要な科目・学問学ぶために必要な科目 3

英語

物理学の論文の多くは英語で書かれ、日本物理学会の論文誌も英語です。数千人が国境をこえて 1 つの実験に取り組む物理学では、英語は世界中の仲間と同じ問題を考えるための共通の道具です。

地下の実験施設で、何層にも部品が重なった巨大な測定器の前に立ち、いろいろな国の研究者とノートパソコンを囲んで話し合う学生たちと、ポスターの前で発表する学生

ひとことで言うと

世界中のプレイヤーと組む、オンライン対戦

オンラインゲームで世界中のプレイヤーとチームを組むと、短い英語のチャットで作戦を伝え合います。物理学の研究も同じで、国の違う研究者が 1 つの実験に集まり、英語で相談しながら進めます。

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日本の物理学は、英語で世界に届いてきた

日本学術会議の参照基準は、物理学を学ぶ学生が身につける力の 1 つに、英語で書かれた物理学の教科書や論文を読む力を挙げています。物理学は世界に共通の知識の体系をつくっていて、英語で書かれた文献が多いからです。

日本の物理学も、早くから英語で発信してきました。1935 年、湯川秀樹は、原子核の中で働く力を運ぶ新しい粒(中間子)を予言する論文を、日本の学会誌に英語で発表しました。この予言が、1949 年のノーベル物理学賞につながりました。

いまの日本物理学会も、JPSJ と PTEP という 2 つの論文誌を、英語の月刊誌として発行しています。日本で行われた研究も、英語で書くことで、世界中の物理学者に読まれ、確かめられます。

英語で書くと、日本の研究が世界中の物理学者に読まれます。

図解日本の物理学と英語の論文

  1. 11935 年湯川秀樹が中間子の論文を英語で発表
  2. 21946 年日本物理学会が発足する
  3. 31949 年湯川が日本人初のノーベル賞を受ける
  4. 4いま学会の論文誌 JPSJ・PTEP は英語
桜の咲く植え込みの奥に建つ、窓の多い灰色の建物
京都大学の湯川記念館。湯川のノーベル賞を記念して 1952 年に建てられ、全国の研究者が共同で使う基礎物理学研究所の始まりになりました。写真: 桂鷺淵(CC BY-SA 4.0・Wikimedia Commons)

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arXiv: 物理学者が始めた論文の広場

物理学では、学術誌に載る前の論文を、公開サイト arXiv(アーカイブ)に英語で出すことがよくあります。arXiv は 1991 年、アメリカのロスアラモス国立研究所にいた素粒子の理論の研究者、ポール・ギンスパーグが始めました。

最初は、論文をメールで受け付けて配る仕組みでした。2026 年 10 月時点では、物理・数学・コンピュータ科学など 8 つの分野の、300 万本を超える論文が公開されています。だれでも無料で読めて、新しい論文は日曜日から木曜日まで毎日まとめて公開されます(アメリカの時間)。

物理の論文は、分野ごとの分類に分かれています。下の図は、このサイトの「物理学」のページで紹介した分野と、arXiv の主な分類の対応です。題名に知っている単語を 1 つ見つけるだけでも、世界でいま何が調べられているかが見えてきます。

arXiv を開けば、世界の新しい研究を、公開されたその日に読めます。

図解arXiv の物理の主な分類

arXiv の物理
  • hep素粒子物理(理論・実験など)
  • nucl原子核物理
  • astro-ph宇宙物理・天文
  • cond-mat物性物理
  • quant-ph量子物理
  • physics応用物理・物理教育・一般向けなど

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国際共同実験: 5,154 人で書いた論文

素粒子の実験には、1 つの国では作れないほど大きな装置が要ります。CERN(欧州原子核研究機構)の ATLAS 実験には、40 か国の 177 の大学・研究機関から、約 5,900 人が参加しています。

日本からも 13 の大学・研究機関が加わり、研究者と学生あわせて約 160 人が参加しています(東京大学素粒子物理国際研究センター)。日本のグループは、日本企業の協力で超伝導ソレノイドなどの装置を作り、データの解析でもヒッグス粒子の発見に貢献しました。学生のうちから、世界の研究者と肩を並べて研究できるのです。

国籍の違う研究者が集まるので、会議や打ち合わせ、データの解析の相談に使う共通の言葉は英語です。2015 年に ATLAS と CMS の 2 つの実験が共同で発表した、ヒッグス粒子の質量の論文の著者は 5,154 人にのぼりました。

日本の中にも、世界から人が集まる実験があります。茨城県つくば市の KEK(高エネルギー加速器研究機構)では、Belle II 実験が進んでいます。2025 年 3 月の Belle II の論文によると、28 の国と地域の 124 の研究機関が参加しています。日本にいても、英語で議論しながら進む研究があるのです。

英語ができると、何千人もの仲間と 1 つの発見をめざせます。

図解国境をこえる 2 つの実験

ATLAS

  • スイスとフランスの国境の CERN
  • 40 か国、約 5,900 人
  • 日本から 13 の大学・研究機関

Belle II

  • 茨城県つくば市の KEK
  • 28 の国と地域、124 の研究機関
  • 海外の研究者が日本に集まる
地下の実験室に置かれた巨大な測定器。赤や青の部品が何層にも重なり、緑色の鉄の足場に囲まれている
CERN の CMS 実験の測定器。ATLAS とともに、2012 年にヒッグス粒子とみられる新しい粒子の発見を発表しました。写真: Simon Waldherr(CC BY-SA 4.0・Wikimedia Commons)

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quark は小説から: 物理の英語は意外と自由

物理の英語には、思いがけない由来の言葉があります。陽子や中性子をつくる粒 quark(クォーク)は、1964 年にアメリカのゲルマンが提案した名前です。もとは、アイルランドの作家ジョイスの小説『フィネガンズ・ウェイク』の一節「Three quarks for Muster Mark!」です。

提案された当時のクォークは 3 種類で、「3 つの quark」という一節がぴったりだったのです。いまでは up、down、strange、charm、bottom、top の 6 種類が知られています。ふつうの英単語の名前ですが、上や下、魅力といった意味とは関係ありません。

反対に、ふだんの言葉が物理では別の意味になることもあります。work は「仕事」、power は「仕事率」、field は「場」です。こうした言葉は、英語の教科書を読むうちに自然に身につきます。数式と図はどの国でも同じなので、英文で迷ったときは式を手がかりに読めます。

言葉の由来を知ると、物理の英語がぐっと身近になります。

クイズ英語と物理学のクイズ

答えを選ぶと、正解と解説が表示されます。

  1. Q1quark(クォーク)という名前は、どこから取られた?

  2. Q22015 年に ATLAS と CMS が共同で発表した、ヒッグス粒子の質量の論文。著者は何人?

  3. Q31935 年、湯川秀樹が中間子を予言した論文は、何語で書かれていた?

0 / 3 問に回答

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苦手でも大丈夫: 高校の英語から物理の英語へ

物理の論文には、くり返し出てくる表現があります。「We measured …(〜を測定した)」「… is shown in Fig. 2(図 2 に示す)」のような言い方です。高校の「英語コミュニケーション」で、説明文の要点をつかむ練習をしておくと役立ちます。

伝える力も大切です。高校の「論理・表現」では、理由を挙げて意見を述べ、発表する練習をします。大学の研究室のゼミでは、教科書や論文を交代で読んで説明し合い、英語の文献を使うことも多くあります。

英語が苦手でも、物理学科をあきらめる必要はありません。参照基準は、英語の文献を読む力を、物理学を学ぶ中で身につける力の 1 つとしています。まずは論文の題名と、式の前後の短い文から読み始めてください。このサイトの高校の「英語」のページや、大学の「外国語学」のページもあわせて読んでみてください。

読む・書く・話すの順に、高校の英語が物理の英語へ育っていきます。

図解高校の英語から物理の英語へ

  1. 1英語コミュニケーション説明文の要点をつかむ
  2. 2論理・表現理由を挙げて意見を述べ、発表する
  3. 3研究室のゼミ英語の教科書や論文を読んで説明する
  4. 4論文と国際会議自分の研究を英語で発表する

高校生のうちに試せること

  • 湯川秀樹の論文を原文で読む

    J-STAGE では、湯川秀樹が 1935 年に発表した論文「On the Interaction of Elementary Particles. I」を無料で読めます。最初の段落を、辞書を引きながら読んでみましょう。force(力)、field(場)、particle(粒子)などの単語に印をつけると、何を論じているかの見当がつきます。

    J-STAGE「On the Interaction of Elementary Particles. I」
  • 無料の英語の教科書で放物運動を読む

    アメリカのライス大学の OpenStax は、大学の教科書を無料で公開しています。『University Physics Volume 1』の「Projectile Motion(放物運動)」の節を開き、高校で学んだ内容が英語でどう書かれているかを読み比べましょう。式と図を手がかりにすると、英文の意味もつかみやすくなります。

    OpenStax「Projectile Motion」
  • CERN の Beamline for Schools に挑戦する

    CERN などが開く Beamline for Schools は、高校生のチームが加速器を使う実験を考えて提案するコンテストです。提案はすべて英語で書き、参加は無料です。2027 年の回は、2026 年 12 月から 2027 年 3 月まで提案を受け付ける予定です。年齢などの条件は、公式サイトで確かめましょう。

    Beamline for Schools

「英語」に関連するコミュニティ

研究室・部活・サークルなど、全国の 156 件から探せます。

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よくある質問

英語が得意でないと、物理学科の勉強についていけませんか?

そんなことはありません。参照基準は、英語の教科書や論文を読む力を、物理学を学ぶ中で身につける力の 1 つとしています。数式や図はどの国でも共通なので、式を手がかりに読み進められます。高校の英語の教科書の説明文を、要点をつかみながら読む練習が土台になります。

日本の研究室でも、英語を使いますか?

論文を読む・書く場面では英語を使います。KEK の Belle II 実験のように、日本で行う実験に海外の研究機関が多く参加することもあり、英語で会議を開く研究グループもあります。使い方は研究室によって異なります。

学生のうちに、英語で発表する機会はありますか?

大学院では、国際会議で自分の研究を英語で発表する機会があります。高校生なら、提案書を英語で書く CERN の Beamline for Schools のようなコンテストもあります。