図 3 仕事での生かし方仕事での生かし方 2
公務員の心理職
家庭裁判所や少年鑑別所、児童相談所で、子どもや少年の心理を調べ、立ち直りや成長を支える仕事です。国や自治体の職員として、法律や福祉のしくみの中で心理学を生かします。

ひとことで言うと
スランプの理由は、練習量だけではない
部活でスランプに悩む後輩がいたら、練習量だけでなく、睡眠や家のこと、友だちとの関係まで気にかけるはずです。公務員の心理職は、子どもや少年の行動の背景を、同じように多くの面から調べます。そして、立ち直りや成長に何が必要かを考え、裁判官や施設の仲間に伝えます。

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3 つの職場: 裁判所・法務省・児童相談所
心理学を生かす公務員の仕事は、大きく 3 つあります。家庭裁判所で働く家庭裁判所調査官、少年鑑別所や刑務所などで働く法務省の心理技官、そして児童相談所で働く児童心理司です。
3 つに共通するのは、面接や心理検査、行動の観察を通して、子どもや少年の心の状態や行動の背景を調べるアセスメント(見立て)です。そのうえで、どうすれば立ち直れるか、どんな支えがあれば育っていけるかを考えます。
調べた結果は、裁判官の判断や、施設での教育、家庭への支援につながります。一人の人生の分かれ道に関わる、責任の重い仕事です。
どの職場でも、行動の「なぜ」を調べ、これからの支え方を考えます。
図解3 つの仕事の違い
家庭裁判所調査官
- 裁判所の職員(国家公務員)
- 少年事件や家族の争いの背景を調べる
- 調べた結果を裁判官に報告する
法務省の心理技官
- 法務省の職員(国家公務員)
- 少年鑑別所や刑務所などで働く
- 面接と心理検査で立ち直りの道を探る
児童心理司
- 都道府県などの職員(地方公務員)
- 児童相談所で働く
- 子どもの心理を調べ、子どもと親を支える

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家庭裁判所調査官: 少年と家族の「なぜ」を調べる
家庭裁判所は、非行をした少年の事件(少年事件)や、離婚や親権など家族の争い(家事事件)を扱う裁判所です。家庭裁判所調査官は、こうした事件について調べるのが主な仕事です。
少年事件では、少年と保護者に会って事情を聴き、非行に至った動機や生い立ち、性格、生活の環境を調べます。必要に応じて心理テストも行い、少年が立ち直るために必要なことを裁判官に報告します。裁判官は、この報告をもとに審判を行います。
すぐに処分を決めず、しばらく少年の様子を見守る「試験観察」になることもあります。そのあいだ調査官は、少年を指導したり助けたりしながら、生活や行動の様子を見ていきます。
家事事件では、親の争いのさなかにいる子どもにも会い、問題の原因や背景を調べます。当事者や子どもにとって最もよいと思われる解決の方法を考えるのも、調査官の役目です。
行動科学の知識を使って、裁判官の判断を支える仕事です。
図解少年事件で調査官がすること
- 1面接する少年と保護者に会い、事情を聴く
- 2背景を調べる動機・生い立ち・性格・環境を調べる
- 3関係機関と連携少年鑑別所や児童相談所などと話す
- 4裁判官に報告立ち直りに必要な方策をまとめる

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心理技官と児童心理司: 子どもの「これから」を支える
法務省の心理技官は、少年鑑別所では、家庭裁判所から送られた少年と面接し、心理検査を行います。知能や性格の特徴、非行に至った原因、これからの処遇の方針を明らかにする「鑑別」を行い、その結果を家庭裁判所に届けます。
刑務所などでは、受刑者の性格や能力を調べて目標や指導の内容を決め、再犯を防ぐためのプログラムを行います。少年院で、少年の教育や社会に戻るための支援に関わる人もいます。
少年鑑別所は「法務少年支援センター」として、地域の人の相談にも応じています。全国 52 か所にあり、非行や子どもの行動、家族のことなどの相談を、年齢制限なしに無料で受けています(予約制)。
児童相談所の児童心理司は、子どもや保護者と面接し、心理検査や観察で心理診断を行います。そのうえで、子どもや保護者へのカウンセリングや助言を行います。児童相談所は 2025 年 4 月時点で全国に 240 か所あり、3,167 人の児童心理司が働いています。
非行や虐待などに向き合い、子どもの立ち直りと成長を支える仕事です。


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家庭裁判所調査官の 1 日(例)
ここでは、少年事件を受け持つ家庭裁判所調査官の 1 日の例を紹介します。裁判所での面接のほか、家庭や学校を訪ねて生活の様子を確かめることもあります。
同じできごとでも、少年、保護者、学校の先生では見え方が違います。それぞれの話を丁寧に聴き分け、事実と気持ちを整理して報告書にまとめます。
仕事で知った少年や家族の事情は、外で話すことはありません。プライバシーを守ることは、どの心理職にも共通する大切な決まりです。
話を聴き分ける力と、分かりやすく書く力の両方が求められます。
図解家庭裁判所調査官の 1 日
- 9:00記録を読む事件の記録と関係機関の資料を確かめる
- 10:00少年と面接非行に至った気持ちや生活を聴く
- 12:00昼休み
- 13:00保護者と面接家での様子や子育ての悩みを聴く
- 14:30家庭を訪ねる生活の環境を自分の目で確かめる
- 16:00打ち合わせ裁判官や同僚と方針を話し合う
- 17:00報告書を書く調べたことと意見をまとめる

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なるには: 公務員試験と、入ってからの研修
家庭裁判所調査官になるには、裁判所職員採用総合職試験(家庭裁判所調査官補)に合格します。記述式の専門試験では、心理学・教育学・福祉・社会学・法律学の 15 題から 2 題を選んで答えます。採用後は約 2 年間、裁判所職員総合研修所の養成課程で学び、そのうち約 1 年は各地の家庭裁判所で実際の事件を担当します。
法務省の心理技官は、国家公務員の法務省専門職員(人間科学)採用試験の「矯正心理専門職」区分で採用されます。専門試験は心理学が中心で、2026 年度の採用予定は約 60 人でした。
児童心理司は、都道府県などが行う心理職の採用試験に合格し、児童相談所に配属されて働きます。どの職場でも、経験を積むと後輩を指導する立場になります。児童相談所には、児童心理司を指導する児童心理司スーパーバイザーが置かれています。
人の行動を決めつけずに「なぜ」を考えられる人、立場の違う人の話を公平に聴ける人に向いています。法律や福祉のしくみにも関心があると、仕事の幅が広がります。
高校生のうちに試せること
裁判所を見学する
各地の裁判所では、法廷などの見学や、裁判の手続きを体験する模擬裁判を行っています。近くの裁判所のサイトで、見学の申し込み方を調べてみましょう。
見学・傍聴案内(裁判所)心理技官の仕事の紹介を読む
法務省の採用サイトでは、少年鑑別所や刑務所、少年院で働く心理技官の仕事や、先輩の声、職場の様子を紹介しています。どんな場面で心理学を使っているのか読んでみましょう。
心理技官(法務省矯正職員採用サイト)BBS 会の活動を知る
BBS 会は、兄や姉のような身近な存在として少年たちと接し、相談に乗りながら非行を防ぐ活動をしている青年のボランティア団体です。大学にも BBS 会があるので、進学先で参加できるか調べてみましょう。
BBS 会員の声(法務省)
「公務員の心理職」に関連するコミュニティ
研究室・部活・サークルなど、全国の 47 件から探せます。
よくある質問
公務員の心理職に、公認心理師の資格は必要ですか?
家庭裁判所調査官や法務省の心理技官は、資格ではなく採用試験の合格で採用されます。また、少年鑑別所や刑務所、家庭裁判所は、大学で公認心理師の科目を学んだ人がそこで 2 年以上働くと受験資格を得られる「プログラム施設」にもなっています。
非行をした少年と向き合うのは、怖くありませんか?
面接するのは、非行の背景にさまざまな事情を抱えた少年です。採用後の研修で面接の方法を学び、先輩の指導を受けながら経験を積みます。一人ひとりの話を丁寧に聴き、立ち直りの道を一緒に探す仕事です。
心理学部でなくても目指せますか?
家庭裁判所調査官補の試験では、心理学のほか、教育学・福祉・社会学・法律学の問題から選んで答えられます。法務省の心理技官は専門試験が心理学中心なので、大学で心理学を学ぶことが土台になります。


