図 3 仕事での生かし方仕事での生かし方 3
新聞・テレビ・広告
社会の出来事を取材して伝えたり、多くの人に届く番組や広告を企画したりする仕事です。思い込みを疑い、社会の変化をデータで確かめる社会学の見方が、企画の種になります。

ひとことで言うと
文化祭のクラス展示を、だれに見せるか考える
クラス展示は、何を伝えたいか、だれに来てほしいかで中身が変わります。来た人の反応を見て、次の年に生かすこともあります。新聞・テレビ・広告の仕事は、これを何百万人もの人を相手に行うものです。

01
どんな仕事?: 伝える・見せる・動かす
新聞社やテレビ局の記者は、事件や政治、暮らしの話題を取材して、記事やニュースにします。編集者やデスクは、どのニュースをどれだけ大きく扱うかを決め、記事を読みやすく整えます。
テレビ局や番組の制作会社のディレクターは、ドキュメンタリーや情報番組を企画し、取材・撮影・編集までを指揮します。広告会社のプランナーは、企業や自治体が伝えたいことを、多くの人に届くキャンペーンに組み立てます。
最近は、新聞社やテレビ局も、ネットで記事や動画を届けています。紙面やテレビの画面だけでなく、スマートフォンで読む人や見る人に合わせた伝え方も求められています。
どの仕事も、社会のいまを知り、相手に合わせて届ける点は同じです。
図解番組・記事・広告をつくる 3 つの仕事
記者・編集者
- 現場で取材して事実を確かめる
- 記事やニュースにまとめる
- 扱う大きさや順番を決める
番組ディレクター
- 番組の企画を立てる
- 取材・撮影・編集を指揮する
- 見た人の反応を確かめる
広告プランナー
- 伝えたい相手を決める
- 言葉や映像の案をつくる
- 効果を調べて次に生かす

02
社会学が生きる場面: 「当たり前」を問い直す企画
アメリカのジャーナリスト、リップマンは、1922 年の本『世論』で「ステレオタイプ」という言葉を使いました。人は多くの場合、見てから決めるのではなく、決めてから見る、という指摘です。この考え方は、のちに社会科学の大切な概念になりました。
番組や広告をつくる人も、思い込みと無縁ではありません。総務省の 2021 年の調査で、6 歳未満の子がいる夫婦の 1 日の家事や育児などの時間を見てみます。妻は 7 時間 28 分、夫は 1 時間 54 分でした。夫の時間は、5 年前より 31 分増えています。
こうした数字を確かめずに「家事をするのはお母さん」と決めつけた CM をつくると、少しずつ変わっている家族の姿とずれてしまいます。統計で現実を確かめ、当事者に話を聞いてから企画を立てる。思い込みを疑う習慣が、社会学を学んだ人の強みです。
統計と取材で、思い込みと現実のずれを見つけます。
図解家族向けの洗剤の CM を企画する(例)
- 1統計で、家事をだれがどれだけしているかを確かめる
- 2子育て中の夫婦に、家事の分担の悩みを聞く
- 3「家事をするのはだれか」の思い込みを書き出す
- 4思い込みに頼らない場面と言葉を考える

03
メディアと社会の研究: 情報はどう伝わるのか
メディアが人の考えをどう変えるのかは、社会学の大きなテーマです。1940 年のアメリカ大統領選挙のとき、社会学者のラザースフェルドたちは、有権者がどのように投票先を決めるのかを調べました。
そこから生まれたのが、「コミュニケーションの 2 段階の流れ」という考え方です。新聞やラジオの情報は、まず周りより関心が高く詳しい人(オピニオン・リーダー)に受け止められます。そして、その人の助言や話を通して周りの人に伝わる、というものです。
友だちのおすすめで動画を見たり、商品を買ったりするのと似ています。記者や広告プランナーは、情報を一斉に流すだけでなく、だれを通して、どんな言葉で伝わるかまで考えて企画を立てます。
情報が人から人へどう伝わるかを知ると、届け方の工夫が変わります。


04
テレビ番組のディレクターの 1 日(例)
ここでは、テレビの情報番組で特集を受け持つディレクターの 1 日の例を紹介します。
特集の放送が近づくと、取材と編集に追われます。撮ってきた映像は何時間分にもなることがあり、それを数分の特集にまとめます。何を残して何を削るかで、伝わり方は大きく変わります。
放送の後は、見た人の反応や、取材に協力してくれた人の感想を確かめます。働く時間は番組や時期によって大きく異なり、取材先の都合で朝早くや夜遅くに動く日もあります。
限られた時間で、何をどう見せるかを決めるのがディレクターの仕事です。
図解情報番組のディレクターの 1 日(例)
- 9:30企画会議次の特集のテーマを出し合う
- 11:00取材の交渉話を聞かせてくれる人に電話する
- 12:30昼休み
- 13:30ロケ町で撮影し、インタビューする
- 17:00編集撮った映像を数分にまとめる
- 20:00試写プロデューサーと内容を確かめる

05
向いている人と入り方・その先
新聞社やテレビ局、広告会社には、大学を卒業して新卒で入る人が多くいます。学部を問わずに採用する会社が多く、社会学部や文学部、経済学部など、さまざまな学部の人が働いています。
大学では、メディア論やジャーナリズム論のゼミで、ニュースや広告を分析する力を養えます。社会調査の授業で学ぶアンケートやインタビューの方法は、取材や視聴者の調査にそのまま役立ちます。大学の新聞会や放送研究会で、記事や番組をつくる経験を積む人もいます。
世の中の変化に興味がある人、人の話を聞くのが好きな人に向いています。経験を積むと、記者はデスクや編集委員、ディレクターはプロデューサー、プランナーは広告全体を率いる立場へ進む道があります。独立して、フリーのジャーナリストや映像作家として活動する人もいます。
大学での調査とサークルでの制作の経験が、現場での力になります。
図解番組や記事をつくる仕事への道(例)
- 1大学で学ぶメディア論・社会調査など
- 2新聞会や放送研究会記事や番組をつくってみる
- 3新卒で入社新聞社・テレビ局・広告会社など
- 4現場で経験取材・制作・企画をくり返す
高校生のうちに試せること
NHK 放送博物館を訪ねる
東京・港区の愛宕山にある放送の博物館で、入場は無料です。3 万点以上の資料を収蔵し、アナウンサーの仕事などを体験できるコーナーもあります。
NHK 放送博物館CM の中の「当たり前」を数える
テレビや動画の CM を 10 本見て、料理や洗濯をしている人、車を運転している人がだれかを数えてみましょう。社会生活基本調査の数字と比べると、CM の中と外の違いが見えてきます。
令和 3 年社会生活基本調査(総務省統計局)同じニュースを 3 つのメディアで比べる
1 つの出来事について、新聞、テレビのニュース、ネットのニュースサイトの伝え方を比べましょう。見出しの言葉、最初に伝える事実、だれの声を紹介しているかに違いが見つかります。
「新聞・テレビ・広告」に関連するコミュニティ
研究室・部活・サークルなど、全国の 394 件から探せます。
よくある質問
新聞やテレビの仕事は、これからも続きますか?
人々がメディアを使う形は変わっていますが、確かな情報を取材して伝える仕事はなくなりません。新聞社やテレビ局は、ネットでの記事や動画の配信にも力を入れています。
社会学部と、メディア学部やジャーナリズムの学科は、どう違いますか?
メディア学部などは、メディアのしくみや制作の方法を中心に学びます。社会学部では、家族や地域、格差など社会全体のしくみを学び、その中の 1 つとしてメディアを扱います。社会学の中にメディア論のゼミがある大学もあります。
広告の仕事に、社会学はどう役立ちますか?
広告は、多くの人の考えや行動に働きかける仕事です。人々の暮らし方や価値観の変化を調べ、だれに何が響くかを考えるときに、社会調査の方法や、情報が人から人へ広がるしくみの研究が役立ちます。



