図 3 仕事での生かし方仕事での生かし方 1
公務員・まちづくり
市役所や県庁、国の役所、NPO で、子育て・高齢者・防災など地域の課題に合わせた政策や事業をつくる仕事です。住民の声を調べて形にする社会学の力が、まちづくりの現場で生きます。

ひとことで言うと
クラス全員が過ごしやすい教室をつくる
席替えや掃除当番を、声の大きい人の意見だけで決めると、困る人が出てきます。全員に聞き、困っている理由を確かめてから決めれば、多くの人が納得できます。まちづくりは、これを何万人もの住民を相手に行う仕事です。

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どんな仕事?: 市役所・県庁・国・NPO
地方公務員は、都道府県や市町村で、住民の暮らしに近い仕事を受け持ちます。総務省によると、2025 年 4 月 1 日時点の地方公務員は 280 万 9,298 人です。市役所の仕事は、戸籍や税の窓口、子育てや介護の支援、道路や公園、防災まで幅広くあります。
役所の仕事の中身は、社会の変化に合わせて変わります。教育・警察・消防などを除く「一般行政部門」を見てみます。1994 年と比べて、防災の担当は約 3.7 倍、児童相談所などは約 3.3 倍に増えました。防災と子育ての支援の体制を、各地で強めてきたためです。
国家公務員は、国の省庁で法律や予算の案をつくり、全国に共通するしくみを整えます。NPO(営利を目的としない民間の団体)の職員は、行政だけでは手が届きにくい課題に取り組みます。子どもの居場所づくりや、外国から来た人の支援などです。
役所の仕事の中身は、社会の変化に合わせて変わっていきます。
図解まちづくりにかかわる 3 つの職場
市役所・町村役場
- 住民の相談に直接こたえる
- 子育て・介護・防災を受け持つ
- まちの将来の計画をつくる
県庁・国の省庁
- 市町村をまたぐ課題を扱う
- 法律や予算の案をつくる
- 市町村の取り組みを支える
NPO
- 特定の課題に集中して取り組む
- 寄付や助成金も使って活動する
- 住民や役所と一緒に動く

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社会学が生きる場面: 住民の声を調べて形にする
まちづくりの第一歩は、住民が何に困っているのかを正しくつかむことです。たとえば市町村は、5 年を 1 期とする「子ども・子育て支援事業計画」をつくります。子ども・子育て支援法は、子どもの数や、保護者がどんなサービスを使いたいかをふまえて計画をつくるよう定めています。
そのため、計画をつくる前に、子育て中の家庭へアンケート(ニーズ調査)を行う市町村が多くあります。ここで役立つのが、大学で学ぶ調査の設計です。だれに聞くか、どんな言葉で聞くかによって、集まる答えは大きく変わります。
数字だけでは見えないこともあります。アンケートで「困っていない」と答えた人の中には、相談できる場所を知らないだけの人がいるかもしれません。一人ひとりに話を聞き、「当たり前」と思われていることを問い直すのが、社会学の見方です。
数字と声の両方を集めて、困りごとの理由までたどり着くのが社会学の強みです。
図解子育ての支援を考える(例)
- 1子どもの数と、共働きの家庭の数を地区ごとに確かめる
- 2子育て中の家庭に向けたアンケートをつくる
- 3結果を地区ごと・働き方ごとに分けて読む
- 4保護者や保育士に話を聞き、理由を探る

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まちづくりの現場: 人のつながりが命を守る
1995 年の阪神・淡路大震災では、倒れた建物から助け出されて生き延びた人の約 8 割が、家族や近所の人などに救われました。消防・警察・自衛隊に救出された人は約 2 割だったという調査結果があります(内閣府『防災白書』)。
ふだんから顔を知っている人が近くにいるかどうかが、いざというときに命を左右します。市役所の防災の担当は、避難所の準備や訓練だけでなく、町内会や自主防災組織と一緒に、地域のつながりを育てる仕事もしています。
人口が減る地域では、外から人を迎える取り組みも広がっています。総務省の「地域おこし協力隊」は、都市から過疎地域などに移り住んだ人が、おおむね 1〜3 年、地域の仕事を手伝う制度です。2009 年度に 89 人で始まり、2025 年度は 8,196 人が活動しました。年代別では 20 代が 33.6% で最も多くなっています。
人と人のつながりを育てることも、まちづくりの大事な仕事です。


04
市役所でまちづくりを受け持つ職員の 1 日(例)
ここでは、市役所の企画課で地域づくりを受け持つ、若手職員の 1 日の例を紹介します。
昼の間は、アンケートの結果をグラフにまとめたり、子育てや防災を担当する課と予算を相談したりします。夕方からは、町内会や商店会の集まりに出かけることもあります。働いている住民が参加しやすいのは、仕事が終わった後の時間だからです。
住民の話し合い(ワークショップ)では、職員が答えを決めるのではなく、意見を引き出して整理する役に回ります。声の小さい人の意見もすくい上げることが大切です。働き方は部署や時期によって異なり、選挙や災害の対応で忙しくなる時期もあります。
調べる力と、人の話を引き出す力の両方が求められます。
図解市役所の地域づくり担当の 1 日(例)
- 8:30朝の打ち合わせ課の予定と住民からの相談を共有する
- 10:00データの整理市民アンケートを地区ごとに集計する
- 12:00昼休み
- 13:30庁内の会議子育てや防災の担当課と予算を相談
- 15:30資料づくり住民向けの説明資料をつくる
- 18:30地域の集まり町内会でまちの将来を話し合う

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向いている人と入り方・その先
公務員になるには、採用試験に合格する必要があります。国家公務員の一般職試験(大卒程度)の行政区分では、専門試験の 16 科目から 8 科目を選んで答えます。その中に社会学があり、大学の授業がそのまま試験の準備になります。
地方公務員の試験は、都道府県や市町村ごとに行われ、試験の科目も自治体によって異なります。多くの自治体では、筆記試験のほかに面接があり、地域の課題をどう考えるかも問われます。
人の話を聞くのが好きな人、身近な困りごとに「なぜ?」と思える人に向いています。経験を積むと、課長などとして政策をまとめる立場や、福祉・防災などの専門家への道があります。NPO を立ち上げる人や、地域おこし協力隊として地方で働き始める人もいます。
社会学の授業と社会調査の経験が、試験と仕事の両方の土台になります。
図解市役所で働くまでの道(例)
- 1大学で学ぶ社会調査・地域社会学・社会福祉など
- 2採用試験自治体ごとの筆記試験と面接
- 3市役所へ窓口や事業の担当から始める
- 4専門を深める部署を移りながら政策を担う
高校生のうちに試せること
防災訓練で「来ていない人」を考える
町内会や学校の防災訓練に参加してみましょう。来ている人の年代を見て、来ていない人はだれか、その人たちに避難の情報をどう届けるかを考えます。市役所の防災の担当が向き合っている問いの 1 つです。
人と防災未来センターを訪ねる
神戸市にある、阪神・淡路大震災の経験と教訓を伝える施設です。高校生は無料で展示を見学できます。震災のとき、地域の人がどう動いたのかを知りましょう。
利用案内(人と防災未来センター)地域おこし協力隊の活動を調べる
総務省のページでは、地域おこし協力隊のしくみを紹介しています。隊員の約 3 人に 1 人は 20 代です。全国でどんな仕事があるのか調べてみましょう。
地域おこし協力隊(総務省)
「公務員・まちづくり」に関連するコミュニティ
研究室・部活・サークルなど、全国の 74 件から探せます。
公共政策・実証経済学研究室
横浜国立大学(神奈川県)
都市科学部 環境リスク共生学科・実証経済学・公共政策・奥山 尚子 准教授
データ分析で災害や政策が人や企業の選択に与える影響を探る。
地域公共政策研究室
熊本大学(熊本県)
工学部 土木建築学科・土木計画学・柿本 竜治 教授
交通施設の整備で生まれる便益と、それが誰に帰着するかを分析する。
観光とまちづくり研究室
石巻専修大学(宮城県)
地域社会研究室
麻布大学(神奈川県)
地域社会学研究室
麻布大学(神奈川県)
都市計画・まちづくり(益尾)研究室
愛知工業大学(愛知県)
よくある質問
公務員になるには、法学部や経済学部のほうが有利ですか?
学部で決まるわけではありません。国家公務員の一般職試験(行政区分)では、社会学を含む 16 科目から 8 科目を選べます。社会学で身につく調査の力は、住民の声を聞いて事業をつくる場面で役立ちます。
NPO と公務員は、どう違いますか?
公務員は、法律や予算にもとづいて、地域全体に同じサービスを届けます。NPO は、特定の課題に集中して、小回りの利く活動ができます。役所と NPO が協力して事業を進めることもあります。
まちづくりにかかわるには、公務員にならないといけませんか?
その必要はありません。NPO、地域おこし協力隊、まちづくりの会社、町内会やボランティアなど、かかわり方はたくさんあります。大学によっては、ゼミで自治体と一緒に地域の調査をすることもあります。


