アドミッション・ポリシー(入学者受入れの方針)は、大学が「入学までにどんな力を身につけてきた人を求めるか」と「その力をどう評価して選ぶか」を書いて公表する文書です。総合型選抜では書類や面接で何を見られるのかを知る、いちばん早い手がかりになります。2027 年度入試は、福知山公立大学のように 10 月上旬に審査を終えた大学もあれば、九州大学の総合型選抜Ⅱのように 10 月 30 日まで出願を受け付ける大学もあります(各大学の 2027 年度の要項)。この記事では、法令とガイドラインで決まっていることを確かめ、国立・公立・私立の 3 校の実例で、ポリシーの言葉と選抜の方法のつながりを読み取ります。

アドミッション・ポリシーとは 法令とガイドラインが決めていること

学校教育法施行規則の第 165 条の 2 は、大学に対し、学部や学科などの単位ごとに、教育上の目的を踏まえて三つの方針を定めるものとしています。「卒業又は修了の認定に関する方針」「教育課程の編成及び実施に関する方針」「入学者の受入れに関する方針」です。第 172 条の 2 は、これらの方針を大学が公表するものとしています(e-Gov 法令検索、2026 年 4 月 1 日施行の条文)。全ての大学での策定・公表は 2016 年 3 月 31 日の改正で決まり、2017 年 4 月 1 日に施行されました(文部科学省「三つの方針の策定・公表に関する省令改正」)。

三つの方針の役割は、中央教育審議会大学分科会大学教育部会が 2016 年 3 月 31 日にまとめたガイドラインに、次のように整理されています。

方針通称ガイドラインの説明
卒業認定・学位授与の方針ディプロマ・ポリシー(DP)どのような力を身に付けた者に卒業を認定し、学位を授与するのかを定める基本的な方針
教育課程編成・実施の方針カリキュラム・ポリシー(CP)どのような教育課程と教育内容・方法で、学修成果をどう評価するのかを定める基本的な方針
入学者受入れの方針アドミッション・ポリシー(AP)どのように入学者を受け入れるかを定める基本的な方針で、受け入れる学生に求める学習成果(学力の 3 要素についてどのような成果を求めるか)を示すもの

学力の 3 要素は、知識・技能、思考力・判断力・表現力等の能力、主体性を持って多様な人々と協働して学ぶ態度です。ガイドラインは AP について、入学前にどのような能力をどのようにして身に付けてきた学生を求めるかを「できる限り具体的に示すこと」、評価方法をどう組み合わせ、どの程度の比重で扱うかも具体的に示すことを求めています。令和 9 年度大学入学者選抜実施要項(文部科学省、2026 年 5 月)も、抽象的な「求める学生像」だけでなく、高校段階までにどんな力を求め、それをどんな基準・方法で評価するのかを書くよう求めています。

入学希望者にとっての意義を、ガイドラインは「学びたい内容に照らして大学を選ぶことが可能となる」ことと説明しています。ただし例示された事項の全てを各大学に求める趣旨ではないとも断っており、AP の書き方や細かさは大学によって違います。

三つのポリシーの関係、アドミッション・ポリシーに書く内容、根拠となる法令と時期、読む手順 5 段を 1 枚にまとめた図。

図: 三つのポリシーと AP の中身・読む手順(作成: 大学カタログ編集部 / もとの資料: 学校教育法施行規則、文部科学省の三つの方針のガイドラインと令和 9 年度大学入学者選抜実施要項)

3 校の実例 AP の言葉と選抜の方法を並べる

国立・公立・私立から 1 校ずつ、2027 年度の要項で AP と評価の方法の両方が確かめられた学部を選びました。

福知山公立大学(公立・京都府)

福知山公立大学の入学者選抜要項は、AP を大学全体と学部ごとに載せ、その下に「学力の 3 要素」と選抜方法の対応表を付けています。大学全体の AP は「地域社会の発展に貢献する意欲や地域社会と協働する意志を持ち、主体的に学び考える力のある者」を受け入れるとします。地域経営学部はさらに「客観的に資料や文章を読む力やその理解を表す力」を望み、情報学部は「社会に貢献する情報技術のあり方について、自ら思考できる力と、その内容を表現し他者と共有できる力」を望みます。

同じ総合型選抜Ⅰでも、方法は学部で違います。地域経営学部(募集 6 名・試験日 10 月 10 日)は出願書類・面接・プレゼンテーションが各 100 点で、プレゼンテーションは「与えられた資料を読み解き」提案にまとめる課題です。情報学部(募集 5 名・試験日 10 月 11 日)は出願書類・面接・小論文が各 50 点で、小論文は「社会と情報技術の関係に関する出題」です。AP の言葉が、そのまま評価の説明に出てきます。

九州大学 農学部(国立・福岡県)

九州大学の総合型選抜Ⅱの募集要項は、学部ごとに AP を「求める学生像」「学力 3 要素との関係」「入学者選抜方法との関係(別表)」の順に載せています。農学部は、知識・技能に「大学での生物、化学、物理等の学習に必要な理系科目の充分な素養と基本的な英語力」、思考力等に「多面的に考え、客観的に批判し、自分の言葉で人に伝える資質」、主体性等に「農学関連分野への強い関心」を挙げます。

別表では、総合型選抜の知識・技能に共通テスト、思考力等に小論文と個人面接、主体性等に志望理由書・個人面接・調査書が対応します。一般選抜の行では思考力等が個別学力検査、主体性等が調査書で、総合型選抜では小論文と志望理由書・面接に変わります。面接(1 人 20 分程度)は「農学部で学ぶ適性能力及び勉学・研究に対する熱意」を評価します。配点は、第 1 次が調査書と志望理由書で各 150 点、第 2 次が小論文 300 点・面接 300 点・共通テスト 450 点です。総合型選抜でも共通テストを受ける点は、出願前に確かめてください。

関西学院大学 経済学部・理学部(私立・兵庫県)

関西学院大学の大学全体の AP は、「確かな基礎学力、活動や経験を通じて身に付けた資質、能力、学ぶ意欲など」を「多様な入試制度により多元的に評価する」と書いています。学部特色入学試験の要項に、学部の AP と審査方法があります。

経済学部は「学校内外での様々な活動に積極的に取り組んだ経験を通じて培われた多角的な視点や主体的な行動力を備え、かつ数学について一定の学力を有した学生」を募集します。書類審査は「主体性・多様性・協働性」、小論文は「知識・技能」と「思考力・判断力・表現力」を中心に評価し、「数学について一定の学力」は出願資格の数学の成績(5 段階評価で 4.0 以上か実用数学技能検定 2 級以上)にもなっています。理学部は、AP で「基礎的な知識、技能、思考力」に加えて「学びに向かう力・人間性」を持つ学生を評価する入試と説明し、書類審査のあと、面接で「志望の理由」「学ぶ意欲」「学びたい専門分野」を尋ねて「思考力・表現力」「主体性」を評価します。第二次審査は経済学部が 10 月 24 日、理学部が 10 月 31 日です。どちらも第一志望で、合格したら入学することが条件です。

3 校を並べて分かること

大学・選抜AP の言葉(原文から)選抜の方法と評価(原文から)
福知山公立大学 地域経営学部 総合型選抜Ⅰ資料や文章を読む力プレゼンテーション 100 点、面接 100 点、出願書類 100 点
福知山公立大学 情報学部 総合型選抜Ⅰ情報技術のあり方を自ら思考できる力小論文 50 点、面接 50 点、出願書類 50 点
九州大学 農学部 総合型選抜Ⅱ理系科目の素養と基本的な英語力、農学関連分野への強い関心共通テスト 450 点、小論文 300 点、面接 300 点、志望理由書・調査書 各 150 点
関西学院大学 経済学部 学部特色入学試験活動の経験、数学の一定の学力書類審査、小論文、面接、出願資格に数学の成績
関西学院大学 理学部 学部特色入学試験基礎的な知識・技能・思考力、学びに向かう力書類審査、面接、出願資格に成績・履修・英語

並べると、AP の言葉が大学や学部ごとに別の方向を向いていること、同じ大学でも学部で評価の方法が違うこと、AP の言葉の一部が配点や出願資格として選抜に組み込まれていることが分かります。

福知山公立大学、九州大学、関西学院大学の 5 学部について、アドミッション・ポリシーの言葉と、選抜の方法・配点・審査日程を並べた対応表。

図: 3 校の AP の言葉と選抜の方法(作成: 大学カタログ編集部 / もとの資料: 各大学の 2027 年度の要項)

アドミッション・ポリシーの読み方 5 つの手順

大学の公式の案内に AP の読み方の助言があれば引きたかったのですが、今回見た要項には見つかりませんでした。以下は、実例とガイドラインから組み立てた編集部の提案です。

  1. 大学全体と学部の AP を両方読む。 ガイドラインは、全学や学部・学科を単位に AP を定めることも考えられるとしています。福知山公立大学も関西学院大学も両方を載せています。
  2. DP・CP とあわせて読む。 ガイドラインは AP を DP・CP と一貫性のあるものとするよう求めています。AP の言葉が抽象的なときは、同じ学部の DP と CP を読むと、入学後の学びが見えます。
  3. 受ける選抜区分の評価の観点と照らす。 実施要項は、選抜区分ごとに評価・判定の方法を AP との関係で示すよう大学に求めています。九州大学の別表のように区分で行が分かれていれば、受ける区分の行を見て、評価の内容・配点・出願資格を AP の言葉の横に並べます。
  4. 言葉を書き出して、自分の経験と結びつける。 ノートに「AP の言葉」「評価される場面(書類か面接か)」「自分の経験で言えること」の 3 列を作ります。続きは志望理由書の記事の材料集めにつながります。
  5. 面接で話せる形にする。 書き出した経験を、評価の観点に沿って口で説明できるか試します。観点の例は面接の記事にあります。

高 3 は選抜区分の確認、高 2 は読み始めから

高 3 でこれから出願や審査がある人は、受ける選抜の要項で、出願資格、評価の内容と配点、AP との対応を確かめます。九州大学は共通テストを課し、関西学院大学の学部特色入学試験は専願が条件です。日程や併願の決まりは2027 年度の推薦・総合型選抜の記事にまとめました。

高 2 の人が受けるのは 2028 年度入試で、要項は 2027 年に各大学が発表します。方法や日程は年度で変わることがあるので、今年の要項は読み方の練習に使います。志望校の候補は大学の一覧から探し、好きな科目から学部を考えるときは科目のページから入れます。入試の種類は総合型選抜とはの記事で確かめられます。

よくある迷い

AP に選抜方法との対応が書かれていないときは。

実施要項は、AP に基づいて調査書や本人が書く資料をどう活用するかを募集要項等に明記するよう大学に求めています。募集要項の「選抜方法」「評価の内容」を読み、分からなければ大学の入試担当に問い合わせます(編集部の提案)。

学部がまだ決まっていません。

大学全体の AP を読み、気になる学部の AP を 2〜3 つ並べて、使われている言葉を比べます。福知山公立大学の 2 学部のように、同じ大学でも求める力の言葉が違います。

AP の言葉に合う経験がないときは。

編集部の考えです。経験を飾るより、これから何に取り組みたいかを学びの計画に書くほうが正直です。実施要項は、入学後に学びたい内容・計画を本人に書かせるとしています。