卒論の先行研究は、日本語の論文なら CiNii Research から探し始め、本文は J-STAGE や大学の機関リポジトリ、大学図書館の契約データベースで読み、引用のたどり方は Google Scholar で補うのが基本の使い分けです。各サービスの公式の案内と大学図書館のガイドで確かめて、探す手順と、本文が読めないときの手段をまとめました。卒論やレポートで先行研究を調べる大学生向けです。テーマの絞り方は卒論のテーマの決め方を、進め方の全体は卒論のスケジュールを見てください。

先行研究を最初に調べる理由

先行研究の調査とは、自分の研究したいテーマについて、どのような研究がすでに行われているかを把握することです。大阪大学総合図書館の講習資料は、その意義を二つ挙げています。一つは、分野の専門用語や研究史、調べ方を学ぶこと。もう一つは、自分のテーマが「新しい」ことを確かめて示すことです(大阪大学総合図書館「日本語文献探索のキソ」2025 年 6 月)。学習院大学図書館のガイドも、卒論では必ず先生から「先行研究を調べるように」と指示される、と書いています(学習院大学図書館「レポート・卒論は情報収集が9割 最強のガイドブック」第 11 版)。

先行研究がないテーマを選ぶなら、本当にそれで決めてよいかを先に先生に相談します。調べ方を間違えて見つからない場合もあるので、図書館のレファレンスカウンターにも相談できます(同ガイド)。

サービスごとの使い分け

サービス探せるもの本文の読みやすさ向いている使い方
CiNii Research(国立情報学研究所)論文・図書・雑誌・博士論文・研究データ・プロジェクトなど「本文リンクあり」で絞り込める。契約が要るものもある日本語文献の最初の入口
J-STAGE(科学技術振興機構)学協会の電子ジャーナル、会議録、研究報告など9 割以上の記事を無料で閲覧できる学会誌の論文の本文を読む
Google Scholar論文・学位論文・書籍・プレプリントなど、分野をまたいだ学術資料無料の版や図書館の契約へのリンクが出ることがある引用をたどる、新しい論文を探す
国立国会図書館サーチ・デジタルコレクション国立国会図書館の資料、雑誌記事、全国の図書館の所蔵絶版などの資料は個人送信で閲覧できる古い資料、紀要、図書の所在
学術機関リポジトリデータベース(IRDB)国内の大学等の機関リポジトリの論文・博士論文など「本文あり」で絞り込める大学の紀要・博士論文の本文
大学図書館の契約データベース大学ごとに異なる(分野別のデータベースなど)契約範囲内で読める分野に特化した検索、本文の入手

先行研究を探すサービスごとの探せるもの・本文の読みやすさ・向く使い方を 4 つの区画で並べ、下に探す 4 段と、本文が読めないときの手段を示した図

図: 先行研究を探すサービスの使い分けと、探す 4 段(作成: 大学カタログ編集部 / もとの資料: 国立情報学研究所・科学技術振興機構・Google・国立国会図書館・大学図書館のガイド)

CiNii Research

国立情報学研究所の説明では、CiNii Research は文献だけでなく研究データやプロジェクト情報などを横断して検索できるサービスです。以前は別々だったサービスが順に統合されました。論文の CiNii Articles は 2022 年 4 月 18 日、博士論文の CiNii Dissertations は 2024 年 12 月 9 日、大学図書館の本を探す CiNii Books は 2026 年 3 月に、CiNii Research に統合されています(国立情報学研究所「CiNiiについて」)。古い解説にある CiNii Articles・CiNii Books も、いまは CiNii Research で探せます。

論文の詳細画面には、参考文献と被引用文献(その論文を引用している文献)の一覧が出ます。ただし公式のヘルプは、この一覧が実際の論文の参考文献と必ずしも一致せず、CiNii Research で同定された分だけが表示されると注意しています(国立情報学研究所「論文詳細表示画面について」)。図書・雑誌の詳細画面には、所蔵している図書館の数と所蔵館の一覧が出ます。

大阪大学総合図書館の講習資料は、CiNii Research を単純なキーワード検索方式と説明しています。入力した語がタイトル・雑誌名・著者名に一致すれば出て、抄録は一部の論文だけ、本文は検索の対象外です。例では「選挙 動画」では出ない論文が、タイトルのとおり「選挙 ユーチューブ」と入れると出ます。同義語・類義語・上位語・下位語を変えて何度も検索するのはこのためです。

J-STAGE、Google Scholar、国会図書館、IRDB

J-STAGE は科学技術振興機構が運営する電子ジャーナルのプラットフォームで、人文・社会科学を含む国内の学術情報を載せています。発行機関は 2,400 を超え、4,000 誌以上が公開されています。公開されている記事の 9 割以上は無料で読めます。認証付き記事(発行機関に許可された人だけが読める記事)は例外です(科学技術振興機構「J-STAGEの概要」)。

Google Scholar は、公式のヘルプによると、論文・学位論文・書籍・プレプリントなどを分野をまたいで検索できます。検索結果の下に「Cited by」(その論文を引用した論文)と「Related articles」(似た論文)、「All versions」(ほかの版)が出ます。新しい論文は左のメニューの「Since Year」や「Sort by date」で絞ります。1 回の検索で表示できるのは 1,000 件までです。短い記事や、著者のない文書は含まれないことがあり、新しい論文は週に数回加わる一方、すでに載っている論文の情報の更新には 6〜9 か月から 1 年以上かかることがあるとヘルプにあります(Google Scholar「Search Help」、ヘルプの英語版を確認。日本語画面での表記は確かめていません)。

国立国会図書館サーチは、国会図書館の資料を検索して閲覧や複写を申し込めるほか、全国の図書館の所蔵資料も探せます。CiNii Research の収録元にも国会図書館の雑誌記事索引が入っています(国立情報学研究所「収録データベース一覧」2026 年 6 月 18 日現在)。国立国会図書館デジタルコレクションの個人向けデジタル化資料送信サービスは、絶版などで入手が難しい資料を自宅から見られる仕組みです。使えるのは、国会図書館の登録利用者(本登録)で、日本国内に居住し、利用規約に同意した人です。簡易登録の人と国外に居住の人は使えません。印刷もでき、1 回の操作で最大 100 コマまでです(国立国会図書館「個人向けデジタル化資料送信サービス」)。

学術機関リポジトリデータベース(IRDB)は、国内の大学等が自機関の成果を収集して公開しているデータベースを集めたものです(国立情報学研究所「収録データベース一覧」)。大学の紀要の論文などは、ここで本文が無料で読めることがあります。

探す手順 4 段

大阪大学と学習院大学の図書館のガイドを順に並べると、次の流れになります。

  1. キーワードを決める。 学習院大学のガイドは、類義語や上位・下位の語を考え、一般の言葉と学術用語が違う場合(例: 「大学」と「高等教育」)に注意するよう書いています。複数の語は、スペースで区切ると両方を含む検索(AND 検索)になります。思いつかないときは事典・辞書で調べます。
  2. 基本文献から入る。 大阪大学の資料は、初学者は事典・概説書・入門書から読み、専門的な論文より先に、テーマ全体を整理した基本文献から引用をたどると漏れが少ないとしています。レビュー論文は、題に「総説」「課題と展望」「現状と展望」「回顧と展望」などが付くことが多いと紹介しています。
  3. 引用をたどる。 参考文献リストをたどれば過去に遡れますが、新しい論文は見つかりません。そこで、その論文を引用した論文(被引用)を CiNii Research の詳細画面や Google Scholar の「Cited by」で見て、新しいものへ進みます。大阪大学のガイドは、被引用の確認に使えるデータベースとして Web of Science と Scopus を挙げています(大学の契約が要ります)。1 本の文献からだけでは漏れが出るので、複数の文献を起点にします。
  4. 記録する。 学習院大学のガイドは、参考文献リストの書誌情報を 1 文字ずつ入力せず、CiNii Research などの検索結果からコピーして貼るよう勧めています。Google Scholar は「Cite」から BibTeX・EndNote などの形式で書き出せます。どの語で、どのサービスで探したかも残しておくと(編集部の提案で、大学の決まりではありません)、先生に「ここまで調べました」と見せやすくなります。

本文が読めないときの手段

論文が見つかっても、本文が有料や契約の範囲外のことがあります。順に試す手段は次のとおりです。

大学の契約を学外から使う。 大阪公立大学図書館は、契約している電子資料を学内ネットワークから使えるほか、VPN 接続や学認(学術認証フェデレーション)で学外からも使えると案内しています(一部は除く。学内者限定)。大阪大学附属図書館は、データベース名の横の「Off Campus Access」から大学の個人 ID でログインする方法を示しています。方法は大学ごとに違うので、自分の大学図書館の「学外からの利用」のページを見てください。

文献複写を申し込む。 電子でも紙でも自校になければ、他大学などから論文のコピーを取り寄せられます(文献複写)。図書の現物を借りる方法(相互貸借)もあります。茨城大学図書館の案内では、申し込みに著者名・論文名・掲載誌名・巻号・ページ・ISSN などが要り、他大学からの取り寄せは 1 枚 35〜70 円程度に送料、到着は 3〜4 日、国立国会図書館からは 14〜20 日が目安です。雑誌の最新号は著作権法により複写を依頼できず、卒論・修論の複写には著者の許可が要ります。紀要や学会誌は無料公開されている場合があるので、依頼の前に検索するよう勧めています。料金や日数は大学ごとに違います。

雑誌名で所蔵を調べる。 大阪大学のガイドは、蔵書検索は論文の題名では出ないので雑誌名で調べ、載っている号が電子または紙で使えるか確かめるよう案内しています。

今週・今月にすること

  • 今週: 卒論のテーマ案から検索語を 5〜10 個書き出し、CiNii Research で検索する。ヒットした論文の詳細画面で、参考文献と被引用文献を見る。
  • 今月: 総説・概説書を 2〜3 本読み、書誌情報を一覧にして、指導教員に「ここまで調べた」と見せる。読めない論文は、大学図書館の学外アクセスか文献複写を確かめる。
  • 研究分野を見直したいときは、大学カタログの科目のページから学問分野の手がかりをたどれます。大学図書館の手順は大学ごとに違います。この記事で引いた大阪大学・大阪公立大学・茨城大学・学習院大学は一例です。

よくある迷い

Google Scholar だけで足りますか。

公式のヘルプは、Google Scholar が学術論文の検索であることを前提に、短い記事などが入らない場合があると書いています。日本語の論文は、大阪大学の資料も CiNii Research を入口に案内しています。J-STAGE や機関リポジトリもあわせて使ってください。

本文が見つからない論文は使えませんか。

本文を読めないまま引用はできません。大学の契約、機関リポジトリ、国会図書館の送信、文献複写の順に探しても読めなければ、先生や図書館のレファレンスカウンターに相談してください。

先行研究が多すぎて読み切れません。

大阪大学のガイドは、まず事典・概説書・総説から入って、基本文献を絞るよう勧めています。全部を読むのではなく、総説で全体を知り、自分の問いに近い論文を選びます。選び方は指導教員に聞くのが確実です。