小論文は、推薦型・総合型選抜でも、国公立大学の一般選抜の二次試験でも課されることがある試験です。何を書けば評価されるのかは、受ける人にいちばん見えにくい部分です。ところが、小論文の出題の意図や評価の観点を公式に公表している大学があります。この記事では、国立 2 校・公立 3 校の公表資料から原文の言葉を取り上げ、小論文で何が見られているのか、形式にどんな種類があるのか、どう準備するのかを整理します。推薦・総合型の小論文を 11 月以降に控える高 3 にも、2 月の二次試験に備える高 3・高 2 にも使える内容です。
国は小論文をどう位置づけているか
文部科学省の「令和 9 年度大学入学者選抜実施要項」(2026 年 5 月)は、入学志願者の「自らの考えを論理的・創造的に形成する思考・判断の能力」や「思考・判断した過程や結果を的確に、更には効果的に表現する能力」を含む能力・適性等を多角的に評価・判定するため、アドミッション・ポリシーに応じて小論文や面接などを活用することが望ましいとしています。一般選抜の説明でも、小論文は学力検査と並ぶ主な資料の一つです。
同じ項には、専ら教科・科目に係る知識を問う問題を小論文の形式で出すことにならないよう留意する、とも書かれています。大学が小論文を課すのは、知識の量とは別に、考える力と書く力を見たいからだと読めます。また、解答例等と出題の意図は原則として公表し、小論文のテーマも積極的に公表することが望ましいとされています。出題の意図が読めるのは、国がそう求めているからです。
5 校が公表している出題の意図と評価の観点
年度は大学ごとに違います。令和 7 年度は 2025 年度入試、令和 8 年度は 2026 年度入試、令和 9 年度は 2027 年度入試(2027 年 4 月入学)です。
神戸大学(国立・令和 7 年度後期日程)
神戸大学は、後期日程の小論文の「出題の意図・評価ポイント」を設問ごとに公表しています。文学部は「人文学系の長文を限られた時間内に正確に読み解く能力、および自らの考えを的確に表現する能力を問う」ことを狙いとし、問三は「読解力・発想力・構成力・表現力を問う総合的な問題」です。国際人間科学部の問三は、学科で目指す学びと成長について「メッセージの内容と対象が明確で説得力があり」、主体的なプレゼンテーションが作られているかを「思考力・表現力」として総合的に問うとしています。
令和 9 年度の入学者選抜要項では、文学部の小論文は「文学部の勉学に必要な理解力,思考力,表現力を試す問題」、グローバル文化学科は「資料を与えて論述させます」で、解答時間はどちらも 2 時間です。
宇都宮大学(国立・令和 8 年度前期日程)
宇都宮大学は、小論文の出題意図を学部・学科ごとに公表しています。国際学部は、国際援助を扱った記事を読ませ、「著者の説明を理解し要約できているかどうか」と「具体的な事例を根拠として、自身の議論を論理的に展開できているか」で評価したと書いています。後者には、解答者が援助に「賛成の立場であるか、あるいは、反対の立場であるかによらず」、論理的に言い表せているかを見る、という説明が付いています。
農学部エコロジカル社会経済学科は、要約の問いでは基礎学力を、解決策を提案させる問いでは「思考力、判断力、表現力」を評価するとしています。「解決策の根拠が論理的に示されているか」を見て、「主体性」も評価したという書き方です。
京都府立大学(公立・学校推薦型選抜)
京都府立大学は、過去 3 年分の学校推薦型選抜の問題と出題意図・採点基準を公表しています。令和 8 年度の文学部の問 1 は「英語長文の読解力と、その理解に基づいて自分の考えを正確な日本語で論理的に述べる能力を問う」もの、英語で答える問いは「自分の思考を明晰な英語を用いて論理的な文章へと構成し、他者に伝達する能力を問う」ものです。採点基準には「語彙力と着想」「構成・文法」「読みやすさ」が挙がっています。
令和 9 年度の要項では、小論文の試験時間は、日本・中国文化学科が小論文 1(英語の文章・資料)60 分と小論文 2(日本語の文章・資料)120 分、国際文化交流学科が英語の文章・資料による 120 分、社会科学部(公共政策学科・福祉社会学科)が 150 分です。
名寄市立大学(公立)
名寄市立大学は、過去問のページに小論文の評価の観点を載せています。学校推薦型選抜などでは、「課題文の趣旨を理解し、設問に指定字数以内で適切に答えているか」「設問に適切な根拠や理由をもって自らの意見を述べているか」「指定字数を守った文章であるか」「日本語の文章として正確・平明であるか」です。
令和 9 年度の入学者選抜要項では、一般選抜の個別学力検査等の配点は 4 学科とも小論文 160 点・個人面接 40 点です。学校推薦型選抜は配点比率が小論文 2 対 個人面接 1 で、個別学力検査等で大学の基準に達しなければ不合格になります。総合型選抜の栄養学科・看護学科は、図表読解(英文を含む)の小論文で「適切な根拠や理由をもって、指定字数の範囲内で自らの考えを正確・平明に論述する力」を見ます。
兵庫県立大学 理学部(公立・学校推薦型選抜)
兵庫県立大学は、令和 8 年度の理学部の小論文について、理科の課題 6 題から 2 題を選び、それぞれ 500 字以内で書く形式だと公表しています。出題の意図は、数学・理科などの基礎学力を備えていることを前提に、課題の意図を「指定された字数にて正確に正しい日本語にて表現、記述できるか」を問う、というものです。令和 9 年度の要項は、小論文で「理学部に適性を有するかどうか」を見ると説明しています。
形式の種類と、大学の言葉に共通する力
| 形式 | 大学の例(年度) | 資料に書かれていること |
|---|---|---|
| 資料・図表の読解と論述 | 神戸大学 グローバル文化学科(令和 9 年度)・名寄市立大学 栄養・看護学科 総合型(令和 9 年度) | 資料や図表から根拠を取って書く。神戸は 2 時間 |
| 課題文の読解と意見・提案 | 宇都宮大学 国際学部・農学部(令和 8 年度) | 要約したうえで、具体例や解決策を論理的に書く |
| 英語の文章を読む | 京都府立大学 文学部(令和 8・9 年度) | 英語長文の読解と論述。60〜120 分 |
| 理科の課題について書く | 兵庫県立大学 理学部(令和 8 年度) | 6 題から 2 題選び、各 500 字以内 |

図: 小論文の形式・大学が書く評価の観点・準備の 5 段(作成: 大学カタログ編集部 / もとの資料: 文部科学省の実施要項と各大学の公表資料)
評価の言葉は違っても、共通して出てくる力は 3 つに分けられます。
- 読み取る力: 神戸の「読解力」、宇都宮の「理解し要約できているか」、名寄の「課題文の趣旨を理解し」。
- 根拠を示して考える力: 宇都宮の「具体的な事例を根拠として」、名寄の「適切な根拠や理由をもって」。結論だけでなく、なぜそう言えるかを書く力です。
- 伝わる形に書く力: 神戸の「表現力」「構成力」、京都府立の「構成・文法」「読みやすさ」、名寄の「指定字数」「正確・平明」。
準備の手順 5 段(編集部の提案)
ここからは編集部の提案で、大学が準備の方法を示した言葉ではありません。
- 過去問と出題の意図を探す。志望校の入試情報のページで「過去問」「出題意図」を探します。なければ、要項の時間・字数・形式を書き出します。
- 時間と字数を守って 1 本書く。形式は大学で違うので、要項どおりの条件で書きます。
- 大学の観点で自分の答案を点検する。「要約できているか」「根拠を示したか」「字数を守ったか」を 1 つずつ確かめます。
- 先生に読んでもらう。観点の一覧を渡して、どこで読み手が止まったかを聞きます。
- 志望理由書・面接とそろえる。小論文は書類や面接と組み合わせて評価されます。志望理由書と面接の記事も確認してください。
小論文が何を見る試験として置かれているかは、アドミッション・ポリシーの選抜方法の欄に出ます(読み方の記事)。サンプル問題を公開している例は公立はこだて未来大学です。志望校探しは大学の一覧からどうぞ。
よくある迷い
過去問や出題の意図を公表していない大学は、どうすればよいですか
募集要項の選抜方法の欄にある時間・字数・形式と、アドミッション・ポリシーの言葉が手がかりです。京都府立大学のように「理解力、思考力、表現力、読解力等を問う」と要項に書く大学もあります。公表の場所は、学校の先生や大学の入試係にも聞けます。
知識が少ないと不利になりますか
実施要項は、知識だけを問う小論文にならないよう求めています。一方、兵庫県立大学の理学部のように、理科の基礎学力を前提にした出題もあります。志望学部の出題の意図を読んで、どちらの性格かを確かめてください。
例文や模範解答を覚えればよいですか
大学が書く観点は、出された問いに根拠をもって答えているか、字数を守っているか、といった内容です。例文を覚えるより、問いの中身に応じて考えを組み立てる練習のほうが、大学の言葉に合うと編集部は考えます。
出願や試験の日程は、出願資格とあわせて志望校の最新の要項で確かめてください。
