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図 1 建築学の広がり建築学の広がり 4

材料・施工・法規

建物を何で作り、どんな手順で建てるのか。そして安全と健康を守るために、どんな決まりがあるのかを学ぶ分野です。建築材料、施工、建築生産、建築法規を学びます。

クレーンが動く工事現場で、木の骨組みとコンクリートの基礎を確かめるヘルメット姿の学生たちと、手前の机に広げた図面と階段の模型

ひとことで言うと

料理は、材料と段取りと衛生のルールで決まる

おいしい料理には、よい材料、手際のよい段取り、そして食中毒を防ぐ衛生のルールが欠かせません。建物も同じです。材料の性質を知り、工事の手順を組み立て、法律の決まりを守って、はじめて安全な建物ができあがります。

01

建築材料: コンクリートは乾いて固まるのではない

建物のおもな材料は、木、コンクリート、鉄です。木は軽くて加工しやすく、鉄は引っ張る力にも押す力にも強い材料です。コンクリートは、セメントに水や砂、砂利を混ぜたもので、型に流し込めばどんな形にもなります。

意外なことに、コンクリートは乾燥して固まるのではありません。セメントと水が化学反応(水和)を起こして固まります。そのため、固まる途中で乾きすぎたり冷えすぎたりすると、十分な強さが出ません。建築基準法施行令は、打ち込んでから 5 日間、コンクリートの温度を 2 ℃ 以上に保つよう求めています。乾燥や振動で固まるのを妨げないように守ることを、養生と呼びます。

強さは、打ち込んでから 4 週間たったときに、押しつぶして確かめるのが基本です。鉄筋コンクリートに使うコンクリートは、この 4 週の強さが 1 mm² あたり 12 N 以上でなければなりません。

木は、乾くと縮み、湿ると膨らみます。木造の 1 階の床を地面から 45 cm 以上の高さにする決まり(床下をコンクリートで覆う場合などを除く)も、床下の湿気から木を守るためのものです。

材料の性質を知ると、作り方の決まりの理由が分かります。

図解おもな建築材料の性質

木

  • 軽くて加工しやすい
  • 湿気で縮んだり膨らんだりする

コンクリート

  • 押す力に強く、形を自由にできる
  • 水との化学反応で固まる

鉄

  • 引っ張る力にも強い
  • さびや火の熱には弱い
組み上がったばかりの木造住宅の骨組み。新しい木の柱と梁が組まれ、屋根の下地の木材が並んでいる
柱や梁を組み上げた木造住宅の骨組み。木材どうしは、金物のピンでつないでいます。写真: メルビル(CC BY 3.0・Wikimedia Commons)

02

施工: 現場で建物ができるまで

設計図ができても、すぐには工事を始められません。まず、図面が法律に合っているかを、役所や指定確認検査機関が審査する建築確認を受けます。工事が始まると、地盤を調べて基礎をつくり、柱や梁の骨組み、屋根や外壁、設備や内装へと進みます。完成後の検査に合格して、ようやく使えるようになります。

職人さんたちと一緒に工事を進めるのが、建設会社の施工管理の仕事です。品質・費用・工程(スケジュール)・安全を管理し、その日の作業の手順や危ない場所を、現場の人たちと確かめ合います。多くの人と材料が出入りする現場の段取りを組み立てる役目です。

工事現場の囲いには、建築確認を受けたことを示す表示板が掲げられています。建築基準法で、建築主・設計者・工事施工者などの名前とあわせて、見やすい場所に示すよう決められているからです。

現場のデジタル化も進んでいます。2026 年 4 月からは、建物を 3 次元のデータで表す BIM を使った建築確認の審査が始まりました。図面どうしの食い違いを確かめる手間が減り、審査の期間を短くできると期待されています。

建物は、たくさんの人の段取りと確認を重ねてできあがります。

図解建物ができるまで

  1. 1設計図面と計算書をまとめる
  2. 2建築確認法律に合っているか審査を受ける
  3. 3基礎と骨組み地盤を調べ、柱や梁を組む
  4. 4屋根・外壁・設備雨を防ぎ、電気や水を通す
  5. 5完了検査検査に合格して使い始める
青空に向かって伸びる、赤と白のタワークレーン数基と、建設中のビルの最上部
東京・二子玉川駅の東側の再開発の工事現場。タワークレーンで、鉄骨などの資材を高い所まで運びます。写真: Volfgang(CC BY-SA 3.0・Wikimedia Commons)

03

建築法規: 家の階段が学校より急なわけ

建築基準法は 1950 年にできた法律で、建物の敷地・構造・設備・用途について最低の基準を決めています。目的は、人の命・健康・財産を守ることです。建物そのものの安全についての決まりと、まちの中での建て方についての決まりがあります。

身近な例が階段です。建築基準法施行令は、1 段の高さ(蹴上げ)と奥行き(踏面)の限度を、使う人に合わせて決めています。小学校の児童用は蹴上げ 16 cm 以下・踏面 26 cm 以上、中学校・高校の生徒用は 18 cm 以下・26 cm 以上です。住宅の階段は、23 cm 以下・15 cm 以上でよいとされています。家の階段が学校より急なのは、このためです。

窓の大きさにも決まりがあります。採光に有効な窓の面積は、学校の教室で床面積の 5 分の 1 以上、住宅の部屋で 7 分の 1 以上が原則です。この決まりを満たさない部屋は、不動産の広告で「納戸」などと表示しなければなりません。間取り図の納戸は、広さがあっても窓の決まりを満たしていないことがある部屋です。

決まりの数字には、使う人の安全と健康を守る理由があります。

図解階段の寸法の決まり(建築基準法施行令)

小学校(児童用)

  • 蹴上げ 16 cm 以下
  • 踏面 26 cm 以上

中学校・高校

  • 蹴上げ 18 cm 以下
  • 踏面 26 cm 以上

住宅

  • 蹴上げ 23 cm 以下
  • 踏面 15 cm 以上

04

大学での学び方と、その先の仕事

多くの大学では、3 年生ごろに建築材料の実験、施工、建築法規を学びます。材料の実験では、コンクリートを練って型に詰め、固まったあとに押しつぶして強さを測ることがあります。内容は大学によって異なります。

建築法規と施工は、一級建築士の試験の科目でもあります。工事現場の見学や、夏休みのインターンシップで現場を経験する機会を設けている大学もあります。

この分野を学んだ人は、建設会社の施工管理や技術開発、建材メーカーでの材料の開発、役所や指定確認検査機関で図面を審査する仕事などに進みます。

クイズ材料・施工・法規のクイズ

本文を思い出しながら答えてください。

  1. Q1コンクリートが固まるしくみとして正しいのは?

  2. Q2中学校・高校の生徒用の階段で、1 段の高さ(蹴上げ)の上限は?

  3. Q3学校の教室で、採光に有効な窓の面積は、床面積の何分の 1 以上が原則?

0 / 3 問に回答

高校生のうちに試せること

  • 家と学校の階段を測る

    メジャーで家と学校の階段の蹴上げと踏面を測り、建築基準法施行令の第 23 条の数字と比べましょう。上りやすさの感じ方もメモしておくと、寸法と体の感覚が結びつきます。

    e-Gov 法令検索 建築基準法施行令
  • 工事現場の表示板を読む

    通学路の工事現場で、建築確認の表示板を探しましょう。建築主や設計者、工事をする会社の名前が書かれています。完成するまで、ときどき外から工事の進み方を見比べてみてください。

  • 間取り図で「納戸」を探す

    新聞の折り込みチラシや不動産サイトの間取り図で、「納戸」や畳の数の表示を探しましょう。窓の位置と部屋の広さを見比べると、法律の決まりが間取りにどう表れるかが分かります。

「材料・施工・法規」に関連するコミュニティ

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よくある質問

建築法規は、法学部で学ぶ法律と何が違いますか?

建築法規では、法律の文章を図面に当てはめて、建物の高さや窓の大きさ、階段の寸法が決まりに合うかを確かめます。計算や作図をともなうのが特徴です。多くの大学では、建築学科の授業として学びます。

工事の現場で働くための資格には、どんなものがありますか?

建築士のほかに、工事の現場を管理する国家資格として建築施工管理技士があります。2024 年度から、1 級の第一次検定は 19 歳以上なら受けられるようになりました。2 級の第一次検定は、以前から 17 歳以上なら受けられます。