図 1 建築学の広がり建築学の広がり 5
都市・まちづくり
一つひとつの建物から視野を広げ、まち全体の土地の使い方や、災害に強いまち、古い町並みの生かし方を考える分野です。都市計画、まちづくり、防災・復興、保存・再生を学びます。

ひとことで言うと
席替えにも、みんなが困らないルールがいる
席替えで背の高い人が前に集まると、後ろの人は黒板が見えなくなります。まちも同じで、高い建物が好きな場所に建つと、隣の家の日当たりや静かさが失われます。都市計画は、まち全体を見渡して、何をどこに、どのくらいの大きさで建てるかのルールを決めます。

01
都市計画: 上の階が斜めに削られた建物のわけ
都市計画では、まちを住宅地・商業地・工業地などに分けて、それぞれに建てられる建物の種類を決めます。これを用途地域と呼び、いまは 13 種類あります。静かな住宅地に大きな工場が建たないのは、この決まりがあるからです。
建物の大きさにも決まりがあります。敷地の面積に対して、建物が地面を覆う面積の割合を建ぺい率、各階の床面積の合計の割合を容積率と呼びます。低層の住宅地では、建物の高さそのものも 10 m か 12 m までに制限されます。
住宅地を歩くと、上の階が斜めに削られたような形の建物を見かけます。道路や北側の土地の日当たりと風通しを守るための、斜線制限という決まりによる形です。さらに、冬至の日の午前 8 時から午後 4 時までに、まわりの土地へ一定の時間以上の日影を落とさないようにする日影規制もあります。冬至は 1 年でいちばん太陽が低く、影が長くなる日です。
まちの形には、隣どうしの暮らしを守るルールが表れています。
図解北側斜線で高さを考える(低層の住宅地)
- 1決まり: 5 m + 1.25 × 境界までの距離
- 25 m + 1.25 × 4 m = 10 m
- 3境界に近づくほど、建てられる高さは低くなる

02
防災と復興: 小学校の隣に公園があるわけ
1923 年 9 月の関東大震災では、東京や横浜を中心に、約 37 万棟の住宅が火災や倒壊などの被害を受けました。翌年 1 月に決まった帝都復興計画では、約 3,300 ha の土地区画整理を行い、道路や公園を整えました。昭和通りのような広い道路や、隅田公園、横浜の山下公園も、このときにつくられました。
小学校は燃えにくい鉄筋コンクリート造で建て直され、その隣には「復興小公園」が設けられました。東京で小学校と公園が隣り合っている場所の中には、このときの計画が受け継がれているものがあります。横浜の山下公園は、震災のがれきを埋め立てて造られた公園です。
防災の都市計画は、いまも続いています。燃えにくい建物への建て替え、避難に使える広い道路や公園の整備、津波の浸水を避ける高台への移転などです。都市計画の研究者や自治体の職員は、過去の災害の記録とシミュレーションをもとに、次の災害に備えたまちを考えます。
災害の教訓は、道路や公園の配置としてまちに残っています。
図解関東大震災から復興まで
- 11923 年 9 月関東大震災で住宅約 37 万棟が被害
- 21924 年 1 月東京市・横浜市の復興計画が決まる
- 3区画整理約 3,300 ha で道路と公園を整える
- 41930 年 3 月東京市の復興事業がほぼ終わる

03
保存・再生: 町並みを守り、使い続ける
古い建物をこわさずに、手を入れながら使い続けるのも、まちづくりの大切な方法です。1975 年の文化財保護法の改正で、城下町・宿場町・門前町などの町並みを、まとまりとして守る制度ができました。国が選ぶ重要伝統的建造物群保存地区は、2026 年 9 月 4 日現在、107 市町村の 130 地区です。
長野県の妻籠宿は、江戸時代に中山道の宿場町として栄えた町です。全国に先がけて町並みの保存運動が行われ、1976 年に、国が初めて選んだ重要伝統的建造物群保存地区の一つになりました。住民は家や土地を「売らない・貸さない・こわさない」という 3 原則を守り、暮らしを続けながら町並みを伝えています。
保存は、昔のまま止めておくことではありません。古い商家を店や宿に改修したり、耐震補強をしたりして、いまの暮らしに合わせて使い続けます。建物の調査、修理の設計、新しい使い方を考えるリノベーションには、建築史・構造・計画の知識がすべて生きてきます。
古い町並みは、住む人が手入れを続けることで、生きた町として残ります。


04
まちを描く仕事と、3D の都市モデル
都市計画やまちづくりを学んだ人は、市役所や県庁、国の都市計画の担当、まちづくりのコンサルタント、駅前の再開発を手がける会社などで働きます。住民の意見を聞く会を開き、模型や地図を囲んで話し合いながら計画をまとめるのも、大切な仕事です。
道具も変わってきました。PLATEAU(プラトー) は、国土交通省が進める取り組みです。日本全国の建物を立体で表した 3D 都市モデルを整え、オープンデータとして公開しています。防災の検討や、まちの計画づくりに使われています。
大学では、まちを歩いて建物や人の流れを調べ、地図に描き出す演習があります。地域の人と一緒に、空き家の活用や公園の使い方を考える研究室もあります。
高校生のうちに試せること
自分の住む場所の用途地域を調べる
多くの市区町村は、都市計画図をウェブの地図で公開しています。家や学校のある場所の用途地域、建ぺい率、容積率を調べ、まわりの建物の高さと比べましょう。
PLATEAU VIEW で町を 3D で見る
ブラウザで、建物を立体で表した地図を見られます。整備されている都市は限られるので、近くの都市から探してみましょう。視点を回すと、建物の高さの違いや、川と町の位置関係が見えてきます。
PLATEAU VIEW重要伝統的建造物群保存地区を歩く
文化庁の一覧から、近くの町並みを探しましょう。屋根の形、格子、道幅に注目して歩くと、町の成り立ちが見えてきます。
文化庁 伝統的建造物群保存地区
「都市・まちづくり」に関連するコミュニティ
研究室・部活・サークルなど、全国の 58 件から探せます。

雪氷学研究室
新潟大学(新潟県)
災害・復興科学研究所・雪氷学・河島 克久
豪雪や雪崩など雪氷災害の仕組みを現地調査で解明し、危険度評価や対策技術を開発する。
本間研究室
熊本大学(熊本県)
工学部 土木建築学科 建築学教育プログラム・都市計画・本間 里見 教授
都市計画と都市デザイン、まちづくりを研究する。

都市計画学研究室
九州大学(福岡県)
都市・建築学・ZHAO SHICHEN 教授

水文地質学研究室
新潟大学(新潟県)
災害・復興科学研究所・水文地質学・渡部 直喜
地下水の温度や化学・同位体組成から、地すべりや斜面崩壊が多い山地の水の動きを探る。

都市計画研究室
横浜国立大学(神奈川県)
都市科学部 建築学科・都市計画・都市デザイン・野原卓 教授
まちなかの再生や郊外の空き家活用など、これからの都市を計画する。

共生都市計画学領域
大阪大学(大阪府)
工学研究科環境エネルギー工学専攻・共生都市計画学・紀伊 雅敦 教授
よくある質問
都市計画は、建築学科と土木工学科のどちらで学べますか?
どちらでも学べます。建築学科では建物の集まりとしての町並みや住まいから、土木工学科では道路や鉄道、河川などの社会基盤から考えることが多くなります。都市工学科など、都市を名前に含む学科を置く大学もあります。
まちづくりには、建築を学んでいない人も関わりますか?
住民、商店街の人、行政の職員、NPO など、多くの人が関わります。建築を学んだ人は、話し合った内容を図面や模型にして、だれにでも分かる形で示す役目を担うことが多くあります。


