図 1 建築学の広がり建築学の広がり 1
計画・設計・歴史
人がどう動き、どう過ごすかを調べて、建物の間取りや大きさを決める分野です。図面と模型で考えを形にし、古い建物から設計の知恵を学びます。建築計画・設計製図・建築史・空間デザインを学びます。

ひとことで言うと
模様替えは、人の動きに合わせて考える
部屋の模様替えでは、ドアの開く向きや、机までの通り道を考えて家具を置きます。建築の計画と設計は、これを建物全体で行う仕事です。どこでだれが何をするかを考え、部屋の大きさとつながり方を決めていきます。

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建築計画: 人の動きから大きさを決める
建築計画は、使う人の動きや過ごし方を調べて、部屋の大きさや並べ方を決める分野です。学校なら、休み時間に生徒がいっせいに廊下へ出ても混み合わない幅が必要です。建築基準法施行令では、両側に教室がある学校の廊下の幅を 2.3 m 以上と決めています。
車いすを使う人のための寸法もあります。国土交通省の建築設計標準では、車いすで通り抜けるには幅 90 cm、その場で 1 回転するには直径 150 cm の円が入る広さを目安にしています。駅などの車いす用のトイレが広いのは、中で向きを変えられるようにするためです。
日本の住まいには、畳という昔からの物差しがあります。ただし畳の大きさは地域によって違い、同じ 6 畳でも広さは同じではありません。そこで不動産の広告で畳の数を書くときは、畳 1 枚を 1.62 m² 以上として数える決まりになっています。
こうした寸法が分かると、図面を見ただけで、部屋の使いやすさを想像できるようになります。人の体と動きの寸法を知ることが、設計の出発点です。
建物の大きさは、そこで過ごす人の体と動きから決まります。
図解車いすのための寸法の目安
- 190 cm車いすで通り抜けられる
- 2120 cm車いすで通路を進める
- 3150 cmその場で 1 回転できる
- 4180 cm車いすどうしですれ違える

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設計製図: 図面と模型で考えを伝える
多くの大学の建築学科では、1・2 年生から設計製図(設計演習)の授業があります。住宅、図書館、小学校など、課題は毎回変わります。実際の敷地を歩いて調べ、そこに建てる建物を数週間かけて設計します。
考えを伝える道具は、図面と模型です。建物を水平に切って上から見た平面図、縦に切った断面図、外から見た立面図をそろえると、形が正確に伝わります。住宅なら 100 分の 1 や 50 分の 1 の縮尺で描き、白い板で模型を作ります。CAD や 3D のソフトも使います。
途中では、スケッチや模型を先生に見せて相談するエスキスをくり返します。最後は講評会です。図面を壁に貼って模型を並べ、自分の案を数分で説明して、先生や招かれた建築家から意見をもらいます。ほかの学生の案と講評を聞くことも、大きな学びになります。
絵が上手でなくても心配はいりません。線の引き方や模型の作り方は、入学してから基礎を学びます。大切なのは、だれのために何をつくるのかを、言葉と図で説明できることです。
設計は、手を動かして形にし、人に説明して磨いていく学びです。
図解設計課題の進み方
- 1課題が出る住宅・図書館・学校など
- 2敷地を調べる歩いて、測って、写真を撮る
- 3エスキススケッチと模型で先生に相談
- 4図面と模型平面図・断面図・立面図をそろえる
- 5講評会案を発表して意見をもらう

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建築史: 和室のルーツは 500 年以上前の四畳半
建築史は、昔の建物がいつ、どのように建てられ、なぜその形になったのかを調べる分野です。古い記録や図面を読み、実物の柱や屋根の組み方を測って確かめます。
たとえば、畳を敷き詰めた和室の元をたどると、京都の銀閣寺(慈照寺)にある東求堂に行き着きます。1486 年に完成した国宝の建物です。中にある同仁斎は、室町幕府の将軍・足利義政の書斎だった四畳半の部屋です。現存する四畳半の書院造では、最も古いものとされます。
同仁斎には、畳の床、造り付けの机(付書院)、段違いの棚(違い棚)があります。書院造は江戸時代の住まいの中心となり、いまの和室の基本になりました。ふだん何気なく使う和室にも、500 年以上前の工夫が受け継がれています。
建築史の知識は、文化財の建物の修理や、古い町並みを生かした新しい設計にも使われます。過去の建物を知ることは、これからの建物を考える手がかりになります。
いま当たり前の部屋の形にも、長い歴史があります。
図解畳の部屋の移り変わり
寝殿造(平安)
- 床は板張り
- 畳は座る所に置いて使う
書院造(室町〜)
- 畳を部屋に敷き詰める
- 付書院や違い棚を備える
いまの和室
- 畳・障子・ふすま
- 書院造の形を受け継ぐ


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空間デザインと、その先の仕事
同じ広さの部屋でも、天井の高さ、窓の位置、床や壁の素材を変えると、印象は大きく変わります。建築基準法施行令では、居室(住む・働く・学ぶなどに使う部屋)の天井の高さを 2.1 m 以上と決めています。そのうえで、どのくらいの高さにし、光をどこから入れるかを考えるのが空間デザインです。
この分野を学んだ人の多くは、設計事務所や建設会社、住宅メーカーで、建物の形と使い方をまとめる意匠設計に進みます。構造や設備の担当者と相談しながら、一つの建物をまとめ上げる役目です。インテリアや、店舗・展示の空間づくりに進む人もいます。
研究室では、さまざまな研究が行われています。病院や学校の使われ方を観察して次の設計に生かす研究、古い町家や寺社の調査、子どもや高齢者の住まいの研究などです。卒業設計では、調べたことをもとに、自分で選んだ敷地とテーマで一つの建物を設計します。
高校生のうちに試せること
自分の部屋の平面図を描く
メジャーで部屋の縦と横、窓やドアの位置を測り、方眼紙に 50 分の 1 の縮尺で描きましょう。家具も同じ縮尺で切り抜いて置くと、模様替えの案を何通りも試せます。
文化遺産オンラインで近くの古い建物を探す
文化庁の文化遺産オンラインでは、国宝や重要文化財などを、地域や時代から探せます。近くの古い建物を見つけたら実際に出かけて、屋根の形や柱の太さ、部屋の広さを観察しましょう。
文化遺産オンラインオープンキャンパスで製図室をのぞく
建築学科のオープンキャンパスでは、学生の図面や模型の展示を見たり、製図室を見学したりできることがあります。内容は大学によって異なるので、各大学の案内で確かめましょう。
「計画・設計・歴史」に関連するコミュニティ
研究室・部活・サークルなど、全国の 97 件から探せます。
都市・建築計画学
広島大学(広島県)
先進理工系科学研究科 建築学プログラム・建築学・田中 貴宏 教授
都市環境、GIS、福祉施設などを研究している。

建築史・建築芸術研究室
横浜国立大学(神奈川県)
都市科学部 建築学科・建築史・大野敏 教授
国内外の歴史的建築や都市を調べ、保存や地域づくりに生かす。
空間デザイン講座
神戸大学(兵庫県)
建築学
建築史学分野
京都大学(京都府)
工学研究科建築学専攻・建築史学
大西研究室
熊本大学(熊本県)
工学部 土木建築学科 建築学教育プログラム・建築情報・建築設計・大西 康伸 教授
BIMやVR、自動設計などデジタル技術を使った設計の方法を研究する。
建築設計学分野
京都大学(京都府)
工学研究科建築学専攻・建築設計学
よくある質問
絵や美術が苦手でも、設計の授業についていけますか?
線の引き方、図面の描き方、模型の作り方は、入学してから基礎を学びます。上手な絵よりも、だれのために何をつくるのかを考え、言葉と図で説明する力が大切です。手描きのスケッチは、くり返すうちに慣れていきます。
建築史は、文学部の歴史学と何が違いますか?
古い記録を読むところは共通しています。建築史ではそれに加えて、実物の建物を測ったり、柱や屋根の組み方を調べたりして確かめます。調べた結果は、文化財の修理や町並みの保存にも生かされます。


