図 1 教育学の広がり教育学の広がり 2
学びと発達
人はどうやって分かるようになり、できるようになるのか。子どもの考え方は、年齢とともにどう変わるのか。心理学の知見を手がかりに、一人ひとりの学びと育ちを支える方法を考える分野です。

ひとことで言うと
自転車の補助輪は、いつ外す?
自転車の練習では、最初は補助輪や大人の手で支え、乗れるようになったら少しずつ手を離します。早すぎると転び、遅すぎると自分で乗る力が育ちません。学びと発達の分野は、どこまでを本人に任せ、どこを支えるかを、子どもの育ちに合わせて考えます。

01
教育心理学: 「ちょうどいい難しさ」で伸びる
簡単すぎる問題ばかりでは退屈し、難しすぎると投げ出したくなります。教育心理学は、人がどんな条件でよく学べるのかを、実験や観察で調べる分野です。
旧ソ連の心理学者ヴィゴツキー(1896〜1934 年)は、子どもが一人でできることと、大人や友だちの助けがあればできることの間に注目しました。この間の範囲を最近接発達領域と呼びます。教えることが力を伸ばすのは、この範囲だという考え方です。
1976 年には、アメリカの心理学者ブルーナーらが、学ぶ人を少しずつ支え、できるようになったら手を引いていく関わり方を「足場かけ」と呼びました。部活の先輩が、最初は横で手本を見せ、慣れてきたら見守るだけにするのも同じ形です。
支えるのは、一人ではまだできないけれど、助けがあればできる所です。
図解足場かけの進め方
- 1やって見せる先生や先輩が手本を示す
- 2一緒にやるつまずく所だけ手を貸す
- 3見守るヒントは最小限にする
- 4一人でできる支えを外し、次の課題へ

02
発達と学習: 子どもには、子どもの考え方がある
同じ量のジュースを、低く広いコップから細長いコップに移します。「どちらが多い?」と聞くと、幼い子の多くは「細長いほう」と答えます。スイスの心理学者ピアジェ(1896〜1980 年)は、こうした実験を重ね、子どもの考え方には発達の段階があると考えました。
形を変えても、量は変わらない。このことが分かることを「保存」と呼びます。ピアジェによると、見た目に引きずられずに保存が分かるようになるのは 7 歳ごろからです。子どものまちがいの理由が分かると、「何度言っても分からない」ではなく、「どう見えているのか」から教え方を考えられます。
ピアジェの考えには、その後の研究で見直しも加えられています。質問の仕方を工夫すると、もっと幼い子でも正しく答えることがあると分かってきたからです。大学では、古典となった実験と、その後の研究による見直しをセットで学びます。
子どものまちがいには、その年齢ならではの理由があります。
図解ジュースの量の実験
- 1子どもの前で、片方を細長いコップに移す
- 2「どちらが多い?」と聞く
- 3幼い子は「細長いほう」と答えやすい

03
幼児教育: 遊びの中に学びがある
1840 年、ドイツのフレーベルは、子どもが遊びを通して育つ場として幼稚園(キンダーガルテン)を開きました。世界で最初の幼稚園とされています。日本では 1876 年(明治 9 年)11 月 16 日に、東京女子師範学校附属幼稚園(いまのお茶の水女子大学附属幼稚園)が開園しました。日本で最初の幼稚園とされています。
いまの幼稚園教育要領も、幼児期の教育は遊びを通しての指導を中心にすると定めています。積み木を高く積もうとして崩れる体験は、重さやバランスを体で知る学びです。友だちとおもちゃの順番を決める経験は、話し合いの第一歩でもあります。
幼稚園は文部科学省、保育所と認定こども園はこども家庭庁が受け持っています。2019 年 10 月からは、幼稚園・保育所・認定こども園などを使う 3〜5 歳児クラスの子どもの利用料が無料になりました。大学では、こうした制度の違いと、それぞれの場での保育の質の高め方も学びます。
遊びは、幼児にとっていちばん大事な学びの時間です。
図解幼稚園・保育所・認定こども園
幼稚園
- 学校の一つ(3 歳から)
- 文部科学省が受け持つ
保育所
- 児童福祉施設(0 歳から)
- こども家庭庁が受け持つ
認定こども園
- 教育と保育を一体で行う
- こども家庭庁が受け持つ


04
特別支援教育: 学び方の違いに合わせる
2007 年 4 月、改正された学校教育法のもとで特別支援教育が始まりました。盲学校・聾学校・養護学校は特別支援学校にまとめられ、小中学校の特殊学級は特別支援学級に名前が変わりました。LD(学習障害)や ADHD なども含め、通常の学級にいる子どもへの支援も求められるようになりました。
学ぶ場は 3 つあります。障害の程度が比較的重い子が通う特別支援学校と、小中学校の中にある特別支援学級。そして、通常の学級に在籍しながら、週に何時間か別の場で指導を受ける通級による指導です。2018 年度からは、高校でも通級による指導が受けられるようになりました。
特別支援学級で学ぶ小中学生は、2024 年度に 39 万 4,785 人で、10 年前(2014 年度)の約 2 倍です。通級による指導を受けた子どもも、2023 年度に 20 万人を超えました。数が増えた理由は 1 つではなく、大学でもデータをもとに議論されるテーマです。
点字の教科書や、文字を読み上げるタブレットなど、学び方に合わせた道具も増えています。どの子にも分かりやすい授業を考えることは、支援が必要な子だけでなく、クラス全員の学びやすさを考えることにもつながります。

高校生のうちに試せること
「足場かけ」を後輩に試す
部活や習い事で後輩に教えるとき、「やって見せる」「一緒にやる」「見守る」の 3 段階を意識してみましょう。どの段階で手を離すとうまくいくかを記録すると、足場かけの考え方が実感できます。
量の実験を家族と試す
家の人の了解を得て、小さなきょうだいや親戚の子に、ピアジェの量の実験をしてみましょう。同じ量の水を形の違うコップに移して「どちらが多い?」と聞きます。答えだけでなく、そう考えた理由も聞くと発見があります。
学校での支援の実践例を読む
国立特別支援教育総合研究所の「インクルDB」では、学校で行われた支援の実践例を検索できます。子どもの困りごとに合わせて、学校がどんな工夫をしたかを読んでみましょう。
インクルDB(国立特別支援教育総合研究所)
「学びと発達」に関連するコミュニティ
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よくある質問
教育学部の教育心理学と、心理学部の心理学は何が違いますか?
使う方法や理論は重なりますが、教育学部では、授業や学校の場面にどう生かすかに重点を置くことが多くなります。心理学部では、心のしくみそのものを幅広く学びます。どちらで何を学べるかは大学によって異なります。
特別支援学校の先生になるには、どんな免許が必要ですか?
原則として、幼稚園・小学校・中学校・高校のいずれかの免許に加えて、特別支援学校の教諭免許状が必要です。教育学部などで、両方の科目を取れる大学があります。


