図 1 教育学の広がり教育学の広がり 3
授業と学校づくり
同じ内容でも、教え方しだいで分かりやすさは大きく変わります。授業の進め方、教科ごとの教え方、何をいつ学ぶかの計画、そして先生自身の学びを研究する分野です。

ひとことで言うと
同じ食材でも、作る人で味が変わる
同じ野菜と肉を使っても、切り方や火の通し方で料理の味は大きく変わります。授業も同じで、教科書が同じでも、問いの出し方や話し合わせ方で分かりやすさが変わります。授業と学校づくりの分野は、その「調理法」を研究します。

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教育方法学: 教え方をデザインする
先生が黒板の前で説明し、全員が同じ内容を聞く。これが一斉授業です。たくさんの知識を短い時間で伝えられる一方、分かっている人には退屈で、つまずいた人は置いていかれがちです。教育方法学は、目的に合わせて授業の形を選び、組み合わせる方法を研究します。
よく知られた方法にジグソー法があります。1971 年、アメリカ・テキサス州のオースティンで、社会心理学者のアロンソンらが考えました。学校の人種統合が進んだばかりで、教室では対立が起きていました。アロンソンらは、競争的な教室の雰囲気が対立を強めていると考え、協力しないと課題が解けないしくみを作りました。
ジグソー法では、課題をいくつかの部分に分けます。生徒は担当の部分を同じ担当どうしで深く学び、元の班に戻って教え合います。全員の知識がそろわないと、答えにたどり着けません。日本でも、東京大学の三宅なほみさんらのグループ(CoREF)が「知識構成型ジグソー法」として発展させ、埼玉県などの学校で取り組まれてきました。
授業の形は、何を学ばせたいかに合わせて選ぶものです。
図解ジグソー法の流れ
- 1問いを知る全員で、答えたい問いを確かめる
- 2担当を学ぶ同じ担当どうしで資料を読み込む
- 3教え合う元の班に戻り、担当の内容を説明する
- 4答えを出す知識を組み合わせて問いに答える


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教科教育学: その教科ならではの教え方
教科教育学は、数学・理科・社会・国語・英語・体育・音楽など、教科ごとに、何をどう教えると分かりやすいかを研究する分野です。教育学部では、教科ごとに研究室が分かれていることも多くあります。
たとえば、分数のわり算です。「ひっくり返してかける」と覚えた人は多いでしょう。でも、なぜそうなるのかを説明しようとすると、案外むずかしいものです。2/3 ÷ 1/6 なら、「2/3 の中に 1/6 がいくつ入るか」と考えて図にすると、4 つ入ることが見えます。「なぜ」が見える教え方を考えるのが、教科教育学の仕事です。
理科なら、実験の前に結果を予想させるか、先に結果を見せるか。社会なら、年号から入るか、資料を読んで「なぜ」を考えることから入るか。こうした選び方の違いが学びにどう影響するかを、授業の記録やテストで調べ、大学の授業では模擬授業で試します。
図解分数のわり算を図で考える
- 1「2/3 の中に 1/6 がいくつ入るか」と言いかえる
- 22/3 を 6 等分の目もりで表すと 4/6
- 31/6 のかたまりを数えると 4 つ

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カリキュラム: 何を、いつ、どれだけ学ぶか
全国どこの学校でも一定の水準の教育を受けられるように、国は学習指導要領を定めています。教科書や時間割は、これをもとに作られます。いまの高校の学習指導要領は 2022 年度の入学生から実施され、「情報Ⅰ」や「歴史総合」などの科目が生まれました。
学ぶ時間も決まっています。小学校の 6 年間の標準の授業時数は、合計 5,785 時間(1 時間は 45 分)です。高校では、50 分の授業を 35 回受けて 1 単位と数えるのが標準で、卒業には 74 単位以上が必要です。
一方で、時間割に書かれていないのに学んでいることもあります。チャイムで動く、手を挙げてから話す、先生の期待を読み取る。こうした、学校生活の中で自然に身につくことを「隠れたカリキュラム」と呼びます。カリキュラムの研究は、計画された学びと、実際に起きている学びの両方を調べます。
何を学ぶかの計画も、時代とともに見直されていきます。
図解カリキュラムの層
- 毎日の授業先生が目の前の生徒に合わせて工夫する
- 学校の教育課程学校ごとに時間割や行事を組む
- 教科書国の検定を受けた本を使う
- 学習指導要領国が全国共通の基準を定める

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教師教育: 先生も学び続ける
日本には、先生どうしで授業を見せ合い、検討する「授業研究」の伝統があります。アメリカの研究者スティグラーとヒーバートは、日本・ドイツ・アメリカの中学 2 年生の数学の授業をビデオで比べました。その成果を 1999 年にまとめた本が『The Teaching Gap』です。この本で日本の授業研究が紹介されると、レッスンスタディとして世界に広がっていきます。
先生の働き方も研究の対象です。OECD の国際教員指導環境調査(TALIS 2024)によると、日本の中学校の先生の 1 週間の仕事時間は 55.1 時間です。参加国の中で最も長い数字です。前回(2018 年)より約 4 時間減りましたが、OECD 平均の 41.0 時間を大きく上回ります。
日本の先生は、授業の時間は国際平均より短い一方、授業の準備や事務、部活動などの課外活動の時間が長いという特徴があります。どの仕事を先生が担い、どこを支援員や地域に任せるか。教師教育の研究は、先生が学び続けられる環境づくりにも関わっています。
高校生のうちに試せること
ジグソー法を友だちと試す
テスト範囲を 3 つに分け、3 人で 1 つずつ担当して調べ、互いに教え合ってみましょう。最後に、全員の知識を使わないと解けない問題を 1 つ作って解くと、ジグソー法の面白さが分かります。
授業の「問い」を集めて分ける
1 週間、授業で先生が出した問いをメモし、「答えが 1 つに決まる問い」と「考えが分かれる問い」に分けて数えてみましょう。教科によって問いの出し方がどう違うかが見えてきます。
先生向けの研修動画を見る
教職員支援機構(NITS)は、先生が校内研修で使う 20 分ほどの講義動画を公開しています。気になるテーマを 1 本見て、先生がどんなことを学んでいるかをのぞいてみましょう。
校内研修シリーズ(教職員支援機構)
「授業と学校づくり」に関連するコミュニティ
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よくある質問
教育方法学や教科教育学は、先生にならない人にも役立ちますか?
役立ちます。分かりやすく教える方法や、学びを設計する考え方は、会社の研修、塾や学習サービス、教材づくりなど、人に教える仕事全般で使われます。
教科教育学は、どこで学べますか?
多くの教育学部や教員養成系の大学に、数学教育・理科教育などの研究室があります。中学・高校の免許が取れる文学部や理学部などでも、各教科の指導法の授業があります。研究室の分け方は大学によって異なります。
