大学カタログ

図 1 教育学の広がり教育学の広がり 5

応用: 学校の外の学び

学びは、学校を卒業したら終わりではありません。公民館の講座、夜間中学、自然の中での体験、オンライン講座まで、一生続く学びと、それを支えるしくみを研究する分野です。

公民館の講座で年配の人と話す学生、森で子どもたちと自然観察をする学生、夜の教室で大人に勉強を教える学生、タブレットでオンライン講座を受ける学生が、ひとつながりに描かれた場面

ひとことで言うと

アプリは、入れたあとも更新される

スマートフォンのアプリは、入れたあとも更新を重ねて、新しい機能が増えていきます。人の学びも同じで、学校を出たあとも、仕事や趣味、地域の活動の中で更新が続きます。この分野は、その「更新」を支える場としくみを考えます。

01

生涯学習: 大人の 4 人に 3 人が学んでいる

2006 年に改正された教育基本法は、新しく「生涯学習の理念」を加えました。一人ひとりが、生涯にわたって、あらゆる機会に、あらゆる場所で学ぶことができる社会をめざす、という内容です。

では、大人は実際にどのくらい学んでいるのでしょうか。2022 年に内閣府が 18 歳以上の人に行った調査では、この 1 年間に月 1 日以上何かを学んだ人は約 4 分の 3 でした。いちばん多いのは仕事に必要な知識や資格(40.1%)で、健康やスポーツ(31.3%)、料理などの家庭生活(23.1%)が続きます。

学んでいない人の理由で最も多いのは「特に必要がない」(45.5%)ですが、「きっかけがつかめない」という人も 29.1% いました。学びたい気持ちがあっても、場や情報が届いていない人がいるのです。生涯学習の研究は、そうした人に学びのきっかけをどう届けるかを考えます。

学びのきっかけは、仕事・健康・趣味など、暮らしのあらゆる場面にあります。

図解大人がこの 1 年に学んだこと

大人の学び(2022 年)
  • 仕事・資格仕事に必要な知識・技能など 40.1%
  • 健康・スポーツ31.3%
  • 家庭生活料理や裁縫など 23.1%
  • 趣味音楽や美術など 22.9%
  • インターネット知識や技能 20.4%

02

社会教育と学び直し: 公民館と夜間中学

学校の外で行われる組織的な教育を、社会教育と呼びます。その拠点の一つが公民館です。2024 年 10 月の文部科学省の調査では、公民館(似た施設を含む)は全国に 1 万 3,031 館ありました。2025 年度の中学校の数(9,827 校)よりも多い数です。

公民館では、地域の人が講座を開いたり、サークルで学び合ったりしています。こうした学びを企画する専門職が、教育委員会に置かれる社会教育主事です。2020 年度からは、大学などで必要な科目を学ぶと「社会教育士」と名乗れるようになりました。教育委員会だけでなく、NPO や会社など、さまざまな場で学びをつくる人のための称号です。

学び直しの場として注目されているのが、夜間中学です。市町村などが設置する公立中学校で、夜の時間帯などに授業を行います。戦後、昼間に働かなければならない子どもたちのために生まれ、いまは義務教育を終えられなかった人や、日本で学びたい外国籍の人などが学んでいます。

2022 年度の文部科学省の調査では、夜間中学で学ぶ 1,558 人のうち、約 3 分の 2 が日本国籍を持たない人でした。文部科学省は、各都道府県と指定都市に少なくとも 1 校を置くことを目指していて、現在は 44 の都道府県・指定都市に 69 校があります。

図解夜間中学で学ぶ人(2022 年度)

日本国籍を持たない人

  • 1,039 人(66.7%)
  • 日本で学び直したい外国籍の人

入学を希望した既卒者

  • 361 人(23.2%)
  • 十分に学べないまま卒業した人

義務教育未修了者

  • 158 人(10.1%)
  • 中学校を修了していない大人
入り口の上に「平野公民館」と書かれた、平屋の小さな公民館
地域の公民館。講座や集まり、子どもの居場所づくりなど、身近な学びの拠点になっています。写真: Syced(CC0・Wikimedia Commons)

03

環境教育と ESD: 未来の社会をつくる学び

環境教育は、自然のしくみや環境問題について学び、行動につなげる教育です。いまは、貧困や平和、多様性なども含めて考える「ESD(持続可能な開発のための教育)」として広がっています。持続可能な社会をつくる力を育てる教育です。

その拠点の一つがユネスコスクールです。ユネスコの理念を学校で実践するために 1953 年に始まった国際的なネットワークで、世界 167 の国・地域で約 1 万校が加盟しています。日本の加盟校は 2026 年 3 月末時点で 1,065 校で、1 か国あたりの数では日本が世界最大です。2005 年には 16 校でしたが、ESD を広げる取り組みの中で増えてきました。

地域の川の生きもの調べ、海外の学校とのオンライン交流など、活動は学校ごとにさまざまです。大学では、こうした活動をどう組み立てれば、知識だけでなく行動や考え方の変化につながるのかを研究します。

学校と地域、そして世界をつなぐのが ESD の特徴です。

図解ESD の学びの輪

  1. 1気づく身近な自然や地域の課題を見つける
  2. 2調べるデータを集め、原因を考える
  3. 3行動するできることを決めて実行する
  4. 4ふり返る変化を確かめ、次の問いを立てる

04

ICT と学び: 1 人 1 台の端末と、広がる学びの場

いまの小中学生は、学校で 1 人 1 台のタブレットやパソコンを使っています。文部科学省が 2019 年 12 月に打ち出した GIGA スクール構想で、端末と高速の通信ネットワークが整えられました。最初に配られた端末の入れ替えも、国の基金を使って進められています。

学びの場は、学校の外にも広がっています。JMOOC には、大学の先生などによる無料のオンライン講座が集まっていて、誰でも学べます。放送大学のように、テレビやインターネットで学んで大学を卒業できるしくみもあります。

生成 AI も、学びの場に入ってきました。文部科学省は 2023 年 7 月に学校向けの暫定的なガイドラインを出し、2024 年 12 月に改訂版を公表しました。「人間中心」の使い方を基本に、子どもの発達の段階に十分に配慮して検討することを求めています。便利な道具を、学びを深める方向にどう使うか。その答えを、教室の実践から探るのもこの分野の役目です。

クイズ学校の外の学びクイズ

本文を思い出しながら答えてください。

  1. Q11 か国あたりのユネスコスクールの数が、世界でいちばん多い国は?

  2. Q22022 年度の調査で、夜間中学で学ぶ人のうち最も多かったのは?

  3. Q32022 年の内閣府の調査で、大人がこの 1 年に学んだことで最も多かったのは?

0 / 3 問に回答
赤と白の電波塔が立ち、白い建物が並ぶ放送大学の本部
千葉市美浜区にある放送大学の本部。テレビやラジオ、インターネットを通して、全国の人に授業を届けています。写真: 掬茶(CC BY-SA 3.0・Wikimedia Commons)

高校生のうちに試せること

  • 近くの公民館の講座を調べる

    市区町村の広報誌やウェブサイトで、近くの公民館や生涯学習センターの講座を探してみましょう。どんな年代の人が、何を学んでいるのかを見ると、地域の学びの姿が見えてきます。

  • 無料のオンライン講座を受ける

    JMOOC には、大学の先生などによる無料のオンライン講座が集まっています。興味のある分野の講座を 1 つ選び、最後まで受けてみましょう。登録の条件は、講座を配信するサイトごとに確認してください。

    JMOOC
  • ユネスコスクールの活動を見る

    ユネスコスクールの公式サイトでは、全国の加盟校の実践事例を読めます。住んでいる地域の学校が、どんな ESD に取り組んでいるかを調べてみましょう。

    ユネスコスクール公式ウェブサイト

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よくある質問

社会教育士の称号は、どうすれば得られますか?

大学で社会教育主事の養成課程の科目を修めるか、社会教育主事講習を修了すると、社会教育士と名乗れます。養成課程のある大学は限られるので、志望する大学で確認してください。

学校の外の学びを学ぶと、どんな仕事に就けますか?

公民館や図書館、博物館、青少年教育施設の職員、自治体の生涯学習の担当、企業の研修担当、NPO のスタッフなどがあります。自治体の職員として地域の講座やイベントを企画する場合は、公務員試験を受けて働きます。