図 3 仕事での生かし方仕事での生かし方 1
国際ビジネス
商社やメーカーで海外の取引先と話し合い、日本の商品を世界へ、世界の商品を日本へ届ける仕事です。外国語で交渉する力と、相手の国の文化や習慣を知る力の両方が生きます。

ひとことで言うと
国境をこえる商品の「橋渡し役」
日本の調味料をスペインのスーパーに並べるには、品物を船に積むだけでは足りません。相手の言葉で魅力を伝え、値段や運び方を決め、約束を書類に残す人が必要です。国際ビジネスの仕事は、言葉と商品の両方を国境の向こうへ渡す橋渡し役です。

01
どんな仕事?: 海外営業・貿易事務・外資系企業
海外営業は、海外の会社やお店に自社の商品を売り込む仕事です。展示会で取引先を見つけ、オンライン会議や出張で値段や数量を話し合い、契約をまとめます。扱う商品は、食品や部品、機械などさまざまです。
貿易事務は、決まった取引を形にする仕事です。船や飛行機の手配、輸出入の書類づくり、税関への手続き、代金の受け取りを、期限に間に合うように進めます。英語の書類やメールを毎日のように読み書きします。
外資系企業は、海外に本社がある会社の日本の拠点です。本社との会議やメールは英語などで行うことが多く、日本のお客さんの声を本社に伝えるのも大事な役目です。
売る人、運ぶ人、つなぐ人がそろって、商品が国境をこえます。
図解国際ビジネスの 3 つの仕事
海外営業
- 海外の会社に商品を売り込む
- 値段や数量を話し合う
- 契約をまとめる
貿易事務
- 船や飛行機を手配する
- 輸出入の書類をつくる
- 税関の手続きを進める
外資系企業
- 海外の本社とやりとりする
- 会議やメールは外国語で
- 日本の声を本社に伝える

02
数字で見る貿易: 1 年で 110 兆円の取引
財務省の貿易統計によると、2025 年の日本の輸出は 110 兆 4,005 億円でした。輸入は 113 兆 3,301 億円です。輸出の相手は、アメリカ(20 兆 3,744 億円)が最も多く、中国(18 兆 7,780 億円)が続きます。
これだけの取引が、国も言葉も違う会社どうしで行われています。そこで使われるのが、国際商業会議所(ICC)が定める「インコタームズ」です。品物をどこで渡すか、運賃や保険料をどちらが払うかを、FOB や CIF のような 3 文字の略語で表します。
この決まりが生まれたきっかけは、言葉の食い違いでした。ICC が 1923 年に 13 か国で 6 つの取引用語の使われ方を調べると、国によって受け取り方がばらばらでした。そこで 1936 年に、最初のインコタームズがつくられました。同じ言葉を同じ意味で使うことが、国際ビジネスの土台です。
世界と同じ言葉で約束できることが、取引の信頼につながります。


03
外国語学が生きる場面: 言葉の奥の文化を読む
海外の取引先との話し合いでは、外国語が話せるだけでは足りない場面があります。たとえば、イスラム教を信仰する人が多い国に食品を売るなら、教えに沿った食べ物を示す「ハラール」の考え方を知っておく必要があります。
断り方や値段の交渉の進め方も、国や地域によって違います。外国語学部の地域研究や異文化コミュニケーションの授業は、こうした違いを理解する手がかりになります。相手の国の祝日や休暇の時期を知っておくと、連絡の予定も立てやすくなります。
英語は、英語を母語としない人どうしの共通語としても使われます。一方で、相手の国の言葉で一言あいさつするだけで、場の空気がやわらぐこともあります。英語以外の専攻語は、その国を担当するときの大きな強みです。
言葉と文化の両方を知る人が、交渉の場で頼りにされます。
図解日本の調味料をスペインに売り込む(例)
- 1スペインの食の好みや、商品の表示の決まりを調べる
- 2スペイン語の商品説明と、現地の料理に合うレシピをつくる
- 3オンライン会議で、値段と数量を話し合う
- 4運び方と代金の条件を、契約書にまとめる

04
メーカーの海外営業の 1 日(例)
ここでは、東京の食品メーカーで、ヨーロッパとアジアを担当する海外営業の 1 日の例を紹介します。相手の国との時差が、1 日の流れを決めます。
日本とスペインの時差は、夏は 7 時間、冬は 8 時間です。日本の夕方がスペインの朝にあたるため、この例ではスペインとの会議を夕方に入れています。
昼間は、包装の表示や試作品の味について、社内の開発や工場の担当者と話し合います。海外のお客さんの声を社内に正しく伝えるのも、海外営業の大切な仕事です。
時差を味方にすると、世界の取引先と 1 日でやりとりできます。
図解メーカーの海外営業の 1 日(例)
- 8:30メールを確認夜のうちに届いた注文や質問を読む
- 10:00タイと会議現地の代理店とオンラインで話す
- 12:00昼休み
- 13:00社内の打ち合わせ包装の表示を開発の担当と相談
- 15:00書類づくり見積書と契約書の案を英語で書く
- 17:00スペインと会議現地の朝に合わせて話し合う

05
向いている人と入り方・その先
商社やメーカー、物流の会社には、外国語学部や経済学部、経営学部などから新卒で入る人が多くいます。いろいろな国の人と話すのが好きな人、約束や期限をきちんと守れる人に向いています。
貿易の手続きを専門にしたい人には、国家資格の通関士があります。通関の手続きを行う会社で、税関に出す書類の内容を確かめる専門家です。2025 年の試験は 6,322 人が受けて 954 人が合格しました(合格率 15.1%)。
経験を積むと、海外の拠点で働く駐在員として、現地の社員と一緒に事業を広げる道があります。担当する国の言葉と市場をよく知る人は、その国の事業を任される立場にもなります。
語学と地域の知識に商品の知識を重ねると、仕事の幅が広がります。
図解国際ビジネスの仕事への道(例)
- 1大学で学ぶ専攻語・地域研究・経済の基礎
- 2会社に入る商社・メーカー・物流の会社など
- 3国内で経験貿易事務や営業の仕事を覚える
- 4海外で働く駐在員として現地の拠点へ
高校生のうちに試せること
貿易統計で品物の行き先を調べる
財務省の貿易統計のサイトでは、日本からどの国へ何がどれだけ輸出されているかを、誰でも無料で調べられます。気になる品物を 1 つ選び、どの国へ多く運ばれているかを調べてみましょう。
財務省貿易統計輸入品のラベルを読む
スーパーで輸入された食品を 1 つ選び、パッケージの外国語の表示を読んでみましょう。原産国や原材料、保存方法がどう書かれているかを日本語のシールと比べると、貿易の書類の基本が見えてきます。
特産品を英語のメールで売り込む
架空の会社の担当者になったつもりで、地元の特産品を海外のお店に紹介するメールを英語で書いてみましょう。値段や送り方など、相手が知りたいことを先回りして書けるかが腕の見せどころです。
「国際ビジネス」に関連するコミュニティ
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よくある質問
英語がぺらぺらでないと、国際ビジネスの仕事はできませんか?
入社の時点で完璧である必要はありません。多くの会社では、入社後の研修や毎日の仕事の中で、英語を使いながら力をつけていきます。メールや書類には決まった言い回しが多く、経験を重ねると慣れていきます。
英語以外の言語を学ぶと有利ですか?
担当する国の言葉ができると、相手との距離が縮まり、現地の情報も早くつかめます。2025 年の日本の輸出先は、アメリカ・中国に続いて台湾・韓国・香港と、アジアの国・地域が上位に並びます。
文系でも、メーカーの海外営業になれますか?
なれます。製品のしくみは、入社後の研修や現場で学びます。技術の担当者と一緒に動くことも多く、相手の国の言葉と製品の両方を説明できる人は頼りにされます。

