図 1 外国語学の広がり外国語学の広がり 1
言葉を使いこなす
国際共通語の英語、大学で専攻する言語、もう 1 つの第二外国語。文字と発音から始めて、聞く・読む・話す・書く力を、実際に使える段階まで積み上げていく分野です。

ひとことで言うと
楽器と同じで、毎日の練習が音になる
楽器は、楽譜の読み方を知っているだけでは弾けません。指を動かす練習を毎日くり返して、ようやく曲になります。外国語も、文法や単語を知ることと、実際に聞いて話せることの間に練習が要ります。大学の語学の授業は、その練習を毎週積み重ねる場です。

01
国際共通語の英語: 相手が英語のネイティブとは限らない
外国語学部では、どの言語を専攻しても、多くの大学で英語の授業が続きます。日本学術会議の参照基準(言語・文学分野)は、いまは英語が事実上の「国際共通語」だとしています。国や地域をこえて人どうしが話すとき、共通の言葉として英語が使われる場面が多いからです。
例えば、東南アジアの国々でつくる ASEAN(東南アジア諸国連合)の憲章は、第 34 条で「ASEAN の作業言語は英語とする」と定めています。加盟する国々の言葉はさまざまですが、組織で使う共通の言葉は英語と決められているのです。
参照基準は、国際共通語としての英語では、英語を母語とする人の決まりにとらわれず、お互いに「わかりやすい」英語を使うことが大切だとしています。ネイティブそっくりの発音でなくても、伝われば役目を果たせるということです。一方で、英語圏の文化と合わせて学ぶ「外国語としての英語」もあり、参照基準は 2 つを分けて考えています。
英語は、英語圏の言葉であると同時に、世界の人をつなぐ共通の言葉です。
図解2 つの英語の学び方
国際共通語の英語
- いろいろな国の人と話す
- わかりやすさを大切にする
- 読み書きの力も重視する
外国語としての英語
- 英語圏の文化と合わせて学ぶ
- 文学や歴史の文章も読む
- 英語学・英米文学の専攻へ

02
専攻する言語: 文字と発音からゼロで始める
英語以外の言語を専攻する人の多くは、大学でその言語に初めて出会います。最初の授業は、文字と発音から始まります。高校で習っていない言語でも、心配はいりません。
韓国語のハングルは、朝鮮王朝の世宗(セジョン)が 1443 年につくった文字です。国立ハングル博物館によると、基本の子音字 ㄱ・ㄴ・ㅁ・ㅅ・ㅇ は、発音するときの口や舌、のどの形をまねています。ㅁ は口の形、ㄴ は舌先が上の歯ぐきに付く形です。文字の形が、発音のヒントになっているのです。
アラビア語の文字は、右から左へ書きます。基本は子音を表す 28 文字で、短い母音はふつう書きません。同じ文字でも、単語の最初・途中・最後で形が少しずつ変わります。初めは戸惑いますが、毎日書いて練習するうちに、単語のまとまりが見えてきます。
文字と発音の仕組みが分かると、初めての言語も少しずつ読めるようになります。
図解専攻語の 1 年目(例)
- 1文字と発音文字を書き、先生の発音をまねる
- 2あいさつ自己紹介や買い物の会話
- 3基本の文法語順や動詞の形を覚える
- 4短い文を読む辞書を引きながら読み進める


03
第二外国語: 日本語と似ている言葉、似ていない言葉
多くの大学では、英語に加えて第二外国語も学びます。参照基準は、ヨーロッパの国々でつくる欧州評議会が、母語のほかに 2 つの言語を学ぶ「複言語主義」を勧めていることを紹介しています。そのうえで、日本でも英語のほかに少なくとももう 1 つ外国語を学ぶことが、多様な世界観を得るために欠かせないとしています。
どの言語を選ぶかで、苦労する所が変わります。韓国語は日本語と同じく、主語・目的語・動詞の順に並べる言語です。漢字から来た言葉も多く、약속(ヤクソク)は「約束」、무리(ムリ)は「無理」という意味です。
中国語は漢字を使いますが、声の高さの上がり下がり(声調)で意味を区別します。共通語には 4 つの声調があり、同じ ma でも、mā は「母」、má は「麻」、mǎ は「馬」、mà は「ののしる」になります。日本語にない区別を聞き分けるのが、最初の山場です。
アラビア語では、3 つの子音の組み合わせが意味の骨組みになります。k-t-b は「書く」に関係し、kitāb は「本」、maktaba は「図書室」です。単語どうしのつながりが見えてくると、覚えるのが楽しくなります。
日本語との違いに気づくことは、日本語そのものを見直すきっかけにもなります。
図解日本語から見た 3 つの言語
韓国語
- 語順が日本語と同じ SOV
- 「は」「を」に似た助詞がある
- 漢字から来た言葉が多い
中国語
- 漢字を使う
- 4 つの声調で意味が変わる
- 語順は英語と同じ SVO
アラビア語
- 3 つの子音が意味の骨組み
- k-t-b は「書く」の仲間
- kitāb は本、maktaba は図書室

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聞く・読む・話す・書く: 高校卒業までに 4,000〜5,000 語
語学の力は、知っている単語の数だけでは測れません。いまの学習指導要領は、小学校から高校まで、英語の目標を「聞くこと」「読むこと」「話すこと[やり取り・発表]」「書くこと」の 5 つの領域に分けて示しています。
単語の数にも目安があります。文部科学省の資料によると、いまの学習指導要領で学ぶ英単語は、小学校で 600〜700 語です。中学校では 1,600〜1,800 語、高校では 1,800〜2,500 語ほどを学びます。高校卒業までに合わせて 4,000〜5,000 語になります。
大学では、この土台の上に、専攻語の 4 つの力を積み上げていきます。語学の授業では、聞いて分かる単語を、自分で話したり書いたりして使える単語に変えていく練習を重ねます。
単語は、聞いて分かるだけでなく、使える単語に変えていくことが大切です。
図解英語で学ぶ単語の数(学習指導要領)
- 1小学校600〜700 語
- 2中学校1,600〜1,800 語
- 3高校1,800〜2,500 語
- 4高校卒業まで合わせて 4,000〜5,000 語

05
苦手でも大丈夫: どこから始めるか
新しい言語は、文字と、よく使うあいさつから始めるのが近道です。ハングルは、基本の 5 つの子音字に画を加えて、ほかの子音字をつくっています。成り立ちを知ると、覚えやすくなります。英語が苦手な人は、中学で習う語順や時制など、文の骨組みを確かめ直すところから始めれば十分です。
参照基準は、外国語を学ぶとき、人は自然に母語を手がかりにして、母語の特徴に自分で気づく体験ができるとしています。間違いや戸惑いも、日本語との違いを見つける手がかりになります。
文字・あいさつ・文の骨組みから始めれば、どの言語も一歩ずつ進めます。
高校生のうちに試せること
ハングルの成り立ちを読む
国立ハングル博物館のサイトには、ハングルの成り立ちを日本語で説明したページがあります。基本の子音字 5 つが何の形かを確かめてから、韓国の地名や料理名をハングルで読んでみましょう。
国立ハングル博物館「ハングル・訓民正音」スマートフォンの表示を外国語にする
設定画面の言語を、学んでみたい言語に 1 日だけ切りかえてみましょう。「設定」「戻る」「送信」のように、意味の分かっている言葉から覚えられます。先に戻し方を確かめておくと安心です。
ラジオの語学番組で入門の回を聞く
NHK ゴガクアプリの「ラジオストリーミング」では、ラジオの語学番組を好きなときに聞けます。中国語やハングル(韓国語)など、気になる言葉の入門の回を 1 つ聞いてみましょう。
NHK 語学
「言葉を使いこなす」に関連するコミュニティ
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よくある質問
専攻する言語は、どうやって選べばよいですか?
行ってみたい国、好きな音楽や映画、将来つきたい仕事などから考える方法があります。日本語と似ている言語は最初の負担が軽く、似ていない言語は新しい発見が多いという違いもあります。選べる言語は大学によって異なります。
ネイティブのような発音にならないと、だめですか?
参照基準は、国際共通語としての英語では、お互いにわかりやすいことを大切にするとしています。まずは相手に伝わる発音を目指せば十分です。専攻語の授業では、そのうえで発音を少しずつ磨いていきます。
留学しないと、話せるようにはなりませんか?
日本にいても、授業での会話の練習、留学生との交流、オンラインでの交流など、使う場面は増やせます。留学の制度や時期は大学によって異なります。


