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図 3 仕事での生かし方仕事での生かし方 1

医療で命を支える

病気やけがの人の体の変化を見守り、検査で体の中を調べて、治療につなげる仕事です。高校の生物で学ぶ体温の調節や自律神経、免疫のしくみが、看護師や臨床検査技師の毎日の判断を支えています。

病棟で患者役の学生の体温と血圧を測る看護師と、検査室で血液型の検査用カードを確かめる臨床検査技師、その様子を見学する高校生たち

ひとことで言うと

空の小さな変化から、天気の変わり目を読む

天気予報士は、雲や気圧の小さな変化から、これからの天気を読みます。看護師も、体温や脈、汗のかき方の小さな変化から、体の中で起きていることを読み取ります。その読み方の土台が、高校の生物で学ぶ体の調節のしくみです。

01

どんな仕事?: 体の変化を見守る人、体の中を調べる人

看護師は、病気やけがの人の療養上の世話と、診療の補助を行う国家資格の仕事です。厚生労働省の統計では、2024 年末に働いていた看護師は 136 万 3,142 人でした。その 65.7% が病院で働いています。

臨床検査技師は、血液や尿などを調べる検査の専門職です。医師は、診察と検査の結果から病気を見きわめ、治療を決めます。3 つの仕事は、体の中で起きていることを、観察と検査の数字から読み取る点で共通しています。

その読み取りの土台が、高校の生物です。生物基礎では、体温や血糖を一定に保つ体の調節、自律神経とホルモン、免疫を学びます。生物では、神経のはたらきや遺伝子を扱う技術を、さらにくわしく学びます。

観察と検査の数字から、体の中の変化を読み取る仕事です。

図解医療の仕事と高校の生物

医療の仕事
  • 体温の調節熱の上がり始めと下がり始めを見分ける(生物基礎)
  • 自律神経脈や血圧、皮膚の色の変化を読む(生物基礎)
  • 免疫血液型の検査と、感染を防ぐ工夫(生物基礎)
  • 血液凝固採血のあとに血が止まるしくみ(生物基礎)
  • 神経手足の動きや反応の観察(生物)
  • 遺伝子の技術遺伝子を調べる検査の原理(生物)

02

体の調節が生きる場面: 熱が上がるとき、体はふるえる

かぜをひいて熱が出始めるとき、体がふるえたり、手足が冷たくなったりすることがあります。生理学研究所が公開している「温度生物学ハンドブック」は、そのしくみを次のように説明しています。

病原体が入って免疫がはたらくと、脳の血管の細胞で、プロスタグランジン E2 という物質がつくられます。これが体温調節の中枢である視床下部の視索前野にはたらくと、体温の設定(セットポイント)が上がった状態になります。体は皮膚の血管を縮めて熱を逃がさないようにし、筋肉をふるわせて熱をつくります。

体温が新しい設定に届くと、それ以上は上がりません。病気がおさまって設定が元に戻ると、今度は汗をかいて熱を逃がします。熱が下がるときに汗が出るのは、このためです。同じ資料は、発熱を、病原体が増えるのを抑えるための体の防御反応と位置付けています。

看護師は、体温の数字だけでなく、ふるえや手足の冷たさ、汗の様子も観察します。同じ 38℃でも、熱の上がり始めか下がり始めかで、患者さんの体で起きていることは違います。皮膚の血管の太さを調節しているのは自律神経の交感神経で、これも生物基礎で学ぶ内容です。

体温の数字に、ふるえや汗の様子を合わせて読むと、体の変化が分かります。

図解熱が出るとき、体の中で起きること(あらまし)

入力かぜなどで病原体が入り、免疫がはたらく
  1. 1脳でプロスタグランジン E2 がつくられる
  2. 2視索前野で、体温の設定が上がる
  3. 3皮膚の血管が縮み、ふるえで熱をつくる
  4. 4設定に届くと、体温の上がりが止まる
  5. 5病気がおさまると設定が戻り、汗で熱を逃がす
結果ふるえは熱の上がり始め、汗は下がり始めに見られる体の反応

03

免疫が生きる場面: 輸血の前に、血液型を 2 回調べる

ABO 式の血液型は、赤血球の表面にある抗原と、血しょうにある抗体の組み合わせで決まります。A 型の人の赤血球には A 抗原があり、血しょうには B 抗原と反応する抗 B があります。O 型の人は抗 A と抗 B の両方を持ち、AB 型の人はどちらも持ちません。

型の合わない血液を輸血すると、抗原と抗体が反応してしまいます。そこで臨床検査技師は、輸血の前に検査をします。日本輸血・細胞治療学会の「輸血療法実践ガイド」では、赤血球の抗原を調べるオモテ検査と、血しょうの抗体を調べるウラ検査の両方を行います。

さらに、取り違えを防ぐため、別の時点で採った 2 本の血液で、結果が一致するかを確かめることが原則です。輸血する血液と患者さんの血液を混ぜて反応を見る、交差適合試験も行います。生物基礎で学ぶ抗原抗体反応が、輸血の安全を毎日守っています。

同じガイドの表によると、日本人の血液型の割合は、A 型が 40%、O 型が 30%、B 型が 20%、AB 型が 10% です。輸血に使う血液は、献血で集められています。日本赤十字社の基準では、200 mL の献血は 16 歳からできます。

抗原と抗体の知識が、輸血の取り違えを防いでいます。

クイズ医療と生物のクイズ

答えを 1 つ選んでください。

  1. Q1熱が上がり始めるとき、体がふるえるのはなぜ?

  2. Q2日本人の ABO 式血液型で、いちばん多いのは?

  3. Q3輸血の前の血液型の検査で、原則になっていることは?

0 / 3 問に回答
青い手袋をした手が、細い管が 6 本並んだ透明な検査用カードを持っている。管の中の赤い血液の位置が、管ごとに違う
血液型を調べる検査用カード。赤血球が試薬と反応して固まると、ゲルを通り抜けられずに上に残ります。この例は O 型・RhD 陽性です。写真: SpicyMilkBoy(CC BY-SA 4.0・Wikimedia Commons)

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病棟で働く看護師の 1 日(例)

ここでは、総合病院の病棟で、日中に働く看護師の 1 日の例を紹介します。病棟では、看護師が交代しながら 24 時間患者さんを見守ります。勤務の形や時間は、病院によって違います。

朝は、夜勤の看護師から患者さんの様子を引き継ぎます。そのあと受け持ちの患者さんを回り、体温・脈拍・血圧・呼吸などを測ります。こうした体の基本の数値を、バイタルサインといいます。前の日と比べて変わった点があれば、医師に伝えます。

午後は、検査や手術に向かう患者さんの準備や、新しく入院する人の受け入れをします。医師や薬剤師、理学療法士などと、治療の方針を話し合うこともあります。夕方は記録をまとめ、夜勤の看護師に引き継ぎます。

変わった点に早く気づくことが、看護の大切な役目です。

図解病棟の看護師の 1 日(例)

  1. 8:30申し送り夜の間の患者さんの様子を聞く
  2. 9:00バイタルサイン体温・脈拍・血圧・呼吸を測る
  3. 10:30治療の補助医師の指示で点滴などを行う
  4. 12:00食事の手伝い食べた量や飲み込みの様子を見る
  5. 13:30話し合い医師やほかの職種と方針を確かめる
  6. 15:00入院の受け入れ体の状態や生活の様子を聞く
  7. 16:30記録と引き継ぎ変わった点を夜勤の看護師に伝える
白い壁と板張りの床の部屋に、白い布をかけた鉄のベッドがいくつも並ぶ、明治時代の病室
1890 年に東京で建てられた日本赤十字社の病院の病棟。今は愛知県犬山市の博物館明治村に移されています。写真: Morio(CC BY-SA 4.0・Wikimedia Commons)

05

向いている人と入り方・その先

高校のうちは、生物基礎の体の調節と免疫を、図にしながら理解しておくことが土台になります。生物で学ぶ神経のしくみも役に立ちます。入試で求められる科目は大学や学校によって異なるので、募集要項で確かめてください。

看護師になるには、大学や短期大学、看護師養成所などで 3 年以上学び、国家試験に合格します。2026 年 2 月の第 115 回看護師国家試験では、受験者 5 万 9,614 人のうち 5 万 2,666 人が合格しました。合格率は 88.3% です。大学によっては、保健師や助産師の課程を選べます。

臨床検査技師は、大学や専門学校などで 3 年以上学んでから国家試験を受けます。医師は、医学部で 6 年間学んで国家試験に合格したあと、2 年以上の臨床研修を受けます。

人の体の変化に興味があり、小さな変化にも気づける人に向いています。経験を積むと、がんや感染管理などの分野を深める道もあります。地域の健康を守る保健師として、市区町村で働く人もいます。

高校の体の調節と免疫が、看護と検査の学びの入り口です。

図解看護師への道(例)

  1. 1高校で学ぶ体の調節・免疫・神経
  2. 2大学・養成所3 年以上、看護学を学ぶ
  3. 3国家試験合格して看護師の免許を受ける
  4. 4病院で働く病棟や外来で経験を積む
  5. 5専門を深めるがん・感染管理・保健師など
駅前の広場に、赤い十字のマークがついた白い献血バスが 2 台止まり、日よけを広げている
日本赤十字社の献血バス(神戸市・2008 年)。16 歳以上なら、基準を満たせば 200 mL の献血ができます。写真: 白蛇の騎士(CC BY-SA 3.0・Wikimedia Commons)

高校生のうちに試せること

  • 献血の基準を読み、理由を考える

    日本赤十字社のサイトには、献血できる年齢や体重と、血圧・脈拍・体温の基準が載っています。体温が 37.5℃未満などの基準がなぜあるのかを、生物基礎で学んだ体の調節から考えてみましょう。16 歳以上なら、家の人と相談して献血を体験することもできます。

    献血の基準(日本赤十字社)
  • 教科書の体温調節の図に、発熱を書き足す

    生物基礎の教科書で、寒いときの体温調節の図を探しましょう。皮膚の血管が縮む、筋肉がふるえるといった反応の横に「体温の設定が上がる」と書き足すと、熱の上がり始めの体の変化を説明できます。

  • ふれあい看護体験に参加する

    5 月 12 日の「看護の日」にちなんで、夏休みを中心に、各地の病院で高校生が看護の仕事を体験できる行事が開かれます。住んでいる都道府県の看護協会や、近くの病院のサイトで、申し込みの時期を調べてみましょう。

  • 看護職の違いを調べる

    厚生労働省の看護教育ポータル「発見・看護!」では、看護師・保健師・助産師の仕事の違いや、養成する学校の探し方を紹介しています。

    看護職を目指す方(厚生労働省)

「医療で命を支える」に関連するコミュニティ

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よくある質問

看護師になるのに、生物は必要ですか?

看護師の仕事では、体の調節や免疫、神経のしくみを毎日使います。大学や養成所に入ってからも、人体の構造と機能を学ぶ授業が続きます。入試で生物が必要かどうかは学校によって違うので、募集要項で確かめてください。

看護師と臨床検査技師は、どう違いますか?

看護師は、患者さんのそばで体の変化を観察し、療養の世話と診療の補助を行います。臨床検査技師は、血液や尿などを調べたり、心電図などで体の状態を測ったりする検査の専門職です。病院では、どちらも医師と協力して働きます。

高校生でも献血できますか?

日本赤十字社の基準では、200 mL の献血は 16 歳から、400 mL の献血は男性が 17 歳、女性が 18 歳からです。体重や血圧、体温などの基準もあり、当日の問診と検査で確かめます。