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図 2 高校 3 年間の流れ()高校 3 年間の流れ 2

高 2: 化学で状態と平衡を学ぶ

高 2 からは、4 単位の「化学」が始まります。気体や溶液のふるまい、反応の熱、化学平衡を、式とグラフで扱えるようになる 1 年です。文系・理系の選び方によって、化学とのつきあい方も変わります。

高校の化学室で、湯と氷水に入れたガラス管の中の気体の色の違いを見比べる高校 2 年生たち、温度計を差したカップの液の温度の上がり方を記録する生徒、黄色いボンベの前で計算する生徒

ひとことで言うと

上りのエスカレーターを、下へ歩く

上りのエスカレーターを、同じ速さで下に向かって歩くと、その場にとどまって見えます。足は動き続けているのに、位置は変わりません。化学平衡も同じで、反応は両方の向きに進み続けているのに、見かけの量が変わらない状態です。

01

高 2 の科目: 4 単位の化学と、文系・理系の選び方

「化学」は標準 4 単位で、原則として化学基礎を学んだ後に学びます。内容は、物質の状態と平衡、物質の変化と平衡、無機物質の性質、有機化合物の性質、化学が果たす役割の 5 つです。高 2 と高 3 に分けて学ぶ学校もあり、単元の順や時間数は学校によって異なります。

高 2 から文系・理系のコースに分かれる学校では、コースによって学ぶ理科が変わります。分け方は学校ごとに違いますが、例えば下の図のような形があります。

大学入学共通テストでは、理科の 5 つの出題科目のうち、受験者が最も多いのが『化学』です。令和 8 年度は 18 万 1,584 人が受けました。理学部や工学部のほか、薬学部・農学部・医学部など、化学の知識を使う学部は幅広くあります。

コースを選ぶときは、志望する学部の入試で、理科のどの科目が必要かを募集要項で確かめます。迷っている人は、担任や理科の先生と一緒に、いくつかの大学の募集要項を見比べると判断しやすくなります。

志望する学部の入試で必要な理科を確かめてから、コースを選びます。

図解文系・理系のコースで学ぶ理科(例)

文系コース(例)

  • 化学基礎・生物基礎などの基礎の科目
  • 共通テストでは基礎の科目から 2 つ
  • 法・経済・文学部などへ

理系コース(例)

  • 化学と、物理か生物を組み合わせる
  • 共通テストでは『化学』などを受ける
  • 理・工・薬・農・医学部などへ

02

気体と溶液: ボンベの中の空気は、何 L 分?

最初の「物質の状態と平衡」では、状態変化、気体の性質、固体の結晶の構造、溶液の性質を学びます。物質の沸点や融点の違いは、粒子どうしが引き合う力の強さで説明します。水の沸点が分子の小ささの割に高いのは、水素結合という強い引き合いがあるためです。

気体では、ボイル・シャルルの法則から、気体の状態方程式 PV = nRT を導きます。圧力 P・体積 V・温度 T が分かれば、気体の物質量 n が計算できます。下の例では、写真のようなダイビング用のボンベに、高い圧力で詰めた空気の量を計算しています。

実際の気体は、圧力がとても高いときや温度が低いときに、この式から少しずれます。分子そのものに大きさがあり、分子どうしが引き合う力もあるためです。理想気体と実在気体の違いも、この単元で学びます。

溶液では、溶液ならではの性質を学びます。水に物質を溶かすと、凍る温度が下がり(凝固点降下)、沸騰する温度が上がります(沸点上昇)。冬の道路に塩をまくと凍りにくくなるのは、凝固点降下を利用したものです。

気体の状態方程式を使うと、量りにくい気体の量も計算で求められます。

図解ボンベの空気を、ふつうの圧力に戻すと(例)

入力容積 7.0 L のボンベに、27 ℃ で 2.0×10⁷ Pa(大気圧の約 200 倍)の空気を詰める
  1. 1n = PV ÷ RT = 2.0×10⁷ × 7.0 ÷ (8.3×10³ × 300)
  2. 2n は約 56 mol
  3. 31.0×10⁵ Pa・27 ℃ での体積は V = nRT ÷ P
  4. 456 × 8.3×10³ × 300 ÷ 1.0×10⁵ ≒ 1,400 L
結果ボンベ 1 本に、ふつうの圧力の空気が約 1,400 L 分。重さは約 1.6 kg
白い壁に立てかけた、黄色い細長いボンベが 2 本。金属の帯で 1 つにまとめられ、上に弁が付いている
1970 年代のダイビング用のボンベ(スウェーデン)。容積 7 L のボンベ 2 本に、200 bar(2.0×10⁷ Pa)の圧力で空気を詰められます。写真: R. Henrik Nilsson(CC BY 4.0・Wikimedia Commons)

03

反応の熱: 測りにくい熱を、ヘスの法則で求める

「物質の変化と平衡」の前半では、化学反応と熱・光、電池、電気分解を学びます。反応で出入りする熱は、エンタルピー変化 ΔH という量で表します。熱を出す反応では ΔH がマイナス、熱を吸う反応ではプラスになります。

反応の熱は、反応の道すじによらず、最初と最後の状態だけで決まります(ヘスの法則)。そのため、直接は測りにくい反応の熱も、測れる反応の熱の足し算と引き算で求められます。解説は、ヘスの法則を使って実験を計画し、求めた値を文献の値と比べる探究を例に挙げています。

例えば、固体の水酸化ナトリウムを水に溶かすときの熱は、水の温度の上がり方から求められます。これと、水溶液どうしの中和の熱を組み合わせると、固体を塩酸で直接中和したときの熱も計算で確かめられます。水酸化ナトリウムは皮膚を傷めるので、保護めがねと手袋を着けて扱います。

電池と電気分解も、同じ単元で学びます。乾電池・鉛蓄電池・リチウムイオン電池・燃料電池などのしくみを、酸化還元反応として説明します。熱も電気も、反応する物質の mol と結びつけて考えるのが、この単元のコツです。

ヘスの法則を使うと、測りにくい反応の熱も、測れる熱の組み合わせで求められます。

図解水酸化ナトリウムが溶ける熱を求める(測定の例)

入力水 98 g に、固体の水酸化ナトリウム 2.0 g(0.050 mol)を溶かすと、温度が 5.3 ℃ 上がった
  1. 1液の質量を 100 g、比熱を 4.2 J/(g·K) とする
  2. 2出た熱 = 4.2 × 100 × 5.3 ≒ 2.2×10³ J = 2.2 kJ
  3. 31 mol あたり 2.2 kJ ÷ 0.050 mol = 44 kJ
  4. 4熱を出したので、ΔH はマイナス
結果溶けるときの ΔH は約 −44 kJ/mol

04

化学平衡: 「止まって見えるのに、動いている」をつかむ

後半では、反応の速さと化学平衡を学びます。反応の速さは、濃度・温度・触媒によって変わります。両方の向きに進む反応(可逆反応)では、やがて見かけの変化が止まります。これが化学平衡です。

つまずきやすいのは、平衡では反応が止まっていると考えてしまうことです。実際には、右向きと左向きの反応が同じ速さで進み続けています。平衡の状態は、平衡定数 K という 1 つの数で表せます。

条件を変えると、平衡はその変化をやわらげる向きに移ります(ルシャトリエの原理)。写真の気体は、赤褐色の NO₂ と無色の N₂O₄ の間で平衡になっています。NO₂ が N₂O₄ になる向きは熱を出すので、温めると逆の向きに平衡が移り、赤褐色が濃くなります。

ほかに、水のイオン積と pH、酢酸のような弱い酸の電離平衡も学びます。式を覚える前に、「どちらの向きに進むと、何が増えるか」を言葉で書いてみると、問題の意味がつかみやすくなります。

平衡は止まった状態ではなく、両向きの反応がつり合った状態です。

クイズ高 2 の化学クイズ

このページで紹介した内容から出題します。

  1. Q1化学平衡の状態にあるとき、反応はどうなっている?

  2. Q2NO₂ と N₂O₄ が平衡になっている気体を、氷水で冷やすと色はどうなる?

  3. Q3令和 8 年度の共通テストで、理科の出題科目のうち受験者が最も多かったのは?

0 / 3 問に回答
細長いガラスの容器が 5 本並び、左の白から右へ、黄色・橙色・赤褐色と色が濃くなっている
同じ二酸化窒素を封じたガラス容器を、左から −196 ℃、0 ℃、23 ℃、35 ℃、50 ℃ にしたもの。温度が高いほど赤褐色の NO₂ が増え、色が濃くなります。写真: Eframgoldberg(CC BY-SA 3.0・Wikimedia Commons)

05

高 2 の 1 週間: 理論の計算と、無機物質の整理を並べる

高 2 の化学は、計算の多い理論の単元と、物質の性質を学ぶ無機物質の単元が続きます。無機物質では、典型元素を周期表の族ごとに整理し、遷移元素としてクロム・マンガン・鉄・銅・亜鉛・銀を学びます。下の図は、高 2 の 1 週間の例です。

無機物質は、ばらばらに覚えるより、周期表の位置と結びつけると整理しやすくなります。例えば、ハロゲンの単体は、周期表の上にあるものほど、ほかの物質から電子を奪う力(酸化力)が強くなります。解説も、ハロゲンの単体の酸化力の違いを調べる実験を例に挙げています。

計算では、有効数字と単位をそろえる習慣が大切です。気体の状態方程式では、圧力を Pa、体積を L、温度を K(セルシウス温度に 273 を足した値)にそろえてから代入します。単位を書いたまま計算すると、どこで取り違えたかがすぐに分かります。

授業の外では、日本化学会などが開く化学グランプリがあります。高校生以下ならだれでも参加でき、毎年「海の日」に全国の会場で一次選考があります。翌年の国際化学オリンピックの代表候補に推薦されるのは、中学 3 年生と高校 1・2 年生の参加者などです。高校 3 年生は代表候補になれないので、目指すなら高 2 までが勝負です。

無機物質は、周期表の位置と結びつけて覚えると忘れにくくなります。

図解高 2 の 1 週間(例)

  1. 月化学(気体)状態方程式の問題を解く
  2. 火化学(実験)溶ける熱を温度の変化から求める
  3. 水無機の整理周期表に元素の性質を書き込む
  4. 木化学(平衡)平衡定数の式を書いて確かめる
  5. 金計算 3 問単位と有効数字をそろえる
  6. 土・日過去問 1 題化学グランプリの問題に挑戦

高校生のうちに試せること

  • 冷凍庫で、真水と食塩水の凍り方を比べる

    同じ量の真水と、食塩を溶かした水を、同じ形のカップに入れて冷凍庫に入れましょう。30 分ごとに様子を見て、どちらが先に凍り始めるかを記録します。凝固点降下と結びつけて、食塩の量を変えると結果がどう変わるかも調べてみてください。

  • 使い捨てカイロの原材料を読む

    使い捨てカイロの袋には、鉄粉・水・活性炭などの原材料が書かれています。鉄がさびる(酸化する)ときに出る熱で温まるしくみを、反応の熱の単元とあわせて調べましょう。中身は取り出さず、表示を読むだけにしてください。

  • シミュレーションで強い酸と弱い酸を比べる

    コロラド大学ボルダー校の PhET の「酸・塩基の水溶液と電離」では、酸の水溶液の中の粒子のようすを見られます。強い酸と弱い酸で、電離している粒子の割合や pH がどう違うかを比べましょう。

    PhET「酸・塩基の水溶液と電離」

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よくある質問

化学は、高 2 と高 3 のどちらで学びますか?

化学は標準 4 単位で、原則として化学基礎の後に学びます。高 2 と高 3 に分けて学ぶ学校もあり、単元の順や時間数は学校によって異なります。自分の学校の教育課程表で確かめてください。

文系に進んでも、化学基礎の知識は役に立ちますか?

文系の学部を受ける場合も、共通テストで『物理基礎/化学基礎/生物基礎/地学基礎』を課す大学があります。化学基礎を選べば、高 1 で学んだ内容をそのまま生かせます。どの科目が必要かは、志望校の募集要項で確かめてください。

化学平衡がよく分かりません。

平衡は、反応が止まった状態ではなく、両方の向きの反応が同じ速さで進んでいる状態です。まず、条件を変えたときに、どちらの向きに進むと変化がやわらぐかを言葉で書いてみてください。式はその後で使うと整理しやすくなります。