図 2 高校 3 年間の流れ()高校 3 年間の流れ 3
高 3: 有機化合物と受験の仕上げ
高 3 では、炭素を骨格にした有機化合物と、プラスチックやタンパク質などの高分子化合物を学びます。新しい単元を進めながら、大学入学共通テストや個別試験に向けて、3 年分の化学をまとめ直す 1 年です。

ひとことで言うと
ブロックの骨組みに、部品を付ける
おもちゃのブロックは、同じ骨組みでも、車輪を付ければ車に、羽を付ければ飛行機になります。有機化合物も、炭素がつながった骨組みに、どんな部品(官能基)が付くかで性質が変わります。骨組みと部品の組み合わせを読めれば、初めて見る分子の性質も予想できます。

01
高 3 の内容: 有機化合物は「骨格」と「官能基」で読む
化学の「有機化合物の性質」では、炭化水素、官能基をもつ化合物、ベンゼンの環をもつ芳香族化合物を学びます。官能基をもつ化合物として、アルコール、エーテル、アルデヒド、ケトン、カルボン酸、エステルが出てきます。
学習指導要領は、これらの性質が、炭素の骨格と官能基によって特徴づけられることを扱うとしています。例えば、炭素 3 個の骨格の真ん中の炭素にヒドロキシ基(−OH)が付くと、アルコールの 2-プロパノールです。これを酸化すると、同じ骨格のまま C=O をもつケトンのアセトンになります。官能基が変わると、性質も変わります。
分子の形も大切です。同じ分子式でも構造の違う異性体があり、鏡に映したような関係の鏡像異性体にも触れます。分子模型を手で組み立てると、紙の上の構造式が立体として見えてきます。
その後の「高分子化合物」では、ナイロンやポリエチレンなどの合成高分子と、デンプン・セルロース・タンパク質などの天然高分子を学びます。最後の「化学が果たす役割」では、化学が暮らしと未来の技術をどう支えているかをまとめます。
骨格と官能基に分けて読むと、たくさんの有機化合物を整理できます。
図解官能基で分ける有機化合物
- アルコール−OH(例: 2-プロパノール)
- エーテル−O−(例: ジエチルエーテル)
- アルデヒド−CHO(例: ホルムアルデヒド)
- ケトンC=O(例: アセトン)
- カルボン酸−COOH(例: ギ酸)
- エステル−COO−(例: 油脂)
- 芳香族化合物ベンゼンの環(例: フェノール)

02
つまずきやすい点: 有機の構造決定は、数字から始める
有機化合物の単元でつまずきやすいのが、構造決定の問題です。元素の質量の割合から分子式を求め、反応の結果から構造を 1 つに絞ります。手順が長いので、どこで迷ったかが分かるように、1 段ずつ書くのがコツです。
最初の段階は、化学基礎の物質量の計算です。下の例では、炭素・水素・酸素の質量の割合を、それぞれの原子量で割って、原子の数の比を出しています。分子量が分かれば、組成式から分子式が決まります。
分子式 C₄H₈O₂ の化合物は、エステルとカルボン酸に限ると、エステルが 4 つ、カルボン酸が 2 つあります。炭酸水素ナトリウムの水溶液を加えて二酸化炭素の泡が出れば、カルボン酸です。異性体を全部書き出してから絞ると、見落としが減ります。
官能基を見分ける反応もあります。写真の銀鏡反応は、アルデヒドなどが銀のイオンを還元し、試験管の内側に銀を付ける反応です。C₄H₈O₂ のエステルとカルボン酸の中では、ギ酸のエステルだけがこの反応を示します。
分子式は物質量の計算で、構造は反応の結果で決めていきます。
図解元素の割合から分子式を求める(例)
- 1原子量で割る: C 54.5÷12、H 9.1÷1.0、O 36.4÷16
- 2C 4.54、H 9.1、O 2.28。2.28 で割ると 2:4:1
- 3組成式は C₂H₄O(式量 44)
- 488 ÷ 44 = 2 なので、分子式は組成式の 2 倍


03
実験: エステルやナイロンを、自分の手で合成する
有機化合物の単元では、物質をつくる実験が増えます。解説は、エステルの合成や加水分解、ナイロンや熱硬化性樹脂の合成を例に挙げています。実験の前に、使う物質の性質や反応の条件、できる物質の性質を調べておくことが大切だとしています。
ナイロンの合成では、混ざり合わない 2 つの液の境目に、薄い膜ができます。膜をつまんで引き上げると、細い糸になって切れずに伸びていきます。写真のように、ガラスの器に巻き取ることもできます。原料の液は皮膚や目に害があるので、先生の指導のもとで行う実験です。
解説は、糖類やタンパク質の性質を調べる実験も例に挙げています。服の繊維や食べ物の多くは高分子でできていて、分子の鎖のつながり方が、丈夫さや溶けやすさを左右しています。
例えば、ブドウ糖の水溶液はフェーリング液を還元して、赤い沈殿をつくります。一方、砂糖の主な成分であるショ糖の水溶液は、そのままでは反応しません。同じ糖でも、分子の中に還元する部分があるかどうかで、結果が分かれます。
物質をつくる実験では、使う物質と反応の条件を、前もって調べておくことが大切です。


04
共通テストの化学基礎・化学: 時間と配点、受験者数
大学入学共通テストの理科は、5 つの出題科目から最大 2 つを選んで受けます(令和 9 年度試験の出題方法)。『化学』は 1 科目で 60 分・100 点です。『物理基礎/化学基礎/生物基礎/地学基礎』は、4 つの基礎のうち 2 つを選び、60 分で各 50 点の問題を解きます。
大学入試センターの問題作成方針は、『化学』などで、基本的な概念や原理・法則の理解を問う問題を出すとしています。あわせて、実験や調査の結果を数学的な手法で分析する問題や、初めて見る資料の現象を考察する問題も含めて考えるとしています。基礎を付した科目の内容との関連も考えるとしています。
受験者数と平均点(100 点満点に換算)を見ると、『化学』は令和 7 年度が 18 万 3,154 人・45.34 点でした。令和 8 年度は 18 万 1,584 人・56.86 点です。化学基礎は、令和 8 年度に 8 万 9,094 人が受け、平均は 57.16 点です。
平均点は、年によって 10 点以上変わります。点数そのものより、どの大問で時間を使ったか、どの単元でまちがえたかを記録すると、残りの期間に何を復習するかを決めやすくなります。
試験の時間と配点を知り、大問ごとの時間配分を練習しておきます。
図解共通テストの化学基礎と化学(令和 9 年度試験)
化学基礎
- 4 つの基礎から 2 つを選ぶ
- 2 つで 60 分・各 50 点
- 令和 8 年度は 8 万 9,094 人
化学
- 1 科目で 60 分・100 点
- 化学基礎との関連も考えて出題
- 令和 8 年度は 18 万 1,584 人

05
高 3 の 1 週間: 新しい単元と、3 年分の復習を並べる
高 3 の前半は、有機化合物と高分子化合物の新しい単元が続きます。並行して、高 1・高 2 で学んだ物質量や化学平衡の復習を進めます。下の図は、高 3 の 1 週間の例です。時間割や単元の順は、学校によって異なります。
大学入試センターのサイトでは、過去 3 年分の試験問題と正解を見られます。最初は大問 1 つを時間を決めて解き、慣れてきたら 60 分で 1 回分に挑戦します。
構造決定でまちがえた問題は、答えを写さずに、異性体を全部書き出すところからやり直します。どの手がかりで候補を減らせたかを書き添えておくと、次に同じ形の問題が出たときに使えます。
個別試験を記述式で行う大学では、答えだけでなく、考えた道すじを式と言葉で書くことが求められます。過去の問題を公開している大学もあるので、共通テストの演習と並べて、志望校の形式に慣れておきます。
異性体を書き出してから絞る練習を重ねると、構造決定の問題に強くなります。
図解高 3 の 1 週間(例)
- 月化学(有機)官能基ごとに反応をまとめる
- 火理論の復習物質量と平衡の問題を解き直す
- 水化学(高分子)合成高分子と天然高分子を比べる
- 木大問 1 つ時間を計って解き、かかった分を記録
- 金構造決定異性体を全部書き出してから絞る
- 土・日60 分で 1 回分大問ごとの時間配分を見直す
高校生のうちに試せること
C₄H₈O₂ の異性体を全部書き出す
このページの例の分子式 C₄H₈O₂ について、エステルとカルボン酸を全部書き出しましょう。エステルは 4 つ、カルボン酸は 2 つです。書けたら、どれが銀鏡反応を示すか、どれが炭酸水素ナトリウムと反応するかを書き添えてください。
PubChem で分子の形を回して見る
アメリカ国立衛生研究所(NIH)が公開する PubChem は、化合物の構造や性質を無料で調べられるデータベースです。酢酸エチル(ethyl acetate)やエタノール(ethanol)を英語名で検索し、立体の構造を回して見ましょう。
PubChem共通テストの『化学』を時間を計って解く
大学入試センターのサイトで、令和 8 年度の本試験の『化学』の問題を見られます。まず大問 1 つを時間を計って解き、慣れたら 60 分で 1 回分に挑戦しましょう。
大学入試センター 令和 8 年度 本試験の問題
「高 3: 有機化合物と受験の仕上げ」に関連するコミュニティ
研究室・部活・サークルなど、全国の 182 件から探せます。
高分子材料学研究室
東京大学(東京都)
農学生命科学研究科生物材料科学専攻・バイオマス化学

有機合成化学グループ
大阪大学(大阪府)
基礎工学研究科物質創成専攻・有機合成化学・鷹谷 絢 教授

高分子材料学
岡山大学(岡山県)
工学部 化学・生命系 応用化学コース・高分子科学・内田 哲也 教授
合成・天然高分子や炭素材料の結晶構造と物性の関係を解析し、高機能材料を開発する。
有機反応化学
筑波大学(茨城県)
有機化学
安定な分子や高分子を精密に変換する有機合成反応を研究する。
天然物合成化学教室
東京大学(東京都)
薬学系研究科・有機薬科学・井上 将行 教授
有機化学第一研究室
東北大学(宮城県)
理学研究科化学専攻・有機化学第一
学生団体・機関はまだ掲載していません
よくある質問
有機化合物は、覚えることが多くて不安です。
有機化合物は、炭素の骨格と官能基に分けて整理すると覚えやすくなります。学習指導要領も、性質が骨格と官能基で特徴づけられることを扱うとしています。官能基ごとに、代表的な物質と反応を 1 枚の表にまとめると、つながりが見えてきます。
有機の授業が終わるのが遅く、共通テストに間に合うか心配です。
単元の順や進み方は、学校によって異なります。共通テストの『化学』は、化学の内容全体が出題範囲です。教科書の有機化合物と高分子化合物の章を早めに読み、分からない用語を書き出して先生に質問しておくと安心です。
構造決定の問題が苦手です。
まず元素の割合から分子式を求め、異性体をすべて書き出します。そのうえで、炭酸水素ナトリウムとの反応や銀鏡反応などの手がかりを 1 つずつ当てはめて、候補を減らします。手順を毎回同じ順に書くと、迷う場所が分かるようになります。
