図 2 高校 3 年間の流れ()高校 3 年間の流れ 4
その先: 大学で生かす
高校の化学は、理学部の化学科だけでなく、薬学部・農学部・医療系の学部・工学部の授業の土台になります。物質量の計算から有機化合物まで、高校で学んだことが、学部ごとに違う形で生きてきます。

ひとことで言うと
同じ小麦粉から、パンもうどんも
同じ小麦粉から、パンもうどんもケーキもできます。高校の化学も同じで、薬学部では薬を、農学部では土や食べ物を、工学部では工場の設計を考えるための材料になります。どの学部でも、物質量と化学反応式は最初に使う道具です。

01
化学が続く学部: 理学・薬学・農学・医療系・工学
多くの大学では、理系の学部の 1 年に、化学の基礎の講義と化学の実験があります。高校の化学を、原子の中の電子やエネルギーの考え方から学び直します。科目の名前や必修かどうかは、大学や学部によって異なります。
その先は、学部によって化学の使い方が変わります。理学部の化学科では、物質そのものを深く調べます。薬学部では薬の成分と体の中での働き、農学部では土や作物、食品の成分を扱います。医療系の学部では、体の中の化学反応を生化学として学びます。
工学部の化学系の学科では、新しい材料をつくることや、化学反応を工場の規模で動かすことを学びます。化学科の 4 年間の流れは、このサイトの「化学」のページで紹介しています。
学部選びに迷ったら、高校の化学で好きだった単元を手がかりにできます。有機化合物が面白かった人は薬学や有機化学、気体や反応の熱の計算が好きな人は化学工学、物質の分析が好きな人は環境や検査の分野、という見方もあります。
どの学部でも、物質量と化学反応式は最初に使う道具になります。
図解高校の化学が続く学部・学科(例)
- 化学物理化学・有機化学・無機化学
- 薬学有機化学・薬理学・製剤学
- 農学土・肥料・食品の化学
- 医療系生化学と検査の化学
- 応用化学電池・半導体・高分子の材料
- 化学工学工場の装置と工程の設計
- 環境水と空気の成分の分析

02
薬学部: 6 年制で薬剤師を目指す
薬剤師の国家試験を受けるには、薬学部などの 6 年制の課程を修める必要があります。2004 年の法律の改正で、薬剤師を養成する課程は 6 年間になり、2006 年度から 6 年制の教育が始まりました。
厚生労働省の資料は、薬学の専門の科目として、有機化学・物理化学・分析化学・生化学などを挙げています。高校の化学の単元が、そのまま専門の科目の入口になります。その先に、薬が体の中でどう働くかを学ぶ薬理学や、薬の形を工夫する製剤学などが続きます。
卒業に必要な 186 単位のうち、20 単位以上は病院と薬局での実務実習で修めます。薬の性質を知るだけでなく、患者さんに薬を届ける現場で学ぶ時間が、課程に組み込まれています。
大学設置基準は、薬学の学部や学科に、薬用植物園(薬草園)を置くよう定めています。薬のもとになる植物を育てて観察できるのも、薬学部ならではです。研究者などを目指す 4 年制の学科を置く大学もあり、課程の分け方は大学によって異なります。
薬学部では、高校の有機化学と物理化学が、専門の科目の入口になります。
図解薬剤師になるまで(6 年制の例)
- 11〜2 年化学・生物・物理などの基礎を学ぶ
- 23〜4 年有機化学・薬理学などの専門科目
- 3実務実習病院と薬局で 20 単位以上
- 4国家試験6 年の課程を修めて受験する


03
農学と医療系: 肥料の袋の数字も、化学基礎で読める
農学部の農芸化学などの学科では、土・肥料・作物・食品・微生物を、化学の方法で調べます。大学設置基準は、農学の学部に農場を置くことも定めていて、畑で育てた作物を実験室で分析できます。
身近な例が肥料です。肥料の品質は、法律にもとづく公定規格で決められています。窒素の肥料である硫酸アンモニウム(肥料の名前は硫酸アンモニア)は、アンモニア性窒素を 20.5% 以上含むことと定められています。この数字は、下の例のように化学基礎の計算で確かめられます。
医療系の学部でも、体の中で起こる化学反応を学ぶ生化学などの授業があります。血液や尿の成分を測る検査では、写真のような自動の分析装置が使われ、試薬の反応と濃度の計算に化学の知識が生きます。科目の名前や内容は、大学や学科によって異なります。
肥料や検査の数字も、物質量と割合の計算で読み解けます。
図解肥料の窒素の割合を計算する
- 1式量 = 14.0×2 + 1.0×8 + 32.1 + 16.0×4 = 132.1
- 21 mol の中の窒素は 14.0 × 2 = 28.0 g
- 3窒素の割合 = 28.0 ÷ 132.1 × 100
- 4およそ 21.2%


04
工学部: 実験室の化学を、工場の大きさで動かす
工学部の化学系の学科では、応用化学や化学工学を学びます。応用化学では、電池や半導体、プラスチックなどの新しい材料をつくる研究をします。高校の電池や高分子化合物の単元が、その入口です。学科の分け方は、大学によって異なります。
化学工学会は、化学工学を「実験室の化学を実生産に乗せ、その便利さを社会に引き出すための学問」と説明しています。工場では、反応の前後に原料を混ぜたり、できた物を分けたりする工程が欠かせません。同学会によると、反応そのものより、こうした準備や後始末の工程に費用がかかる場合が多いといいます。
化学工学では、熱力学・流体力学・反応工学などを学び、工場全体を 1 つのシステムとして設計します。化学工学会は、活躍の場として、化学工業、プラント設計、石油精製、食品・医薬品、電力・ガスなどを挙げています。高校の蒸留や気体の計算が、大きな装置の設計につながっています。
大学設置基準は、工学の学部を置く大学に、原則として実験・実習工場を置くよう定めています。大学の中の工場で、機械や装置を実際に動かしながら学べるしくみです。
化学工学は、実験室の反応を、工場の工程として組み立てる学問です。
図解実験室の化学と、工場の化学(例)
実験室
- フラスコやビーカーで反応させる
- うまくいく条件を探す
- できた物を少しだけ取り出す
工場
- 大きな反応装置と配管で動かす
- 混ぜ方や熱の出入りを設計する
- 分離・精製までを工程として組む


05
高校のうちに: 化学の研究を発表する場に出てみる
大学の化学につながる経験を、高校のうちに積むこともできます。高校化学グランドコンテストは、高校生と高専生(3 年生以下)の化学の研究を発表する大会です。2004 年に大阪市立大学(今の大阪公立大学)を中心に始まり、2023 年度からは芝浦工業大学が主催しています。
第 21 回の最終選考会は、2026 年 10 月 24・25 日に、芝浦工業大学の豊洲キャンパスで開かれます。一次審査を通ったチームには、交通費と宿泊費の支援があります。研究のテーマや手法について、大学の先生に相談できるしくみもあります。
日本農芸化学会は、大会にあわせて、高校生が研究をポスターで発表する「ジュニア農芸化学会」を開いています。2026 年 3 月の会では、ホウレンソウの鉄の分析や、焼酎をつくった後のかすから生分解性プラスチックのシートをつくる研究などが並びました。
志望校のオープンキャンパスでは、化学系の研究室や学生実験の部屋を公開していることがあります。高校の化学で面白かった単元を 1 つ決め、その先にどんな研究があるかを学生や先生に聞いてみると、学部選びの手がかりになります。
高校の研究も、発表の場に出すと、大学の研究と同じ流れを体験できます。
高校生のうちに試せること
高校化学グランドコンテストの応募概要を読む
芝浦工業大学のサイトで、高校化学グランドコンテストの応募概要や、過去の大会の様子を見られます。学校の化学部や課題研究の仲間と、どんなテーマなら応募できそうかを話し合ってみましょう。
芝浦工業大学「第 21 回高校化学グランドコンテスト」ジュニア農芸化学会の発表の題を読む
日本農芸化学会のサイトで、ジュニア農芸化学会 2026 の発表の一覧を見られます。高校生がどんな身近な疑問から研究を始めているかを読み、自分ならどんな題にするかを考えましょう。
日本農芸化学会「ジュニア農芸化学会 2026」肥料の表示で、成分の割合を計算する
園芸店などで売っている肥料の袋には、窒素・りん酸・加里などの成分の割合が書かれています。成分の化学式が分かるものは、このページの例と同じ方法で割合を計算し、表示と比べましょう。
「その先: 大学で生かす」に関連するコミュニティ
研究室・部活・サークルなど、全国の 148 件から探せます。
界面システム工学研究グループ
名古屋大学(愛知県)
化学工学・山本 徹也 准教授
土壌保全学研究室
北海道大学(北海道)
生物環境工学・濱本 昌一郎 教授
植物土壌システム
名古屋大学(愛知県)
森林・環境資源科学・谷川 東子 准教授
植物・土壌・微生物の相互作用から人工林の持続性を検証する。
土壌環境微生物学研究分野
九州大学(福岡県)
システム生物工学・田代 幸寛 准教授

食品製造工学研究分野
九州大学(福岡県)
食料化学工学・井倉 則之 教授

生物有機化学研究室
新潟大学(新潟県)
農学部 農学科 応用生命科学プログラム・生物有機化学・佐藤 努 教授
テルペノイドなど天然有機化合物の生合成の仕組みを調べ、新しいタイプの酵素を探す。
学生団体・機関はまだ掲載していません
よくある質問
化学が苦手でも、薬学部でついていけますか?
厚生労働省の資料は、薬学の基礎の教育として、化学・物理学・生物学などを挙げています。入学前に、物質量の計算と有機化合物の官能基を復習しておくと、最初の授業に入りやすくなります。
化学科と応用化学科は、どう違いますか?
一般に、理学部の化学科は物質のしくみを深く調べること、工学部の応用化学科は新しい材料やつくり方を生み出すことに重心があります。ただし研究の内容は重なる部分も多く、学科の分け方は大学によって異なります。志望校の研究室の一覧で、研究のテーマを比べてみてください。
高校生でも、化学の研究を発表できますか?
高校化学グランドコンテストは、高校生と高専生(3 年生以下)が化学の研究を発表する大会です。日本農芸化学会のジュニア農芸化学会でも、高校生がポスターで研究を発表しています。くわしい条件は、それぞれの公式サイトで確かめてください。
