図 2 高校 3 年間の流れ()高校 3 年間の流れ 1
高 1: 化学基礎で土台をつくる
高校の化学は、2 単位の「化学基礎」から始まります。中学の理科で見た色や泡の変化を、原子・イオン・電子の目で説明し直し、ビュレットなどの器具で量を正確に測る 1 年です。

ひとことで言うと
地図アプリで、町から建物までズームする
地図アプリで町を拡大していくと、道や建物の 1 つ 1 つまで見えてきます。化学基礎は、中学の理科で見た化学変化を、原子や電子の大きさまで拡大して見直す科目です。拡大した目で見ると、反応する量の比や、金属の溶けやすさの違いまで説明できるようになります。

01
高 1 の科目: 2 単位の化学基礎で、化学の土台を学ぶ
高校の理科では、物理基礎・化学基礎・生物基礎・地学基礎のうち 3 科目を学ぶのが基本です。「科学と人間生活」を含めて 2 科目を学ぶ形もあります。化学基礎は標準 2 単位で、1 年で学ぶなら授業は週 2 時間ほどです。学ぶ学年は、学校によって異なります。
内容は 3 つに分かれます。導入の「化学と人間生活」では、物質を分ける・調べる実験の基本を身につけ、炎色反応や沈殿反応で物質に含まれる元素を確かめます。「物質の構成」では、原子の構造と周期表、化学結合を学びます。「物質の変化とその利用」では、物質量と化学反応式、酸と塩基、酸化と還元を学びます。
最初の単元から実験が続きます。学習指導要領の解説は、砂糖水と食塩水を、なめずに見分ける方法を考える活動を例に挙げています。電気を通すかを調べる、少しだけ乾かして顕微鏡で見るなど、調べ方を自分で考えるところから化学が始まります。
最後の「化学が拓く世界」では、学んだことが暮らしの技術とどうつながるかを確かめます。解説は、安全な水道水をつくる技術、食品を保存する技術、物を洗う技術を例に挙げています。水道水に残る塩素の濃さを測る実験や、セッケンの洗う働きを調べる実験も、ここで扱えます。
化学基礎は、物質の「つくり」と「変化」を、原子の目でひととおり学ぶ科目です。
図解化学基礎で学ぶこと
- 物質の分離・精製ろ過・蒸留・再結晶など
- 単体と化合物炎色反応・沈殿反応で元素を確かめる
- 原子の構造陽子・中性子・電子と同位体
- 周期表電子の並び方と族・周期
- 化学結合イオン結合・共有結合・金属結合
- 物質量mol・モル質量・モル濃度
- 酸と塩基pH と中和滴定
- 酸化と還元電子のやりとり・イオン化傾向

02
中学の理科から: 銅と酸素の「4:1」を、原子の重さで説明する
化学基礎は、中学の理科の続きです。中 1 では身の回りの物質と水溶液、中 2 では化学変化と原子・分子を学びました。中 3 の「化学変化とイオン」では、酸とアルカリ、中和、ダニエル電池を学んでいます。中学で使った化学式や化学反応式、イオンの記号は、化学基礎でもそのまま使います。
中 2 では、銅やマグネシウムを加熱して、結びつく酸素の質量を測り、グラフにしました。銅と酸素は、質量の比がおよそ 4:1 で結びつきます。中学では、この比を実験で見つけるところまででした。
化学基礎では、比の理由を原子の重さで説明します。酸化銅(CuO)は、銅の原子と酸素の原子が 1:1 で結びついた物質です。原子の相対的な重さ(原子量)は銅が 63.5、酸素が 16.0 なので、下の例のように質量の比がほぼ 4:1 になります。
中 3 では、金属によってイオンへのなりやすさが違うことを学びました。化学基礎では、これを金属のイオン化傾向として並べ、酸化と還元を電子のやりとりとして説明し直します。写真の金属樹は、イオンになりやすい亜鉛が溶け出し、液の中の鉛のイオンが電子を受け取って現れたものです。
中学で見つけた規則を、化学基礎では原子と電子で説明できるようになります。
図解銅と酸素の質量の比を、原子量から求める
- 1CuO では、銅と酸素の原子の数は 1:1
- 2質量の比は 63.5:16.0
- 363.5 ÷ 16.0 ≒ 3.97
- 4銅 4.0 g には、酸素が約 1.0 g 結びつく


03
つまずきやすい点: 化学式・物質量・反応式の 3 つ
最初のつまずきは、化学式を書くことです。イオンからできた物質は、陽イオンと陰イオンの電荷の合計が 0 になる比で組み合わせます。アルミニウムイオン Al³⁺ と酸化物イオン O²⁻ なら、2:3 で合計が 0 になるので、酸化アルミニウムは Al₂O₃ です。
次が物質量(mol)です。原子や分子を 6.02×10²³ 個ずつのまとまりで数え、質量・粒子の数・気体の体積を行き来します。気体なら、0 ℃・1.013×10⁵ Pa で 1 mol の体積は、種類によらず約 22.4 L です。どの量も、いったん mol に直してから考えると迷いにくくなります。
3 つ目が化学反応式の係数です。係数を決めたら、両辺の原子の数を元素ごとに数えて表にし、そろっているかを確かめます。係数の比は、反応する物質の量の比を表しているので、ここでのまちがいはその後の計算すべてに響きます。
日本化学会など 4 つの団体は、6.02×10²³ にちなんで、10 月 23 日を「化学の日」に決めています。この日を含む 1 週間は「化学週間」です。使う数学は、比と割合、10 の何乗の計算が中心なので、計算が苦手でも 1 つずつ慣れていけば大丈夫です。
化学式は電荷の合計 0、計算はまず mol、と順に確かめるとつまずきが減ります。

04
実験: 中和滴定で、目に見えない量を測る
化学基礎の代表的な実験が、中和滴定です。解説は、食酢の中和滴定を例に挙げています。濃さの分かった塩基の水溶液を、目盛りのついたガラス管(ビュレット)から少しずつ加え、中和がちょうど終わるまでの量を読み取ります。
使う器具には、それぞれ役目があります。ホールピペットは決まった体積の液を正確に取り、メスフラスコは液を決まった体積にうすめます。終わりの目印には、色が変わる指示薬を使います。フェノールフタレインなら、中和が終わったところで液がうすい赤色に変わります。
解説は、器具の扱い方や溶液のつくり方など、滴定の基本の技能を身につけることを大切にしています。同じ測定をくり返し、値がそろうかを確かめるのも、正確に測るための工夫です。実験では保護めがねを着け、先生の指示どおりに操作します。
化学基礎では、ほかに、金属のイオン化傾向を比べる実験や、金属樹の実験も例に挙がっています。実験の後には、目的・方法・結果・考察の順にレポートを書きます。予想と結果がずれた理由を考えるところが、考察の中心です。
器具の役目を知って正確に量ると、見えない物質の量が数字で分かります。
図解食酢の中和滴定の流れ(例)
- 1食酢をうすめるホールピペットとメスフラスコで 10 倍に
- 2指示薬を入れるうすめた液を量り取り、数滴加える
- 3塩基を加えるビュレットから少しずつ滴下する
- 4色の変化で止めるうすい赤色が消えなくなったら目盛りを読む
- 5濃さを計算する加えた体積から酢酸の濃さを出す


05
高 1 の 1 週間: 授業は週 2 回、計算は少しずつ毎日
化学基礎を 1 年で学ぶなら、授業は週 2 回ほどです。単位数や時間割は、学校によって異なります。下の図は、高 1 の 1 週間の例です。
物質量の計算は、1 日 2〜3 問ずつでも続けると慣れてきます。解いたら、g・mol・L などの単位が、式の中で正しく消えているかを確かめます。単位を追えば、割るのかかけるのかで迷わなくなります。
周期表は、原子番号 1〜20 番の元素を、電子の並び方とあわせて書けるようにしておくと役立ちます。解説も、原子番号 20 番までの代表的な元素の電子配置を扱うとしています。高 2 からの化学で出てくる元素の性質も、この並びをもとに整理します。
高 2 から文系・理系のコースに分かれる学校では、高 1 のうちにどちらに進むかを決めます。化学基礎の手ごたえは、選ぶときの材料の 1 つです。選び方は、高 2 のページで紹介します。
単位を追いながら計算すると、物質量の問題で迷いにくくなります。
図解高 1 の 1 週間(例)
- 月化学基礎(授業)物質量と化学反応式を学ぶ
- 火計算 3 問g・mol・L の単位を追って解く
- 水5 分の復習1〜20 番の元素の電子配置を書く
- 木化学基礎(実験)中和滴定で食酢の濃さを測る
- 金レポート結果を表にまとめ、考察を書く
- 土・日台所の化学食品の表示で成分を見る
高校生のうちに試せること
シミュレーションで化学反応式の係数を合わせる
コロラド大学ボルダー校の PhET は、無料で使える理科のシミュレーションです。「化学反応式」で、アンモニアの合成やメタンの燃焼などの係数を合わせましょう。てんびんの表示に切りかえると、両辺の原子の数がそろったかどうかが一目で分かります。
PhET「化学反応式」砂糖水と食塩水を、なめずに見分ける
学習指導要領の解説が挙げている活動を、家で試しましょう。砂糖水と食塩水を用意し、味を確かめずに見分ける方法を 3 つ考えます。黒い紙に 1 滴ずつ落として乾かし、残った跡を虫めがねで比べるのが手軽です。
原子番号 1〜20 の電子配置を書き出す
水素からカルシウムまでの 20 の元素について、電子が K 殻・L 殻・M 殻・N 殻にいくつずつ入るかを書き出しましょう。価電子(結びつきに使われる一番外側の電子)の数が同じ元素が、周期表の同じ縦の列に並ぶことを確かめてください。
「高 1: 化学基礎で土台をつくる」に関連するコミュニティ
研究室・部活・サークルなど、全国の 63 件から探せます。

分析化学研究室
東京大学(東京都)
理学系研究科化学専攻・分析化学・生命化学・小澤 岳昌 教授

錯体物性化学(大場研究室)
九州大学(福岡県)
無機・分析化学・大場 正昭 教授
金属-有機構造体(MOF)など金属錯体の機能性材料を開発する。
環境分析化学
千葉大学(千葉県)
理学部 化学科・環境分析化学・沼子 千弥 准教授
環境や生物に含まれる元素の化学状態や結晶構造を調べ、物質の形成過程を探る。
有機分析化学研究室
東北大学(宮城県)
理学研究科化学専攻・有機分析化学
三宅(祐)研究室
横浜国立大学(神奈川県)
理工学部 化学・生命系学科 化学応用教育プログラム・環境分析化学・三宅 祐一 教授
環境汚染物質の分析を高度化し曝露・リスク評価や低減技術を開発する。

分析化学研究室
岡山大学(岡山県)
理学部 化学科・分析化学・金田 隆 教授
レーザーを使う高性能な分離・計測法や、紙を基材にした簡易分析センサーを開発する。
よくある質問
化学基礎は、どのくらい計算が多いですか?
物質量、モル濃度、中和の量的関係などで、比と割合の計算をよく使います。使う数学は、分数や 10 の何乗の計算が中心です。単位を付けたまま計算すると、まちがいに気づきやすくなります。
中学の理科が苦手でも、化学基礎についていけますか?
化学基礎は、中学の化学変化やイオンの内容を土台にしています。不安な人は、中 2 の「化学変化と原子・分子」と、中 3 の「化学変化とイオン」の教科書を読み返しておくと安心です。原子・分子・イオンの区別がつけば、最初の単元に入りやすくなります。
化学基礎は、必ず学ぶ科目ですか?
高校の理科は、物理基礎・化学基礎・生物基礎・地学基礎から 3 科目を学ぶか、「科学と人間生活」を含めて 2 科目を学ぶのが基本です。どの科目を開いているかは学校によって異なるので、自分の学校の教育課程を確かめてください。
