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図 2 高校 3 年間の流れ()高校 3 年間の流れ 1

高 1: 公共で社会に参加する

全員が学ぶ「公共」は、原則として高 1・高 2 のうちに学ぶ科目です。お金の分け方の思考実験、投票率の資料、架空の知事選の模擬選挙などを通して、社会のことを自分で判断する力をつけます。

教室の真ん中に置かれた投票箱に、高校 1 年生が二つ折りの投票用紙を入れようとしている。後ろでは生徒たちが折れ線グラフの紙を指さして話し合い、窓の外には市役所と商店街、公園で遊ぶ小さな子どもたちが見える

ひとことで言うと

公道に出る前の、教習所の練習

車の教習所では、交通ルールを覚えるだけでなく、構内のコースで判断の練習をしてから公道に出ます。公共も同じです。18 歳で有権者になり、一人で契約を結ぶ前に、思考実験や模擬選挙で社会のことを判断する練習をします。

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高 1 の科目: 全員が学ぶ「公共」

「公共」は、2022 年度に入学した高校生から全員が学んでいる、標準 2 単位の科目です。それまでの「現代社会」に代わって新しくできました。原則として高 1・高 2 のうちに学び、倫理と政治・経済は、公共を学んだあとに選んで進む科目です。

選挙権は 2016 年 6 月から、成年年齢は 2022 年 4 月から 18 歳です。高校の 3 年間のうちに、多くの人が有権者になり、一人で契約を結べる年齢になります。公共は、その準備をする科目でもあります。

中学の公民的分野では、「対立と合意」「効率と公正」という見方で、社会のきまりを考えました。公共はこの見方を土台に、3 つの大項目を A → B → C の順に 学びます。

A は「公共の扉」、B は「自立した主体としてよりよい社会の形成に参画する私たち」、C は「持続可能な社会づくりの主体となる私たち」です。A で考え方の道具を身につけ、B で法・政治・経済の身近な課題に使い、C で自分の課題を探究します。

公共は、考え方の道具を先に身につけ、それを身近な課題で使う科目です。

図解公共の 3 つの大項目

  1. 1A 公共の扉幸福・正義・公正を考える道具を持つ
  2. 2B 社会に参画契約・選挙・財政など身近な課題を考える
  3. 3C 持続可能な社会自分で課題を決めて探究し、提案する

02

公共の扉: 1,000 円を 2 人で分ける思考実験

A の「公共の扉」では、社会のことを判断するときの手がかりを学びます。学習指導要領は、2 つの考え方を挙げています。行為の結果である個人や社会全体の幸福を重視する考え方と、行為の動機となる公正などの義務を重視する考え方です。

解説は、この 2 つを使う思考実験の例をいくつも挙げています。その 1 つが、お金の分け方です。第三者からもらったお金の分け方を一方が決め、もう一方は受け入れるか断るかしか選べません。断れば、2 人とも何ももらえません。経済学で「最後通牒ゲーム」と呼ばれる実験です。

損得だけで考えれば、受け手は 1 円でも受け取るはずです。ところが実際の実験では、そうなりません。2004 年に、37 本の論文の 75 の結果をまとめた研究があります。提案者は平均で全体の 40% を相手に渡そうとし、提案の 16% は断られていました。人は損をしてでも、不公平な分け方を断ることがあるのです。

解説は、今の世代どうしだけでなく、将来の世代との関係も考えるよう求めています。将来の世代の人々は、今の選挙や市場に参加できません。どうすれば、今の世代が将来の世代のことを考えて決められるのか。こうした問いも、公共の扉で考えます。2 つの考え方をトロッコ問題で比べる例は、図 1 の「人間と思想(倫理)」で紹介しています。

思考実験は、複雑な問題を単純にして、判断の手がかりを確かめる道具です。

図解お金を分ける思考実験(例)

入力A さんが 1,000 円の分け方を決め、B さんは受けるか断るかだけを選べる
  1. 1A さんが「900 円と 100 円」で分けると提案
  2. 2B さんが断ると、2 人とも 0 円になる
  3. 3損得だけなら、B さんは 100 円でも受けるはず
  4. 4実験では、少なすぎる提案は断られることがある
結果人は損得だけでなく、公正さでも判断する

03

資料を読む: 19 歳の投票率は、なぜ 18 歳より低い?

B の大項目では、法・政治・経済の身近な課題を考えます。政治の分野で解説が挙げる問いの例は、「なぜ政治に参加するのか」「公正な世論はどのように形成され得るか」などです。ここでは、資料から問いを立てる例を見てみます。

18 歳選挙権で初めての国政選挙だった 2016 年 7 月の参議院議員選挙では、18 歳と 19 歳の投票率が全数で調べられました。18 歳は 51.28%、19 歳は 42.30% です。全体の投票率は 54.70% でした。1 歳しか違わないのに、約 9 ポイントの差があります。

総務省は同じ年の 10 月、18〜20 歳の 3,000 人に意識調査をしました。投票に行かなかった理由で最も多かったのは、「今住んでいる市区町村で投票することができなかったから」で 21.7% です。この答えは、18 歳では 15.6%、19 歳では 27.5% でした。進学や就職で家を離れ、住民票を移していない人が多いからではないか、という見方があります。同じ調査では、親と離れて暮らす人のうち、住民票を今の住所に移していた人は 32.7% でした。

選挙人名簿に登録された市区町村を離れていても、今いる市区町村の選挙管理委員会で不在者投票ができます。新しい住所で投票するには、住民票を移してから 3 か月以上が必要です。同じ調査で、この 3 か月の決まりを知っていた人は 38.6% でした。数字の差を見つけたら、理由を仮説にして、別の資料で確かめます。年代別の投票率を何回分も並べて読む方法は、図 1 の「政治と民主主義」で紹介しています。

数字の差から問いを立て、別の資料で仮説を確かめます。

図解投票率の差から問いを立てる(例)

入力2016 年の参院選の投票率: 18 歳 51.28%、19 歳 42.30%
  1. 1差に気付く: 1 歳違いで約 9 ポイント
  2. 2問いを立てる: なぜ 19 歳は低いのか
  3. 3仮説: 進学などで家を離れた人が多いのでは
  4. 4別の資料で確かめる: 総務省の意識調査
結果「今の住所で投票できなかった」は 19 歳で 27.5%

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模擬選挙: 架空の知事選で 1 票を投じる

解説は、選挙管理委員会などの助言を得ながら模擬選挙をする学習を例に挙げています。候補者の政策を比べる表を作り、A で学んだ考え方を使って、自分の意見に近い政策を選びます。

総務省と文部科学省がつくった高校生向けの副教材「私たちが拓く日本の未来」には、模擬選挙の進め方が載っています。架空の候補者で行う例が「未来の知事を選ぼう」です。大学生などが候補者、高校生が有権者となり、地域の課題を争点にします。

流れは、地域の課題を新聞などで調べる事前学習から始まります。候補者の演説会や政見放送の上映会で政策を見比べ、教室に再現した投票所で投票し、最後に何を基準に選んだかを振り返ります。選挙管理委員会の協力を得て、本物の投票箱を使う方法もあります。

投票用紙にも工夫があります。実際の選挙の投票用紙は、投票箱の中で自然に折り目が開くので、開票の時間が短くなります。2016 年の総務省の調査では、高校生が選挙や政治に関心を持つためにすべきことも聞いています。最も多かった答えは、「学校で模擬選挙を体験する」で 23.1% でした。

模擬選挙は、候補者を選ぶ基準を自分で決める練習です。

図解模擬選挙「未来の知事を選ぼう」の流れ

  1. 1事前学習新聞などで地域の課題を 3 つ書き出す
  2. 2政策を比べる選挙公報を読み、評価表に点を付ける
  3. 3演説会演説や政見放送で政策を見極める
  4. 4投票・開票教室に再現した投票所で投票する
  5. 5振り返り何を基準に選んだかを話し合う
台の上に置かれた金属の投票箱のふたが開き、中が空になっている。箱の側面には「投票箱」「県知事」と書いた紙が貼ってある
投票が始まる前に、ふたを開けて中が空であることを確かめる投票箱(2024 年の静岡県知事選挙で、許可を得て撮影)。副教材によると、その投票所で最初に投票する人が、空であることを確かめます。写真: Halowand(CC BY-SA 4.0・Wikimedia Commons)

05

持続可能な社会の探究と、つまずきやすい点

C の「持続可能な社会づくりの主体となる私たち」は、公共のまとめです。解説は、探究の手順の例として、課題の設定、情報の収集と読み取り・分析、課題の探究、自分の考えの説明・論述の 4 つの段階を示しています。

解説の例では、高校生の A さんが人口減少を取り上げます。町の中心部に人と施設を集めれば、多くの住民が便利になり、社会全体の幸福は増えるかもしれません。一方で、住み慣れた周辺の地域で暮らしたい人の、居住・移転の自由も守る必要があります。A さんは、A の大項目で学んだ 2 つの考え方を対照させて考えました。

つまずきやすいのは、用語を覚えることだけで終わることです。公共で求められるのは、立場の違う意見を比べ、自分の考えに根拠を示すことです。事実と意見を分けて書き、反対の立場ならどう考えるかを 1 行でも書いてみるのがコツです。

2026 年 1 月の共通テストでも、公共の大問がこうした考え方を問いました。社会保障の再分配について、最も恵まれない立場の人の状況を改善する考え方を、ロールズの「格差原理」に当てはまるものとして選ぶ問いです。最大多数の人が利益を受ける制度を優先する、という考え方と見分けます。

立場の違う意見を比べ、根拠を示して自分の考えを書きます。

クイズ高 1 の公共クイズ

このページで紹介した内容から出題します。

  1. Q12016 年の参院選で、19 歳の投票率は 18 歳と比べてどうだった?

  2. Q2お金を分ける最後通牒ゲームの実験で、提案者が相手に渡そうとした額は平均で全体の何%?

  3. Q3投票所で最初に投票する人が確かめることは?

0 / 3 問に回答

高校生のうちに試せること

  • 副教材で模擬選挙の進め方を読む

    総務省のサイトで、高校生向けの副教材「私たちが拓く日本の未来」を読めます。実践編の模擬選挙の章を開き、候補者の評価表を使って、架空の候補者を比べてみましょう。

    総務省「私たちが拓く日本の未来」
  • 友だちと最後通牒ゲームを試す

    お菓子 10 個を 2 人で分けます。1 人が分け方を決め、もう 1 人は受けるか断るかだけを選びます。断ったら 2 人とも食べられない決まりです。役を入れかえて何回か試し、どこから断りたくなったかを話し合いましょう。

  • 共通テストの公共の大問を解く

    大学入試センターのサイトで、2026 年の『公共,倫理』『公共,政治・経済』を見られます。第 1 問はどちらも同じ公共の大問です。ロールズの格差原理を問う問 1 を、選択肢ごとに理由を書きながら解きましょう。

    大学入試センター 過去 3 年分の試験問題
  • 進学したらどこで投票できるかを調べる

    総務省のサイトで、期日前投票と不在者投票のしくみを読めます。進学や就職で家を離れたら、どこで、どんな手続きで投票できるかを、自分のこととして確かめましょう。

    総務省「投票制度」

「高 1: 公共で社会に参加する」に関連するコミュニティ

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よくある質問

公共は、高 1 と高 2 のどちらで学びますか?

学習指導要領は、原則として入学した年かその次の年のうちに学ぶよう定めています。どちらの学年で学ぶかは、高校によって異なります。倫理と政治・経済は、公共を学んだあとに選んで学ぶ科目です。

模擬選挙では、実際の政党や候補者も扱いますか?

副教材には、架空の候補者で行う方法と、実際の選挙の時期に合わせて行う方法の両方が載っています。どちらも、政治的な課題を自分で調べ、自分なりの基準で判断して投票する練習です。学校では、政治的な中立に気を付けて行われます。

進学して一人暮らしを始めたら、どこで投票すればよいですか?

引っ越して住所が変わったら、住民票を移す手続き(転入届)が必要です。新しい住所で投票できるのは、住民票を移して 3 か月以上たってからです。選挙人名簿に登録された市区町村を離れて暮らしている間は、今いる市区町村の選挙管理委員会で不在者投票ができます。手続きは、総務省のサイトで確かめてください。