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図 2 高校 3 年間の流れ()高校 3 年間の流れ 3

高 3: 地学で大気・海・宇宙を学ぶ

高 3 では、地学の後半の「地球の大気と海洋」と「宇宙の構造」を学びます。天気図や潮位、星の明るさのデータを読み、台風の高潮から宇宙の年齢までを計算で確かめながら、共通テストに向けて 3 年分をまとめる 1 年です。

夕暮れの学校の屋上で、白い気球を空へ放つ高校生と、天体望遠鏡を組み立てる高校生、遠くに広がる海と、空に光り始めた赤い星と青白い星

ひとことで言うと

荷物の追跡で、届く時刻を知る

宅配便の追跡サービスは、荷物が今どこにあり、いつ届きそうかを教えてくれます。高 3 の地学も、台風や海流、遠い星や銀河の「今の位置と動き」を観測データから読み、これから起きることを予測したり、過去をさかのぼったりする学びです。

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高 3 の内容: 大気と海、そして宇宙へ

地学の後半は、「地球の大気と海洋」と「宇宙の構造」です。大気では、偏西風の蛇行と地上の高気圧・低気圧の関係、雲や雨のでき方、線状降水帯のような大雨のしくみを学びます。海洋では、海流や波、潮の満ち干、高潮、エルニーニョ・南方振動を学びます。

宇宙では、地球の自転と公転の証拠、太陽系の天体の運動、太陽の活動、恒星の性質と一生、銀河系、膨張する宇宙を学びます。解説は、黒点の数のグラフから太陽の活動の周期に気付く学習や、近くの恒星の距離と明るさから HR 図を描く学習を例に挙げています。

大気・海・宇宙は、教室で実験しにくい対象です。そのため、観測データや資料をもとにした実習が大切にされています。データは、今まさに起きている変化も教えてくれます。

気象庁と海上保安庁は 2025 年 8 月、2017 年 8 月から続いた黒潮大蛇行が、2025 年 4 月に終わったと発表しました。黒潮大蛇行は、黒潮が紀伊半島の潮岬で岸から離れ、東海沖で北緯 32 度より南を流れる状態です。今回は 1965 年以降で最も長い、7 年 9 か月続きました。黒潮の流れ方は、船の航路や漁場の位置にも影響します。

高 3 の地学は、手の届かない大気・海・宇宙を、データで読み解く学びです。

図解高 3 で学ぶ順(例)

  1. 1大気の構造大気の成分・放射・熱の収支
  2. 2大気の運動と気象偏西風・雲と雨・日本の天気
  3. 3海洋と海水の運動海流・波浪・潮汐・高潮
  4. 4太陽系自転と公転の証拠・ケプラーの法則
  5. 5恒星と銀河系等級・スペクトル・HR 図
  6. 6銀河と宇宙銀河の分布・膨張する宇宙

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大気と海: 台風が来ると、海面が持ち上がる

大気と海は、つながっています。台風や低気圧の中心では気圧が周りより低く、海面が持ち上がります。これを吸い上げ効果といいます。気象庁の資料によると、海面の気圧が 1 hPa 下がると、潮位は約 1 cm 上がります。1000 hPa だった所の気圧が 970 hPa に下がれば、約 30 cm です。

風も海面を押し上げます。沖から海岸に向かって吹く強い風は、海水を海岸に吹き寄せます。これが吹き寄せ効果で、海面の上昇は風速の 2 乗に比例します。風速が 2 倍になれば、海面の上昇は 4 倍です。遠浅の海や、風が吹いてくる方向に開いた湾では、特に高くなります。

気象庁の資料は、1999 年の台風第 18 号の例を挙げています。八代海の沿岸では、上陸時の中心気圧はおよそ 950 hPa で、吸い上げ効果は 60 cm 程度と考えられます。ところが、局地的には 3 m もの高潮が起きていました。資料は、差の約 2.4 m を吹き寄せ効果によるものとしています。

解説は、高潮が大潮の満潮のころに重なると、沿岸で大規模な浸水が起きるおそれがあることに触れるよう求めています。気圧・風・潮の満ち干を重ねて考えるのが、大気と海をつなぐ地学の見方です。

高潮の高さは、気圧の低さと風の強さに分けて見積もれます。

図解高潮の高さを分けて考える(1999 年 台風第 18 号・八代海)

入力上陸時の中心気圧は約 950 hPa。局地的に約 3 m の高潮
  1. 1気圧が 1 hPa 下がると、潮位は約 1 cm 上がる
  2. 2吸い上げ効果は 60 cm 程度
  3. 33 m − 0.6 m = 約 2.4 m
  4. 4残りは、風による吹き寄せ効果
結果高潮の大部分は、風が海水を海岸に吹き寄せたことによる
宇宙から見た、白い雲が大きな渦を巻く台風。右上には日本列島の海岸線が見え、外側の雲が陸にかかっている
2019 年 10 月 11 日に NASA の衛星 Aqua がとらえた台風第 19 号(令和元年東日本台風)。外側の雲が、本州・四国・九州にかかり始めています。写真: NASA(Public domain・Wikimedia Commons)

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宇宙: 重い星ほど短命、宇宙の年齢は銀河の動きから

星の明るさは等級で表し、5 等級の差が明るさ 100 倍にあたります。星の色は表面の温度を表し、赤い星ほど低く、青白い星ほど高い温度です。冬の夜空のオリオン座では、左上の赤っぽいベテルギウスと、右下の青白いリゲルを見比べられます。

令和 8 年度の共通テストの地学には、星団の HR 図から恒星の寿命を比べる問題が出ました。主系列星 X は絶対等級 −1、表面温度約 6,000 K の主系列星 Y は絶対等級 4 で、X の質量は Y の 3 倍です。主系列星の寿命は、質量にほぼ比例し、光度にほぼ反比例します。計算すると、X の寿命は Y の約 0.03 倍です。重い星ほど明るく輝き、早く一生を終えます。

宇宙の年齢も、データから考えられます。銀河までの距離と遠ざかる速さは比例し、その比例定数をハッブル定数といいます。ハッブル定数の逆数(ハッブル時間)は、宇宙の年齢の目安になります。1929 年にハッブルが求めた値は、1 Mpc(約 326 万光年)あたり秒速約 500 km でした。この値で計算すると約 20 億年で、約 46 億年の地球より短くなってしまいます。

その後の観測で、値は 70 前後に改められました。それでも今、2 つの方法で求めた値の食い違いが問題になっています。宇宙マイクロ波背景放射から求めると約 70.3、恒星や超新星を使って求めると約 73.4 です。新しい物理の手がかりかもしれないと、研究が続いています。

星の色・明るさや銀河の動きから、星の一生や宇宙の年齢まで推し量れます。

図解HR 図から、恒星の寿命を比べる(令和 8 年度 共通テスト 地学から)

入力主系列星 X は絶対等級 −1、主系列星 Y は 4。X の質量は Y の 3 倍
  1. 1等級の差は 5 なので、X は Y の 100 倍明るい
  2. 2寿命は質量に比例し、光度に反比例する
  3. 3X の寿命 ÷ Y の寿命 = 3 ÷ 100
  4. 4= 0.03
結果X の主系列星としての寿命は、Y の約 0.03 倍
黒い夜空いっぱいの星の中に、オリオン座の星々が並ぶ。左上に赤っぽい星、右下に青白い明るい星が光っている
オリオン座。左上の赤っぽい星がベテルギウス、右下の青白い星がリゲルです。色の違いは、星の表面の温度の違いを表しています。写真: TheStarmon(CC BY 3.0・Wikimedia Commons)

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共通テストの地学基礎・地学: タイムマシンで過去へ行く問題も

大学入学共通テストの理科には、『物理』『化学』『生物』『地学』と『物理基礎/化学基礎/生物基礎/地学基礎』の 5 つの出題科目があります。令和 9 年度試験の出題方法では、この中から最大 2 つを選んで受けます。『地学』は 60 分・100 点です。基礎の科目は、4 つのうち 2 つを選び、60 分で各 50 点の問題を解きます。

問題作成方針は、『地学』で、観察や実験、調査の結果を数学的な手法も使って分析する力や、初めて見る資料を考察する力を問うとしています。令和 8 年度の第 1 問は、タイムマシンで過去や未来の地球と宇宙を調べるという設定でした。平安時代に行き、天喜 2 年(1054 年)に現れた「客星」の正体を説明する問いもありました。

令和 8 年度の受験者は、地学基礎が 4 万 8,438 人、地学が 2,701 人でした。どの科目を課すかは、大学や学部によって違います。志望校が『地学』を認めているかは、募集要項で確かめてください。

共通テストの地学は、初めて見る設定や資料を、学んだ法則で読み解く問題が中心です。

クイズ高 3 の地学クイズ

このページで紹介した内容から出題します。

  1. Q11000 hPa だった海に、中心気圧 950 hPa の台風が来た。吸い上げ効果で、海面はおよそ何 cm 上がる?

  2. Q2共通テストの地学に出た、1054 年に現れた「客星」の正体は?

  3. Q31929 年にハッブルが求めたハッブル定数(約 500)で計算した、宇宙の年齢の目安は?

0 / 3 問に回答

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高 3 の 1 週間: 新しい単元と、資料を読む演習を並べる

地学の 4 単位を高 2 と高 3 に分けて学ぶなら、授業は週 2 回ほどです。1 年で学ぶ学校では、週 4 回ほどになります。下の図は、高 3 の 1 週間の例です。

宇宙の単元は教科書の後半にあり、演習に使える時間が短くなりがちです。授業の進み方を見ながら、宇宙の章を早めに読み、分からない用語を書き出しておくと安心です。

自分で観測データを見るのも、よい練習になります。気象庁のサイトでは、地上の天気図のほか、上空の様子を表す天気図も見られます。同じ日の地上と上空の天気図を並べると、偏西風の蛇行と地上の高気圧・低気圧の関係が、実際の空で確かめられます。

新しい単元を学びながら、資料を読む演習と空の観察を、毎週少しずつ続けます。

図解高 3 の 1 週間(例)

  1. 月地学(大気)偏西風と高気圧・低気圧の関係を学ぶ
  2. 火天気図を読む地上と上空の天気図を見比べる
  3. 水地学(宇宙)HR 図の読み方を練習する
  4. 木大問 1 つ時間を計って解き、かかった分を記録
  5. 金計算の練習高潮・等級・寿命の計算を 1 問ずつ
  6. 土・日星空を見る星の色を比べ、月の位置を記録する

高校生のうちに試せること

  • 気象庁の天気図で、地上と上空を見比べる

    気象庁のサイトで、今日の地上の天気図を開きましょう。次に、数値予報天気図のページで上空の天気図を開き、地上の低気圧が、上空の気圧の谷のどちら側にあるかを確かめてください。数日続けて見ると、偏西風に乗って移っていく様子が分かります。

    気象庁「数値予報天気図」
  • 潮位表で、満潮の時刻の動きをグラフにする

    気象庁の潮位表で、住んでいる地域に近い地点を選び、1 か月分の満潮の時刻と潮位を表にしましょう。満潮の時刻が毎日少しずつ遅れることや、潮位の差が大きい日(大潮)が月の形と関係することを、グラフで確かめてください。

    気象庁「潮位表」
  • オリオン座で、星の色を見比べる

    冬の夜、南の空に見えるオリオン座で、赤っぽいベテルギウスと青白いリゲルを見比べましょう。スマートフォンのカメラで撮ると、色の違いが分かりやすくなることがあります。暗い場所へ出かけるときは、大人と一緒に行ってください。

  • 共通テストの『地学』の第 1 問を解く

    大学入試センターのサイトで、令和 8 年度の本試験の『地学』の問題を見られます。タイムマシンの設定の第 1 問を時間を計って解き、どの単元の知識を使ったかを書き出しましょう。

    大学入試センター 令和 8 年度 本試験の問題

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よくある質問

宇宙の単元まで、授業で終わるか不安です。

単元の順や進み方は、学校によって異なります。共通テストの『地学』は、地学の内容全体から出題されます。教科書の宇宙の章を早めに読み、分からない用語を先生に質問しておくと安心です。

地学で受験できる大学は少ないのですか?

大学や学部、入試の方式によって異なります。共通テストでは『地学』を選べますが、課す科目は大学ごとに違います。個別試験で地学を選べるかどうかも含めて、志望校の募集要項で確かめてください。

星や天気の観測は、高校生でもできますか?

できます。肉眼や双眼鏡で星の色や月の動きを記録したり、気象庁のサイトで天気図や潮位を調べたりするのは、すぐに始められます。各地の科学館や公開天文台には、望遠鏡で星を見る観望会を開いている所もあります。