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図 3 仕事での生かし方仕事での生かし方 3

大地を調べて安全につくる

ダムやトンネル、道路、建物をつくる前に地面の下を調べ、地すべりや揺れに強い計画づくりに生かす仕事です。高校の地学で学ぶ地層の重なり、岩石の見分け方、柱状図の読み方が、現場でそのまま使われています。

山あいの工事予定地でボーリングの試料を見比べる若い技術者、しま模様の地層の崖を観察する若い技術者、事務所で地下の断面図を描く若い社員が、一続きに描かれた様子

ひとことで言うと

ケーキに竹串を刺して、中を確かめる

焼いたケーキの中の様子は、竹串を刺して抜くと分かります。地質調査では、地面に細い穴を掘り、地下の土や岩を筒の形のまま取り出して確かめます。何か所かの結果をつなぐと、見えない地下の断面が描けます。

01

どんな仕事?: 見えない地下を、掘って調べて描く

地質調査の技術者は、工事の前に「地面の下がどうなっているか」を調べる専門家です。道路やトンネル、ダム、橋、ビルなどの計画が決まると、現場の地形と地層を調べ、細い穴を掘って地下の土や岩を取り出します。その結果は、建設コンサルタントや設計者が、安全で無駄のない計画をつくる材料になります。

職場は、地質調査の会社や建設コンサルタント、国や自治体などです。調査の目的は、かつては建設が中心でしたが、今は防災や環境、古くなった道路や堤防の維持管理にも広がっています。

どの仕事でも、高校の地学で学ぶ力が土台です。地層の重なりを読み、岩石を見分け、地下の形を立体的に思い描く力は、教室でも現場でも同じです。

地層・岩石・立体の見方が、地下を調べる共通の道具です。

図解地質調査で使う高校の地学

地質調査
  • 地層の重なり下の層ほど古いことから順番を読む
  • 柱状図掘った試料を深さの順に図にする
  • 岩石の見分け泥岩・砂岩・凝灰岩などを見分ける
  • 鍵層火山灰の層を目印に地層をつなぐ
  • 断層としゅう曲地層のずれや曲がりを見つける
  • 地下水水を通しやすい層と通しにくい層を知る

02

ボーリング調査: 63.5 kg のおもりを落とした回数で、地面のかたさを測る

地面のかたさを調べる代表的な方法が、ボーリングと「標準貫入試験」です。細い穴を掘り、先に試料を取る筒をつけた棒を穴の底に下ろします。上から 63.5 kg のおもりを 76 cm の高さから落とし、筒を 30 cm 打ち込むのに何回かかったかを数えます。この回数を「N 値」と呼びます。

N 値が小さいほどやわらかく、大きいほどかたい地盤です。筒の中には、その深さの土や砂が入っています。技術者は、試料の色や粒の大きさ、貝殻や火山灰が混じっているかを見て、深さごとの地層を記録し、「柱状図」にまとめます。地学の授業で描く柱状図と、考え方は同じです。

1 本の柱状図だけでは、地下の様子は分かりません。何本かの柱状図を並べ、火山灰の層のように目印になる層でつなぐと、地下の断面図が描けます。地学で学ぶ「地層の対比」は、建物の基礎や杭の深さを決める根拠になります。

柱状図をつないで、見えない地下の断面を描きます。

図解建物の基礎を考える(例)

入力川の近くの土地に、5 階建ての建物を建てる計画
  1. 1敷地の 3 か所でボーリングをして試料を取る
  2. 2深さを変えながら標準貫入試験で N 値を測る
  3. 3試料を観察し、3 本の柱状図を描く
  4. 4火山灰の層を目印に、柱状図をつないで断面図にする
結果かたい層の深さが分かり、杭の長さの案を出せる
木の箱の中に、細長い円柱形の土と岩の試料が何列も並べられている
箱に並べたボーリングの試料(コア)。深さの順に並べて残し、土や岩の色、粒の大きさ、かたさの変わり目を記録します。写真: 橄欖岩(CC BY-SA 3.0・Wikimedia Commons)

03

地すべりを調べる: 東名・国道 1 号・東海道線の真上の斜面

地すべりは、斜面の土や岩のかたまりが、地下水などの影響でゆっくりと下へ動く現象です。国土交通省によると、新第三紀の固まり方が弱い泥岩や凝灰岩が分布する地域で多く見られます。岩石が砕かれたり、変成作用を受けたりした地域にも多い現象です。地学で学ぶ地質時代と岩石の知識が、危ない場所の見当をつける手がかりになります。

静岡市の由比地区では、斜面のすぐ下を国道 1 号、東名高速道路、JR 東海道線が通っています。地すべりが起きれば、東西を結ぶ交通に大きな影響が出るおそれがあります。国はここで地すべり対策を進めていて、事業費は約 428 億円(2005〜2030 年度)です。

対策の中心は、地下水を抜くことです。斜面の中に掘った排水トンネルや、深い井戸のような集水井、横向きに掘ったボーリングの穴から、地下の水を外へ出します。2023 年の台風第 7 号では、1 時間に 38 mm の雨が降りました。それでも地下水の水位の上昇は抑えられ、国道 1 号などへの被害を防ぎました。どの深さに水がたまりやすいかを調べる地質調査が、こうした対策の出発点です。

地すべりの対策は、地下の水の通り道を知ることから始まります。

クイズ大地を調べるクイズ

答えを 1 つ選んでください。

  1. Q1標準貫入試験で、地面に落とすおもりの重さは?

  2. Q2国土交通省などの「KuniJiban」で公開されているボーリングの柱状図は、およそ何本?

  3. Q3静岡市の由比地区で、地すべり対策の中心になっている方法は?

0 / 3 問に回答
急な山の斜面のすぐ下の海沿いに、高速道路と一般道が並んで走り、遠くに雪をかぶった富士山が見える
静岡市の薩埵峠から見た駿河湾と富士山。急な斜面のすぐ下を、東名高速道路や国道 1 号が通っています。このあたりの由比地区で、地すべりの対策が進められています。写真: Taka1(CC BY-SA 4.0・Wikimedia Commons)

04

地質調査会社の若手技術者の 1 日(例)

ここでは、道路の工事の前の調査を受け持つ、地質調査会社の若手技術者の 1 日の例を紹介します。現場に出る日と、会社で図面をつくる日があり、仕事の中身は会社や調査によって異なります。

現場では、ボーリングの機械を動かす技術者と一緒に、深さごとの試料を確かめ、N 値を記録します。近くの崖や切り通しに地層が見えていれば、ハンマーで岩を割って新しい面を出し、ルーペで粒を観察します。国の調査でつくる柱状図には、現場に立ち会った地質調査技士の名前と登録番号を書くことになっています。

会社に戻ると、観察の記録から柱状図を清書し、何本かの柱状図をつないで断面図を描きます。地学の授業で露頭をスケッチしたり、柱状図から地層の広がりを考えたりした経験が、そのまま生きる場面です。

現場で見た地層を、だれにでも伝わる図に直します。

図解地質調査の技術者の 1 日(例)

  1. 8:00現場に集合安全の確認と、今日掘る深さの確認
  2. 8:30ボーリング試料を取り、深さごとに N 値を測る
  3. 12:00昼休み
  4. 13:00露頭の観察近くの崖で地層の向きと岩石を調べる
  5. 15:00試料の整理試料を箱に並べ、写真と記録を残す
  6. 16:30会社で図面柱状図を清書し、断面図の下書きをする

05

向いている人と入り方・その先

高校のうちは、地学基礎で地層と岩石、地震と地形のしくみを学んでおくと、大学の地質学の実習がぐっと分かりやすくなります。物理の力学は地盤の強さを考える土台になり、数学の三角比は地層の傾きを図にするときに使います。

大学では、理学部の地球科学科や地球惑星科学科で、地質学や岩石学を学べます。工学部の土木系の学科では、地盤工学を学べます(学科の名前や内容は大学によって異なります)。地質調査の会社や建設コンサルタントには、新卒で就職する道が一般的です。

働きながら目指す資格に、全国地質調査業協会連合会の「地質調査技士」があります。1966 年に始まった資格で、これまでに約 24,000 人が取得しました。現場の技術と管理を問う部門では、受験に実務の経験が必要です。大学で地学や地質学、土木工学などを学んで卒業すると、3 年以上の経験で受けられます(ほかの理工系の学科は 5 年以上)。その先に、技術士(応用理学部門の「地質」や、建設部門の「土質及び基礎」)を目指す人もいます。

外を歩き、石や地層をじっくり見るのが好きな人に向いています。経験を積むと、ダムやトンネルの大きな調査の責任者になったり、地すべりや液状化の対策を提案したりする立場になります。

石と地層を見る目が、大きな工事の安全を支えます。

図解高校から地質調査の仕事へ(例)

  1. 1高校で学ぶ地学基礎・物理・三角比
  2. 2大学で学ぶ地球科学・地質学・土木
  3. 3仕事に入る地質調査会社・建設コンサルタント
  4. 4資格をとる地質調査技士・技術士
  5. 5大地を守る大きな調査や防災の責任者へ

高校生のうちに試せること

  • 家の近くの柱状図を KuniJiban で読む

    国土交通省などが運営する「KuniJiban」では、国の工事で調べたボーリングの柱状図を、地図から探して見られます。近くの柱状図を開き、深さごとの土の種類と N 値の変わり方を読み取りましょう。

    国土地盤情報検索サイト KuniJiban
  • 5 月 10 日の「地質の日」の催しに行く

    5 月 10 日は「地質の日」です。1876 年のこの日に、ライマンらが日本で初めての広い範囲の地質図をつくりました。この時期には、博物館や研究機関の観察会などの催しがあるので、近くで開かれるものを探してみましょう。

    5 月 10 日は地質の日(産業技術総合研究所 地質調査総合センター)
  • 川原の石で、上流の地質を推理する

    川原の石は、上流の山から流れてきたものです。石を 10 個ほど拾い、色や粒の大きさから花こう岩・砂岩・泥岩などに分けてみましょう。図鑑や地学の教科書で確かめ、上流にどんな岩石があるかを推理しましょう。

「大地を調べて安全につくる」に関連するコミュニティ

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よくある質問

地質調査の仕事は、理系でないとできませんか?

地層や岩石を見分け、地盤の強さを計算するので、理系の学びが中心になります。ただ、入り口は地学基礎で学ぶ地層の読み方で、最初から難しい計算ができる必要はありません。大学の実習や現場の経験の中で、少しずつ身につけていきます。

地質調査技士は、学生のうちに取れますか?

取れません。どの部門も、地質調査の実務の経験が受験の条件です。現場の技術と管理の部門では、大学で地学や地質学などを学んで卒業すると、必要な経験が 3 年以上になります。まずは大学で地層や岩石の基本を身につけることが近道です。

石や化石が好きなだけでも、向いていますか?

向いています。地質調査は、地層や岩石をじっくり観察するところから始まります。石の種類を見分ける目は、地盤の強さや地すべりの起こりやすさを考える手がかりになります。