図 3 仕事での生かし方仕事での生かし方 1
天気を予報する
観測データとスーパーコンピュータの計算結果を見比べて、明日の天気や大雨・台風の予報を出す仕事です。高校の地学で学ぶ天気図の読み方や、大気と海の大きな流れの知識が、予報の判断の土台になっています。

ひとことで言うと
カーナビの到着予想と、窓の外の道路
カーナビの到着予想の時刻は、道路の情報から計算した目安です。運転する人は、窓の外の渋滞や工事を見て、予想を自分で直します。天気予報も、コンピュータの計算結果を今の空の観測で確かめ、人が仕上げて届けます。

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どんな仕事?: 気象台・気象会社・放送局で、空を読む
天気の予報に関わる人は、いくつかの場所で働いています。気象庁では、全国の気象台の職員が天気予報や警報を出します。民間の気象会社では、道路や鉄道、農業、イベントなど、仕事ごとに合わせた予報をつくります。テレビやラジオでは、気象予報士が空の様子と予報を分かりやすく伝えます。
気象予報士は、1994 年度に始まった国家資格です。2026 年 3 月末で 12,921 人が登録されていて、気象会社の予報や、放送局の天気の解説を支えています。
どの職場でも、高校の地学で学ぶことがそのまま使われます。下の図はその例です。天気図を読み、雲や風の動きを大気のしくみで説明できる力が、予報の仕事の入り口になります。
天気図と大気のしくみが、予報の仕事の共通の言葉です。
図解予報の仕事で使う高校の地学
- 天気図を読む等圧線の混み具合から風の強さを読む
- 大気の層上空の気温と風から雲の育ち方を見る
- 雲のでき方空気が上昇して冷える場所を探す
- 前線と低気圧温帯低気圧と前線の動きを追う
- 季節の天気西高東低から日本海側の雪を見込む
- 大気と海海面の水温から台風の発達を考える


02
予報ができるまで: コンピュータの計算と、今の空を見比べる
1884 年 6 月 1 日、日本で最初の天気予報が出されました。内容は「全国一般風の向きは定まりなし、天気は変り易し、但し雨天勝ち」。全国でたった 1 つの文でした。
いまの予報の土台は、スーパーコンピュータで大気の動きを計算する「数値予報」です。世界中の観測データから今の大気の状態を再現し、物理の法則で先の状態を計算します。ただし、計算の結果がそのまま予報になるわけではありません。
予報を出す人は、計算の結果を、雨雲のレーダーや気象衛星の雲の画像、各地の観測と見比べます。前線が計算より速く進んでいれば、雨の降り始めを早めます。計算と今の空がずれたとき、その理由を大気のしくみで考えるのが、人の大切な役目です。
計算と実況のずれを、大気のしくみで説明するのが予報の腕です。
図解大雨の予報を直す(例)
- 1地上の天気図で、前線と低気圧の位置を確かめる
- 2レーダーで、前線の雨雲の動きを追う
- 3雨雲が計算より速く東へ進んでいることに気づく
- 4上空の湿った空気の流れを、観測データで確かめる

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台風の予報: 予報円は「70% の確率で中心が入る範囲」
地学では、台風が熱帯の海で生まれる熱帯低気圧であることや、太平洋高気圧のへりや偏西風に流されて進むことを学びます。台風の進路を予報する人は、この知識をもとに、数値予報が示すいくつもの進路の候補を比べます。
気象庁の台風の進路予報では、地図に「予報円」を描きます。予報円は、その時刻に台風の中心が入る確率が 70% の範囲です。円が大きいのは、台風が大きくなるという意味ではなく、進路の予想の幅が広いという意味です。予報円の外側には、暴風域に入るおそれのある範囲も示します。
台風の発生数の平年値(1991〜2020 年の平均)は、1 年に 25.1 個です。日本への接近は 11.7 個、上陸は 3.0 個です。予報を出す人は、海面の水温や上空の風の資料を見て、台風が発達するか弱まるかも判断します。地学で学ぶ大気と海の大きな流れが、台風の予報の読み筋になります。
予報円の大きさは、台風の大きさではなく予想の幅を表します。


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気象会社の予報担当の 1 日(例)
ここでは、冬の道路の雪や凍結の予報を受け持つ、気象会社の若手の気象予報士の 1 日の例を紹介します。勤務の時間や仕事の中身は、会社や季節によって大きく異なります。
気象会社の予報担当は、気象庁から届く観測や数値予報のデータをもとに、お客さんの仕事に合わせた予報をつくります。道路を管理する会社なら、雪がいつ降り始め、路面がいつ凍るかが知りたいことです。除雪車を出す時間の判断に、予報が直接使われます。
雪の予報では、地学で学ぶ「冬の季節風」と「上空の寒気」の知識がそのまま生きます。等圧線が縦に混み合う西高東低の気圧配置になると、日本海側で雪が強まりやすくなります。上空にどれだけ強い寒気が入るかは、上空の天気図と計算の結果で確かめます。
お客さんの仕事に合わせて、予報を言葉と数字に直します。
図解気象会社の予報担当の 1 日(例)
- 5:30データの確認夜の観測と最新の計算結果を見る
- 6:30朝の予報を送る道路の管理者へ雪と凍結の予報を届ける
- 9:00天気図の検討地上と上空の天気図で寒気を読む
- 12:00昼休み
- 13:00打ち合わせ除雪の担当者と今夜の作業時間を相談
- 15:00夜の予報をつくる雪の降り始めと路面の温度を見直す
- 17:30引き継ぎ夜の当番に注意する点を伝える

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向いている人と入り方・その先
高校のうちは、地学基礎で天気図と大気のしくみに慣れておくと、大学の気象学がぐっと身近になります。物理の熱と力学、数学の微分・積分やベクトルは、大気の動きを式で考えるときの土台です。毎日の天気図と実際の空を見比べるだけでも、よい練習になります。
気象予報士の試験は、8 月と 1 月の年 2 回あります。第 1 回は 1994 年で、2026 年 8 月までに、のべ約 24 万 8,000 人が受験しました。合格したのは 13,607 人です。合格率は平均で約 5.5% と難しい試験です。それでも、天気図を読んで予想を書く実技の練習は、地学基礎の天気図から始められます。
大学では、理学部の地球惑星科学科や地球科学科、物理学科などで気象学を学べます(学科の名前や内容は大学によって異なります)。気象庁には国家公務員の採用試験を経て入るほか、気象大学校で学ぶ道もあります。経験を積むと、気象台の予報官や、台風や大雨を調べる研究者になる人もいます。
気象庁は、地域の気象と防災にくわしい気象予報士などを「気象防災アドバイザー」に委嘱しています。自治体の防災を、専門の知識で支える取り組みです。空を見上げるのが好きな人、図や数字から理由を考えるのが好きな人に向いています。
天気図と大気のしくみに慣れることが、最初の一歩です。
図解高校から予報の仕事へ(例)
- 1高校で学ぶ地学基礎・物理・毎日の天気図
- 2大学で学ぶ地球惑星科学・気象学・物理
- 3資格をとる気象予報士(試験は年 2 回)
- 4仕事に入る気象庁・気象会社・放送局
- 5空を守る予報官・研究者・防災の専門家へ
高校生のうちに試せること
気象予報士試験の問題を 1 問解く
気象業務支援センターは、過去の試験問題と解答例を公開しています。学科試験の「大気の構造」や「降水過程」の問題には、地学基礎の知識で考えられるものもあります。1 問選んで挑戦してみましょう。
試験問題・解答例(過去)(気象業務支援センター)1 日 3 回の天気予報を見比べる
気象庁の天気予報は、毎日 5 時・11 時・17 時に発表されます。同じ日の予報が発表のたびにどう変わったかを記録し、変わった理由を天気図や雨雲のレーダーで考えてみましょう。
天気予報(気象庁)台風の予報円の変化を追いかける
台風が発生したら、気象庁の台風情報を 1 日 1 回開き、予報円の位置と大きさを記録しましょう。予報の時刻が近づくにつれて円が小さくなる様子や、進路が太平洋高気圧のへりに沿って曲がる様子が分かります。
台風情報(気象庁)
「天気を予報する」に関連するコミュニティ
研究室・部活・サークルなど、全国の 36 件から探せます。

大気・熱環境工学分野
京都大学(京都府)
工学研究科都市環境工学専攻・大気・熱環境工学

水文気象工学分野
京都大学(京都府)
工学研究科社会基盤工学専攻・水文気象工学

複合系気象学研究室
横浜国立大学(神奈川県)
都市科学部 環境リスク共生学科・気象学・気候学・吉田 龍二 教授
観測データと計算機シミュレーションで天気や気候の仕組みを探る。
気象災害部門
千葉大学(千葉県)
環境リモートセンシング研究センター・気象災害・小槻 峻司 教授
地球環境データと数値モデル・データ同化・AIを組み合わせ、気象災害の予測と軽減に挑む。

大気科学
岡山大学(岡山県)
環境生命自然科学研究科 地球環境生命科学 地球科学・気象学・気候学・野沢 徹 教授
数値シミュレーションと観測データを使い、異常気象や気候変動の仕組みを研究する。

応用大気科学領域
大阪大学(大阪府)
工学研究科地球総合工学専攻・応用大気科学・佐藤 陽祐 教授
よくある質問
天気の仕事は、夜も働くのですか?
気象庁では、本庁や管区気象台、一部の地方気象台に配属されると交代制の勤務になり、24 時間体制で予報や観測を続けます。大雨や台風は昼夜を問わず起こるので、交代で受け持って空の変化を見逃さないようにしています。
数学や物理が苦手でも、予報の仕事を目指せますか?
気象予報士の学科試験には、大気の熱力学や数値予報など、物理と数学を使う内容が多く出ます。地学基礎で天気のしくみをつかみ、物理基礎の熱と力を復習するところから始めると、少しずつ理解が進みます。
天気予報は、コンピュータの計算だけで出せるのではありませんか?
数値予報の計算は予報の土台ですが、計算と実際の空がずれることもあります。気象台の予報官や気象予報士は、観測と見比べて予報を仕上げ、大雨のときはどこで何に注意すべきかを伝えます。人の判断と説明は、防災の場面で特に大切です。
