大学カタログ

図 1 地理の広がり地理の広がり 4

世界の生活文化と地域

衣食住や言葉、宗教など、世界の人々の暮らしの違いを、気候や地形、歴史と結び付けて理解する分野です。世界をどう地域に分けるかも考え、ニュースに出てくる国や地域を地図の上で読み解く力をつけます。

草原に建つ白い円形の住まい、土を固めたれんがの家、2 つの言葉が並ぶ道路標識、世界各地の主食が並ぶ食卓を囲む学生たち

ひとことで言うと

クラスの班分けは、決め方で変わる

クラスを班に分けるとき、出席番号で分けるか、住んでいる地域で分けるか、部活で分けるかで、同じ人でも入る班が変わります。世界の地域も同じです。気候で分けるか、言葉で分けるか、経済で分けるかで、地図の線の引き方が変わります。

01

主食: 日本の「米が主食」の歴史は、意外に新しい

地理総合の「生活文化の多様性と国際理解」では、世界の衣食住を、その土地の地理的な環境と結び付けて考えます。学習指導要領の解説は、食材や調理法が多様になる理由の例を挙げています。低地と高地、内陸と海岸といった地形、暑さ寒さや乾湿といった気候、宗教の教えなどです。

主食も地域で違います。百科事典によると、麦類を主食とする地域は南北アメリカやヨーロッパ、中国に多く、米は主に東南アジアで主食になっています。アフリカでは雑穀、東南アジアやアフリカの一部では、いも類も主食です。2016 年の農林水産省の広報誌によると、世界の米の大半はアジアを中心とする国々でつくられています。生産量のうち貿易に回る割合は、ほかの農産物に比べて低くなっています。

日本でも、昔から全国で米だけを食べていたわけではありません。同じ百科事典は、米と大麦をまぜて食べることが各地で見られ、ヒエやアワ、サツマイモなどが主食の地域もあったと説明しています。米を主食とする食生活が全国で完成したのは、第 2 次世界大戦の後だとしています。

主食の地図には、気候と農業、歴史が重なっています。

図解主食から地域を読む(百科事典の説明から)

米

  • 主に東南アジアで主食
  • アジアを中心に生産
  • 貿易に回る割合が低い

麦類

  • 南北アメリカ・ヨーロッパ
  • 中国でも主食に

雑穀・いも類

  • アフリカで雑穀
  • 東南アジア・アフリカでいも類

02

住まい: モンゴルのゲルは、遊牧に合わせた組み立て式の家

住まいにも、気候と暮らし方が表れます。モンゴルなどの遊牧民が使うゲルは、木で骨組みをつくり、その上をフェルトで覆った、まんじゅうのような形の家です。組み立て式なので、家畜とともに移動する遊牧の暮らしに向いています。中国語では「パオ」と呼ばれます。

乾燥した地域では、粘土を型に入れて日光で乾かした、日干しれんがの家が見られます。古代のメソポタミアやエジプトなどで広く使われ、南アメリカではアドベと呼ばれて、今も家に使われています。中国の内陸の乾燥した地域でも、壁の材料として残っています。

解説は、「人々の衣服が、時代や地域を越えて、変化したり変化しなかったりするのはなぜだろうか」という問いも例に挙げています。衣服や住まいは、自然環境や仕事に合わせて形づくられる一方で、グローバル化によって変わっていく部分もあります。材料と形から、その土地の気候と暮らしが読み取れます。

住まいの形は、その土地の自然と、人々の暮らし方への答えです。

図解住まいの材料と形(例)

ゲル(モンゴルなど)

  • 木の骨組みをフェルトで覆う
  • 組み立て式で移動できる
  • 遊牧の暮らしに合う

日干しれんがの家

  • 粘土を日光で乾かして積む
  • 乾燥した地域で使われてきた
  • 南アメリカではアドベと呼ぶ
乾いた草原にぽつんと建つ、白い布で覆われた丸い住まい。屋根の中央に煙突が立ち、遠くに低い山並みと青空が広がっている
モンゴルの草原に建つゲル。木の骨組みをフェルトや布で覆った、組み立て式の住まいです。写真: Mark Fischer(CC BY-SA 2.0・Wikimedia Commons)

03

言葉と地域: カナダの道路標識が、2 つの言葉で書かれるわけ

地理探究の「生活文化、民族・宗教」では、解説が「なぜカナダの道路標識には複数の言語が使われているのだろうか」という問いを例に挙げています。カナダは、英語とフランス語の 2 つを公用語にしている国です。

カナダ統計局の 2021 年の国勢調査では、2 つの公用語のうち主にフランス語を使う人は、全国で 21.4% でした。ところが、ケベック州では 82.2% にのぼります。英語とフランス語の両方で会話ができる人は、全国で 18.0% です。解説は、こうした州ごとの違いを、自然環境やヨーロッパからの入植の歴史、建国までの歩みとあわせて考えるよう示しています。

民族や宗教の分布も、地図にすると理解しやすくなります。解説は、言語や宗教の分布図を重ねて、地域のつながりや課題を考える学習を例に挙げています。どちらかの立場に寄らず、資料をもとに「なぜその場所で、その違いが生まれたのか」を考えることが大切です。

言葉の分布は、その地域の歴史と人々のつながりを映しています。

図解カナダの標識の問いを考える

入力なぜ道路標識に英語とフランス語が並ぶ?
  1. 1州ごとの言葉の割合を地図にする
  2. 2ケベック州ではフランス語が 82.2%
  3. 3入植と建国の歴史を調べる
結果言葉の分布と歴史から、2 つの言葉で書く理由が見えてくる
紅葉した木々と青空を背に、柱に取り付けられた 2 枚の青い通りの名前の標識。どちらも通りの名前の前後に、2 つの言葉の略語が添えられている
カナダの首都オタワの通りの標識。通りの名前に、フランス語の「av.」と英語の「Av.」(どちらも大通りの略)の両方が添えられています。写真: Earl Andrew(Public domain・Wikimedia Commons)

04

地域区分: ASEAN が 11 か国になると、統計の数字も変わる

地理探究では、世界をいくつかの地域に分ける方法も学びます。解説は、世界が自然・政治・経済・文化などの指標でさまざまに区分でき、目的によって使う指標が違うことを理解するよう求めています。気候で分けた地図と言葉で分けた地図では、同じ国が別のまとまりに入ることもあります。

地域のまとまりは、変わることもあります。2025 年 10 月 26 日、東南アジア諸国連合(ASEAN)に東ティモールが加わりました。加盟国は 10 か国から 11 か国になりました。財務省の貿易統計は、これに合わせて「ASEAN との貿易量や貿易額」の数字の範囲が変わると案内しています。地域をどう区切るかで、統計の数字も変わるのです。

地域区分をふまえて、地理探究の後半では「世界の諸地域」を調べます。1 つの地域について、自然、産業、人口、文化などを組み合わせて、その地域の特色をまとめる学び方を、地誌といいます。

地域の線は 1 つではありません。目的によって引き方が変わります。

図解世界の分け方はいろいろ

世界の地域区分
  • 気候ケッペンの気候区分など
  • 言葉使われている言語のまとまり
  • 宗教多くの人が信仰する宗教
  • 経済のまとまりASEAN などの国の集まり
  • 大陸・州アジア、アフリカなど

05

大学では: 地域研究や文化地理学で、現地の暮らしに飛び込む

大学では、文化地理学や地域研究、文化人類学などで、特定の地域の言葉や暮らしを深く学びます。現地の言葉を学んで留学し、市場や農村で聞き取りをする人もいます。学部や授業の名前は大学によって異なります。

卒業後は、旅行会社や商社、国際協力の機関、自治体の国際交流の窓口などで、この分野の見方が生きます。国名や首都を覚えるところから入っても大丈夫です。その国の気候と主食、住まいを 1 つずつ結び付けると、覚えたことを理由で説明できるようになります。

クイズ世界の生活文化と地域のクイズ

本文を思い出しながら答えてください。

  1. Q1百科事典によると、米を主食とする食生活が日本全国で完成したのはいつ?

  2. Q22021 年のカナダの国勢調査で、ケベック州で主にフランス語を使う人の割合は?

  3. Q32025 年 10 月に、ASEAN の 11 か国目の加盟国になった国は?

0 / 3 問に回答

高校生のうちに試せること

  • 世界の主食を白地図に書き込む

    家族や友達、留学生に、出身の地域でふだん食べる主食を聞き、白地図に書き込みましょう。気候区分の地図と並べると、米・麦・いもの分かれ目が見えてきます。白地図は地理院地図から印刷できます。

    国土地理院「白地図を利用する」
  • ゲルの組み立て方を調べる

    ゲルの作り方と習わしは、2013 年にユネスコの無形文化遺産に登録されています。英語の説明と写真で、骨組みや覆いの材料、組み立て方を調べ、日本の家と比べてみましょう。

    UNESCO「Traditional craftsmanship of the Mongol Ger」
  • ニュースに出た国を、地図帳で 1 週間引く

    ニュースで聞いた国を地図帳で探し、位置、気候、主な言葉、主食をノートに書き出しましょう。1 週間続けると、ばらばらだった国の名前が、地図の上でつながり始めます。

「世界の生活文化と地域」に関連するコミュニティ

研究室・部活・サークルなど、全国の 180 件から探せます。

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よくある質問

民族や宗教の話題は、どう学べばよいですか?

教科書や公的な統計など、出典がはっきりした資料をもとに、どの地域にどんな違いがあるかを地図で確かめることから始めます。どちらかの立場に寄らず、なぜその違いが生まれたのかを、歴史や自然環境と結び付けて考えることが大切です。

地理総合と地理探究で、世界の地域の学び方は違いますか?

地理総合では、世界の人々の生活文化の多様さを、地理的な環境と結び付けて学びます。地理探究では、テーマごとの学習のあと、世界をいくつかの地域に区分し、選んだ地域を自然や産業、文化などからまとめて考えます。