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図 1 地理の広がり地理の広がり 3

産業と人の動き

資源とエネルギー、農業と工業、交通や観光、人口と都市を、「なぜそこに」の目で読み解く分野です。セメント工場の場所、エネルギーの輸入先、人口ピラミッドの形から、地域の産業と暮らしのしくみが見えてきます。

石灰岩の山のふもとの工場、港に入る大きなタンカー、年齢ごとの人口を表す棒グラフの模型を囲んで話し合う学生たち

ひとことで言うと

お店を開く場所を考える

パン屋を開くなら、小麦粉を仕入れやすい場所か、お客さんが多い駅前か、働く人が集まりやすい場所かで迷います。工場や農地も同じです。運ぶ費用、働く人、まわりの会社とのつながりを比べて、場所が決まっていきます。

01

工業の立地: セメント工場は、なぜ山のそばにあるのか

地理探究では、資源や農業、工業が、どこで、なぜその場所で営まれているのかを考えます。手がかりの 1 つが立地論です。ドイツのウェーバーは、社会学者マックス・ウェーバーの弟です。1909 年の『工業立地論』で、工場は原料と製品を運ぶ費用が最も小さくなる場所を目指すと考えました。その場所は、原料の産地か消費地、またはその間にあります。

ウェーバーは、働く人を得やすいかどうかや、工場が集まることで得られる利点(集積の利益)も考えに入れました。農業についてはもっと早く、1826 年にドイツのチューネンが、都市からの距離によってつくる作物が同心円状に変わることを示しています。

分かりやすい例がセメントです。主な原料の石灰石(炭酸カルシウム)は、焼くと二酸化炭素が抜けて、重さが 4 割余り減ります。重い原料は、軽くしてから運ぶほうが安く済みます。セメント協会の 2023 年の資料によると、国内の 30 の工場は、石灰石の鉱山に近い山あいと、運びやすい海沿いに点在しています。

埼玉県秩父市の武甲山は、北の斜面に厚い石灰岩の層があり、大正時代から石灰やセメントの原料として掘られてきました。ふもとにはセメント工場があります。採掘は山頂近くにまで及び、かつて 1,336 m あった標高は、今は 1,304 m です。工場の場所の理由は、原料の重さにまでさかのぼれるのです。

原料の重さ、運ぶ費用、働く人、まわりの会社。工場の場所には理由があります。

図解工場の場所を決める力(ウェーバーの考え方)

原料の近く

  • 原料が重く、つくると軽くなる
  • 例: 石灰石を焼くセメント

消費地の近く

  • 製品が重い・運びにくい
  • お客さんの近くでつくる

集まる利点

  • 関連する会社が近くにある
  • 部品や技術、人を得やすい
水を張った田んぼと家々の向こうにそびえる山。緑の山の上半分が階段状に削られ、灰色の岩肌が見えている
秩父市の北側から見た武甲山。セメントなどの原料にする石灰岩の採掘で、山の北の斜面が階段状に削られています。写真: elminium(CC BY 2.0・Wikimedia Commons)

02

資源とエネルギー: 日本のエネルギー自給率は 16.4%

資源は、地球の上に均等にあるわけではありません。資源エネルギー庁によると、2024 年度の日本のエネルギー自給率(速報値)は 16.4% です。暮らしや産業に必要なエネルギーのうち、国内で確保できる割合のことで、OECD の国々と比べても低い水準です。

日本は、石油や石炭、天然ガス(LNG)の多くを海外から輸入しています。原油は 90% 以上を中東の国々に頼り、LNG や石炭はアジアなどから輸入しています。地理では、資源の産地と日本を地図で結び、どの海を通って運ばれるのか、途中で何かあったらどうなるのかを考えます。

解説は、日本で海底の資源や海のエネルギー、再生可能エネルギーの開発が進んでいることを取り上げる例も挙げています。交通の学習では、運ぶ物や距離による輸送手段の使い分けを、地図やグラフから読み取ります。トラックを長距離フェリーに載せて運ぶような工夫もあります。資源と交通の地図は、暮らしを支える道の地図でもあります。

資源の地図は、日本と世界の結び付きを映しています。

図解日本のエネルギーを地図で考える

日本(自給率 16.4%)
  • 原油中東の国々から 90% 以上
  • LNG・石炭アジアなど海外から輸入
  • 再生可能エネルギー国内で開発が進む
  • 運ぶ道どの海を通るかを地図で確かめる

03

人口ピラミッド: 同じ県の中に、星型とひょうたん型がある

人口ピラミッドは、年齢ごとの人口を男女に分け、横向きの棒で積み上げたグラフです。地理探究では、世界の人口の分布や、国や地域の人口の構成の変化を、地図やグラフから考えます。

形には名前があります。兵庫県の統計課は、その形を実際の県や市の例で示しています。子どもが多く高齢者が少ない富士山型、生まれる割合と亡くなる割合がともに下がったつりがね型、子どもがさらに減ったつぼ型などです。1920 年の兵庫県は富士山型、2020 年の加東市はつぼ型です。

同じ 2020 年の兵庫県でも、神戸市中央区は、働く世代が多い星型(都市型)です。豊岡市は、働く世代が都市に移り、子どもと高齢者の割合が高いひょうたん型(農村型)です。人口ピラミッドには、人の移動の跡も表れています。自分の町の形を調べると、通勤や進学で人がどこへ動いているかが見えてきます。

人口ピラミッドの形から、その地域の過去と人の動きを読み取れます。

図解人口ピラミッドの 5 つの形(兵庫県の例)

人口ピラミッドの形
  • 富士山型多産多死。1920 年の兵庫県
  • つりがね型少産少死。1980 年の三田市
  • つぼ型子どもがさらに減る。加東市
  • 星型(都市型)働く世代が多い。神戸市中央区
  • ひょうたん型働く世代が流出。豊岡市

04

大学では: 経済地理学や都市の研究で、地域の未来を考える

大学では、経済地理学や都市地理学、人口や交通、観光の地理学などの授業やゼミがあります。統計を地図にして、工場や店、人の動きがどこに集まり、どう変わってきたかを調べます。経済学部や社会学部、観光学部などで近い内容を学ぶこともできます。授業の名前は大学によって異なります。

卒業後は、まちづくりの計画を立てる自治体の職員、物流の拠点を選ぶ物流会社、資源を買い付ける商社などで、この分野の見方が生きます。統計の数字を覚えるのが苦手でも大丈夫です。大切なのは、「なぜそこで、なぜその形なのか」を説明できることです。

クイズ産業と人の動きのクイズ

本文を思い出しながら答えてください。

  1. Q1セメント工場が、石灰石の鉱山の近くに多い理由として最も合うものは?

  2. Q2資源エネルギー庁が示した、2024 年度の日本のエネルギー自給率(速報値)は?

  3. Q3働く世代が多く、子どもと高齢者の割合が低い、都心で見られる人口ピラミッドの形は?

0 / 3 問に回答

高校生のうちに試せること

  • 日本の人口ピラミッドを 160 年分見比べる

    国立社会保障・人口問題研究所のページでは、1960 年から 2120 年までの日本の人口ピラミッドのデータを見られます。10 年おきに形を比べ、富士山型からつりがね型、つぼ型へ変わっていく様子を確かめましょう。

    国立社会保障・人口問題研究所「人口ピラミッド」
  • 地図帳で、工場の場所の理由を 3 つ書き出す

    地図帳の工業の地図で、セメントや鉄鋼、自動車の工場の印を探しましょう。原料の産地や港、高速道路、大都市との位置を比べ、なぜそこにあるのかを 3 つ書き出してください。

  • 資源エネルギー庁の「日本のエネルギー」を読む

    高校生にも読みやすい 10 の質問の形で、日本のエネルギーの今がまとめられています。化石燃料をどの国から輸入しているかのグラフを見て、白地図に矢印で描き込みましょう。

    資源エネルギー庁「日本のエネルギー 2025 年度版」

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よくある質問

統計の数字は、いつのものを覚えればよいですか?

統計は毎年のように新しくなるので、数字そのものより、増えているか減っているか、ほかの国や地域と比べて多いか少ないかをつかむことが大切です。資料を読むときは、何年の数字か、何を数えたものかを必ず確かめてください。

経済学と地理学では、産業の学び方はどう違いますか?

経済学は、市場や価格のしくみなどを理論や数式で考えることが中心です。地理学は、同じ産業や人口の動きを、場所や地域の違いに注目して地図で考えます。経済地理学のように、両方にまたがる分野もあります。