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図 1 地理の広がり地理の広がり 2

自然環境と防災

地形や気候、生態系と人の暮らしの関わりを学び、その土地で起こりやすい自然災害と備えを考える分野です。扇状地の集落、雨温図、衛星画像、ハザードマップを読み比べて、「この土地はどうやってできたのか」を手がかりにします。

扇の形に広がる平野と川沿いの集落を見下ろす学生、雨温図の数字を比べる学生、衛星画像の湖を指さす学生、地形の地図とハザードマップを重ねる学生

ひとことで言うと

部屋を借りる前に、建物の履歴を確かめる

部屋を借りるときは、いつ建ち、どこを直してきたかを確かめると安心です。土地にも履歴があります。昔は川だったのか、少し高い場所なのかを地形や古い記録から読み取ると、その土地の強みと弱みが見えてきます。

01

地形と集落: 昔からの家は、少しだけ高い場所に建っている

地理総合では、日本の変化に富んだ地形や気候が、水や土地の恵みと同時に自然災害も生むことを学びます。学習指導要領の解説は、洪水が多い地域では、自然堤防などのわずかに高い土地に集落があることなど、先人の工夫に触れるよう求めています。

川が山から平地に出る所には、運ばれた砂や石が扇の形に積もり、扇状地ができます。扇の中ほど(扇央)では水が地下にしみ込み、川が涸れやすくなります。その水は扇の先(扇端)で泉としてわき出るので、扇端には古くから集落や水田がありました。地下水が深い扇央は開発が遅れ、江戸時代の終わりから明治にかけて、畑や果樹園などに使われてきました。

平野を流れる川の両岸には、洪水が運んだ土砂が積もった、周りより少しだけ高い自然堤防があります。水につかりにくいので、古くから集落や畑、道がつくられました。その外側の低い後背湿地は水はけが悪く、主に水田に使われてきました。昔からの集落の場所は、地形の読み取りの答え合わせになります。

地形を読むと、昔の人がどこに住み、どこを田畑にしたかの理由が見えてきます。

図解川に沿って、山から海へ

  1. 1扇頂谷の出口。扇状地の始まり
  2. 2扇央水が地下へ。畑や果樹園に
  3. 3扇端泉がわく。集落と水田
  4. 4自然堤防少し高い。集落・畑・道
  5. 5後背湿地低く水はけが悪い。水田に
飛行機の窓から見下ろした、雪をかぶった山々のふもとから海に向かって扇の形に広がる平野と、その上に広がる町や田畑
上空から見た富山県の黒部川扇状地。山の谷の出口から海に向かって、土地が扇の形に広がっています。写真: BehBeh(CC BY-SA 3.0・Wikimedia Commons)

02

気候区分と雨温図: ケッペンの区分は、もとは植物の地図

地理探究では、気候区分を覚えるのではなく、何をもとに区分しているのかを理解するよう求められます。最もよく知られるのが、ドイツの気候学者ケッペンの気候区分です。植物、とくに森林の分布の境界に合うように、気温と降水量の値を決めました。1884 年から何度も発表され、今広く使われる区分は 1918 年のものがもとになっています。

大きくは、木が育つ気候(熱帯 A・温帯 C・冷帯 D)と、木が育たない気候(乾燥帯 B・寒帯 E)に分かれます。たとえば、最も暖かい月の平均気温が 0℃ 以上 10℃ 未満の地域はツンドラ気候です。夏にだけ地面の表面がとけて、コケや地衣類が育ちます。気候の境界線は、植物の境界線でもあるのです。

気候を読むときの資料が雨温図です。気象庁の平年値(1991〜2020 年)で 7 月の降水量を比べてみます。東京は 156.2 mm ですが、ポルトガルのリスボンは 2.3 mm しかありません。夏に乾いて冬に雨が多い、地中海性気候の特徴です。この気候の地域では、オリーブやブドウの栽培が盛んです。南半球のオーストラリアのパースでは、1 月(夏)が 15.2 mm、7 月(冬)が 137.1 mm と、雨の多い月が逆になります。

雨温図は、気温と降水量の 2 つの数字から、その土地の植物や暮らしを想像する資料です。

図解雨温図の数字を比べる(平年値)

東京

  • 7 月 25.7℃・156.2 mm
  • 1 月 5.4℃・59.7 mm
  • 夏から秋に雨が多い

リスボン

  • 7 月 22.6℃・2.3 mm
  • 1 月 11.6℃・95.8 mm
  • 夏に乾き、冬に雨が多い

パース

  • 7 月 13.0℃・137.1 mm
  • 1 月 24.7℃・15.2 mm
  • 南半球なので季節が逆

03

生態系と環境問題: 衛星から見ると、湖が干上がっていった

地理探究では、以前の学習指導要領で「植生」としていた内容を「生態系」に広げました。陸の植物だけでなく、サンゴなどの海の生き物や動物も含めて、地球規模の環境の変化をとらえるためです。

中央アジアのアラル海は、かつて世界で 4 番目に大きな湖でした。1960 年代、当時のソ連は、湖に流れ込むシルダリア川とアムダリア川の水を引き、砂漠を綿花などの畑に変えました。アメリカ航空宇宙局(NASA)の衛星画像を見ると、2000 年にはすでに 1960 年の一部の大きさになり、北と南に分かれています。2014 年には、南の湖の東側が完全に干上がりました。

カザフスタンは 2005 年に北と南の湖を分ける堤防とダムを完成させ、北の湖では漁業が回復しました。一方で、南の湖に流れ込む水は減りました。1 つの対策が、別の場所に影響することも、衛星画像を年ごとに並べると確かめられます。

衛星画像を年ごとに比べると、人の暮らしと自然環境の関わりが見えてきます。

図解衛星画像で見るアラル海

  1. 11960 年代2 つの川の水を畑に引く
  2. 22000 年1960 年の一部の大きさに
  3. 32005 年北の湖を分ける堤防が完成
  4. 42014 年南の湖の東側が干上がる
人工衛星から撮った湖の画像 2 枚を左右に並べたもの。左は青い水面が大きく広がり、右は水面がわずかに残るだけで、白っぽい乾いた湖底が広がっている
人工衛星から見たアラル海(左は 1989 年、右は 2014 年)。流れ込む川の水が畑に使われ、湖の大部分が干上がりました。写真: NASA(Public domain・Wikimedia Commons)

04

ハザードマップ: 1947 年の洪水は、昔の利根川の道をたどった

解説は、自治体のハザードマップをそのまま見るだけでなく、新旧の地形図や、土地の成り立ちを示す地図と組み合わせて読むことを勧めています。国土地理院の「治水地形分類図」は、扇状地や自然堤防、旧河道(昔の川の跡)、後背湿地などを細かく分けた地図です。1976 年に長良川の堤防が切れ、濃尾平野が大きな被害を受けたことをきっかけにつくられました。

1947 年 9 月のカスリーン台風では、埼玉県の東村(今の加須市)で利根川の堤防が 340 m にわたって切れました。水は東京の方へ南下し、埼玉県と東京都の約 16 万 7 千棟の家が水につかりました。国土地理院によると、洪水は、江戸時代の工事で流れを変える前の利根川の道筋をたどるように進みました。

最近の水害でも、同じ傾向が確かめられています。2019〜2020 年に大きな水害が起きた 8 つの川を調べると、水につかった範囲の平均 97% が低地の地形でした。扇状地や自然堤防、氾濫平野などです。国土地理院が示した例では、浸水は段丘の縁で止まり、自然堤防の上では浅くなっていました。土地の成り立ちを知ると、水の行き先を予想できるのです。

ハザードマップの「なぜ」は、地形の地図を重ねると見えてきます。

図解ハザードマップを地形と読み比べる

入力家のまわりが、ハザードマップの浸水想定区域に入っている
  1. 1地理院地図で、土地の成り立ちの地図を重ねる
  2. 2旧河道や後背湿地の上かを確かめる
  3. 3近くの少し高い土地や段丘を探す
結果なぜ危ないのかが分かり、逃げる方向を考えられる

05

大学では: 自然地理学と防災を、現地で確かめる

大学の地理学では、自然地理学で地形や気候、水の流れを学び、野外の調査や空中写真の読み取りの実習を行います。防災を深めたい人は、土木工学や都市計画の分野に進む道もあります。気候区分も、地球温暖化によって、数年から数十年のうちに区分が変わる地域が少なくないと指摘されています。

卒業後は、国や自治体の防災の担当、気象や河川、地図の仕事などで、この分野の知識が生きます。災害の話は怖く感じるかもしれません。解説も、被害の様子を知るだけでなく、災害の起こり方や規模、頻度を知って、落ち着いて判断できるようになることを大切にしています。

クイズ自然環境と防災のクイズ

本文を思い出しながら答えてください。

  1. Q1扇状地で、昔から集落や水田が多く見られるのはどの部分?

  2. Q2ケッペンが気候区分の境界を決めるときに手がかりにしたのは?

  3. Q32019〜2020 年に大きな水害が起きた 8 つの川。浸水した範囲のうち、低地の地形の割合は平均でどれくらい?

0 / 3 問に回答

高校生のうちに試せること

  • 地理院地図で、家のまわりの「土地の成り立ち」を調べる

    地理院地図で「地形分類(自然地形)」を表示し、色のついた場所をクリックすると、土地の成り立ちと起こりやすい災害が表示されます。家や学校、避難場所が、扇状地・自然堤防・後背湿地などのどこにあるかを確かめましょう。

    国土地理院「土地の成り立ちから災害リスクを知る」
  • 行ってみたい都市の雨温図を描く

    気象庁の「世界の地点別平年値」から、行ってみたい都市の月ごとの気温と降水量を写し、気温を折れ線、降水量を棒のグラフにしましょう。東京のグラフと並べて、どんな植物や暮らしがありそうか考えてみてください。

    気象庁「世界の地点別平年値」
  • 衛星画像で、地球の変化を年ごとに見る

    NASA の「World of Change」では、湖や氷河、森林、都市の変化を、年ごとの衛星画像で見比べられます。英語のサイトですが、画像を順に送るだけでも変化が分かります。

    NASA Earth Observatory「World of Change」

「自然環境と防災」に関連するコミュニティ

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よくある質問

防災を学ぶなら、地理と地学のどちらが向いていますか?

地学は、地震や火山、気象のしくみそのものを学びます。地理は、そうした自然と、土地の使われ方や人の暮らしとの関わりを学びます。両方を学ぶと、ハザードマップの「なぜ」がより深く分かります。大学では、地理学、地球科学、土木工学など、いろいろな分野で防災を学べます。

ケッペンの気候区分の記号は、全部覚える必要がありますか?

最初から全部を覚えなくても大丈夫です。学習指導要領の解説も、区分を覚えることより、何をもとに区分しているのかを理解するよう求めています。気温と降水量の数字から、木が育つか、乾いているかを考える練習をすると、記号の意味が自然に身につきます。