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図 1 地理の広がり地理の広がり 5

応用: 地域の課題を探究

地理総合のまとめとして身近な生活圏を調べ、地理探究のまとめとして、これからの日本の国土の姿を考える分野です。地図と統計、現地での観察や聞き取りを組み合わせて、地域の課題と解決の方向を自分で探ります。

坂の多い団地の町を歩いて写真を撮る学生、地図に印をつける学生、商店のおばあさんに話を聞く学生、教室で調べた結果を発表する学生たち

ひとことで言うと

健康診断の結果を見て、生活を見直す

健康診断では、数値を測り、気になる点があれば原因を調べて、生活を変えていきます。地域の探究も同じです。統計や地図で地域の様子を測り、現地を歩いて原因を確かめ、どうすればよくなるかを提案します。

01

地域調査: 空き家が増えたわけを、仮説を立てて確かめる

地理総合の最後の単元「生活圏の調査と地域の展望」では、学校のまわりや通学圏など、身近な地域の課題を自分たちで調べます。学習指導要領の解説は、課題の例を挙げています。人口の高齢化、災害と対策、地域の経済、地域文化の受け継ぎ、環境の保全、国際化と異文化の理解などです。

解説が示す空き家の調査の例では、まず図書館の本や新聞、市町村史などで地域の全体像をつかみます(デスクワーク)。集めた情報を GIS で地図にして、仮説を立てます。たとえば「都心に新しい高層の集合住宅が建ち、町の中での引っ越しが増えたから、空き家が増えたのではないか」という仮説です。次に現地を歩き、役所などで聞き取りをして確かめます(フィールドワーク)。

調べた結果は、地図やグラフにまとめて発表し、地域をよくするための提言にします。解説は、取材先へのお礼と報告、文化祭や学校のホームページでの発表、地図展への出品なども例に挙げています。仮説が外れたら、立て直してもう一度調べる。このくり返しが探究です。

机の上の調査で仮説を立て、現地で確かめる。この往復が地域調査の基本です。

図解空き家の仮説を確かめる(解説の例から)

入力なぜ、町の空き家が増えているのだろう?
  1. 1仮説: 都心の新しい高層住宅へ引っ越す人が多い
  2. 2役所で人口や世帯の統計、空き家の調査を聞く
  3. 3空き家と新しい住宅の場所を地図にして比べる
結果合えば解決策を考え、合わなければ仮説を立て直す

02

買い物の困りごとを地図で測る: 店まで遠い高齢者は 904 万人

解説は、生活圏の課題の例として「買い物弱者の問題」と「住宅団地の空洞化」を挙げています。農林水産省の農林水産政策研究所は、この問題を地図で数えています。店まで直線距離で 500 m 以上離れ、自動車を使えない 65 歳以上の人を「食料品アクセス困難人口」と呼びます。国勢調査の地域メッシュ統計と店の場所を重ねて推計しました。

2020 年の推計は全国で 904 万人で、65 歳以上の人口の 25.6% にあたります。このうち 75 歳以上は 566 万人です。食料品店の減少や、大きな商業施設の郊外への立地などにより、過疎の地域だけでなく都市部でも、買い物に不便や苦労を感じる人が増えています。

東京都の多摩ニュータウンでは、1971 年に多摩市の諏訪・永山地区で入居が始まりました。谷の部分に鉄道や主な道路があり、駅から離れるほど土地が高くなる地形です。多摩市は「多摩ニュータウン再生プロジェクト」を進めています。地形と統計を重ねると、だれがどこで困っているのかが具体的に見えてきます。

地図で測ると、地域の困りごとを数字で示せるようになります。

図解店までの距離を GIS で数える

入力国勢調査の地域メッシュ統計と、食料品店の場所
  1. 1店から 500 m の範囲を地図に描く
  2. 2範囲の外に住む 65 歳以上を数える
  3. 3自動車を使えない人を見積もる
結果2020 年は全国で 904 万人と推計された
緑の木々に囲まれた丘の上に、赤い屋根の中層の集合住宅がいくつも並び、遠くに青い山並みが見える
多摩ニュータウンの街並み(東京都多摩市落合、2015 年)。多摩ニュータウンでは、1971 年に入居が始まりました。写真: Konaine(CC BY-SA 4.0・Wikimedia Commons)

03

これからの国土: 4 つの視点で、日本の地図を描き直す

地理探究の最後は「現代世界におけるこれからの日本の国土像」です。それまでの学びを生かし、日本が抱える地理的な課題の解決の方向や、望ましい国土の姿を、複数の立場や意見をふまえて構想します。解説は「首都機能の分散」などを、主題の例に挙げています。

考えるときの視点として、解説は 4 つを示しています。1 つ目は交通や通信による地域の結び付き、2 つ目は都市圏や通勤圏といった地域の構造です。3 つ目は人口や産業の変化による地域の変容、4 つ目は自然と暮らしが影響し合う持続可能な社会づくりです。たとえば「持続可能な社会のために、どんな行政の区切り方が望ましいか」という問いでは、GIS でいくつもの区切り方の地図をつくって比べます。

地理総合の「地球的課題と国際協力」では、地球環境や資源・エネルギー、人口・食料、居住・都市の問題を考えます。国際連合の持続可能な開発の取り組みなども参考にします。身近な地域の課題と、日本や世界の課題はつながっています。自分の町の地図から考え始めて、世界の課題にたどり着くこともあります。

地域の課題を考えることは、日本と世界の未来を考えることにつながります。

図解国土像を考える 4 つの視点(解説から)

これからの国土像
  • 地域の結び付き交通・通信網とその使われ方
  • 地域の構造都市圏や通勤圏の広がり
  • 地域の変容人口や産業の変化がもたらすもの
  • 持続可能な社会自然と暮らしが影響し合う関わり

04

大学では: まちづくりや地域政策を、現場で学ぶ

大学では、地理学のフィールドワークの授業や、都市計画・地域計画、地域政策のゼミで、自治体や住民と一緒に地域の課題に取り組むことがあります。教育学部で地理の先生を目指す人は、地域調査の進め方を教える側に立ちます。授業の名前や進め方は大学によって異なります。

卒業後は、自治体のまちづくりの担当、都市計画のコンサルタント、鉄道や不動産の会社、国際協力の機関などで、この分野の力が生きます。調査は、身近な疑問 1 つから始めれば大丈夫です。通学路で気付いた空き店舗やバス停の時刻表を、写真に撮るところから始めてください。

クイズ地域の探究のクイズ

本文を思い出しながら答えてください。

  1. Q1解説の空き家の調査の例で、生徒が立てた仮説は?

  2. Q2「食料品アクセス困難人口」は、店まで直線距離で何 m 以上離れた人を数えている?

  3. Q3多摩ニュータウンで入居が始まったのは何年?

0 / 3 問に回答

高校生のうちに試せること

  • 食料品アクセスマップで、自分の地域を見る

    農林水産政策研究所は、推計の結果を GIS で地図にした「食料品アクセスマップ」を公開しています。自分の住む地域のあたりを開き、困難な人が多い場所と、駅や坂、川との位置関係を確かめましょう。

    農林水産省「食料品アクセス問題の現状」
  • 家のまわりの「店まで 500 m」を地図に描く

    地理院地図の作図の機能で、家や学校の近くの食料品店から 500 m の範囲を描きましょう。範囲の外にある住宅地を探し、坂の多さやバスの便も確かめて、どんな人が困りそうかを考えてみてください。

    国土地理院「地理院地図」
  • 通学路の「気付き」を 5 つ集めて、仮説を立てる

    通学路で気になった空き店舗、坂、危ない交差点などを写真に撮り、地図に印をつけましょう。5 つ集まったら共通する理由を考え、確かめたい仮説を 1 つ書き出してください。

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よくある質問

地域調査のテーマが思いつきません。

通学路や家のまわりで「なぜ?」と感じたことから始めて大丈夫です。解説も、自分の日常生活や通学の途中、新聞やインターネットの記事から課題を見つける方法を挙げています。テーマが大きすぎるときは、範囲を学校のまわりなどに絞ってください。

聞き取り調査をするときに、気をつけることはありますか?

解説は、前もって電話や手紙で相手の都合を確かめ、調査の目的と聞きたいことを整理してから行くよう求めています。当日の天気や交通も考え、安全に余裕をもって行動してください。終わったらお礼とともに結果を伝えると、次の調査にもつながります。