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図 3 仕事での生かし方仕事での生かし方 1

まちづくり・都市計画

人口の移り変わりや土地の使われ方を地図で読み、駅前やバスの路線、住宅地のこれからを考える仕事です。高校の地理で練習する「分布を読む」「統計を読む」「なぜそこにを説明する」力が、計画づくりの土台になっています。

駅前の広場に路面電車とバスが止まり、郊外の坂道に住宅地が広がるまちで、大きな地図に円を描き込む若い職員と、バス停までの道を歩いて確かめる若い社員が、一続きに描かれた様子

ひとことで言うと

文化祭の模擬店の場所を決める

文化祭の模擬店は、人がよく通る廊下や昇降口の近くに置くと、たくさんの人が立ち寄ります。まちづくりも同じで、人がどこに住み、どう動くかを地図で確かめてから、駅前の施設やバス停の場所を考えます。違うのは、考える範囲がまち全体で、何十年も先まで見通す点です。

01

どんな仕事?: 「どこに住み、どう動くか」を地図で考える

まちづくり・都市計画の仕事には、いくつかの立場があります。市役所や県庁の職員は、まちの将来の計画や、建物・道路のルールを決めます。都市計画コンサルタントは、自治体から頼まれて調査や計画の案づくりを手伝います。鉄道会社や不動産会社は、駅のまわりの住宅や店を企画します。

どの立場でも、最初にするのは「今のまち」を知ることです。人はどこに多く住み、どの地区で高齢の人が増えているのか。店や病院はどこにあり、駅やバス停から歩いて行けるのか。こうした問いに地図と統計で答える力は、高校の地理でいちばん練習する力です。

下の図は、高校の地理で身につける力が、まちづくりのどんな場面で使われるかの例です。建物の設計や法律の細かいルールは大学や職場で学びますが、その前の「まちを読む」ところは、地理の授業の延長にあります。

まちづくりは、地図と統計で「今のまち」を知ることから始まります。

図解まちづくりで使う高校の地理

まちづくり・都市計画
  • 分布を読む人口の多い地区と少ない地区を地図に塗る
  • 統計を読む国勢調査で高齢の人の割合の変化を見る
  • 地図を重ねる駅からの円と人口の地図を GIS で重ねる
  • なぜそこに店や病院が駅前に集まる理由を考える
  • 地形と災害浸水しやすい低地を、住まいの計画で避ける
  • 歩いて調べるバス停までの坂道や歩道の幅を確かめる

02

統計を読む: 国土の 3.5% に、7 割の人が住んでいる

国勢調査には、「人口集中地区」という統計のための区域があります。総務省統計局の決まりでは、人口密度が 1 km² あたり 4,000 人以上の地区が隣り合う所を指します。その人口が合わせて 5,000 人以上あることも条件です。英語の頭文字から「DID」とも呼ばれ、市街地が広がる範囲の目安になります。

2020 年の国勢調査では、人口集中地区に住む人は約 8,829 万人で、総人口の 70.0% でした。ところが、その面積は約 13,250 km² で、国土の 3.5% しかありません。長野県に近い広さに、日本の 7 割の人が暮らしている計算です。

人口集中地区は、1960 年の国勢調査で初めて設定されました。2020 年までに、住む人は約 2.2 倍になりましたが、面積は約 3.4 倍に広がりました(1960 年は沖縄県を除く)。まちは、人が増える以上に外へ広がってきたのです。

国土交通省は、市街地の人口密度が下がると、医療・福祉・商業など、暮らしに必要な機能を保てなくなるおそれがあるとしています。人口が減っていくこれから、どこで暮らしを支え、どこに施設を残すか。統計の表を地図に置きかえて読む力が、その判断の出発点になります。

まちは人が増える以上に広がり、これからは支え方が問われます。

クイズまちと人口のクイズ

答えを 1 つ選んでください。

  1. Q1人口集中地区の基準になる人口密度は、1 km² あたり何人以上?

  2. Q22020 年、総人口の 70.0% が住んでいた人口集中地区。その面積は国土の何%?

  3. Q3国の都市構造の評価で、バス停の「徒歩圏」とする半径は?

0 / 3 問に回答

03

GIS で円を描く: 駅から 800 m、バス停から 300 m

広がったまちを、これからどう支えるか。2014 年に法律が改められ、「立地適正化計画」の制度が始まりました。市町村が、住まいを誘導する「居住誘導区域」と、病院や店などを集める「都市機能誘導区域」を地図の上に決めます。国土交通省によると、2026 年 3 月末で 685 の都市が計画をつくり、公表しています。

区域を考えるとき、担当者は GIS(地理情報システム)で地図を重ねます。国土交通省のハンドブックは、一般的な徒歩圏を半径 800 m、バス停の徒歩圏を 300 m としています。駅やバス停のまわりに円を描いて人口の地図と重ねると、歩いて公共交通を使える人の割合が分かります。円の外に高齢の人が多く住む地区があれば、バスの路線や便数を見直す候補になります。

よく知られる例が富山市です。富山市は、鉄道や路面電車を「串」、そのまわりの歩いて暮らせる範囲を「お団子」に見立てています。その沿線に住まいや店を集めるまちづくりを進めてきました。2006 年 4 月 29 日には、利用者が減っていた JR 富山港線が生まれ変わりました。新しい路面電車(LRT)の「富山ライトレール」です。

駅やバス停に円を描いて人口と重ねると、支えるべき地区が見えてきます。

図解バスの路線を見直す(例)

入力郊外の団地で「バス停が遠い」という声が増えた
  1. 1国勢調査の人口を、町や丁目ごとに地図に塗る
  2. 2バス停から半径 300 m の円を描いて重ねる
  3. 3円の外で、高齢の人が多い地区を探す
  4. 4坂道や歩道を歩いて確かめ、停留所の案をつくる
結果歩いて通いやすい場所に停留所を移す案
白い車体に緑の帯が入った、床の低い路面電車が、住宅のそばの線路を走っている
富山ライトレールの電車(富山市の下奥井〜奥田中学校前)。もとは JR の富山港線だった線路を走ります。写真: Toshinori baba(CC BY-SA 4.0・Wikimedia Commons)

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都市計画コンサルタントの 1 日(例)

ここでは、市役所から立地適正化計画の見直しを頼まれた、都市計画コンサルタントの若手社員の 1 日の例を紹介します。仕事の進め方は、会社や案件によって異なります。

午前は、国勢調査や国土数値情報のデータを GIS に読み込み、地区ごとの人口の変化を地図にします。午後は市役所で担当者と打ち合わせをし、夕方には現地を歩いて、地図では分からない坂道や歩道の幅を確かめます。

計画の案は、住民の説明会で示すこともあります。地図や図表を使い、専門の言葉に頼らずに説明する力も、この仕事では大切です。高校の地理で、調べたことを地図にまとめて発表した経験は、そのまま練習になっています。

データの地図と、歩いて確かめた現地の両方で案をつくります。

図解都市計画コンサルタントの 1 日(例)

  1. 9:00データを読み込む国勢調査の人口を GIS に取り込む
  2. 10:30地図をつくる駅とバス停の徒歩圏と人口を重ねる
  3. 12:00昼休み
  4. 13:30市役所で打ち合わせ誘導区域の案とその理由を説明する
  5. 15:30現地を歩く坂道や歩道の幅、店の場所を確かめる
  6. 17:30資料をまとめる住民説明会で使う地図を整える

05

向いている人と入り方・その先

高校のうちは、地理の授業で使う地図や統計を、自分の住む町に当てはめてみてください。駅やバス停から家までの道のりを地図で測るだけでも、まちを読む練習になります。数学のデータの分析や、情報の授業で習う表計算も役に立ちます。

大学では、地理学・経済学・社会学、都市工学・土木工学・建築学などが近い学びです。自治体には、土木・建築などの技術職や行政職の採用試験を経て入ります。コンサルタントや鉄道・不動産会社には、新卒で就職する道があります。経験を積んで、技術士(建設部門の「都市及び地方計画」)の資格をとる人もいます。

まちを歩くのが好きな人、人の話を聞いて地図にまとめるのが好きな人に向いています。経験を積むと、市全体の計画づくりや、大きな駅前の事業をまとめる立場になります。地図の上で考えたまちが、何十年もかけて形になっていくのを見届けられる仕事です。

自分の町の地図を読むことが、最初の一歩です。

図解高校からまちづくりの仕事へ(例)

  1. 1高校で学ぶ地図と統計を自分の町に当てはめる
  2. 2大学で学ぶ地理学・都市工学・土木・経済など
  3. 3仕事に入る自治体・コンサルタント・鉄道会社
  4. 4資格をとる技術士(都市及び地方計画)など
  5. 5まちを描く市全体の計画や駅前の事業を担う

高校生のうちに試せること

  • jSTAT MAP で、自分の町の人口集中地区を見る

    総務省統計局の「jSTAT MAP」では、国勢調査の人口などを無料で地図に表せます。自分の町の人口集中地区を表示し、駅やバス停の位置と比べてみましょう。

    jSTAT MAP(政府統計の総合窓口 e-Stat)
  • 地理院地図で、駅から 800 m の円を描く

    国土地理院の「地理院地図」には、地図に円や線をかき込む機能があります。最寄りの駅を中心に半径 800 m の円を描き、家や学校が円の中に入るか確かめましょう。バス停なら半径 300 m です。

    地理院地図(国土地理院)
  • 自分の町の立地適正化計画を読む

    立地適正化計画をつくった市町村は、計画を公表しています。市役所のサイトで居住誘導区域の地図を開き、自分の家や学校が区域の中か外かを確かめて、その理由を考えてみましょう。

「まちづくり・都市計画」に関連するコミュニティ

研究室・部活・サークルなど、全国の 44 件から探せます。

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よくある質問

まちづくりの仕事は、理系でないとできませんか?

できます。市役所の行政職として計画づくりに関わる人や、大学で地理学・経済学・社会学を学んでコンサルタントになる人もいます。道路や建物の設計に深く関わるなら、土木・建築などの理系の学びが近道になります。

GIS は、高校生でも使えますか?

使えます。地理総合では GIS の基本を学びます。国土地理院の地理院地図や、総務省統計局の jSTAT MAP は無料で、ブラウザから使えます。まずは自分の町の地図に、円や線をかき込むところから始めてみてください。

人口が減る町では、まちづくりの仕事はなくなりませんか?

人口が減るからこそ、どこに住まいや施設を残すかを考える計画づくりが各地で進んでいます。立地適正化計画をつくった都市は、2026 年 3 月末で 685 にのぼります。地図と統計を読む力は、これからいっそう求められます。