図 3 仕事での生かし方仕事での生かし方 2
地図・測量・防災
土地を測って地図をつくり、地形や過去の災害の記録を重ねて、危ない場所を前もって知らせる仕事です。高校の地理で学ぶ「地形と災害の関係」「地図と GIS」の力が、測量の現場からハザードマップの説明まで生きています。

ひとことで言うと
家の柱に刻む、背の高さの印
柱に毎年、背の高さの印をつけると、どれだけ伸びたかが分かります。日本の地図も、全国に置いた基準の点をもとに、位置や高さを測ってつくります。基準の点の位置が変われば、大地が動いたことも分かります。

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どんな仕事?: 測る・描く・知らせる
地図と防災に関わる仕事は、大きく 3 つに分けられます。土地の位置や高さを測る測量士。測ったデータや統計を GIS(地理情報システム)で地図にする GIS エンジニア。地図をもとに、まちの危ない場所を調べて知らせる防災の専門職です。
職場は、測量会社や建設コンサルタント、地図をつくる会社、自治体の防災の担当などさまざまです。国の機関では、茨城県つくば市にある国土地理院が、日本の地図づくりのもとになる測量を行っています。
どの仕事でも、高校の地理で学ぶ「地形図を読む」「地図を重ねる」「地形から災害の起こりやすさを考える」力が土台になります。地図は、測る人・描く人・使う人をつなぐ共通の言葉です。
地図は、測る人・描く人・使う人をつなぐ共通の言葉です。
図解地図と防災の 3 つの仕事
測量士
- 衛星や測量機で位置と高さを測る
- ドローンで地形を立体的に記録する
- 工事や地図づくりの基準をつくる
GIS エンジニア
- 人口や地形のデータを地図にする
- いくつもの地図を重ねて分析する
- ウェブで見られる地図をつくる
防災の専門職
- 地形と過去の災害の記録を調べる
- ハザードマップを住民に説明する
- 避難所や避難の道を見直す

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日本は動いている: 全国約 1,300 か所の電子基準点
国土地理院は、全国約 1,300 か所に「電子基準点」を置いています。高さ 5 m ほどのステンレスの柱で、上のアンテナが GNSS(GPS などの衛星測位システム)の電波を受け続けています。地図や工事の位置の基準になるほか、地面の動きを見張る役目もあります。
2011 年 3 月 11 日の東北地方太平洋沖地震では、この観測が大地の動きを記録しました。国土地理院の発表によると、宮城県石巻市の電子基準点「牡鹿」は、地震で東南東へ約 5.3 m 動き、約 1.2 m 沈みました。地理で学ぶプレートの境界の動きが、測量の数字として示されたのです。
地面が動けば、地図の位置の基準もずれます。国土地理院は、地面の動きで生じたずれを直すための補正のデータも公開しています。プレートや地形の知識は、測量の数字の意味を読み解く手がかりになります。
電子基準点は、地図の基準であり、大地の動きの見張り役です。


03
地形を読んで、避難所を見直す
防災の仕事では、地理で学ぶ地形の知識がそのまま使われます。川が運んだ土砂でできた低い土地や、海や沼を埋め立てた土地は、水につかりやすかったり、地震で揺れやすかったりします。新旧の地形図や空中写真を見比べると、今は住宅地になっている所の昔の姿が分かります。
2018 年 7 月の豪雨のあと、国の会議が被害を振り返りました。その報告によると、岡山県倉敷市真備地区の浸水の範囲は、ハザードマップの浸水想定区域とおおむね一致していました。土砂災害で亡くなった方の約 9 割も、土砂災害警戒区域などの中で被災していました。
一方、真備地区の調査では、ハザードマップがあることを知っていた人は 75% でしたが、内容まで理解していた人は 24% でした。報告は、ハザードマップに加えて、地形の情報や昔の土地の使われ方、過去の災害の記録を使って危険を伝えるよう求めています。「なぜここは危ないのか」を地形から説明できる力が、住民に伝わる防災につながります。
危険の理由を地形から説明できると、防災の言葉が伝わります。
図解避難所を見直す(例)
- 1新旧の地形図で、学校の土地の昔の姿を調べる
- 2浸水想定区域図と、過去の浸水の記録を重ねる
- 3避難所までの道で、低い所や川を渡る所を探す
- 4住民と一緒に歩き、気づいたことを地図に書き込む

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測量会社で働く若手の測量士の 1 日(例)
ここでは、道路の工事の前に土地を測る仕事を受けた、測量会社の若手社員の 1 日の例を紹介します。仕事の中身は、会社や現場によって大きく異なります。
朝は現場で、近くの基準点の位置を確かめてから、測量機やドローンで土地の形を記録します。午後は会社に戻り、測ったデータをパソコンで地図や立体のモデルにします。雨の日は外で測れないので、データの整理や図面づくりの日になります。
現場では、地形図を読んで、どこから測れば見通しがよいかを考えます。高校の地理で、等高線から坂や谷を読み取った経験が、そのまま役に立ちます。
現場で測り、会社で地図にする。その往復が測量の仕事です。
図解若手の測量士の 1 日(例)
- 8:00現場に集合安全の確認と、今日測る範囲の確認
- 8:30基準点を確かめる近くの基準点の位置を測り直す
- 10:00土地を測る測量機とドローンで地形を記録する
- 12:00昼休み
- 13:30データの処理測った点から地形の立体モデルをつくる
- 16:00図面にまとめる等高線の入った工事用の地図を描く


05
向いている人と入り方・その先
高校のうちは、地理の授業で地形図や地理院地図に慣れておくと、大学の実習がぐっと楽になります。数学の三角比やベクトルは、測量の計算の土台です。物理で学ぶ光や電波の性質も、測量機や衛星の仕組みにつながります。
測量士補と測量士は、国家試験に合格すると資格を得られ、試験はだれでも受けられます。大学などで測量の科目を修めて資格を得る道もあります。国土地理院には国家公務員の採用試験を経て入り、自治体の防災の担当には、土木などの技術職や行政職として入ります。
経験を積んで、技術士の資格をとる人もいます。応用理学部門の「地質」は、斜面の災害やリモートセンシング、地理情報システムも範囲に含みます。地図をながめるのが好きな人、外を歩くのが苦にならない人、細かい数字をこつこつ確かめられる人に向いています。経験を積むと、大きな工事の測量の責任者や、自治体の防災計画をまとめる立場になります。
地形図と三角比が、測量の仕事の入り口です。
図解高校から地図と防災の仕事へ(例)
- 1高校で学ぶ地形図・三角比・地理院地図
- 2大学で学ぶ地理学・土木・地球科学・情報
- 3資格をとる測量士補・測量士
- 4仕事に入る測量会社・国土地理院・自治体
- 5まちを守る工事の測量や防災計画の責任者へ
高校生のうちに試せること
測量士補試験の問題を 1 問解く
国土地理院は、過去 5 年分の測量士・測量士補試験の問題と解答例を公開しています。地形図の読み取りなど、高校の地理や数学の知識で解けそうな問題を探して挑戦しましょう。
測量士・測量士補試験問題・解答例(国土地理院)近くの電子基準点を探して見に行く
地理院地図では、電子基準点の場所を確かめられます。家や学校の近くの電子基準点を探し、高さ 5 m ほどの柱を見に行きましょう。施設の敷地の中にあって入れない所もあるので、外から見られる所を選びましょう。
地理院地図(国土地理院)浸水ナビで、川があふれたときの水の広がりを見る
国土地理院の「浸水ナビ」では、堤防が切れたときに、どこが、いつ、どのくらい水につかるかをアニメーションで見られます。近くの川で試し、地形図の低い土地と見比べましょう。データのある川から順に公開されています。
浸水ナビ(国土地理院)
「地図・測量・防災」に関連するコミュニティ
研究室・部活・サークルなど、全国の 64 件から探せます。
気象災害部門
千葉大学(千葉県)
環境リモートセンシング研究センター・気象災害・小槻 峻司 教授
地球環境データと数値モデル・データ同化・AIを組み合わせ、気象災害の予測と軽減に挑む。

先端センシング部門
千葉大学(千葉県)
環境リモートセンシング研究センター・マイクロ波リモートセンシング・ヨサファット テトォコ スリ スマンティヨ 教授
地球表層を観測する先端センサの開発と解析の高度化で、環境変動や災害を精度よく捉える。
陸域生態系部門
千葉大学(千葉県)
環境リモートセンシング研究センター・陸域生態系・市井 和仁 教授
リモートセンシングと地上観測で、陸域生態系の状態と時空間の変動をとらえる。

カーボンニュートラル部門
千葉大学(千葉県)
環境リモートセンシング研究センター・温室効果ガス
温室効果ガスの発生・吸収・移動・蓄積を総合的に評価し、カーボンニュートラルに貢献する。
大気環境部門
千葉大学(千葉県)
環境リモートセンシング研究センター・大気環境科学・入江 仁士 教授
リモートセンシング技術を基盤に、気候危機の緩和と適応に役立つ大気環境研究を進める。
地域防災研究室
熊本大学(熊本県)
工学部 土木建築学科・地域防災・竹内 裕希子 教授
地域や学校の防災の課題を分析し、災害の記憶の継承を研究する。
よくある質問
測量士と測量士補は、何が違うのですか?
測量士補は、測量士がつくった計画にしたがって測量を行います。測量士は、測量の計画をつくり、実施する立場になれます。どちらも国家試験に合格するか、大学などで測量の科目を修める方法で資格を得られます。
文系でも、地図や防災の仕事に就けますか?
就けます。大学の地理学は文系の学部にも多く、GIS や地域の調査を学べます。自治体の防災の担当には、行政職の人もいます。測量の計算は、三角比など高校で学ぶ数学が土台なので、苦手意識があっても少しずつ慣れていけます。
電子基準点のデータは、何に使われているのですか?
土地の測量や地図づくりで、位置の基準として使われます。地震や火山の活動にともなう地面の動きを調べるのにも欠かせません。国土地理院は、電子基準点の観測データを公開しています。



