大学カタログ

図 3 仕事での生かし方仕事での生かし方 4

地理の先生・研究者

中学校の社会や高校の地理歴史で、地図と野外の調査を使って「なぜそこに」を教える仕事と、大学などで気候や地域の移り変わりを調べる研究の仕事です。高校の地理で学んだ見方を次の世代に手渡し、新しい発見で書きかえていきます。

校舎の屋上で地図を手に遠くの山や川を指さす先生と高校生たち、川沿いの道をノートとカメラを手に歩く生徒、研究室で町の気温を色で表した地図を映して話し合う若い研究者が、一続きに描かれた様子

ひとことで言うと

地元の案内役になる

友だちが遊びに来たとき、駅から家までの道で「この坂の下は、昔は田んぼだったんだよ」と話すと、いつもの町が急に面白く見えてきます。地理の先生は、そんな「町の見方」を教室で手渡す人です。研究者は、まだだれも知らない見方を見つける人です。

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どんな仕事?: 教室と野外と研究室で、地理を手渡す

地理を仕事にする道の代表が、学校の先生と研究者です。中学校では社会の地理的分野を、高校では地理歴史科の地理総合と地理探究を教えます。必要な教員免許は、中学校が「社会」、高校が「地理歴史」です。研究者は、大学や国の研究機関などで、気候の変化や地形のでき方、都市や農村の移り変わりを調べます。

今、地理の先生は大切な時期を迎えています。1989 年に改められた学習指導要領で、1994 年度からは、高校の地理歴史科で全員が学ぶ科目が世界史だけになりました。地理は、選んだ人だけが学ぶ科目だったのです。2022 年度に地理総合が全員の科目になり、地理は高校の教室に広く戻ってきました。

一方、日本学術会議は 2020 年の提言で、地理総合や地理探究を専門的に教えられる先生が足りなくなるおそれを指摘しました。今の地理歴史科の先生には、歴史を専門とする人が多いためです。地理を深く学んだ先生は、これからの学校で頼りにされる存在です。

地理を深く学んだ先生は、これからの学校で頼りにされます。

図解地理を手渡す 2 つの仕事

中学・高校の先生

  • 地図と GIS を使った授業
  • 学校のまわりの野外調査
  • 防災や地域の課題の探究を見守る

研究者

  • 気候や地形の変化を観測する
  • 統計と地図で地域の変化を分析する
  • 論文や学会で成果を発表する

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授業をつくる: 下見をして「問いの種」を探しておく

地理総合には、生活圏の課題を調べる単元があり、学校のまわりを歩く野外調査は授業の見せ場です。地理の世界では、こうした見学や調査を「巡検」と呼びます。生徒にとっては数時間の調査でも、先生は前もって入念に準備をします。

まず、地理院地図や新旧の地形図で、学校のまわりの土地の成り立ちを調べます。次に実際に歩いて下見をし、車の多い道や、立ち入れない場所を確かめます。そのとき、坂の上と下で家の建ち方が違う所や、川沿いだけ田畑が残る所など、生徒が「なぜ?」と思いそうな場所に印をつけておきます。

当日は答えを先に言わず、生徒が自分で気づくのを待ちます。教室に戻り、生徒が集めた写真や記録を GIS で 1 枚の地図にまとめると、一人ひとりの気づきが地域の課題として見えてきます。見慣れた通学路が、生徒にとって調べる価値のある場所に変わる。その場面に立ち会えるのが、地理の先生の面白さです。

見慣れた通学路が、調べる価値のある場所に変わります。

図解巡検の授業を準備する(例)

入力地理総合で、学校のまわり 2 km を歩く授業をする
  1. 1地理院地図と新旧の地形図で、土地の成り立ちを調べる
  2. 2下見をして、危ない道や立ち入れない場所を確かめる
  3. 3生徒が「なぜ?」と思いそうな場所に印をつける
  4. 4歩いた記録を GIS で 1 枚にまとめる方法を決める
結果生徒が自分で問いを見つけ、地図で語り合う授業
山の上から見下ろした平野。田畑と池の間に校舎とグラウンドがあり、遠くに家並みや木々の列が続いている
養老山地から見下ろした、岐阜県養老町の中学校と池。高い所から眺めると、学校のまわりの土地の使われ方が一目で分かります。写真: Alpsdake(CC BY-SA 4.0・Wikimedia Commons)

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研究者の仕事: 都市はなぜ暑くなるのか

地理学の研究には、気候や地形を調べる自然地理学と、都市や産業、人口を調べる人文地理学があります。どちらにも共通するのは、「どこで」「なぜそこで」を地図とデータで確かめることです。

身近な例が都市の気温です。気象庁によると、1929 年から 2025 年までの東京の年平均気温は、100 年あたり 3.5℃ のペースで上がりました。都市化の影響が比較的小さい全国 15 地点の平均は 1.8℃ です。気象庁は、大都市の上がり方が大きいのは、地球温暖化に都市化の影響が加わったためと考えています。

では、都市化の度合いはどう測るのでしょうか。気象庁は、観測地点を中心に半径 7 km の円を描き、その中で建物や道路などに覆われた土地の割合を「都市化率」としています。もとにしたのは、国土交通省が 1 km 四方のマス目ごとに土地の使われ方をまとめたデータです。東京の都市化率は 89.5%、15 地点の平均は 18.6% で、都市化率が大きい地点ほど気温の上がり方も大きい傾向があります。地図に円を描いて数える地理の基本の技が、研究でも使われているのです。

地図に円を描いて数える技が、研究の場でも使われています。

クイズ地理の先生と研究のクイズ

答えを 1 つ選んでください。

  1. Q11994〜2021 年度に高校に入学した人が、地理歴史科で必ず学んだ科目は?

  2. Q2気象庁によると、東京の年平均気温は 100 年あたり何℃のペースで上がった?

  3. Q3日本地理学会の高校生ポスターセッション。参加する高校生の参加費は?

0 / 3 問に回答

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高校の地理の先生の 1 日(例)

ここでは、高校で地理総合と地理探究を受け持つ先生の 1 日の例を紹介します。授業の数や担当、部活動は、学校によって大きく異なります。

地理の授業では、タブレットやパソコンで GIS を使う時間もあります。先生は、生徒がつまずきそうな操作を前もって試し、使う地図のデータをそろえておきます。朝の天気図や、ニュースで伝えられた災害の情報を、その日の授業の話題にすることもあります。

放課後は、部活動で地域を調べる生徒の調査を見守ることもあります。生徒の調べたことが、学会の高校生の発表につながることもあり、先生にとって大きな励みになります。

地図とデータを準備し、生徒と一緒に歩いて考える毎日です。

図解高校の地理の先生の 1 日(例)

  1. 8:00天気図を確かめる授業で使う今朝の天気図と雨雲を見る
  2. 9:00地理総合GIS で通学路の浸水想定を調べる授業
  3. 11:00地理探究工場の分布図から立地の理由を考える
  4. 12:30昼休み
  5. 13:30巡検の下見来週歩く道を、地形図を手に確かめる
  6. 15:40部活動川沿いの気温を測る調査を見守る
  7. 17:00教材づくり生徒の地図を 1 枚にまとめ、次の授業へ

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向いている人と入り方・その先

高校のうちは、地理の授業で調べたことを、地図を見せながら友だちや家族に説明してみてください。人に教えると、自分の理解のあいまいな所が分かります。日本地理学会の高校生ポスターセッションのように、高校生が研究を発表できる場もあります。

先生になるには、大学で教職課程の科目を修めて教員免許をとり、教員採用試験を受けます。地理学の学科やコースは、文学部・教育学部・理学部など、さまざまな学部にあります。研究者を目指す人は大学院の修士課程・博士課程に進み、論文を書いて研究の力を磨きます。

地図をながめて想像するのが好きな人、人に説明するのが好きな人に向いています。経験を積んだ先生は、地域の先生たちと授業の工夫を分かち合う立場になります。研究者は、大学の教員や研究機関の研究員として、新しい分野を切り開いていきます。

調べたことを地図で人に説明することが、最初の一歩です。

図解高校から地理の先生・研究者へ(例)

  1. 1高校で学ぶ調べたことを地図で人に説明する
  2. 2大学で学ぶ地理学と教職課程、野外の調査
  3. 3免許・大学院社会・地理歴史の免許、修士・博士
  4. 4採用・研究教員採用試験、大学や研究機関
  5. 5手渡す授業や研究で新しい見方を広げる

高校生のうちに試せること

  • 高校生ポスターセッションの発表を読む

    日本地理学会は、年 2 回の学術大会で高校生ポスターセッションを開いています。高校生は無料で参加でき、すべての発表を聞けます。これまでの発表のタイトルや要旨を読み、自分ならどんなテーマで調べるか考えましょう。

    高校生ポスターセッション(日本地理学会)
  • 地元の気温の移り変わりを調べる

    気象庁の「過去の気象データ検索」では、近くの観測所の年ごとの平均気温を調べられます。古い年と最近の年を比べ、どのくらい上がったか、まわりの土地の使われ方がどう変わったかを考えましょう。

    過去の気象データ検索(気象庁)
  • 地理歴史の教員免許をとれる大学を調べる

    文部科学省は、どの大学のどの学科で、どの教員免許状をとれるかの一覧を公開しています。「地理歴史」の免許をとれる学科を探し、その大学に地理学のコースがあるかも確かめましょう。

    令和 7 年 4 月 1 日現在の教員免許状を取得できる大学(文部科学省)

「地理の先生・研究者」に関連するコミュニティ

研究室・部活・サークルなど、全国の 68 件から探せます。

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研究室未認証

植物科学研究室

横浜国立大学(神奈川県)

教育学部 学校教員養成課程 理科専門領域・植物系統進化学・植物地理学・倉田 薫子 教授

研究室未認証

複合系気象学研究室

横浜国立大学(神奈川県)

都市科学部 環境リスク共生学科・気象学・気候学・吉田 龍二 教授

観測データと計算機シミュレーションで天気や気候の仕組みを探る。

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大気科学

岡山大学(岡山県)

環境生命自然科学研究科 地球環境生命科学 地球科学・気象学・気候学・野沢 徹 教授

数値シミュレーションと観測データを使い、異常気象や気候変動の仕組みを研究する。

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研究室未認証

環境・防災教育研究室

横浜国立大学(神奈川県)

都市科学部 環境リスク共生学科・防災教育・気候変動教育・タキナナ アヌアンタエカ 助教

南太平洋の気候変動教育が地域の耐性に与える影響を調べる。

研究室未認証

地理空間情報学研究室

新潟大学(新潟県)

農学部 農学科 フィールド科学人材育成プログラム・地理空間情報学・村上 拓彦

ドローンや衛星の画像を解析し、森林・自然環境分野での地理空間情報の活用を進める。

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研究室未認証

地理学分野

広島大学(広島県)

人間社会科学研究科 人文学プログラム・地理学・後藤 秀昭 教授

活断層と地形学、経済地理学、農業地理学などを研究している。

研究室をすべて見る(25 件)

よくある質問

地理の先生になるには、地理学科に行かないといけませんか?

必ずしもそうではありません。多くの大学では、高校の地理歴史の免許は、史学科や教育学部の社会科のコースなどでもとれます。ただ、地理総合や地理探究を深く教えるには、大学で地理学の授業や野外の調査を多く経験しておくと強みになります。

地理学の研究者は、どんなことを調べているのですか?

気候の変化、地形のでき方、自然災害、都市や農村の移り変わり、観光や交通など、とても幅広いテーマがあります。日本地理学会には、テーマごとの研究グループもあります。

中学校の社会の先生も、地理を教えるのですか?

教えます。中学校の社会は、地理的分野・歴史的分野・公民的分野からなり、社会の先生は地理的分野も受け持ちます。中学校と高校の両方の免許をとる人もいます。