図 2 高校 3 年間の流れ()高校 3 年間の流れ 4
その先: 大学で生かす
高校の情報で学んだプログラミングとデータの力は、大学では学部を問わず使う道具になります。全学で学ぶデータサイエンスから、情報学の専門、文系の研究、情報の先生まで、続く道はいくつもあります。

ひとことで言うと
読み・書き・そろばんの、今の形
読み・書き・そろばんは、昔から暮らしと仕事に欠かせない力とされてきました。国は、数理・データサイエンス・AI の知識を、デジタル社会の「読み・書き・そろばん」と位置づけています。高校の情報は、その入口です。

01
全学のデータサイエンス: 文系でも学ぶ基礎
多くの大学では、学部を問わず、数理・データサイエンス・AI の基礎を学べる授業を用意しています。文部科学省は、こうした教育プログラムを認定する制度を 2021 年度に始めました。基礎のリテラシーレベルと、専門に応用する応用基礎レベルの 2 つがあります。
2026 年 8 月の時点で、リテラシーレベルは 655 件、応用基礎レベルは 421 件が認定されています。1 学年で受けられる学生の数は、リテラシーレベルで約 61 万人、応用基礎レベルで約 29 万人です。
この制度のもとになったのが、国の「AI 戦略 2019」です。文理を問わず、すべての大学・高専生(1 年に約 50 万人)がリテラシーレベルを身につけることを目標にしました。受けられる学生の数は、今ではこの目標を上回っています。
リテラシーレベルでは、社会で起きている変化とデータ・AI の使われ方を学びます。データを読む・説明する・扱う方法や、データを守るための注意も学びます。情報 I のデータの活用とつながる内容です。全学の必修とは限らず、学部によって必修だったり選択だったりします。
データサイエンスの基礎は、文系・理系を問わず大学で学ぶ素養になっています。
図解数理・データサイエンス・AI 教育の 2 つのレベル
リテラシーレベル
- 2021 年度から認定
- データと AI を理解して使う基礎
- 655 件・1 学年約 61 万人分
応用基礎レベル
- 2022 年度から認定
- 自分の専門に応用して課題を解く
- 421 件・1 学年約 29 万人分

02
情報学・データサイエンスを専門にする
情報を専門にするなら、情報学や情報工学、データサイエンスの学部・学科があります。情報 I・II で学んだ内容は、多くの大学で 1・2 年の授業の入口になります。プログラミングは演習の授業へ、探索や並べ替えはアルゴリズムとデータ構造へ、データの分析は統計や機械学習へと続きます。
高校で情報 II を選べなかった人も、心配はいりません。多くの大学では、1 年のプログラミング入門から順に学びます。くわしくは、このサイトの「情報学」のページの「4 年間の流れ」で紹介しています。
情報デザインで学んだ「伝わる形」も、大学で続きます。ヒューマンインタフェースは、人とコンピュータのやり取りを研究する分野です。だれにとっても使いやすい画面や操作を、実験で確かめながら考えます。プログラミングが得意でなくても、入口は 1 つではありません。
情報 I・II の内容は、大学の授業の入口としてそのまま続きます。
図解情報 I・II から続く大学の学び(例)
- プログラミング演習変数・関数から大きなプログラムへ
- アルゴリズム探索・並べ替えを速くする工夫
- ネットワークインターネットのしくみと安全
- データベース大量の記録を正しくしまう
- 統計・機械学習回帰・分類から AI へ
- インタフェース情報デザインから使いやすさへ

03
研究でデータを使う: 日記の桜から昔の気温を推定
データの分析は、情報系の学部だけのものではありません。大阪府立大学の青野靖之さんは、京都の古い日記などに残る、ヤマザクラの満開の記録を集めました。2011 年の発表の時点で、800 年分近いデータになっています。
満開の日は、春の気温が高いと早くなります。この関係を式にすると、満開の日から 3 月の平均気温を推定できます。推定した気温は、890 年代以降ほぼ途切れずに続いています。1330〜50 年ごろや 1670〜1700 年ごろは、今より 3℃以上低い寒い時代だったと分かりました。
研究では、時代によって記録の数が違うことにも気を配ります。15〜20 世紀は 8 割以上の年で満開の日が分かる一方、10〜11 世紀は 3 割ほどです。足りない部分をどう補うかを考えるのも、データを扱う研究の大切な仕事です。
古い記録を集め、表に整え、関係を式で表して推定する。これは、情報 I・II で学ぶデータの収集・整理・モデル化と同じ流れです。文学や歴史の資料も、データとして読むと新しい発見につながります。
古い記録も、表に整えて関係を式で表すと、研究のデータになります。
図解日記の記録から昔の気温を推定する
- 1記録を年ごとに集め、満開の日の表にする
- 2記録の少ない時代は、フジの満開の記録で補う
- 3近代の観測で、満開の日と気温の関係を式にする
- 4その式で、満開の日から 3 月の平均気温を推定する


04
情報の力を生かす進路と、情報の先生
情報の力を生かす仕事には、アプリや Web サービスの開発、データの分析、情報セキュリティ、画面のデザインなどがあります。それぞれの仕事は、このページの図 3 で紹介しています。
高校の情報の先生になる道もあります。2015 年には、情報の授業を受け持つ専任の先生の 27.6% が、情報の免許を持たない免許外教科担任でした。令和 7 年度の公立高校では、担当の 4,389 人のうち、臨時免許状か免許外教科担任の先生は 144 人です。
大きく減ったものの、文部科学省は今も各地の教育委員会に改善を求めています。情報を学んだ人が、次の高校生に情報を教えるという道です。高校の情報の教員免許が取れる教職課程があるかは、志望校のサイトで確かめてください。

05
高校のうちに、大学の情報へつなげる
大学の情報の授業では、高校で学んだ変数や繰り返しを使って、もっと大きなプログラムを書きます。高校のうちに、教科書の例を少し書きかえて動かす経験を重ねておくと、大学の演習に入りやすくなります。
データの分析では、表計算ソフトで平均を求めたり、散布図を作ったりした経験が役に立ちます。気象庁や環境省など国の機関は、だれでもダウンロードできるデータを公開しています。気になるデータで、小さな分析を 1 つ仕上げてみてください。
オープンキャンパスで、情報系の研究室を公開している大学もあります。高校の情報で面白かった単元を 1 つ決めて、その先にどんな研究があるかを聞いてみると、学部選びの手がかりになります。
教科書の例を書きかえて動かす経験が、大学の演習の土台になります。
高校生のうちに試せること
志望校のデータサイエンス教育を調べる
文部科学省のページには、認定された数理・データサイエンス・AI 教育プログラムの一覧があります。志望校を探し、何単位で、どんな授業があるかを大学のサイトで確かめましょう。
文部科学省 認定・選定校一覧地元の桜の開花日の移り変わりをグラフにする
気象庁は、各地のさくらの開花日を観測し、観測を始めてからの値を表で公開しています。住んでいる地域に近い地点の値を表計算に入力し、年ごとの開花日を折れ線グラフにしてみましょう。
気象庁 生物季節観測の情報情報学のページで 4 年間を見通す
このサイトの「情報学」のページで、1 年から 4 年までの流れを読みましょう。高校の情報 I・II のどの内容が、どの学年の授業につながるかを書き出すと、大学の学びが具体的に見えてきます。
「その先: 大学で生かす」に関連するコミュニティ
研究室・部活・サークルなど、全国の 66 件から探せます。

環境データ科学
岡山大学(岡山県)
工学部 環境・社会基盤系 環境マネジメントコース・環境情報学・珠玖 隆行 准教授
現地計測・衛星リモートセンシング・数値シミュレーションを組み合わせ、環境や防災の将来予測に生かす。
鈴木研究室
東京大学(東京都)
情報理工学系研究科数理情報学専攻・機械学習・数理統計学・学習理論・鈴木 大慈 教授

生体物理データ科学グループ
大阪大学(大阪府)
基礎工学研究科機能創成専攻・生体物理データ科学・清野 健 教授
データ解析・モデリング
広島大学(広島県)
先進理工系科学研究科 情報科学プログラム・情報科学・江口 浩二 教授
深層学習、ベイズ統計・ベイズモデリング、モデル選択などを研究している。
統計推論分野
京都大学(京都府)
情報学研究科(協力講座)・データ科学イノベーション教育

統計生態学
岡山大学(岡山県)
工学部 情報・電気・数理データサイエンス系 数理データサイエンスコース・統計生態学・大久保 祐作 講師
系統比較法を中心に、生態学の実データに統計手法を適用し新しい手法を開発・評価する。
よくある質問
文系の学部でも、データサイエンスを学びますか?
認定制度は、リテラシーレベルを文理を問わず学生が身につける素養と位置づけています。文系の学部でも学べる大学が多くあり、必修かどうかや単位数は大学によって異なります。
情報の先生になるには、どうすればよいですか?
高校の情報の教員免許が取れる教職課程のある大学で、必要な単位を修めて免許状を取ります。公立高校の先生になるには、そのうえで都道府県などの教員採用選考に合格する必要があります。
大学の研究で、プログラミングはどのくらい使いますか?
分野によって違います。情報学では研究の中心的な道具です。生物学や文学など、ほかの分野でも、記録や測定のデータを表に整えて分析する研究があります。


