図 1 情報の広がり情報の広がり 2
伝え方と情報デザイン
音や画像を 0 と 1 に変えるしくみと、相手に分かりやすく伝える情報デザインを学ぶ単元です。スマートフォンの写真の大きさも、駅の案内の見やすさも、この単元の内容で説明できます。

ひとことで言うと
相手に合わせて、伝える形を選ぶ
遠くに住む祖父母に旅行の話をするなら、電話で声を届ける、写真を送る、地図に印を付けて手紙で送るなど、方法はいくつもあります。この単元は、伝えたい中身を、どの形にすれば相手に正しく届くかを考える学びです。

01
音のデジタル化: CD は 1 秒に 4 万 4,100 回、音を測る
マイクが拾う音は、空気の振動の大きさが切れ目なく変わるアナログの信号です。これを 0 と 1 の数の並びに直すのがデジタル化です。学習指導要領は、その手順である標本化・量子化・符号化を、二進法とあわせて理解するよう求めています。
まず、一定の時間ごとに波の高さを測ります(標本化)。次に、測った高さを決められた段階の数値に丸めます(量子化)。最後に、その数値を 0 と 1 で表します(符号化)。音楽 CD は、1 秒に 4 万 4,100 回測り、高さを 16 ビット、つまり 6 万 5,536 段階で表します。
なぜ 4 万 4,100 回なのでしょうか。人が聞き取れる最も高い音は、1 秒に約 2 万回振動する音(約 2 万 Hz)です。波の形を残すには、その 2 倍を超える回数で測る必要があります。CD の回数は、2 万の 2 倍を少し上回っています。
データの量も計算できます。CD には左右 2 つのチャンネルがあるので、1 秒分は 44,100 × 16 × 2 = 1,411,200 ビットです。8 ビットが 1 バイトなので約 176 KB、5 分の曲なら約 53 MB になります。
測る回数と段階を増やすほど元の音に近づきますが、データは大きくなります。
図解音をデジタルにする手順
- 1標本化一定の時間ごとに波の高さを測る
- 2量子化高さを決まった段階の数に丸める
- 3符号化数を 0 と 1 の並びにする
- 4データ量を求めるCD は 1 秒で約 176 KB

02
画像のデジタル化: 色の明るさは 0 から 255 の数
デジタルの画像は、画素(ピクセル)という小さな点の集まりです。スマートフォンの画面を大きく拡大すると、赤・緑・青の 3 色の小さな光が並んでいます。この 3 色の光の強さを組み合わせて、さまざまな色を表しています。
多くの画面では、3 色それぞれの明るさを 8 ビット、つまり 0 から 255 までの 256 段階で表します。3 色を合わせた 24 ビットで、256 × 256 × 256 = 1,677 万 7,216 色を表せます。赤と緑が 255 で青が 0 なら黄色、3 色とも 255 なら白です。
画像のデータ量は、画素の数 × 1 画素のバイト数で求めます。たとえば横 4,000 × 縦 3,000 画素の写真は 1,200 万画素です。1 画素 3 バイトなら 3,600 万バイト、約 36 MB になります。
文部科学省の「情報 I」の教員研修用教材には、動画のデータ量を求める問題があります。フルハイビジョン(1,920 × 1,080 画素)の画像を、1 秒に 60 枚、1 分間並べた場合です。答えは約 224 億バイト、約 22 GB です。実際の動画のファイルがずっと小さいのは、次の節の圧縮のおかげです。
画素の数 × 1 画素のデータ量で、画像の大きさが計算できます。


03
圧縮: 同じ色が続けば、短く書ける
データを小さくすることを圧縮といいます。完全に元に戻せる可逆圧縮と、完全には戻せない代わりにもっと小さくできる非可逆圧縮があります。文書は 1 文字でも変わると困るので、可逆圧縮を使います。写真や動画には、人が気づきにくい細かい部分を省く非可逆圧縮がよく使われます。
可逆圧縮のいちばん簡単な方法が、ランレングス法です。「AAAAABBBBB」を、文字とその続く数で「A5B5」と書けば、10 文字が 4 文字になります。白と黒の部分が長く続くファクスの画像では、この方法がよく効きます。
ところが、同じ文字があまり続かないデータには逆効果です。教員研修用教材の例では、「intelligence」の 12 文字が「i1n1t1e1l2i1g1e1n1c1e1」の 22 文字に増えてしまいます。そこで、よく出る文字に短い符号を割り当てるハフマン法なども学びます。データの特徴に合った方法を選ぶのが、圧縮の考え方の中心です。
圧縮は、データのくり返しや、人が気づかない部分を見つけて省く工夫です。
図解白黒の画像の 1 行をランレングス法で縮める
- 1左から、同じ色が続く数を数える
- 2「白 6・黒 2・白 4」と書き表す
- 3色と数の組を 0 と 1 で保存する

04
情報デザイン: 整理のしかたは 5 つしかない
情報デザインは、情報を整理して、受け手に分かりやすく伝えるための考え方です。学習指導要領の解説は、その方法として抽象化・可視化・構造化を挙げています。年齢や障害の有無、言語などに関係なく伝える工夫も扱うよう求めています。
構造化の基本が、情報を整理する基準です。教員研修用教材は、リチャード・ソール・ワーマンが示した「究極の 5 個の帽子掛け」を紹介しています。整理の基準は、位置・アルファベット(五十音)・時間・カテゴリ・連続量の 5 つしかないという考え方です。
スマートフォンの写真なら、撮った場所で分ければ位置、写っている人の名前の順なら五十音、撮った日の順なら時間が基準です。図書館の本棚はカテゴリ、口コミサイトの評価の高い順は連続量です。目的に合った基準を選ぶと、同じ情報でもぐっと探しやすくなります。
形で情報を伝える工夫もあります。点字ブロックは、目の不自由な人を足の裏の感触で案内します。1967 年 3 月 18 日に、岡山県立岡山盲学校に近い交差点で、世界で初めて敷かれました。
整理の基準を選ぶことが、伝わる形をつくる第一歩です。
図解情報を整理する 5 つの基準
- 位置例: 都道府県別の一覧
- 五十音・アルファベット例: 辞書・名簿
- 時間例: 予定表・年表
- カテゴリ例: 図書館の本棚
- 連続量例: 評価の高い順


05
つまずきやすい単位の計算と、大学での学び
この単元でつまずきやすいのが、ビットとバイトの計算です。8 ビットが 1 バイト、という関係を最初に書いておくと途中で迷いません。1 KB を 1,000 バイトとする場合と 1,024 バイトとする場合があるので、問題の約束も確かめます。大きな数の計算は、電卓や表計算ソフトを使ってかまいません。
大学では、音や画像のデジタル化は、信号処理や画像処理、情報理論の授業に続きます。情報デザインは、ヒューマンインタフェースやデザイン学の授業で深めます。情報系の学部のほか、芸術・デザイン系の学部や、工学部のメディア系の学科でも学べます。Web デザイナーや UI デザイナー、放送や録音を支える技術者など、この単元の知識を毎日使う仕事もあります。
高校生のうちに試せること
スマートフォンの写真のデータ量を計算する
スマートフォンで撮った写真の詳細情報で、横と縦の画素数とファイルの大きさを確かめましょう。横 × 縦 × 3 バイトで圧縮しない場合の大きさを計算して実際と比べると、圧縮でどれだけ小さくなったかが分かります。
写真やメモを、5 つの基準で整理し直す
スマートフォンの写真やノートのメモを、位置・五十音・時間・カテゴリ・連続量のどれかの基準で整理し直しましょう。同じ写真でも、基準を変えると見つけやすさが変わることが分かります。
教員研修用教材で、圧縮を手で試す
文部科学省の「情報 I」の教員研修用教材の第 2 章には、デジタル化と圧縮の解説や練習問題が載っています。「interest」という単語をハフマン法で圧縮する問題に、紙と鉛筆で挑戦しましょう。
文部科学省「情報 I」教員研修用教材
「伝え方と情報デザイン」に関連するコミュニティ
研究室・部活・サークルなど、全国の 86 件から探せます。

知的医療画像メディア研究室
熊本大学(熊本県)
工学部 情報電気工学科 情報工学教育プログラム・医用画像処理・諸岡 健一 教授
人体の3次元解剖データやAIを使い、手術やがん診断、歯科治療を支援する。
椋田研究室
東京大学(東京都)
情報理工学系研究科知能機械情報学専攻・画像処理・機械学習・椋田 悠介 講師
音響信号処理研究室
熊本大学(熊本県)
工学部 情報電気工学科 情報工学教育プログラム・音響信号処理・植野 夏樹 准教授
マイクやスピーカのアレイで音場を計測・合成し、仮想空間での再現を研究する。

信号・画像処理
新潟大学(新潟県)
工学部 工学科 電子情報通信プログラム・多次元信号処理・村松 正吾 教授
画像など多次元信号の復元・認識に使うフィルタ群の設計法と実装法を研究する。

流体音響工学研究室
横浜国立大学(神奈川県)
理工学部 機械・材料・海洋系学科 機械工学教育プログラム・流体音響学・草野 和也 助教
流体騒音の発生の仕組みを解明し流体機械の静音化を目指す。

インタフェースシステム学
岡山大学(岡山県)
工学部 機械システム系 ロボティクス・知能システムコース・ヒューマンインタフェース・中澤 篤志 教授
AIで人の意図を読み取るインタフェースや、介護向けVR/MR、医療支援・対話ロボットを開発する。
よくある質問
探究の発表のスライドづくりにも使えますか?
使えます。伝えたいことを 1 枚に 1 つにしぼる(抽象化)、数はグラフにする(可視化)、見出しと番号で順序を示す(構造化)と、3 つの方法がそのまま役立ちます。発表の前に友だちに見てもらい、分かりにくい所を直すと、さらに伝わりやすくなります。
スマートフォンの写真が、計算した 36 MB よりずっと小さいのはなぜですか?
多くの写真は、JPEG などの非可逆圧縮で保存されているためです。人の目で気づきにくい細かい部分を省いて、データを小さくしています。圧縮しない形式で保存すると、計算に近い大きさになります。
