図 1 情報の広がり情報の広がり 1
情報社会の問題解決
情報 I の最初に学ぶ単元です。身の回りの問題を見つけて解決する手順、情報ならではの性質、著作権などの法律とモラル、情報技術が社会に与える影響を学びます。

ひとことで言うと
部活の課題を、記録をもとに解決する
部活で「試合の後半に失点が多い」と気づいたら、記録から原因を探し、練習を変えて、次の試合で確かめます。情報社会の問題解決は、この流れを、データと情報技術を使って確かに進めるための学びです。

01
問題解決の流れ: スマホの使い方を国のデータと比べる
情報 I は 4 つの内容からなり、「情報社会の問題解決」はその最初に学ぶ導入の単元です。ここで身に付ける問題解決の進め方は、後のプログラミングやデータの分析でもくり返し使います。
学習指導要領の解説は、問題を見つける活動の例を挙げています。自分たちのスマートフォンなどの使い方を、国や自治体が公開しているデータと比べる活動です。こども家庭庁の 2025 年度の調査では、ネットを使う高校生の平日 1 日の平均利用時間は約 6 時間 44 分でした。9 時間以上と答えた高校生も 21.7% いました。
クラスでアンケートをとってこの数字と比べると、自分たちの位置が見えてきます。「寝る前に動画を見続けてしまう」のような問題が見つかったら、解決策を 2 つ以上考えて比べます。通知を切る時間を決める、充電器を寝室の外に置く、などです。試した後は利用時間の記録で効果を確かめ、うまくいかなければ方法を見直します。
解説には、生徒会活動を盛り上げる、学校の図書館をもっと魅力的にする、といった校内の例もあります。アンケートやインタビューで根拠を集め、筋道の通った解決策を提案するのが、この単元の学び方です。
問題解決は、根拠を集めて案を比べ、試した結果を振り返るくり返しです。
図解問題解決の 5 つの段階
- 1問題を見つける記録や調査から、困りごとに気づく
- 2問題をはっきりさせる何を、どこまで良くするかを決める
- 3解決策を考える複数の案を出し、根拠をもって選ぶ
- 4実行する計画を立てて試す
- 5振り返る結果を確かめ、やり方を改める


02
情報の特性: 渡しても減らず、消すのは難しい
解説は、情報の特性として「形がない」「消えない」「簡単に複製できる」「容易に伝播する」を挙げています。そして、「もの」と比べて考える学習を例に示しています。ペンを友だちにあげると手元からなくなりますが、勉強のこつを教えても、自分の知識は減りません。
この性質は便利な反面、SNS では注意が必要です。一度投稿した写真は、すぐに消しても、だれかが保存したり画面を撮影したりしていれば残り続けます。送る前に、だれに見られても困らないかを考えることが、情報モラルの出発点です。
情報を守る考え方も学びます。情報セキュリティの 3 要素は、許された人だけが見られる機密性、内容が正しく保たれる完全性、必要なときに使える可用性です。人の油断につけこんでパスワードなどを聞き出す、ソーシャルエンジニアリングという手口にも触れます。
情報は減らずに広がるからこそ、出す前に考えることが大切です。
図解「もの」と「情報」の違い
もの
- 人に渡すと手元からなくなる
- 形があり、手で触れられる
- 複製には材料と手間がかかる
情報
- 人に伝えても手元に残る
- 形がない
- 一瞬で複製され、広がる

03
法律と知的財産: 引用のルールと、文化祭の演奏
知的財産権には、文章・絵・音楽などの作品を守る著作権と、発明やデザイン、商品のマークを守る産業財産権があります。文化庁の資料によると、特許権は出願から 20 年、意匠権は出願から 25 年、商標権は登録から 10 年(更新できる)守られます。特許権はアイデアを、著作権は表現を守るという違いがあります。
レポートや探究の発表で他人の文章や図を使うときの基本が、著作権法第 32 条の引用です。文化庁の「著作権テキスト」は、公表された作品であること、カギ括弧などで引用部分がはっきり分かることを条件に挙げています。自分の文章が主で引用が従であること、出所を示すことも必要です。
許可なく使える場合は、ほかにも決められています。第 38 条の条件は、営利を目的としないこと、聞く人から料金を取らないこと、演奏する人に報酬を支払わないことです。これを満たせば、文化祭でプロの曲を作曲者の許可なく演奏できます。ただし、その演奏の動画をネットに公開するのは別の利用で、この例外には入りません。
肖像権は、自分の顔や姿をみだりに公開されない権利です。日本では法律に定められた権利ではなく、裁判の積み重ねで認められてきました。友だちが写った写真を投稿する前には、本人に確かめます。
使う前に引用や例外の条件を確かめることが、作品と自分の両方を守ります。
図解著作権と産業財産権
著作権
- 文章・絵・音楽などの表現を守る
- 作った時点で自動的に生まれる
- 原則として作者の死後 70 年まで
産業財産権
- 発明・デザイン・マークなどを守る
- 特許庁への出願と登録が必要
- 特許権は出願から 20 年まで


04
情報技術と社会: 便利さの「光」と「影」
AI やロボットなどの情報技術は、生活を便利にします。一方で、サイバー犯罪や情報格差、健康への影響などの「影」も生みます。解説は、この両面を扱うよう求めています。電子マネーや IC カードが広まって自動改札やセルフレジが増え、人の仕事の中身が変わったことも例に挙がっています。
こども家庭庁の 2025 年度の調査では、ネットを使う高校生の 46.2% が生成 AI を使っていました。調べ物や学習に役立つ一方で、まちがった答えが返ってくることもあります。元の資料を確かめる、個人情報を入力しないなど、使い方のルールを自分たちで考えることも、この単元の学習です。
テストでつまずきやすいのは、似た用語の区別です。著作権と産業財産権、機密性・完全性・可用性のような組を、身近な例と 1 つずつ結び付けて覚えると忘れにくくなります。たとえば、課題の締め切り前に学校のサイトが止まって提出できないのは、可用性が損なわれた状態です。
大学では、情報学部の情報倫理や情報法、法学部の知的財産法、社会学部のメディア論などの授業に続きます。新しい技術が出るたびに、法律やルールも見直されます。ルールを守るだけでなく、ルールを作る側で働く道もあります。
高校生のうちに試せること
クラスのスマホの使い方を、国のデータと比べる
友だちに平日のスマートフォンの利用時間をアンケートで聞き、こども家庭庁の調査の数字と比べましょう。差が大きい項目から問題を 1 つ選び、解決策を 2 つ以上考えて比べると、問題解決の流れを一通り体験できます。
こども家庭庁「青少年のインターネット利用環境実態調査」自分のレポートの引用を点検する
文化庁の「著作権テキスト」で引用の条件を読み、探究のレポートや発表のスライドの引用が、条件をすべて満たしているかを確かめましょう。引用部分の区切り方と出所の書き方が身に付きます。
文化庁「著作権テキスト」(PDF)身近な物の特許を検索する
J-PlatPat では、日本の特許などを無料で検索できます。「消しゴム」「傘」など身近な物の名前で探し、どんな工夫が権利になっているかを見てみましょう。
特許情報プラットフォーム J-PlatPat
「情報社会の問題解決」に関連するコミュニティ
研究室・部活・サークルなど、全国の 12 件から探せます。

ソーシャルメディアユニット
京都大学(京都府)
情報学研究科情報学専攻・社会情報モデル

教育情報学分野
京都大学(京都府)
情報学研究科(協力講座)・社会情報解析基盤・緒方 広明 教授
像情報学分野
京都大学(京都府)
情報学研究科(協力講座)・社会情報解析基盤・舩冨 卓哉 教授
社会情報学
広島大学(広島県)
先進理工系科学研究科 電気システム制御プログラム・社会情報学・林田 智弘 教授
意思決定論、生産システム、電力システムなどを研究している。

知的財産・情報財と法制度研究室
横浜国立大学(神奈川県)
都市科学部 環境リスク共生学科・知的財産法・末宗 達行 准教授
価値ある情報の自由な利用と保護の釣り合いを法制度から考える。

合意情報学分野
京都大学(京都府)
情報学研究科情報学専攻・社会情報ネットワーク・伊藤 孝行 教授
学生団体・機関はまだ掲載していません
よくある質問
この単元は、どんな授業で学びますか?
学習指導要領は、生徒が自分で情報社会の問題を見つけ、解決策を考える活動を取り入れるよう定めています。そのため、教科書を読むだけでなく、グループで調査をして解決策を提案し、発表する授業もあります。
法律の話は難しそうです。どこから学べばよいですか?
SNS への投稿やレポートの引用など、自分がよくする行動から考えると分かりやすくなります。条文を覚えるより、なぜそのルールがあるのかを考えることが大切です。ルールが変わっても、理由が分かっていれば正しく対応できます。
