図 1 情報の広がり情報の広がり 4
ネットワークとデータの活用
インターネットでデータが届くしくみ、情報を守る技術、データベース、データの集め方と分析を学ぶ単元です。URL の読み方やパスワードの強さも、この単元の知識で説明できます。

ひとことで言うと
手紙を、住所を書いて届ける
手紙は、宛先の住所を書けば、いくつもの郵便局を経由して相手に届きます。インターネットのデータも、宛先の番号を付けた小さな包みに分けられ、中継の機器を経由して届きます。この単元は、その届け方と、届いたデータの生かし方を学ぶ内容です。

01
ネットワークのしくみ: データは小包に分かれて届く
インターネットでは、データをパケットという小さな単位に分けて送ります。パケットには、宛先を示す番号である IP アドレスが付いています。ルーターという中継の機器が、パケットを行き先に近い方へ次々と送り出します。
通信の手順の決まりをプロトコルといいます。インターネットで使う TCP/IP は、通信の役割を 4 つの層に分けて受け持っています。学習指導要領は、家庭の LAN のような小さなネットワークを設計する活動を取り入れるよう定めています。
IP アドレスの数には限りがあります。総務省によると、今も広く使われている IPv4 のアドレスは約 43 億個です。32 ビットで表すので、2 の 32 乗です。インターネットにつながる機器が増え、このアドレスは足りなくなっています。そこで、128 ビットで約 340 澗個のアドレスを使える IPv6 への移行が進められています。1 澗は、1 兆の 1 兆倍のさらに 1 兆倍です。
大きなデータも、小さく分けて番号を付ければ、途中の故障に強く届けられます。


02
ドメイン名: URL の末尾で、発信元の種類が分かる
IP アドレスは数字の並びなので、人には覚えにくいものです。そこで「www.mext.go.jp」のような名前、ドメイン名を使います。ドメイン名を IP アドレスに置き換えるのが DNS というしくみで、Web ページを開くたびに裏で働いています。
日本のドメイン名には、末尾で登録できる組織の種類が決まっているものがあります。日本レジストリサービス(JPRS)によると、「go.jp」は政府機関、「lg.jp」は地方公共団体が登録できます。「ac.jp」は大学などの高等教育機関、「ed.jp」は小中高校など、「co.jp」は日本で登記した会社です。
ネットで調べものをするとき、URL の末尾はだれが発信した情報かを知る手がかりになります。統計の数字なら、go.jp の省庁のページで元の資料を確かめられます。ただし、末尾だけで内容が正しいとまでは言えないので、ほかの資料とも比べます。
URL の末尾を読むことは、情報の出どころを確かめる第一歩です。
図解日本のドメイン名の末尾
- go.jp政府機関・省庁
- lg.jp都道府県・市町村
- ac.jp大学などの高等教育機関
- ed.jp小中高校などの学校
- co.jp日本で登記した会社
- or.jp財団法人・NPO 法人など

03
情報セキュリティ: パスワードは 1 文字で 62 倍強くなる
パスワードを破る方法の 1 つが、考えられる組み合わせをすべて試す総当たりです。数字 4 けたなら、10 の 4 乗で 1 万通りしかありません。英小文字 8 文字なら、26 の 8 乗で約 2,088 億通りです。英大文字・小文字・数字の 62 種類で 8 文字なら、約 218 兆通りになります。
仮に、1 秒に 1 億通り試せるコンピュータがあるとします。数字 4 けたは一瞬、英小文字 8 文字は約 35 分で、すべてを試し終えます。62 種類の 8 文字なら約 25 日、10 文字にすると約 266 年です。1 文字増えるごとに組み合わせは 62 倍になり、文字の種類と長さが強さを大きく左右します。
総務省の「国民のためのサイバーセキュリティサイト」は、10 文字以上で、数字・記号・英大文字と小文字を混ぜたパスワードを勧めています。上の計算は、その理由を数で示しています。情報 I では、こうした守り方を、暗号化や通信のしくみと合わせて学びます。
長くして、文字の種類を混ぜる。この 2 つで、総当たりにかかる時間は桁ちがいに延びます。
図解総当たりにかかる時間(1 秒に 1 億通り試す場合)
- 1数字 4 けた: 1 万通り → 一瞬
- 2英小文字 8 文字: 約 2,088 億通り → 約 35 分
- 3英大小文字と数字 8 文字: 約 218 兆通り → 約 25 日

04
データの活用: 30℃ は 15℃ の 2 倍暑い?
データを集めて整理し、分析して、問題の解決に生かす方法も学びます。大量のデータを整理して蓄えるしくみがデータベースです。店の POS システムや銀行の ATM も、データベースを中心に動いています。
表の形でデータを管理する関係データベースでは、1 行ずつを確実に見分けるための項目を決めます。これを主キーといいます。同じ学年に同姓同名の生徒がいても、学籍番号を主キーにすれば取りちがえません。
分析の前には、データの種類(尺度)も確かめます。気温の 0℃ は「熱がない」状態ではないので、30℃ の地点は 15℃ の地点の 2 倍暑い、とは言えません。気温は、差には意味があっても比には意味がない間隔尺度だからです。文部科学省の教員研修用教材も、こうした誤りの例を挙げています。
大学では、ネットワーク工学、情報セキュリティ、データベース、統計学やデータサイエンスの授業へと続きます。会社や学校のネットワークを守るセキュリティエンジニアは、この単元の内容を毎日使う仕事です。データから改善策を考えるデータサイエンティストも同じです。
高校生のうちに試せること
自分の町の気温をグラフにする
気象庁の「過去の気象データ・ダウンロード」で、住んでいる地域の観測所を選び、毎年 8 月の平均気温を 30 年分ほど取り出しましょう。表計算ソフトで折れ線グラフにし、どんな変化があるかを読み取ってください。
気象庁「過去の気象データ・ダウンロード」パスワードの強さを計算する
文字の種類と長さを変えたとき、組み合わせが何通りになるかを電卓で計算しましょう。1 秒に 1 億通り試せると仮定して、すべて試すのにかかる時間も求めましょう。自分が実際に使っているパスワードは使わずに試してください。
家のネットワークを図に描く
家にあるルーター、スマートフォン、パソコン、ゲーム機などが、どうつながっているかを図に描きましょう。有線か無線か、どの機器がインターネットへの出入り口かを書き込むと、教科書のネットワークの図と比べられます。
「ネットワークとデータの活用」に関連するコミュニティ
研究室・部活・サークルなど、全国の 120 件から探せます。

情報セキュリティ工学
岡山大学(岡山県)
工学部 情報・電気・数理データサイエンス系 ネットワーク工学コース・暗号理論・野上 保之 教授
楕円曲線暗号やペアリング暗号の開発と、暗号の安全性検証や誤り訂正符号を研究する。

分散システム構成学
岡山大学(岡山県)
工学部 情報・電気・数理データサイエンス系 ネットワーク工学コース・分散システム・舩曵 信生 教授
無線ネットワークの自動構築や電子透かし、並列計算、プログラミング学習支援システムを研究する。

四方研究室
横浜国立大学(神奈川県)
理工学部 数物・電子情報系学科 情報工学教育プログラム・暗号理論・情報セキュリティ・四方 順司 教授
計算困難性や情報理論に基づく暗号・プライバシ技術を研究する。

金子研究室
東京大学(東京都)
情報理工学系研究科コンピュータ科学専攻・無線ネットワーク・移動体通信・金子 めぐみ 教授
情報通信フォトニクス研究室
北海道大学(北海道)
メディアネットワーク
メディア創生学研究室
北海道大学(北海道)
メディアネットワーク
よくある質問
情報 I の「データの活用」は、数学の「データの分析」と何が違いますか?
数学 I の「データの分析」では、平均や分散、相関係数などの考え方を学びます。情報 I では、データの集め方や整理の仕方、表計算ソフトやプログラムを使った分析と見せ方まで学びます。学習指導要領の解説も、2 つを関連付けて学ぶよう求めています。
ネットワークのしくみは、目に見えなくて難しく感じます。
家にあるルーターやスマートフォンのつながりを、図に描くことから始めると分かりやすくなります。文部科学省の教員研修用教材にも、家庭の LAN を図に描く演習があります。上の動かせる図で、パケットが届く様子を見てみるのも一つの方法です。
