大学カタログ

図 1 日本史の広がり日本史の広がり 1

原始・古代

旧石器・縄文の暮らしから、古墳の時代、律令にもとづく国づくり、平安時代までを学ぶ領域です。土の中から出てくる柱の跡や鉄剣、木の札を手がかりに、文字の少ない時代の人々の姿を描き出します。

復元された縄文の高い柱の建物の前で土器を調べる学生、古墳の上で鉄剣の模型を見る学生、細長い木の札を虫めがねで読む学生

ひとことで言うと

引き出しの奥から出てきたレシートを読む

引き出しの奥から古いレシートが出てくると、その日に何を買い、どこへ行ったかが分かります。古代の歴史も同じです。柱の跡や土器のかけら、木の札など、当時の人が残した小さなものから、暮らしや国のしくみを読み解きます。

01

縄文: 三内丸山には、太さ約 1 m のクリの柱が立っていた

日本史探究は、旧石器文化から縄文文化への変化や、弥生文化の成立から学び始めます。学習指導要領は、自然環境と人間の生活との関わりや、狩猟採集の社会から農耕の社会への変化に目を向けるよう求めています。

縄文時代を代表する遺跡の 1 つが、青森市の三内丸山遺跡です。約 5,900〜4,200 年前の、縄文時代の大きな集落の跡です。重要性が分かったのは、県営野球場をつくる前の発掘調査でした。1992 年に調査が始まり、青森県は 1994 年に遺跡の保存を決めます。2021 年には「北海道・北東北の縄文遺跡群」の 1 つとして、世界遺産になりました。

大型掘立柱建物の跡では、直径約 2 m の柱の穴が、4.2 m の間隔で 6 つ並んでいました。穴の中には、直径約 1 m のクリの木の柱が残っていたのです。クリは DNA の分析から、栽培していた可能性が高いことも分かってきました。

遠くの土地とのつながりも見えてきます。新潟県糸魚川のヒスイ、岩手県久慈のコハク、北海道や長野県などの黒曜石が、この遺跡から出土しています。狩りと採集だけの、その日暮らしの縄文時代。そんなイメージが、出土品の分析で変わってきています。

出土品の産地や分析の結果から、縄文の人々の暮らしと遠くとのつながりが見えてきます。

図解三内丸山遺跡に届いた遠くの品

三内丸山遺跡(青森市)
  • ヒスイ新潟県・富山県境の糸魚川から
  • コハク岩手県の久慈から
  • 黒曜石北海道・佐渡・山形・長野など
  • アスファルト秋田県から
芝生の広場に立つ、6 本の太い木の柱を組んだ 3 層の高い建物と、その奥の、かやぶき屋根の細長い大きな建物
三内丸山遺跡で、見つかった柱の跡をもとに復元された大型掘立柱建物(左)と大型竪穴建物(右)。もとになった柱の穴は、4.2 m の間隔で並んでいました。写真: 663highland(CC BY 2.5・Wikimedia Commons)

02

古墳と国家: さびた鉄剣から 115 の文字が現れた

弥生時代の後、各地に大きな古墳がつくられる時代が来ます。日本史探究では、国家の形成と古墳文化を、中国大陸や朝鮮半島との関係とあわせて考えます。

埼玉県行田市の稲荷山古墳では、1968 年の発掘調査で、さびた鉄剣が見つかりました。10 年後の 1978 年、保存処理の作業の中でエックス線を当てて撮影すると、刀身に金で象嵌された文字が浮かび上がりました。表と裏で合わせて 115 文字です。

銘文には「辛亥年」という年と、「獲加多支鹵大王(ワカタケル大王)」の名が刻まれていました。辛亥年は 471 年とする説が有力で、531 年とする説もあります。ワカタケル大王は、雄略天皇にあてる説が一般的です。

この発見で、熊本県の江田船山古墳から出た大刀の銘にある大王も、同じワカタケル大王だと分かりました。東と西の遠く離れた古墳から、同じ大王の名が出てきたのです。この時代の政治のまとまりがどこまで広がっていたかを考える、大きな手がかりになりました。鉄剣は 1983 年に国宝に指定されています。

新しい調べ方が加わると、同じ資料から読み取れることが増えていきます。

図解鉄剣の文字が見つかるまで

  1. 11968 年 出土稲荷山古墳から、さびた鉄剣が出る
  2. 2保存処理さびが進まないよう手当てをする
  3. 31978 年 X 線撮影で金の文字 115 字が見つかる
  4. 41983 年 国宝ほかの出土品とまとめて指定
暗い展示ケースの中で、さびた細長い鉄剣の刀身に、金色の漢字が縦に並んで光っている様子
稲荷山古墳から出土した国宝の金錯銘鉄剣のうち、「獲加多支鹵」の文字がある部分。金で象嵌された文字が、1500 年以上たった今も読み取れます。写真: 斑猫(CC0・Wikimedia Commons)

03

律令国家: 木簡は、都に届いた税の荷札だった

古墳の時代の後、中国の唐にならって、律令という法にもとづく国のしくみが整えられていきます。人々は、その土地の産物などを税として都へ納めました。その荷物に付けられた木の札が、荷札木簡です。

奈良の平城宮跡で初めて木簡が見つかったのは、ゴミ捨て穴からでした。約 40 点が出てきたのです。その後も出土が続き、2017 年には 3,184 点が「平城宮跡出土木簡」として国宝に指定されました。木簡としては初めての国宝です。

奈良文化財研究所の「木簡庫」では、木簡に書かれた文字をだれでも調べられます。平城京の跡から出た 1 枚には、こう書かれています。「伊豆国田方郡有雑郷多賀里 … 矢田部廣足 調 堅魚 十一両 … 天平七年十月」。

伊豆国(今の静岡県)のある里に住む矢田部廣足が、税の「調」として、堅魚を 11 両納めた、という意味です。堅魚は、カツオを加工した食品です。日付は 735 年 10 月です。住所、名前、品物、量、日付。今の宅配便の伝票とそっくりです。

木簡は、歴史書には書かれない、ふつうの人々の暮らしを伝えてくれます。

図解荷札木簡を読んでみる

入力伊豆国田方郡有雑郷多賀里 … 矢田部廣足 調 堅魚 十一両 … 天平七年十月
  1. 1伊豆国田方郡有雑郷多賀里 → 送り主の住所
  2. 2矢田部廣足 → 送り主の名前
  3. 3調 → 税の種類
  4. 4堅魚 十一両 → 品物と量
  5. 5天平七年十月 → 735 年 10 月
結果伊豆からカツオの加工品を税として都へ送った荷札
展示ケースの中に、長さや太さの違う細長い木の札が 7 枚、縦向きに間をあけて並べられている
飛鳥京・藤原宮・平城宮の跡から出た荷札木簡の複製(7〜8 世紀)。木の札に墨で、国や里の名前、品物などが書かれています。写真: さぱしあ(CC BY-SA 3.0・Wikimedia Commons)

04

大学では: 考古学と古代史で、土と文字の両方から考える

日本史探究のこの時代は、平安時代の貴族の政治や文化、地方で武士が現れるところまでを学びます。学習指導要領の解説は、「歴史書の記述と考古学の成果を組み合わせると、どのようなことが分かるのだろうか」という問いを例に挙げています。年代を測る自然科学の成果を組み合わせることも大切だとしています。

大学では、史学科などで日本古代史や考古学を学びます。古代史のゼミでは歴史書や木簡を読み、考古学では発掘の実習で、実際に土を掘って記録をとります。多くの大学では、博物館の学芸員の資格をとる課程も用意されています。

卒業後に、県や市の文化財の専門職員として、発掘調査に取り組む人もいます。年号を覚えるのが苦手でも大丈夫です。まずは近くの博物館で、土器や木簡を自分の目で見るところから始めてください。

クイズ原始・古代のクイズ

本文を思い出しながら答えてください。

  1. Q1三内丸山遺跡の大型掘立柱建物の柱に使われていた木は?

  2. Q2稲荷山古墳の鉄剣の 115 文字は、どうやって見つかった?

  3. Q3平城京の跡から出た荷札木簡に、伊豆国から税として送ったと書かれていた品物は?

0 / 3 問に回答

高校生のうちに試せること

  • 木簡庫で、自分の県の昔の国名を調べる

    奈良文化財研究所の「木簡庫」で、自分の住む地域の昔の国名(武蔵・伊豆・播磨など)を入れて検索しましょう。どんな品物が都へ送られていたかが分かります。写真と読み下した文字を見比べてみてください。

    奈良文化財研究所「木簡庫」
  • 縄文遺跡群の 17 の遺跡を比べる

    「北海道・北東北の縄文遺跡群」は、北海道・青森・岩手・秋田の 17 の遺跡でできています。公式サイトで、時期や遺跡の特徴を比べ、住んでいる地域に近い遺跡を 1 つ選んで調べましょう。

    JOMON JAPAN「縄文遺跡群」
  • 金錯銘鉄剣の実物を見に行く

    稲荷山古墳の鉄剣は、埼玉県行田市の県立さきたま史跡の博物館で展示されています。古墳群も歩いて回れるので、出土品と古墳の大きさを合わせて体感できます。

    埼玉県立さきたま史跡の博物館

「原始・古代」に関連するコミュニティ

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よくある質問

古代の歴史書と考古学の発掘では、どちらが正しいのですか?

どちらか一方が正しい、というものではありません。歴史書には書いた人の立場や目的があり、出土品には文字がないことも多くあります。学習指導要領の解説も、歴史書の記述と考古学の成果を組み合わせて考える学習を例に挙げています。

木簡の字は、高校生でも読めますか?

全部を自分で読むのは難しくても、楽しめます。奈良文化財研究所の「木簡庫」では、木簡の写真と、読み下した文字(釈文)を並べて見られます。地名や品物の名前など、知っている漢字を探すところから始めてください。

発掘の仕事に興味があります。どんな道がありますか?

大学で考古学を学び、県や市の文化財の専門職員や、博物館の学芸員として働く道があります。発掘の実習を必修にしている大学もあるので、大学のカリキュラムで確かめてください。