図 1 日本史の広がり日本史の広がり 4
近現代
開国と明治維新から、憲法と議会、戦争と占領、高度経済成長を経て、今の社会までを学ぶ領域です。歴史総合で日本と世界をあわせて学び、日本史探究でさらに深めます。鉄道、選挙、テレビ。当たり前のものの始まりが分かります。

ひとことで言うと
家族のアルバムを、さかのぼってめくる
祖父母や曾祖父母の若いころの写真には、今の暮らしの始まりが写っています。近現代の歴史は、そのアルバムをさらに前へめくっていくような学びです。いつ、どうして今の形になったのかが、写真の 1 枚ずつから見えてきます。

01
開国と明治維新: 日本初の鉄道は、海の上を走った
日本史探究の近現代は、開国と、幕府の時代の終わり、新しい政府の成立から始まります。明治の政府は、欧米の技術を取り入れて近代化を急ぎました。その代表が鉄道です。
1872 年、新橋と横浜の間に日本で最初の鉄道が開業しました。長さは約 29 km です。そのうち約 2.7 km は、海の上に堤を築いてレールを敷き、その上を蒸気機関車が走りました。これが高輪築堤です。
なぜ海の上だったのでしょうか。文化庁によると、東海道沿いには平らな土地が少なく、旧薩摩藩邸や兵部省の軍用地もありました。鉄道の土地を手に入れにくかったのです。陸に通せないなら、海に道を築く。明治の人々の工夫が分かります。
この築堤は、長いあいだ地中に埋もれていました。2019 年 4 月、品川駅の工事で石垣の一部が見つかり、2020 年に港区教育委員会が発掘調査をしました。2021 年には「旧新橋停車場跡及び高輪築堤跡」として国の史跡になっています。
地中から出た遺構が、絵や記録に描かれた姿を確かめる手がかりになります。
図解高輪築堤の 150 年
- 11872 年新橋〜横浜に日本初の鉄道が開業
- 22019 年 4 月品川駅の工事で石垣が見つかる
- 32020 年港区教育委員会が発掘調査
- 42021 年国の史跡に指定される


02
憲法と議会: 最初の選挙で投票できたのは、人口の約 1.1%
1889 年 2 月 11 日、大日本帝国憲法と同じ日に衆議院議員選挙法が公布されました。翌年の 1890 年 7 月 1 日、第 1 回衆議院議員総選挙が行われます。
ただし、選挙権があったのは、直接国税を 15 円以上納める満 25 歳以上の男子だけでした。有権者は約 45 万人で、全人口の約 1.1% にすぎません。それでも投票率は 93.73% と、とても高いものでした。
選挙権は少しずつ広がります。1925 年には納税の条件がなくなり、満 25 歳以上の男子が選挙権を持ちました。普通選挙を求める法案は、最初の提出から 15 回目、23 年目でようやく成立したものでした。
第二次世界大戦の後の占領期、1945 年 12 月に法が改正され、女性も男性と同じ条件で選挙権を持ちました。年齢も満 20 歳以上になりました。翌 1946 年 4 月の総選挙では、約 1,380 万人の女性が初めて投票し、39 人の女性議員が生まれています。2016 年からは、18 歳以上が投票できます。
数字の変化を並べると、制度が変わった理由を考える手がかりになります。
図解有権者は全人口の何%?
- 11890 年約 45 万人・人口の約 1.1%
- 21928 年男子普通選挙・約 1,241 万人(20%)
- 31946 年女性も投票・約 3,688 万人(48.7%)
- 42025 年参議院選挙・約 1 億 359 万人(84%)

03
高度経済成長: 白黒テレビは、なぜ 7 年で半分に減った?
戦後の日本は、1955 年ごろから 1973 年の石油危機のころまで、高い経済成長を続けました。高度経済成長です。暮らしを大きく変えたのが家電で、1950 年代の後半には白黒テレビ・電気洗濯機・電気冷蔵庫が「三種の神器」と呼ばれました。
内閣府の消費動向調査を見ると、変化の速さが分かります。全国の世帯で電気冷蔵庫を持つ割合は、1964 年の 38.2% から、1970 年には 89.1% になりました。白黒テレビは、1968 年に 96.4% まで広がっています。
ところが白黒テレビは、そこから減り始め、1975 年には 48.7% になりました。理由を考える手がかりは、同じ表の中にあります。カラーテレビは、1966 年の 0.3% から、1975 年には 90.3% まで増えていたのです。1960 年代の半ばには、カラーテレビ・クーラー・自動車が「3C」と呼ばれました。ただし、同じ表で 1970 年の乗用車を見ると、持っている世帯は 22.1% でした。広まる速さは、品物によって大きく違ったのです。
1 つの数字だけでなく、隣の数字と並べて読む。これが、資料から考える基本です。祖父母に、家に初めてテレビや冷蔵庫が来た日のことを聞いてみてください。統計の数字に、1 つの家族の物語が加わります。
統計の数字は、並べ方を工夫すると、暮らしの変化を語り出します。
図解白黒テレビとカラーテレビの普及率
白黒テレビ
- 1964 年 87.8%
- 1968 年 96.4%(最も高い)
- 1975 年 48.7%
カラーテレビ
- 1966 年 0.3%
- 1970 年 26.3%
- 1975 年 90.3%

04
大学では: 公文書・新聞・聞き取りで、近い過去を確かめる
近現代の学習では、戦争の時代も学びます。学習指導要領は、第二次世界大戦に至る過程や大戦中の国民の生活、占領期の改革や日本国憲法の成立などを扱うとしています。解説は、資料として新聞や写真のほか、体験した人の話の記録(オーラルヒストリー)や、地域に残る戦争遺跡も挙げています。
同じ出来事でも、立場によって見え方が違うことがあります。だからこそ、いくつもの資料を比べ、誰が、いつ、何のために残したのかを確かめながら考えます。
大学では、史学科の日本近現代史のゼミのほか、法学部の法制史や経済学部の経済史などでも近現代を扱います。国立公文書館や国立国会図書館には、インターネットで読める資料も増えています。
高校生のうちに試せること
普及率の表からグラフをつくる
内閣府の消費動向調査のページで「主要耐久消費財等の普及率(平成 16 年 3 月で調査終了した品目)」の表を開き、白黒テレビとカラーテレビの普及率を折れ線グラフにしましょう。2 本の線が交わるのが何年ごろかを探してみてください。
内閣府 経済社会総合研究所「消費動向調査」選挙の歩みの特集を読む
総務省の広報誌の特集「選挙のあゆみと今」には、選挙権が広がった年表や、投票率の移り変わりのグラフがあります。自分が初めて投票する年を書き込み、年表を自分のものにしましょう。
総務省「MIC」特集 選挙のあゆみと今(PDF)高輪築堤の発見を調べる
港区のページで、高輪築堤が見つかった場所と、海の上の線路の姿を確かめましょう。このページの錦絵と見比べると、絵がどこまで実際の姿を描いていたかを考えられます。
港区「高輪築堤」
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よくある質問
近現代は、歴史総合と日本史探究で 2 回学ぶのですか?
はい。歴史総合では近代から現代を、日本と世界をあわせて学びます。日本史探究の最後の大項目では、地域・日本・世界の視点から近現代を深めます。この大項目は、歴史総合と日本史探究の学習を生かす、歴史の学習のまとめとされています。
戦争の歴史は、どう学べばよいですか?
1 つの資料だけで判断せず、公文書、新聞、写真、体験した人の証言などを比べて読むことが大切です。資料ごとに、誰が、いつ、何のために残したのかを確かめると、出来事を落ち着いて考えられます。地域の戦争遺跡や資料館を訪ねるのも、よい学びになります。

