大学カタログ

図 1 日本史の広がり日本史の広がり 5

資料と地域の歴史

古文書や絵図、遺跡と出土品、地域に残る石碑など、歴史を考える材料そのものに向き合う領域です。歴史総合と日本史探究の両方で、資料から問いを立て、根拠を示して説明する力を育てます。

山あいの道ばたの石碑を写真に撮る学生、発掘現場で土器のかけらを記録する学生、博物館の収蔵庫で古い帳面を広げる学芸員

ひとことで言うと

探偵が、現場の手がかりを突き合わせる

探偵は、足あとや手紙など、残された手がかりをいくつも突き合わせて推理します。歴史を学ぶ人も同じです。石碑や古文書、土器のかけらを比べ、誰が、いつ、何のために残したのかを考えながら、過去の姿を組み立てていきます。

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歴史は資料から書かれる: 資料に問いかける

全員が学ぶ歴史総合は、「歴史の扉」という単元から始まります。その中の「歴史の特質と資料」では、遺物や文書、絵などの資料をもとに歴史が書かれていることを学びます。

資料には、たくさんの種類があります。学習指導要領の解説は、遺跡、碑文、日記、手紙、新聞、写真、映像、体験した人の話の記録(オーラルヒストリー)などを挙げています。日本史探究の解説では、地名や伝承、日常の生活用品も資料になるとしています。

資料を読むときは、まず問いかけます。どんな人が、いつ、どのような背景で作ったのか。作った人が直接見聞きした記録か、人から聞いた話か、作った人の解釈や感想か。解説はこうした問いを例に挙げ、同じ資料からでも、解釈によって複数の歴史の書き方が生まれることに気付くよう求めています。

解説は、たとえば、時期の違う絵や日記、新聞、写真を並べて、衣食住や仕事、遊びの変化を読み取る学習を挙げています。資料が少ない時期は、はっきりとは書けないこともあります。そのことに気付くのも、大切な学びです。

資料に問いかける習慣が、歴史を考える力の土台になります。

図解資料から考えるくり返し

  1. 1問いを立てるなぜ? いつから?
  2. 2資料を集める文書・遺物・写真・聞き取り
  3. 3資料に問いかける誰が・いつ・何のために
  4. 4根拠を示して説明複数の資料を突き合わせる

02

地域の石碑: 「此処より下に家を建てるな」

地域に残る石碑も、大切な資料です。2018 年 7 月の西日本豪雨で大きな被害を受けた広島県坂町には、111 年前の大水害を伝える石碑が建っていました。しかし、その内容は地域の人々に十分に知られていませんでした。

これを受けて国土地理院は、2019 年に「自然災害伝承碑」の地図記号を新しくつくりました。全国の伝承碑の場所と伝える内容を自治体と一緒に集め、ウェブ地図「地理院地図」や 2 万 5 千分 1 地形図に載せています。

岩手県宮古市の姉吉地区には、「此処より下に家を建てるな」と刻んだ大津浪記念碑があります。明治と昭和の三陸地震の津波で大きな被害を受けた後、生き残った人々は高台に集落をつくり直し、津波が届いた場所にこの碑を建てました。2011 年の津波は姉吉地区で遡上高 38.9 m を記録しましたが、碑の手前で止まり、高台の集落は被害を受けませんでした。

石碑は、過去の人から今の私たちへの伝言です。通学路の石碑の文字を読むことは、地域の歴史と防災の両方の学びになります。

石碑は、地域の歴史と防災を同時に学べる資料です。

図解地理院地図で伝承碑を調べる

入力自分の町を「地理院地図」で開く
  1. 1地図の情報から「自然災害伝承碑」を表示する
  2. 2記号を選び、碑の名前と伝える災害を読む
  3. 3現地へ行き、碑の文字と周りの土地の高さを確かめる
結果その土地で起きた災害と、昔の人の教えが分かる
木々に囲まれた山道に立つ、縦長の灰色の石碑。表面に大きな漢字が縦書きで刻まれている
岩手県宮古市姉吉地区の大津浪記念碑。「此処より下に家を建てるな」などの言葉が刻まれています。写真: T.KISHIMOTO(CC BY-SA 4.0・Wikimedia Commons)

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遺跡と文化財を守る: 焼けた壁画から生まれた法律

地面の下にも資料が眠っています。文化庁によると、遺跡があると分かっている土地(周知の埋蔵文化財包蔵地)は、全国に約 46 万か所あります。毎年 9 千件ほどの発掘調査が行われています。

遺跡を残せない工事などの場合は、前もって発掘調査を行い、記録を残します。「原始・古代」で紹介した三内丸山遺跡の重要性が分かったのも、「近現代」の高輪築堤が姿を現したのも、工事にかかわる調査の中でした。調べた結果は発掘調査報告書にまとめられます。奈良文化財研究所の「全国文化財総覧」では、こうした報告書を電子化し、インターネットで検索して読めるようにしています。

文化財を守るしくみには、きっかけとなった出来事があります。1949 年 1 月 26 日、奈良県の法隆寺の金堂が燃え、壁画が焼けて損なわれました。この出来事は人々に強い衝撃を与え、翌 1950 年に文化財保護法がつくられました。

1955 年からは、1 月 26 日が「文化財防火デー」になりました。毎年この日を中心に、全国の文化財のある場所で防火訓練などが行われています。失われたものから学び、しくみをつくる。これも、歴史を学ぶ意味の 1 つです。

文化財を守るしくみの歴史を知ると、地域の遺跡や史料を見る目が変わります。

図解壁画の焼損から、守るしくみへ

  1. 11949 年 1 月法隆寺金堂が燃え、壁画が焼損
  2. 21950 年文化財保護法がつくられる
  3. 31955 年1 月 26 日を文化財防火デーに
  4. 4毎年 1 月全国で文化財の防火訓練
仏の姿を描いた壁画の一部。全体が焼けて色を失い、白っぽい壁に黒い輪郭の線だけが残っている
1949 年の火災で焼損した法隆寺金堂の壁画の一部(第 6 号壁)。色が失われ、輪郭の線だけが残りました。写真: 作者不詳(Public domain・Wikimedia Commons)

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大学では: 資料を読み、守り、伝える方法を学ぶ

大学の史学科などでは、資料の扱い方そのものを学ぶ授業があります。古文書を読む授業、発掘の方法を学ぶ考古学の実習、資料を守り展示する方法を学ぶ博物館の授業などです。科目の名前や内容は大学によって異なります。

こうした学びは、博物館の学芸員や、自治体の文化財の専門職員、公文書館で記録を守るアーキビストといった仕事につながります。地域の歴史を調べ、資料を次の世代に手渡す仕事です。

学習指導要領の解説は、博物館や図書館、公文書館の役割に目を向けるよう求めています。資料や遺跡を守る努力に気付くことが、一生使える「歴史の学び方」につながるとしています。まずは地域の資料館を訪ねてみてください。

クイズ資料と地域の歴史のクイズ

本文を思い出しながら答えてください。

  1. Q1国土地理院が「自然災害伝承碑」の地図記号をつくったきっかけの 1 つは?

  2. Q21 月 26 日が「文化財防火デー」になったのは、何があった日だから?

  3. Q3遺跡があると分かっている土地(周知の埋蔵文化財包蔵地)は、全国に約何か所?

0 / 3 問に回答

高校生のうちに試せること

  • 地理院地図で、近くの自然災害伝承碑を探す

    国土地理院の「地理院地図」で家や学校のまわりを開き、自然災害伝承碑の記号を表示しましょう。碑が伝える災害の内容を読み、実際に碑を訪ねて、まわりの土地の高さや川との距離を確かめてみてください。

    国土地理院「地理院地図」
  • 全国文化財総覧で、自分の町の発掘調査報告書を読む

    奈良文化財研究所の「全国文化財総覧」で、住んでいる市町村の名前を入れて検索しましょう。近所でどんな遺跡が掘られ、何が出てきたかが分かります。写真や図面のページから見ると読みやすくなります。

    奈良文化財研究所「全国文化財総覧」
  • 通学路の石碑を記録する

    通学路や近所の神社にある石碑を探し、刻まれた文字、建てられた年、場所を写真とメモで記録しましょう。地域の図書館で市町村史を開くと、その碑が建てられたわけが見つかることがあります。

「資料と地域の歴史」に関連するコミュニティ

研究室・部活・サークルなど、全国の 90 件から探せます。

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よくある質問

古文書が読めなくても、資料を使った学習はできますか?

できます。写真、統計、新聞、石碑、体験した人の話など、今の文字や形で読める資料もたくさんあります。古文書の読み方は、多くの大学で授業やゼミを通して基礎から学べます。

一次資料と二次資料は、何が違うのですか?

出来事の当時に作られた日記や手紙、公文書などを一次資料、それらをもとに後から書かれた本や研究を二次資料と呼ぶことがあります。二次資料で全体をつかみ、大事なところは一次資料に戻って確かめるのが、資料の基本の使い方です。